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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

200 東の砂漠

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 フローラとの話を終えたカズは、王都のずっと東にある砂漠に向かうことにした。
 そのために、ギルドにある転移水晶を使い、王都の東側にある第5ギルドに移動した。
 ギルドの転移水晶で第5ギルドに着いたカズは、宿屋をさか一泊して、翌日から砂漠に向けて出発することにした。


 ◇◆◇◆◇


 人の少ない街道を東へ進み、人気がない道に入ると、東へ向かって一気に走っていく。
 日が傾いてきた頃に、林を抜けた所で、先が見えない程の砂漠が現れた。
 カズは林と砂漠の境目辺りで食事休憩をして、暗くなるのを待った。
 月と星の明かりだけが照らす暗い砂漠に入り、ダンジョンを探すべく行動を開始する。
 〈フライ〉と《暗視》を使い、上空から砂漠のどこかにあるダンジョンを探す。
 カズが夜になるのを待ったのは、人に見られる可能性を、できるだけ下げるためだ。
 二日後に新年が迫るこんな夜に、砂漠に居る変わり者など、そうそう居はしない。
 それを見越してカズは、砂漠のダンジョン探索に来た訳だった。
 一応【マップ】で確認をして、人やモンスター反応がないか、念入りに調べていた。

 かれこれ二時間ほど上空から探しているが、砂があるだけで、石や岩など一つも見つからない。
 ただ一つ気になるは、少し離れた所で、砂嵐が起きていたことだった。
 何が気になるかというと、砂嵐が起きている場所が、ある程度決まった範囲だけだったからだ。
 偶然かも知れないと思いながら、カズは砂嵐が起きている場所へと向かって飛んで行く。
 カズは高度を上げて、砂嵐が起きている場所を上空から見ると、ある一点を中心にして、風が渦巻いているのが分かった。
 砂嵐の幅はざっと見ても、1㎞以上はある。
 カズは地上に下り〈身体強化〉と《肉体強化》を使用し、意を決して砂嵐の中に入った。
 砂嵐の中心に向かう者を、粉微塵にするかの如く、猛スピードで砂や小石や、何かの骨などがカズにぶつかっていた。
 暗視のスキルを使っているとはいえ、さまざまな物が飛び交う中で、視界を確保するのは難しいことだった。
 これが例え明るい昼間だったとしても、変わりはないだろう。

 砂嵐の中を進むこと約二十分、突如風が弱まり砂嵐を抜けた。
 そこは砂嵐の中心部だと思われ、300m程ある無風の空間になっていた。
 そこでカズが見たものは、大きな岩と岩の間に、不自然にある扉だった。
 カズは扉がある岩全体に対して《分析》をして調べた。
 すると『石室(せきしつ)のダンジョン』と表示された。


 石室のダンジョン? 砂漠で石室って、なんかミイラが出てきそう。
 フローラさんが言っていたダンジョンは、たぶんここであってると思うけど……なんかやだなぁ。
 でも手掛かりを探すためには入らないと、やっとダンジョンまでたどり着けたんだから。
 でもさすがに様子見でも、今からはちょっとなぁ。
 とりあえず場所は分かったから、さっき休憩した砂漠の入口まで戻って、今日はそこで休もう。
 それで明日ちょっとだけ入るか考えとこう。


 カズは〈ゲート〉で、林と砂漠の境目で休憩をした場所に移動して【アイテムボックス】から『隔離された秘密部屋』のトレカを出して使用した。
 トレカは鍵に変わり、カズの正面には扉が現れた。
 今回のように人気がない場所で、一人で野宿をする場合は、このトレカを使い、別空間内で過ごすことに決めていた。


 ◇◆◇◆◇


 確か明日が新年だから、今日は大晦日になるのか。
 適当に何か食べたら、昨日見つけたダンジョンに行ってみるよう。
 キウイの迎えまで数日があるから、やっぱり少しだけ中に入って、様子を見てこようかな。
 ダンジョン内でマップの機能が使えるか確めたいし、ただ入った瞬間に扉が閉まって……まぁそんなベタな事はないだろう。


