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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

123 冒険者第2ギルド  イキシア・フォレスト

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「見つけたぞ! 大通りにある店で、呑気に『鶏から』なんか食ってやがった」

「ネメシアさん、だから何ですか?」

「ネメシア、カズ君に説明してから、連れて来たんじゃないんですか?」

「どうせじじぃが説明するんだろ。だったら私が、わざわざ説明する必要はねぇからな」

「なぜそうやって、カズ君の腕を掴んでるんですか?」

「逃げられないようにしてるだけさ」

「ネメシア、もういいから放しなさい」

 部屋に居たもう一人の女性が話し掛けると、ネメシアがようやく手を放した。

「ん? あっ! 何でここにサブマスが居るんだ?」

「サブマス!?」

「訓練所で何かあったと聞いたので、ワタシも気になって来たのよ」

「わざわざサブマス様のお出ましですか!」

「これネメシア、口が過ぎますぞ」

「チッ」

「カズ君は初対面でしたな。こちらは、ここ第2ギルドのサブ・ギルドマスター『イキシア・フォレスト』です。そしてこちらが…」

「初めまして。ヤマギク カズです(サブマス登場って、またパターンかい! 第2ギルドに来たばかりなのに、面倒事はこれ以上勘弁してほしいな)」

「貴方がモルトの言っていた、アヴァランチェから来たカズですか。なんでも世間体に疎く、実力とランクが比例しない変わり者だと」

「モルトさんが言ったんですか?」

「ロウカスクから来ていた報告書と、貴族区あちらであった事を、儂なりにまとめて話ただけです。それを聞いてサブマスが、個人的に思っただけですよ」

「ねぇモルト、わざわざそれを言わなくても」

「カズ君が変わり者だと、儂が言って広めたように聞こえたので」

「あのすいません。それで俺が呼ばれた理由は? (どうせ訓練所の事だろうけど)」

「お前それ本当に言ってやがるのか?」

「これっ、ネメシアは部屋を出でいなさい」

「チッ、わーったよ。じじぃ」

 ネメシアは少し怒りながら、部屋を出て行った。

「やっぱり俺って、嫌われてる見たいですね」

「そうなのモルト?」

「儂も良く分かりませんが、カズ君と初めて会った時から、ネメシアはああなんです」

「今その話はいいわ。それよりカズを呼んだ理由は、訓練所と言えば分かるかしら?」

「だと思いました。それで何を話せばいいんでしょうか? それとも戦闘をしたことにより、罰則ですか?」

「訓練所であった事の経緯や、戦闘に関しても見ていた者が居ますので、別に罰則するつもりはないわ。ただカズからも、話を聞きたいだけ」

「話をですか?」

「ええ」

「大丈夫ですよカズ君。受付のトレニアからも話を聞いていますし、戦闘と言ってもカズに対しては、模擬戦と言うことになってますから」

 俺は受付のトレニアに依頼のことを聞いていたら、急にモブアに絡まれたことや、模擬戦の名目で戦闘した事を話た。

「受付のトレニアと、訓練所に居た人達の話と一致しますね」

「そうですな。カズ君ありがとうございます」

「もう話はいいんですか?」

「ええ、カズが被害者だと確認出来ましたから」

「ではカズ君には、帰ってもらっても宜しいですね」

「そうね……その前に、ネメシアを呼んで来てくれるかしら」

「ネメシアを…ですか? 分かりました。カズ君も、もう少しお待ちください」

「あ、はい。分かりました(何でネメシアさんを呼ぶの?)」

 モルトは部屋を出て、ネメシアを呼びに行き、部屋の中には、カズとイキシアの二人だけになった。

「ねぇカズ、貴方に聞きたいんだけど」

「な、何でしょうか?(サブマスと二人だけの時に、話し掛けられるのって、嫌な予感しかしない。発言には気を付けないと)」

「別にそんなに緊張しないでいいわよ。ただちょっと質問をしたいだけ」

「質問ですか?」

「先ずは、さっき言った模擬戦なんだけど、どうやって相手を倒したの? 見ていた者の話だと、相手に触れたら、悲鳴を上げて倒れたって聞いたけど」

「鋼鉄の鎧を着ていたので、電撃の魔法を使って攻撃しただけです(ここで下手に隠すと、面倒になりそうだからな)」

「鋼鉄の鎧に電撃……なるほど。それで貴方は、殺すつもりで攻撃してきた相手を、殺そうとは思わなかったの?」

「そこまでは思いません。相手の攻撃も避けれましたし、怪我もしてないですから」

