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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

150 当主ルータ・オリーブ・モチヅキとの対面

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 キウイに案内され、とある部屋の前に着くと、キウイが先に部屋に入り、カズを連れてきた事をマーガレット達に伝える。
 アキレアとミカンも、キウイと一緒に部屋へと入っていった。
 カズは一人で、案内された部屋の前で待つ。
 するとすぐに部屋の中から声が掛かり、部屋の扉が開く。
 扉は中からアキレアが開けた。

「どうぞ、お入りください」

「失礼します」

 カズは開けられた扉から、部屋の中に入る。
 部屋には大きなソファーがあり、当主の男性とマーガレットが座り、その横に子供のデイジーとダリアが座っている。
 四人のすぐ脇には、執事のジルバとメイド長のベロニカが並んで立ち、更にその横にアキレア、キウイ、ミカン、ビワが並び立つ。
 カズが部屋に入ると当主が立ち上り、カズに近づき挨拶をし、握手を求めてくる。

「初めまして。当主の『ルータ・オリーブ・モチヅキ』です。本日はわざわざ御足労頂き、ありがとうございます」

「初めまして。冒険者をしている、ヤマギク カズです」

 当主ルータの出された手を握り、自己紹介をするカズ。
 ルータは深々と頭を下げ、涙ぐみながらカズに感謝する。

「カズさんありがとう。妻を…マーガレットを救ってくれて。感謝してもしきれません」

「そんな、マーガレットさんを救ったのは、ここに居る皆さんですよ」

 カズ言葉を聞き、皆が少し不思議そうにした。

「デイジーさんとダリア君は、ジルバさんと一緒にアヴァランチェで、薬の材料である氷結花を探し、メイドの皆さんは、長い間マーガレットさんを看病してたじゃないですか。薬はアキレアが調合して作りましたでし、旦那のルータさんは色んな街を巡り、マーガレットさんを救う方法を探してたと聞きました。それにマーガレットさんだって、病気に耐え忍んでましたし」

「街人や冒険者に限らず、庶民は貴族に恩を売っておきたいと思うはずですが、それをしないなんて、聞いてた通りカズさんは変わった御方だ」

「よく言われます」

「子供達の事や、妻の薬に関しても、全てカズさんのおかげですよ。病気以外にも、助けて頂いたと聞いてます」

「出会ったのも縁ですから、俺の出来る事をしただけです(呪いの浄化や解呪にしても、トレカを初めて使ったから、どうなるか分からなかったんだよな。結果は成功してよかったけど、実験したみたいで申し訳ないよ)」

「旦那様、お話は座ってからでどうですか?」

 立って話をするカズとルータを見て、ジルバが声をかけた。

「そうだな。カズさん、話はそちらに座って、楽にしてからにしましょう」

 カズは進められて、用意された椅子に座る。

 子供達とジルバは、改めてアヴァランチェでカズと会った時からの話をし、マーガレットとメイド達も、モルトに連れて来られ、屋敷で過ごした日々を、カズ本人を交えルータに話し聞かせた。
 ルータはそれを聞くと『感謝の念に堪えません』と言い深々と頭を下げる。
 それに続きマーガレット、デイジー、ダリアと、ジルバにメイドの五人も、カズに感謝し深々と頭を下げた。
 その状況にカズは、少々困惑してしまう。

「もう十分に感謝の気持ちは受け取りましたから、皆さんどうか頭を上げてください(人に感謝されるのは、やっば照れ臭くて慣れない)」

「ありがとうカズさん」

「旦那様、そろそろお時間の方が」

「おっと話に夢中で忘れていた。ベロニカ昼食の用意を」

「はい。畏まりました」

「マーガレットと子供達は、昼食の用意が出来るまで休んでいるといい」

「ええ、そうするわ」

「ではアキレアとビワは、奥様達を部屋に。キウイとミカンは、私しと昼食の準備に行きますよ」

 ベロニカは、キウイとミカンを連れて昼食の準備をする為に、部屋を出る。
 アキレアはマーガレットを支えながら寝室に、ビワはデイジーとダリアを連れて、その後を付いて行く。
 アキレアは部屋を出る前に、ジルバにカズから渡された手提げ袋を渡した。
 現在部屋に居るのは、当主のルータと執事のジルバ、あとはカズの三人だけだ。
 そこでジルバがルータに手提げ袋を渡し、カズから聞いた使い方と、渡された経緯を説明した。
 それを聞いたルータは、自分が遠出をする際に持ってく、高さ幅共に50㎝程の化粧箱を、ジルバに言って持ってこさせた。(化粧箱と言っても、女性が使う化粧道具を入れる物ではない)

