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三章 王都オリーブ編2 周辺地域道中

169 ゲートを使い王都へ

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「気休め程度だけど、これで他のモンスターが寄って来なければ良いんだけど、大丈夫だと思いますか?」

「血の臭いはやわらいだけど、まだ不安ね」

「カズよ、そんなに弱き者共が寄って来るの事が困るのか?」

「ああ。少し下った所に村があって、俺達がそこを離れたら、獣やモンスターから村人を守れる人が居なくなるから困るんだ。せめて他の冒険者が来るまで、モンスターが寄り付かなければ良いんだけど(弱き者共って、白真は基準を自分にして言ってるんだろうな)」

「我の匂いをこの辺りに付けておけば、寄って来る阿呆など居るまい」

「小便でもするのか?」

「まぁそんなとこだ。ワーウルフよ」

「ちょっと…もう! あとは白真さんに頼んで、私達は村に戻るわよ(急におしっこの話するなんて)」

 ラスラは先に一人で、山道を歩いて行ってしまった。

「なんで急に不機嫌になったんだ?」

「アイガーさんが急に、小便の話をしたからじゃないですか?」

「それだけで機嫌が悪くなるか?」

「ラスラさんも女性なんですから、男だけの中で、そういう話はしたくないんですよ」

「そんなもんか?」

「そんなものです。俺達もラスラさんを追って、村に戻りましょう」

「そうだな。村に戻って少し休むか」

「『白真は腹を満たしたら、この辺りに匂いを付けて帰れよ。くれぐれも攻撃されたからって人を殺さないように』」

「『分かっておる。カズに仕置きされたくないからの』」

「『何か用があったら連絡してこいよ。またな』」

「『うむ』」

 フロストドラコンの白真を残し、カズとアイガーは、先に山道を下りて行ったラスラを追って行く。
 村に着く頃には、アイガーの姿は人型に戻っており、ラスラの機嫌も直っていた。
 三人の汚れた服は、ラスラが〈クリア〉の魔法でキレイにし、それから借りた家に入った。
 少し食事取って休憩をしたら、帰り支度を済ませ、報告と帰りの挨拶する為に、三人で村長の家に行く事にした。

 村長の家に着くと、以前のように中に通してくれた。
 アイガーが、暫くの間は獣やモンスターが村の近くに来る事がないだろうと、村長に話した。
 そしてカズは、村に来た時に村長が話した『大きな影のモンスターが村の近くに来て、他の獣やモンスターを食べて減らしもらう』と言っていた意向を取り入れたと話した。(白真がまた来ても大丈夫なように、表向きはそういう事にした)
 最後にラスラが、村を護衛する冒険者を、出来るだけ早く来させると村長に言い、三人は村長の家を後にし、そのまま村を出る。

「村長が少し、不思議そうな顔をしていたな」

「始めは討伐してしまった方が言いと話したのに、今になって村長さんの意向を取り入れたって、言ったからでしょう」

「ロックバード三体だけでもキツいのに、白き災害と伝わってる、フロストドラコンと戦う事になっていたかも知れないからな。もしカズが従属さてせなかったら……」

 一瞬アイガーが、小刻みに震えた。

「あの姿を初めて見た時の事を、今思い出しても背筋がゾッとする」

「本当よね。白き災害の討伐なんて、王都にある冒険者ギルドから、全ギルドマスターを集めて相手をしないと、倒すのに相当な被害が出たでしょうから。そこまでの事なかなか出来ないから、今まで放置してきたんだけど、まさか従属させた人がいるなんてね」

 アイガーとラスラの二人は、同時にカズを見る。

「ここだけの話って事にしてください」

「分かってるさ。それにこんな事話しても、誰も信じないに決まってる」

「そうよ、だからは安心して。それより、そろそろ村から離れて人の気配もしなくなったから、カズさんの転移魔法使って、王都に戻りましょう」

「そうだったな。頼むぞカズ」

「分かりました〈ゲート〉」

 カズがゲートを使うと、目の前にある空間が少し歪んだように見えた。

「ここを通れば、繋がってる先が王都の路地裏です。人の多い所に繋げる訳にはいかないので」

「ここを通るのか? 見た目はあまり変わったように見えないが、本当に繋がってるのか?」

「そうね。でもあちら側の風景が、少し歪んでるように見えるかしら?」

「俺が先に行きますから、付いて来てください」

 半信半疑の二人を安心させる為に、カズが先にゲートで出来た空間を通る。

「本当に消えたぞ!」

「次は私が行くけど良いかしら?」

「ああ。先に行ってくれ」

 カズに続いてラスラが行き、それを見てアイガーも覚悟を決め、二人が消えた空間に飛び込んだ。
 ゲートで出来た空間を抜けて出た先は、王都の冒険者第2ギルド近くにある、路地裏にだった。

