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三章 王都オリーブ編3 王国に潜むの影

237 会えない理由 と 怒るレラ

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 レラは窓を開けて部屋の中に入った。

「ちょっとフローラッ! 居るならカズと会いなさいよ!」

「レラ! こんな昼間っから、なに飛んで来てるのよ。誰かに捕まったらどうするの。前にフジと来た時にも行ったでしょ」

「わ、分かってるもん。でもそれはフローラが居留守を使うからだもん。どうして!」

「今はカズさんに会えないわ」

「だからなんでよ?」

「とりあえず会えないから。誰かに見つかる前に早く出て行きなさい」

「ちゃんと説明してよ」

 レラがフローラの胸元を掴み食い下がる。
 小声でレラに何かを話すフローラ。

「……なの。分かった?」

「え? ちょっと、それ」

 フローラがレラを掴み、そのまま開いている窓から外に放り出す。

「何すんのよ」

 レラが入って来れないように、窓を閉めて鍵をかけ、背を向けるフローラ。
 
「もうッ! フローラのバカっ!」

 怒ったレラはカズの元に戻っていく。

「『レラ聞こえる?』」

「わッ!」

 不意にカズから念話で話かれられてレラは驚く。

「『何よ。驚くじゃないの。今そっちに戻ってるところよ』」

「『尾行されてるから、直接は戻ってこないで』」

「『それじゃあ、どうすればいい?』」

「『さっき居た場所の奥にある白い建物分かる?』」

「『見えるよ。今カズも見えた』」

「『なら次の角を左に曲がるから、そこに居て』」

「『でも誰か居たら』」

「『【マップ】で確認すると、今は誰もいないから』」

「『分かった。すぐに行く』」

 レラはカズに言われた場所に行き待機する。
 すると建物の角からカズか姿を現し、レラが入れるよう鞄の口を広げた。
 レラが鞄に飛び込むと、何事もなかったのように鞄を持ち直し、倉庫街の方へ歩いて行く。
 家に戻ると、レラがフローラと会って聞いたことをカズに話す。

「今は会えない?」

「そう言ってた。それにフローラも監視されてるって」

「フローラさんも! どういう事だ?」

「あちしに聞かれても」

「そうだよな(俺が原因なのか)」

「あ…」

「他にまだ何か言ってた?」

「ううん」

「そうか。これからどうすれば? フローラさんが原因を調べてくれるって言ったから、連絡をまってたんだけど。貴族区に入って調べるわけにはいかないしなぁ」

「キウイ達に頼んでみたら」

「この様子だとオリーブ・モチヅキ家の皆も、俺のことを忘れてるよ」

「そう…だよね……」

「この家の障壁でレラは忘れずにいるけど、影響がなかったとも思えない。もしかしから明日には俺のことを忘れてるかも」

「そんなことない。フローラだって覚えて……」

「そうだよな。フローラさんだって覚えていてくれたんだ。伊達に王都のギルマスをしてるわけじゃないよな」

「そ、そうよ」

 少しの沈黙の後、カズが何かを思い出した。

「……あ! もしかしたらあれを見せれば」

「あれって何? カズ」

「前にオリーブ・モチヅキ家当主の、ルータさんから渡された物なんだけど」

 カズは【アイテムボックス】から一枚の金属プレートを出してレラに見せた。
 それはルータがカズの手助けになればと渡した、オリーブ・モチヅキの紋章が入ったミスリル製のプレートだ。

「これを見せれば、モルトさん伝で会えると思う」

「大丈夫なの? カズのこと忘れてるのに、カズがそれを持ってるなんて」

「危険な賭けだけど何かしら行動を起こさないと。いざとなったら、俺がこの国を出れば」

「あちしはどうするのよ」

「レラにはフローラさんやアレナリアも居るから寂しくないよ。マーガレットさん達やキウイだって居るんだから。頼めばオリーブ・モチヅキ家に住まわせてくれるよ。街より安全…」

「バカ言わないでよッ! あちしの故郷を見つけるまで、カズが守ってくれるんでしょ」

「これから俺と居ると、余計に危険になるかも知れないから」

「見くびらないでッ! そんな簡単に他の人の所なんかに行かないわよッ! それともあちしを見捨てるの」

 目に涙を溜めながら、レラはカズを見る。

「レラ……ごめん。でも危険だと思ったら」

「その時はフジ達の居る山に行くもん」

「そうしてくれ」

「うん。そうと決まれば、もう一度ギルドの行く?」

「いや、毎日フローラさんとの面会に行ってるから、結構ギルド職員に煙たがれてるんだ。だから明日の朝早くに行って、ギルドの近くでモルトさんが来るのを待つよ」

「なら今日行って、出て来るのを待っても」

「それだと見張ってる連中が付いて来るから、明日見つからないように、こっそり家を出る」

「あちしも行くからね」

「分かってる。レラを一人残しては行かない」

「なら良し。忘れないでよねカズ」

「ああ」

「あ~あ。怒ったらお腹空いちゃった」

「なら少し早いが昼飯にするか。その後で、これからどうするか色々と考えよう」

「頭を使うなら糖分必要ね」

「そんなこと、どこで覚えた」

「気にしないの。デザートはプリンとたっぷりのクリームを用意して」

「ただ食べたいだけだろ」

 昼食を済ませた二人は、これからの行動について意見を出し話し合った。
 その間もカズは【マップ】を見て外に居る見張りの冒険者を警戒する。
 日が暮れるまでカズとレラは意見を出して話をしたが、情報不足と頼れる者が居ないことで、話は進展しなかった。