「カズさんこれを見てください」

 ルータはカズに、化粧箱を開けて見せた。

「これは……箱ですよね?」

「ええ。どういった物か分かりますか?」

「調べても?」

「どうぞ」

 カズは目の前にある化粧箱を《鑑定》《分析》した。



 【繁栄の化粧箱】『レジェンド級』《遺物(アーティファクト)》
 ・箱の内部には別空間がある。
 ・内部の空間に、合計約1,500㎏まで物を入れることができる。
 ・生き物は入れることができない。
 ・内部の時間は、外部と同じである。
 ・化粧箱自体が周囲からマナ(魔力)を吸収するために、出し入れの際に、使用者の魔力を使うことはない。( マナ吸収の効果で、周りへの影響はない)



「アイテムボックスと同じような効果がある箱ですか」

「はい。カズさんが渡された、この手提げ袋と同じです。カズさんは、この手提げ袋の価値が分かりますか?」

「珍しい物だと思いますが、今見せていただいた箱に比べれば、大した事はないと思います」

「確かにこの化粧箱と比べればそうかも知れませんが、聞いた話によりますと、この手提げ袋は、特定の使用しか使えないようにできるとか」

「ええ、内部容量は減りますが、個人の魔力を記録することで、そうすることが出来ます」

「この化粧箱に、そのような効果はありません」

「確かに調べましたが、ありませんでしたね」

「ですので、カズさんが渡された手提げ袋は、この化粧箱に近い価値があると思われます」

「さすがにそれは、手提げ袋は『一級』で、化粧箱は『レジェンド級』ですから、全然違うと思いますけど」

「等級も分かりましたか! 凄いですね。それを聞くと確かに等級的には、化粧箱より下かも知れませんが、使用価値や安全性では、手軽に持ち運びができ、使用者制限も出来るこの手提げ袋は高いと思います」

 ルータが熱く語りだした。

「化粧箱は多く物を入れることができますが、化粧箱自体もそれなりの大きさがありますから、運ぶには馬車等が必要なんです。それにもし盗まれたら、中の物も全てですから。もし出来る事なら、この化粧箱にも使用者制限をつけたいんですよ」

 ルータが熱い視線をカズに送る。

「すいません。手提げ袋は、俺が付与したから出来るだけで、その化粧箱には無理です」

「そう…ですか」

 ルータは少し落ち込む。

「その化粧箱を調べたら、遺物(アーティファクト)と見えましたが、古い物なんですか?」

「ええ。二百年以上前の物で、先祖代々伝わってます。それにこれのお陰で、我が家は貴族の称号を得たようなものですから」

「化粧箱のお陰ですか?」

「はい。この化粧箱を手に入った先祖は、運搬の仕事を始めたんです」

 ルータは自分の先祖が、どう貴族になったかを、話し始めた。

 この化粧箱のお陰で仕事は増え、多くの荷物を速く運ぶ事が出来ると評判になり、大きな店を持つ事ができ、そのうち貴族からも仕事を受けるような、信用ある店になったと。
 するとその評判が王族の耳に入り、婚礼の荷物を運ぶ仕事をやることになった。
 護衛は王族の騎士がする為に安全だが、化粧箱の事を知られる可能性があったので、大きな荷馬車に大量の箱を乗せて、分からないようにしたと、先先代から聞いたとルータは言う。
 王族から頼まれた運搬も無事に終わり、その褒美として、貴族の称号を頂いたとルータは話した。
 もちろん貴族としての位は一番下だが、庶民の商人が貴族の称号を得るのは希だったと。
 なので信用を得て、王族の仕事が出来れば貴族になれると、商人達に希望と夢が、わいたとかわかないとか。 
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