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三章 王都オリーブ編1 王都オリーブ

100 王都オリーブ

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 【王都オリーブ】

 この国の王都はアヴァランチェより、数倍大きな都市だけに外壁は無く、貴族の住む区画と、一般庶民が暮らす場所がハッキリと別れている。
 王城は高台になっている王都の中心部にあり、そこは貴族が住む更に奥になる。
 また王族が住む王城の周りには、城壁がある。

 つまるところ、王都は中心部の高台に、王族が住む王城があり、その周囲に貴族が住む区画、そして一般庶民が暮らす場所が広がっている。
 そして長い年月の間に人口は増え、現在は、一般庶民が暮らす場所は、王都の約八割をしめている。


ーーーーーーーーーー


 アヴァランチェを出発して、山脈を飛翔魔法で飛び越えるのに二日。
 そのあと地上に降りて、森の中にある道を二日進み、五日目小さな村に出たので、そこで一泊した。
 翌朝王都へ続く街道に出てからは、走って行き、夕方には王都の入口に着いた。
 アヴァランチェから早くても十日は掛かると言われた道のりを、俺は六日で到着した。

 王都に着いた俺は、取りあえず一泊する為の宿屋を探した。
 翌朝冒険者ギルド探して、依頼で行く事になっている貴族の屋敷がどこにあるか、聞く事にした。
 なので、今夜は近くで適当に食事をすませて、早く休むことにした。


 ◇◆◇◆◇


 宿屋を出るとき店の主人に、冒険者ギルドの場所を聞いてが、どこの冒険者ギルドだと聞き返された。
 なんでも王都の冒険者ギルドは、一ヶ所だけではないらしい。
 俺は一番近い冒険者ギルドの場所を、教えてもらい宿屋を出た。
 十五分程言われた大通りを歩いたら、冒険者ギルドに着いた。

 アヴァランチェの冒険者ギルドより、はるかに大きい建物だ。
 中の作りは似ているようだ。
 俺は一階にある受付に行き、貴族住む場所を尋ねた。

「ちょっとお聞きしたいんですが」

「初めて見る顔だな。新入りか?」

「昨日の夕方に、王都に着いたんです。それで道を聞きたいんですが」

「お前冒険者か? ギルドカードは?」

「はいこれです」

 カズは受付の男性に、ギルドカードを提示した。

「そのなりでCランクか。それで、何処に行きたいんだ?」

「貴族の屋敷を探してまして」

「貴族だと! Cランクのお前がなんの用だ?」

「依頼で来たんですが」

「証拠はあるのか?」

「これで良いですか?」

 カズは手の甲にある、契約した時に出た印を見せた。

「! これは確かに契約した時に出る貴族印……良いだろう。しかしここは、貴族が住む区画から、一番離れているギルドだ。これから言うギルドに行って、もう一度説明をしろ」

「はい。分かりました」

 俺は乱暴な言い方をされた受付のいるギルドを出て、言われた場所のギルドに向かった。
 しかしここから、50㎞は離れていると言うので、急ぎ走って向う。
 後方から数人が、隠れて追い掛けてきたが、無視して大通りを走っているうちに、バテたのか追ってきた連中の気配が消えた。
 そして言われた冒険者ギルドに着いたのは、走り始めて三時間ほど経った頃だ。
 ただ走るだけなのは、実にしんどい(暇)と思った。
 しかしアヴァランチェと違い、身体強化をして、俺より早く走っている人もいたので、変に思われずに、俺もいつもより早くに走る事が出来た。

 ギルドに入り女性の受付に、目的地の場所を尋ねる事にした。
 女性の受付にしたのは、さっき行ったギルドの受付は男性で、態度がちょっと気に入らなかったからだ。

「あのすいません」

「はい、なんでしょう?」

「ちょっと場所を聞きたいんですが。俺はアヴァランチェから、依頼で来た者です」

「アヴァランチェからですか。それで依頼の場所とは?」

「この印がある、貴族の屋敷なんですけど」

「これは確かに貴族印。少し待っていてください。確認をとりますので。あと、ギルドカードも確認しますので、一旦お預かりします」

「はい(う~ん……こんなに王都が広いなら、しっかり届ける屋敷の場所を、聞いておくんだった)」

 カズはギルドカードを、受付の女性に渡した。
 暫くすると、受付の女性が戻ってきた。

「ヤマギク カズさんですね。少々お聞きしたいので、案内するお部屋に来ていただけますか?」

「えっ? は、はい分かりました(なんで? 何か不味い事でもしたか?)」

 カズは受付嬢の後に付いて行き、ある一室に案内された。
 そこには年配の男性と、二十代くらいだと思われる女性がいた。
 案内してきた受付嬢は部屋には入らずに、仕事に戻って行った。

