人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影

249 第3ギルドマスターとの会談に

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 部屋の片隅には、いつの間にかメイド長ベロニカの姿があった。

「あら、いつからそこに?」

「十分程前から居ました。話が終わりそうになかったもので、声を掛けさせいただきました」

「ごめんなさい。それでどうしたの?」

「明日フリート様と会談する準備を致しませんと。昨夜、奥様がおっしゃったではないですか」

「あぁ……そうだったわね。でも話の続きが」

「ビワはオリーブ・モチヅキ家のメイドです。お話はいつでもで出来ます。なので今日のところは、明日話す内容をまとめられては」

「そうよね。でも今良いところでなのよ」

「奥様!」

「わ、分かりました。ベロニカは厳しいわね。ほら私、風邪が治ったばかりで、病み上がりなのよ。だからもっとね」

「でしたら、ビワとのお話はなしにして、数日程ベッドで休まれますか? せっかく落ちたお腹の脂肪が…」

「分かったわよ。やります」

「では御用意をしておきますので、すぐに旦那様の執務室までおいでください」

 ベロニカがマーガレットの部屋を出ていく。

「残念。話しはまた今度聞かせてもらうわ」

「メイド長は厳しいですから」

「もう少し気を抜いてくれて良いのに」

「使用人に、だらけろとか言う主はどうなの?」

「そこまで言ってないわよ。ただベロニカには、小さい頃から面倒見てもらってるから、私には母親みたいなものなのよ。だから無理してほしくないのよ」

「ふ~ん。母親…か。あちしの……」

「どうしたのレラ? 急に静かになって」

「ん? なんでもない。ビワがカズのベッドに潜り込んだ話しは、また今度ね」

「え!? なになに? ビワがついに」

「ち、違います。ほら早く行かないと、メイド長に叱られますよ。奥様を連れてくから、レラはここに居て」

「えぇー気になる。レラちょっとだけでも。ね」

「早く行きますよ。奥様」

 ビワに連れられて、マーガレットはベロニカの待つルータの執務室へと向かった。
 一人残されたレラは、リアーデの生活を思い出し、笑い転げていた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「……奴がリアーデに居たそうだな」

「はい。衛兵が住みかを見つけたそうですが、もぬけの殻だったようです」

「今、奴はどこに?」

「分かりません。リアーデは封鎖していたようですが、どこにも見つからず。既に他へ移ったかと」

「役立たずの下っ端が。早く見つけて捕らえろ。すぐに処刑にしてやる。お前も役に立たなければ……分かってるな」

 とある場所の薄暗い部屋で、一人の男がある女性を顎で使っていた。
 女性は男の言われるがまま、逆らうことなく言うことを聞いていた。

「一つ御報告が」

「なんだ?」

「第3ギルドマスターのフリート・グレシードが、何やら調べてるようなのです。重要機密保管所に入ったらしく」

「ああ、分かっている。また保管所に入る許可を求めてるようだ」

「よろしいので?」

「もう入らせんさ」

「しかし彼も貴族です。それを利用したら」

「家名に泥を塗るようなことはしないだろう。お前は奴がどこに行ったか、情報を集めろ。分かりしだい衛兵に情報を流せ」

「はい」

「冒険者にも噂を吹き込め。金に目がくらんだ浅ましい連中が、躍起になって探すだろう。分かったらもう行け」

 女は黙って部屋を出ていった。

「どこから来た田舎者か知らないが、邪魔をしたからには……」


ーーーーーーーーーーーーーーー


「ふぅ……」

「疲れてる様ですね」

「! 誰ッ?」

「俺です。フローラさん」

「その姿は……ルア」

「覚えてましたか。一部忘れてると、レラから聞いてたんですが」

「なんでここに来たのッ! 今の状況分かってるんでしょ。私だって監視が付いてるのよ」

「ですから姿を変えて、ここ(ギルドマスターの資料部屋)から来たんです。念の為に《隠蔽》と《隠密》のスキルは使ってます。それに、この姿を知っているのは、一部の者しか居ませんから」

「……分かったわ。とりあえず、調べて分かったことを手短に話します」

 フローラはアーティファクトの調査を、第3ギルドのギルドマスター、フリートに頼んだ事を話した。
 重要機密保管所のアーティファクトが、一つ紛失していたこと。
 ただしそれが何かまでは、分からないらしく、もう一度フリートに確かめてもらうため、重要機密保管所に入る手続きをしてもらっていると。
 なので、マナの揺らぎの発生源は、まだ分かってないとのことだ。
 ただそれが貴族区からなのは確かだと、フローラ言った。