「ゲートを閉じます(俺以外が通っても、なんの問題なくて良かった。問題があったら大変だったけど)」

 ラスラとアイガーは、すぐに街人の声がする大通りへと足を進めた。

「」

「ここは……ギルド(第2)から少し来た場所みたいね」

「本当に王都に戻って来たの…か……」

「それでアイガーさんはどうします。俺達とギルド(第2)に行きますか?」

「いや、オレはこのまま自分の所属しているギルド(第1)に戻る事にする。今回は良い経験になった。オレに用があったら、いつでも言ってくれ。どんな時でも力になるからよ」

「俺こそお世話になりました。それとアイガーさんが倒したロックバードはどうしますか?」

「そっちのギルド(第2)で、解体してくれ」

「分かったわ。解体が終わったら連絡するわ」

「おう頼んだラス…じゃなかった。ギルマス殿」

「そういえば、王都に戻って来るまでって言ってたわね。アイガーさん」

「アイガーで良い。立場が上のギルマスに気を使わせて『さん』付けされたのが、オレが居るギルド(第1)に知られたら、気不味くなっちまう」

「分かったわ。でも、もしそうなったら、アイガーがこっち(第2ギルド)に来れば良いよの」

「アハハっ。そうなったらよろしく頼む。第2ギルドのギルマス殿」

 アイガーはラスラこと『フローラ』に一礼をして、一人所属するギルドへと戻って行った。

「それじゃあ、私達もギルド(第2)に戻りましょうか。依頼の品物を、届ける連絡をしないといけませんから」

「そうですね。ラスラさん…は、終わりでしたね」

「そういえばカズさんに、本当の名前で自己紹介をしてなかったわね」

「白真に言ってた時に聞きましたし、ステータスを見た時に分かりました。あっ! ステータスを勝手に見た事を、まだ謝ってませんでした。勝手に見てごめんなさい」

「もう良いわよ。その代わりカズさんには、色々と働いてもらうから!」

「はは……(ハァー、俺も進歩ねぇな)」

 カズとフローラは、数分歩いた場所にある冒険者第2ギルドへと戻った。

「私は自分の部屋に行くから、カズさんは受付で、依頼終了の報告をして。依頼書は私が持ってるから、報告だけで良いわよ。その後は帰らず待っていて、すぐに呼びますから」

「分かりました」

 第2ギルドの入口でフローラと別れ、カズは受付に向かった。
 するとカズに気付いた受付嬢のトレニアが、受付から声を掛けてきた。

「カズさんお帰りなさい。依頼終わりましたか?」

「お久し振りですトレニアさん。依頼終わって、今戻って来たとこです」

「お疲れ様でした」

「依頼書は、一緒に行ったもう一人が持ってきましたので、俺は依頼終了の報告だけです」

「分かりました。それと宿屋のお部屋を貸していただいて、ありがとうございます。とても助かってます」

「構いませんよ。どうせ依頼で出掛けたら使わない訳ですし、宿代も払ってしまっているので」

「あのう、それで…」

「カズ君」

 トレニアが気不味そうに何かを話そうとした時、階段を下りてきたモルトが、カズを呼んだ。

「モルトさんお久し振りです」

「依頼は無事終わった様ですね」

「はい。まぁ色々ありましたが」

「そうですか。それでは呼んでいますので、上に行きましょう」

「分かりました。それじゃあトレニアさん、話はまた後で」

「あ、はい……」

 カズはモルトと一緒に階段を上がり、ギルマスの部屋に向かう。

「モルトさん」

「なんですか?」

「ラスラさんなんて冒険者が居ない事を、最初から知ってました?」

「もうご存知でしたか。騙していて申し訳ありません。これもギルドマスターのフローラ様からの命令でしたので」

「ギルマスが変装してまで、一緒に依頼に行った理由を、まだ聞いてないんですけど、モルトさんは知ってますか」

「詳しくは聞いておりません。それも含めて、これから話があると思います」

「そうですか」

「さぁ着きました。ここがギルドマスター、フローラ様の部屋です」

「以前来たサブマスの、イキシアさんが使ってる部屋の隣でしたね」

「気付いてましたか?」

「以前にイキシアさんから聞きましたので(あの時は断ったのに、結局ギルマスと知り合いになったよ)」
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