「やっぱりダメね。誰か協力者が居ないと」

「何はともあれ、モルトさんに話が通るかどうかだ。あとはフローラさんなんだけど」

「フローラのことは置いときましょう。監視がなくなれば連絡よこすわよ……きっと」

「そうだな」

「そうだ! あちしこれから、カズの部屋で一緒に寝る」

「なん……いや、そうだな。レラのベッドを俺の部屋に運ぶよ(侵入されたときの事を考えると、その方が良いか)」

「よろしくね」

 レラのベッドを運ぶと、カズは念の為にと〈アラーム〉を使った。

「とりあえずこれで」

「何かしたの?」

「誰かが侵入したら分かるように、一応ね。まぁ監視をしてるだけだから、入ってこないはずだけど」

「勝手に入ってきたら、魔力を家に吸わせたりできないの?」

「家の中に居る者を、無差別にだったら出来るだろうけど」

「ダメダメ! あちしにまで巻き込まれる」

「だから今は、何も設定を変えない」

「ふ~ん」

「明日は早いからな。ちゃんと起きろよ」

「……」

「おい」

「……起きなくても連れてってよ」

「こいつ……(いっそのこと、鞄の中に寝かせるか)」

 明日には進展することを期待して、カズも就寝する。


 ◇◆◇◆◇


 夜が明ける少し前にカズは起きる。

「レラ起きろ」

「……あと少しだけ」

「鞄に放り込んでくぞ」

「ふぁ~。おき…た……」

「寝てるじゃないか」

「カズ、鞄開けて」

 もぞもぞと起き出したレラが、ふらふらと鞄の中に入り、中に敷いてあるタオルを整えて横になった。

「結局寝るのか。まぁ静かだから良いか」

 レラの入った鞄の肩から下げて、カズはギルドで使っている、認識阻害の効果があるフード付きのマントを羽織る。
 それに加え《隠密》のスキルを使用した。
 見張りに気付かれないように、こっそりと家から出たカズは、ギルドの近くでモルトが来るのを待つ。 
 するとモルトは一人ではなく、他の職員数人とギルドに来たのだった。
 予定がくるったカズは、他の方法をとった。
 あまり面識がない職員に、モルト宛だと手紙を渡し、そのままある場所へと向かった。
 そこはカズが以前モルトに連れられて来た、路地裏にひっそりとある小さな店だ。
 マントを外し《隠密》のスキルも解除して、早朝からやっているその店に入る。
 白髪の年配店主が出したハーブティを飲みながら、モルトが来るのを静かに待つ。

「……カズぅ。あれ、ここは?」

 鞄から顔を出し、寝ぼけ眼でキョロキョロと周りを見る。

「静かに。今、店に入ってるんだよ」

「おや? 誰か居るんですか」

 不思議に思った白髪の年配店主が、カズに話し掛ける。

「いえ、誰もい…」

「おっちゃん。あちしにも何か出して」

 鞄から飛び出したレラが、テーブルの上にあるハーブティの香りを嗅ぐ。

「あッ、勝手に出るなレラ」

「良いじゃないの。他に誰も居ないんだし」

「これは……この年になってフェアリーを目にするとは。君が王都に居るという噂のフェアリーかね?」

「そう」

「レラお前なぁ(今の状況分かってるのかよ)」

「何か事情があるようだね」

「まあ、その……」

「これは失礼。余計なことを聞いてしまったね。この店で静かに過ごしてくれるなら、誰でも構わないよ」

「すいません。ちょっと人を待ってまして」

「そうですか。他のお客さんも居ないから、ゆっくりしていって構わないよ」

「ありがとうございます」

「ねぇねぇおっちゃん。あちしにも何か食べるもの」

「そうだったそうだった。今持ってくるから」

 白髪の年配店主は店の奥へと入り、小さなカップと小さな皿に、レラが食べやすい大きさに作った料理を持ってきた。
 白髪の年配店主は、レラが食べる様子を嬉しそうに見ていた。
 レラは出された料理を、満足そうに平らげて鞄の中に戻った。
 白髪の年配店主が食器を片付け、新しいハーブティを入れてカズに出した。
 カズは出された新しいハーブティを一口飲み、静かになった店内でモルトを待つ。
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