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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ
126 漁師町の酒場
しおりを挟む「んっ……ん、あふっ……」
寝室に戻ると、殿下はそのまますぐにシディを寝台へ連れていった。
ちなみにティガリエ以下の護衛たちは、魔法訓練場の時点から遠い物陰に隠れ、敢えてこちらを見ないようにしていたらしい。どうやらそれが貴人の護衛官として当然の作法であるようだ。
だが、ただの平民であるシディにとってこれは恥ずかしい以外のなにものでもなかった。殿下に抱かれて移動しながらいきなりその事実に気付いたとき、ほとんど蒸発しそうな気分にさせられる羽目になったのである。
いま、そのティガリエたちは部屋の外での警護になっている。かれらも獣人だからシディ同様耳はいいはずだ。だからあまり声をあげたりしたらマズイのだろうな、とちょっと思った。
しかし、結果的にそれは「思っただけ」ということになった。
「あ、あんっ……や、ああ……っ」
そうなのだ。声を我慢するなんて無理だった。
殿下は巧みにシディの衣服を脱がしていきながら、肌の上にひとつひとつ、優しく口づけを落としている。まるで「どこもかしこも私のものだ」と言わんばかりに、彼の唇が触れていない場所などいっさい許さないかのように。
額から頬、鼻先、顎。
それから耳、うなじを通って首筋から鎖骨。
……そして、胸の小さな尖りへ。
「はうっ……!」
そこをぺろりと舐められ、ちゅうっと吸い上げられた時、シディの背中はビクンと弓なりに跳ねた。片方を舌先でさらにちろちろと舐められ、もう片方は指でつままれ、こねられる。
触れられるごとに下腹部にどんどん熱が溜まっていく。するとそれを堪えようとして、つい膝が上がってしまう。まるで殿下の身体を挟むみたいにして。
「シディ……シディ。可愛い、愛してる……シディ」
「ん、んんぅ……でん、かあ……っ」
勝手にあふれてくる涙をどうすることもできない。
つらいからでもなく、こんな風に涙が溢れたのは初めてかもしれなかった。
そうして潤んだ目と、半泣きみたいになった甘い声。別にシディ自身が何を意図したわけでもないけれど、勝手にそうなってしまうのだ。でもそれが、ますます殿下を興奮させてしまうようだった。
殿下の頬が紅潮し、吐息が荒くなっていく。その手が胸元から脇腹を撫で、臍のところからさらに下りていく。指先がそうっと優しくシディの足の間のものに触れ、ビクッと腰が震えた。
「はうっ!」
「ふふ。気持ちよさそうだな? シディ」
「うっ……うう」
そうだった。シディのそこはすっかり欲望を主張して、殿下の胸元をぐいぐい押し戻すような勢いだ。そう言う殿下も、すでにかなりおつらそうに見えた。
(ああ……ちゃんと準備しなきゃ、いけなかったのに──)
朦朧となりながらそう思うけれど、すっかり腰が砕けていて、もう起き上がることもできない。殿下の腰がしっかり自分の上に乗っているので、ほとんど身動きもできないのだ。
本来であれば客をとる前に、きちんと自分の身体の準備をしておかねばならないのに。いやもちろん、殿下は「客」ではないけれど。
そうでなければ、結局自分自身が後悔することになる。穴と奥をしっかりきれいにし、入口は十分に広げて柔らかくしておく。滑りをよくするために、専用の油や塗り薬を塗っておく。でないとひどく傷つけられて流血の憂き目を見ることになるからだ。
傷ができて痛むからといって、男娼に次の客を拒む権利はない。そういう傷がもとで熱病にかかり、死んでいった仲間もたくさんいた。だからこれは、自分の命を守るために必須の準備だったものだ。
それなのに。
「でっ……殿下! なにを──」
殿下の手が寝台の脇から油壺のようなものを取り、たらたらとその中身を自分の股間に垂らしたのに気づいて、シディは慌てた。すっかり天を向いてそそり立ってしまっているシディのものの先端に、温かい油がとろとろと注がれる。どうやらそれも、ちゃんと事前に温められていたらしい。
「だめ……殿下。そんなの、オレが」
「だめだ。準備はすべて私がする」
「でも──」
「いいから。どうか私にさせてくれ。シディ」
首をのばして、殿下がちゅっとまた唇に口づけを落としてくださる。優しい瞳で見つめられると、もう何も言えなくなった。
油はシディのものから自然に下へと垂れていき、袋を濡らして最奥への入り口までをもぬるりと濡らした。香ばしい油の香りに、また意識がふわふわしはじめる。男娼のときに使ったものとは雲泥の差だ。きっとこれは貴人がお使いになる特別なものなのだろう。
と、股間からにちゅっと淫靡な音がして、シディはまた仰け反った。
「はううっ!」
殿下の手が自分の芯をつかみ、ゆっくりと上下し始めたのだ。
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