「ふ~んなるほどね。そろそろモルトが戻って来る頃でしょうし、取りあえずこれで最後の質問にするわ」

「な、なんでしょう?(やっと終わる)」

「どうしてカズのステータスが、殆ど見えないのかしら? 魔道具を持ってるようには、見えないのだけど」

「それは……(隠蔽を『2』してるからだろうけど、どうしよ……)」

「初対面に、手の内は明かさないのは当然だけど、ワタシのアナライズで見れないのは、気に食わないわね」

「どこまで見えてます? 俺のステータス」

「それを言うには、カズもワタシのステータスを言ってほしいわ。見えるんでしょ!」

「……まあ(くぅ~どうするか)」

「なら先に言って。ここには二人だけだし、誰も聞いてないから、言っても大丈夫よ」

「そう…ですか(もう少し話を長引かせれば…)」

「モルト達が戻って来るから、早くしなさい」

「わ、分かりました。《分析》ステータス確認(時間稼ぎはダメか。見えるステータスを、言い過ぎないようにしないと)」


 名前 : イキシア・フォレスト
 称号 : 王都冒険者第2ギルド サブ・ギルドマスター
 年齢 : 297
 性別 : 女
 種族 : エルフ
 職業 : 精霊魔術士
 ランク: A
 レベル: 83
 力  : 664
 魔力 : 2093
 敏捷 : 970
 運  : 31


「大したもんね。そこまで分かるとは」

「あのう、それで俺のステータスは、どの程度見えてますか?」

「そうだったわね。名前と年齢にギルドランクしか分からないわ。つまり聞いている情報しか見えてないの。いったいどんなスキルを使ってるのかしらねぇ!」

 イキシアが教えろとばかりに、近付いてきた。

「失礼します。ネメシアを連れていました」

 ネメシアを呼びに行ったモルトが、部屋に戻ってきた。

「サ、サブマス…モルトさんが来ましたよ」

「おや、どうかしましたか?」

「なんでもないわ」

「ふぅ…助かった」(ボソッ)

 イキシアが離れる際に、耳打ちしてきた。

「また今度聞かせてもらうからね。カズ」(小声)

「ぃ……(助かってねぇ)」

 ネメシアがブツブツ言いながら、部屋に入ってきた。

「今度は何の用だよサブマス」

「ネメシアは戦闘不足のようですし、最近海岸近くの海に現れる『ストーンシャーク』の討伐依頼を任せます」

「討伐依頼か! 良いぜ、行ってやるよ。久し振りに暴れてやる」

「この討伐依頼は、カズと二人で行って来ること」

「何でこんな奴と!」

「おれも初耳なんですけど」

「今言いましたから」

「足手まといは、必要ねぇよ!」

「これはギルドからの指名依頼ですから、文句は許しません」

「チッ分かったよ。おい、私の邪魔だけはするなよ!」

「明日の朝に、ここのギルドから出発してください」

「おいカズだったな、遅れんなよ。遅れたら置いてくからな!」

 ネメシアがイライラしながら、部屋を出て行った。

「あのう、ストーンシャークって何ですか?」

「カズ君は、見たことないですか?」

「はい。名前から聞くに、サメだと思うんですが」

「ええ。海底等にある岩や石を食べて体内に取り込み、鱗を硬い岩に変化させてるモンスターです。大抵は沖の方に行かなければ、会うことはないのですが、たまに群れから外れた数体が、海岸近くに現れるんですよ」

「強いんですか?」

「レベルは30前後の、モンスターランクCです。単体ならCランクかBランクで討伐依頼を出しますが、群れでいた場合は、Bランク以上の依頼になります」

「今回は数体現れたと報告がきていますから、ネメシアとカズの二人で問題ないでしょう」

「数体なら、ネメシアさん一人でも大丈夫では?」

「どうでしょうか。最近のネメシアを見てると、危なっかしいんですよ」

「それなら俺じゃなくて、同じBランクの冒険者を、同行させたらどうなんですか?」

「ネメシアはもう何年もソロで活動していて、誰ともパーティーを組もうとしないのよ。何度も進めたけどね。今回は珍しく、カズと行くことを承諾してくれたけど」

「ネメシアさんの態度を見たら分かると思いますけど、俺嫌われてますから、出来ればこの依頼は、辞退したいです」

「さっきも言ったけど、ギルドからの指名依頼だから、断ると冒険者としてやっていくのは、大変になるわよ」

「半ば強制ですか」

「そう捉えてもらっても良いわよ」

「分かりました。行きます」

「では明朝に、ここ第2ギルドにある転移水晶で第8ギルドに行き、そこから海岸まで移動して、後は自分達で行動してね」
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