「その根拠はなんですか? (俺が以前に。貴族区で感じたからか?)」

「重要機密保管所からアーティファクトの紛失。持ち出した者が不明なのに、進行しない調査。これだけでも、貴族が関係しているのは確かだと私は思う」

「分かっていても、簡単には調べることができませんよね」

「決定的な証拠がないと、貴族相手では難しいわね。だからそれもあって、フリートに頼んだの」

「そういえば、フリートさんも貴族でしたね」

「ええ。彼には兄が居るのだけれど、確かロイヤルガードの一人だと聞いているわ」

「ロイヤルガード? なんですかそれ?」

「王族を護衛する者達よ。騎士団とも言われてるわ。まあ知らないのも無理はないわね。滅多に姿を見せないから」

「騎士団……(前にマーガレットさんの所に、子供を迎えに来た時いたっけか? 馬車を操ってた人がそうだったのかな?)」

「ところで、レラとビワさんだったかしら。二人は今どうしてる?」

「フローラさんの所にも、まだ連絡が来てないんですね」

「なんのこと?」

「俺達がリアーデに隠れ住んでたのが見つかってしまって」

「え!」

「大丈夫です。今二人は、マーガレットさんの所に居ますから」

「マーガ……オリーブ・モチヅキ家ね」

「はい。それでマーガレットさんに頼まれて、明後日にフリートさんと会うことに」

「ちょ、ちょっと待って……会うの? 捕まるかも知れないのよ」

「それはそれで」

「は? 捕まっていいの?」

「俺に罪を擦り付けたり、アーティファクトで皆の記憶を忘れさせたりしてる真犯人を探すには、俺が捕まった方が手掛かりが見つかるんじゃないかと」

「それは一理あるけど、危険な賭けよ」

「捕まった場合ですけど。フリートさんと話をしてどうなるかですね」

「オリーブ・モチヅキ家の人々が、ロイヤルガードや衛兵を呼んでたらどうするの?」

「まぁそうなれば、おとなしく捕まって様子をみます。俺が捕まったと分かれば、フローラさんの監視もなくなり、動きやすくなるでしょ」

「私に頼るのね」

「俺を覚えていて、頼れる味方は少ないので」

「助けられる保証はないわよ」

「ええ。承知してます」

「この借りは大きいわよ。貴方にある借りを返しても足りないくらい(カズさん一人で動けば、捕まりはしないだろうけど)」

「分かってます(そんなあるのか?)」

「……出来るだけのことはやるわ。だけど過度な期待はしないで」

「フローラさん自身が危険だと思ったら、構わず俺を切り捨ててください」

「その為にレラ達と離れるの?」

「……頼まれたのに、投げ出すようですいませんが」

「はぁ……貴方ねぇ」

「長居もできませんし、そろそろ行きます」

「ちょッ……」

 ルアはフローラが使っている資料室に入ると〈ゲート〉を使ってギルドを出た。

「行っちゃった……(自分のことを軽視し過ぎてるんじゃないかしら。他のギルマスや上層部の人達が、カズさんが隠してるステータスを知ったらどうなるか。特にバルフートなんかは、手合わせとか言って戦いたがるわよ。……はぁ、カズさんが来た事、気付かれてなければいいのだけど)」


 それから二日後、約束した時間になると、カズはマーガレットの部屋に姿を現した。
 部屋にはマーガレットの他に、ビワとレラも居たが、フリートの姿はなかった。

「約束した通り来てくれましたね」

「もっと早く来なさいよ。カズ」

 レラは文句を言うが、カズが来たことで内心ホッとしていた。

「フリートさんが来てないようですが? (他の部屋か?)」

「もうすぐ来ると思うわ。だからそれまで、こちらで待っていてください」

「手配されてる俺と一緒の部屋で、いいんですか?」

「ビワとレラさんから話は聞きました。私は貴方が悪い人だとは思えません」

「そう言ってもらえると、気持ちが楽になります。でもそれは、ここだけの話にしてください」

「どうして? 貴族の私達が味方につけば、しっかりと調査してくれると思うわよ」

「そうかも知れませんが……」

「だったら」

「実際に俺が無罪だとしても、現実には凶悪犯ですから。それにこうしてここに居るのが、フローラさんやフリートさん以外のギルドマスターに知られたら、皆さんを迷惑を掛けることになります」

「味方になるという私(貴族)の言葉に耳をかた向けず、取り入ろうともしないで、迷惑掛けると心配をする凶悪犯がいるかしら?」

「そう思わせて、騙すつもりかも知れないですよ」

「そんなことを考える凶悪犯が、貴族でギルドマスターのフリートさんと会う約束を守るかしら?」

「それは……」

「こういう話の駆け引きのようなことは、どうも苦手のようね」

「……」

「黙ったら負けと認めてるようなものよ」

「あちしは全部覚えてるんだから、何が起きてもカズの味方なんだもん!」

「わ…私も覚えてます。奥様達になんと言われようと、カズさんの味方です!」

「レラ…ビワ……。気持ちは嬉しいけど、今回は二人の側に居る訳じゃないから、俺を庇うような言動はしないでほしい」

「でも」

「カズ…さん」

「頼むよ……」

「全部解決したら、あちし達のお願い聞いてもらうからね! ビワも言ってやりなよ」

「い…いえ、私は……」

「俺の出来ることなら(レラはどうせ食べ物だろうな)」

「そろそろフリートさんも来るでしょうから、私達は部屋を移ります。カズさんはここで待っていてください。後程呼びに越させます」

「分かりました」

 マーガレットはレラとビワを連れて、部屋を出ていった。
 カズは【マップ】を見て、屋敷に三人の人が向かって来るのを確認した。
 屋敷に入ったのは一人だけで、残りの二人は外で待っているようであった。
 屋敷に入った一人は、マーガレット達が居る部屋へと案内された。
 少しすると、一人がカズの居る部屋に向かって来るのが分かった。
 扉がノックして入ってきたのは、アキレアだった。
 カズはアキレアに案内され、マーガレット達とフリートが居る部屋に案内される。

「貴方は悪い方ではないと思いますが、実際に手配されているのですから、信用はできません。もし奥様やビワ達に少しでも危害を加えるようなことをしたら、すぐロイヤルガードに通報します」

「分かってます。危害を加えたりしません」

「ビワが言うような……いえ、約束ですよ」
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