 軽く朝食を済ませたカズは『隔離された秘密部屋』の効果で出来た別空間から外に出る。
 そして昨夜行ったダンジョンの場所を【マップ】で確める。
 すると今居る砂漠の入口から、5㎞程行った場所に、昨日のダンジョンがあるようだった。
 ただ今居る場所からは、昨夜見た砂嵐は見えなかった。
 さらに【マップ】の表示には、数ヶ所にモンスター反応があった。
 だが姿は見えず、砂の中に隠れていると思われた。
 わざわざモンスターと戦うことはないと、カズは〈ゲート〉でダンジョンの入口がある岩場まで移動した。
 昨夜とは打って変わって、強い日差しが当たり、ダンジョンの入口がある岩場を熱していた。
 カズが〈ゲート〉から出ると、離れた砂の中に隠れていたモンスターが、カズに向かって来たのが【マップ】を見て分かった。
 カズに気付かれ、不意打ちができないと分かったモンスターは、砂の中から姿を表した。
 カズはすぐにモンスターを《分析》してステータスを調べた。



 名前 : 猛毒サソリ
 種族 : 毒蠍
 ランク: C
 レベル: 34
 力  : 604
 魔力 : 218
 敏捷 : 281
 全長 : 2m80㎝
 スキル: サンドムーヴ
 魔法 : ポイズンショット
 補足 : 尻尾の先から毒液を飛ばしてくる。
 ・スキルの効果で、砂地での移動が阻害されない。
 ・甲殻は鉄以上の強度がある。



 フローラさんが言ってた、猛毒サソリってコイツのことか。
 足場的には、地の利は向こうにあるか……さてどうするかな。
 接近は尻尾が厄介だから、離れた所から魔法で攻撃するのが無難だな。


 猛毒サソリが臨戦態勢に入り、毒をカズに向けて飛ばそうとしたとき、急に強い風が吹き始め、一瞬のうちに辺りは薄暗くなり、砂嵐が巻き起こった。
 カズは岩場の方へ後退したが、猛毒サソリは砂嵐に巻き込まれて、遥か遠くに吹き飛ばされていった。

「あ……」

 どうやらこの場所に近づくと、砂嵐が起きるようだな。
 俺はゲートで瞬時に移動して来たから、すぐには反応しなかったんだろう……って、注意すべきモンスターが出オチ!
 しかしあの大きさのサソリを吹き飛ばすんじゃあ、レベルの低い冒険者は来れないよなぁ。
 例えここまで来れたとしても、それだけで疲れ果てて、ダンジョンには入れないだろうし、装備だって砂嵐でボロボロになるだろう。
 これならダンジョン内に、遺物が残ってる可能性はありそうだな。
 とりあえず扉が開くか確かめて、問題なく開くようなら、少し入って様子見だ。


 カズは岩の間にある扉を押しと、扉は見た目に反して抵抗なく開いた。
 扉の内側は外から射し込む光で、地下へと続く階段が見えた。
 カズは入口で〈ライト〉の魔法を使用し、光の玉を出現させて、地下へと続く階段を下りて行く。 
 念のため中に入って少し待ったが、扉が勝手に閉まり、閉じ込められることはなかった。
 それを確認したカズは、10m程の階段を下り、石で作られた一本道の通路を歩いて先に進んで行く。
 通路は人が三人並んで歩ける程度の広さがあり、先に行くにつれて少し下っていた。
 【マップ】を見ても先は表示されておらず、マッピングする必要があった。
 ダンジョン内でも今までと同じように、視界に入る距離にいれば、マップに表示されるようになっているのは、変わりはなかった。


 内部がどんな感じか確認できたし、一旦王都に戻って、キウイを迎えに行くための馬でも見に行くか。
 ここまで何も見つからないし、モンスターも現れないから少し拍子抜けだ。
 まあダンジョンに入って、三十分も経ってないから仕方ないか。
 よし、一旦戻ろう。


 カズは来た通路を引き返し、ダンジョンの入口へと戻って行く。
 少しすると通路の先に、ライトで照され階段が見えた。
 階段を見たカズは、違和感があった。
 それは外から射し込んでいた日の光が、まったくなかったからだ。
 入る時に確認をしたはずなのに、入口の扉が閉まっていた。
 まさかと思い、カズは階段を上がり扉を開けようとするが、予想どうり開かなかった。
 扉を力ずくで開けようとすると、上から石や砂がバラバラと落ちてくる。
 無理矢理に開けようとすると、入口が崩れる可能性があった。
 カズは慌てることなく〈ゲート〉を使用して、ダンジョンの外に出ようとした。

「……あれっ?」
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