「わざわざ来てもらって申し訳ない。取りあえず、こちらの椅子に掛けて、お話を聞かせてください」

「はい……」

「なんだお前は! もっとはっきりと返事しろ!」

「これこれ『ネメシア』そんな物言いをしてはいかんぞ。冒険者といえども、女性なのだから、もっと優しい言葉使いをせんと」

「チッ、わかったよ! ほれ取りあえず座りな」

「は、はい。分かりました(男勝りな性格なのか? 少し怖いな)」

「先ずは自己紹介といこう。わしは『モルト』それでこっちが…」

「…アタシは『ネメシア』さっきこのじいさんが言ってたように、ここの冒険者だ。ランクは、お前より上だ!」

「あ、はい。よろし…」

「シャキッとしろ! ほらお前も、自己紹介しろ」

「あ、はい。昨日アヴァランチェから、この王都に着いたばかりで、今さっきここのギルドに来ました、カ…ヤマギク カズです(なんでこんなに機嫌が悪いんだ? 初見だし、俺は何にもしてないけど?)」

「カズ君だね。よろしく。取りあえずこれを返しておこう」

 モルトがギルドカードを返してきた。

「どうも。それで、俺はなんで呼ばれたんですか?」 

「お前はバカか? 見た事もない冒険者が、貴族印を付けてやって来たら、責任者が話を聞くのが当たり前だろ! それがCランクの奴なら尚更だ!」

「責任者?」

「お前は、なんにも知らねぇのか?」

「これこれやめんか。ネメシアが申し訳ない。カズ君は王都に来たのは初めてのようだね。だから知らなくても無理はない」

「チッ、田舎者が」

「ネメシアもそう突っ掛かるでない」

「コイツがアホ面してるから悪いんだ」

「すまんな。ネメシアは正直と言うか、嘘が嫌いでな」

「そう…なんですか(つまり俺がアホ面なのは本当ってことで、モルトさんもそう思ってるのか……傷付くなぁ)」

「人を騙す奴なんか、ボコって殺ればいいんだ!」

「……(こわ! この人とは、あんまり関わりたくないな)」

「ネメシアは少し黙ってなさい。話が進まん」

「フンッ! わかったよ!」

「それでなんだったか?」

「責任者がどうとか」

「そうでしたな。責任者と言うのは、貴族や王族の方々と、ギルドを繋げる橋渡し役をする人のことで、依頼を受ける際に、お屋敷に行って、話しを聞いてきたりと、まぁ上の方々専門の、受付だと思ってもらえれば」

「へぇ。それで俺の手にある印が、モルトさんが受け持ってる、貴族の方だと言うことですか?」

「そうです。地方で依頼を受けて王都に来た場合は、一度ギルドに来て責任者を通してから、貴族の方々が暮らす区画に入る。といった流れなんです。例外もありますが」

「そうなんですか。知らなくてすいません」

「カズ君はアヴァランチェから来たと言いましたね。ギルドマスターのロウカスクに、聞いてきませんでしたか?」

「何も聞いてないです。いつも一言二言足りないんですよねロウカスクさんは(余計な事は、一言多かったりするけど)」

「ギルドマスターになっても、相変わらず変わってませんね」

「ロウカスクさんのこと、以前から知ってるんですか?」

「ええ。儂はアヴァランチェの、前ギルドマスターだからね」

「ああそうなんですか! どうりで」

「おい、じいさん。あんな奴の話しなんてもういい」

「ハハハ! ロウカスクの話しになると、いつもそうだな」

「うるせぇ!」

「ネメシアはな、ロウカスクにフラれてたらしくて、それからこんな風に、直ぐ突っ掛かる性格になってな」

「なっ! じじぃ、余計な事を言ってるんじゃねぇよ! アタシがロウカスクのおっさんに、愛想をつかしただけだ!」

「分かった分かった。そういう事にしておこう」

「…おいカズとか言ったな。今のは忘れろ。さもないと……」

「分かりました。いえ、もう忘れました(面倒くさい人だな)」

「フンッ!」

「カズ君。取りあえず、その貴族印を見せてもらえるかな」
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