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二章 アヴァランチェ編

88 男としての覚悟

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 お風呂から出たあと、雑談をしている三人に、王都に依頼で行くことを話す。

「三人に、話を聞いてほしいんだけど」

「カズ兄どうしたの」

「話って何かしら? カズ」

「回りくどい言い方をしても、しょうがないから、単刀直入に言うよ。二日か三日後に、依頼で王都に行くことになって、アヴァランチェを離れるんだ」

「カズ兄今度は、王都まで行くの!?」

「うん。急に決まってね」

「久々に会えたのに。リアーデから、また遠くになっちゃうね」

「ごめんねキッシュ」

「……その依頼は、カズがやらなければならないの? 他の誰かに、変わってもらえば…」

「駄目よアレナリア。貴女もサブマスなんだから分かるでしょ。それにカズさんが、異世界から来た人だって知ったんだから、情報の集まる王都に、いつかは行くんだから」 

「クリスパの言ってることは、分かってるわ。分かってるけど……」

「アレナリアはもう大丈夫だよね。スカレッタさんやルグルさん達と一緒に、食事が出来るようになったんだから」

「でもカズが居なくなったら……」

「大丈夫だよアレナリアさん。私がリアーデに帰っても、手紙書くから。何度も書くから一人じゃないよ!」

「キッシュ……ありがとう。そうよね、カズがスカレッタ達との距離を、縮めてくれたんだもんね。私がめそめそしてたら、カズに心配かけて、成長出来ないもんね」

 今にも泣きそうなアレナリアだが、なんとか泣かない様に我慢している。

「ありがとうアレナリア」

「私には、何も言ってくれないんですか?」

「クリスパさんは勘が鋭いから、俺が言わなくても、分かってると思ってましたよ」

「それでも何かは、言ってほしいわ」

「すいません。でもそれは、クリスパさんを、信頼してるからですよ」

「まったく、カズさんは上手いこと言って。それで出発日は、まだハッキリと分かってないんですか?」

「書類が出来たら、出発する予定なので、ロウカスクさんからは、二日か三日としか聞いてないですね」

「それなら、一日くらいは収穫祭を楽しむ時間は、ありそうね」

「そう言えば、明日は収穫祭の前夜祭があるんだっけ!」

「明日の夕食は、皆で外に行って食べましょうか」

「わーい! お祭りの前夜祭だ!」

「アレナリアは、大丈夫そう? 人が多いけど」

「だ、大丈夫。皆が一緒だから……」

「そうよアレナリア。カズさんが居なくなっても、大勢の人前に一人で出れるようにしないと、出ないとカズさんが心配して、依頼もまともに、受けられなくなっちゃうでしょ! サブマスなんだから、しっかりしないと!」

「クリスパさん、そんなに急がなくても、ゆっくり慣らしてけば」

「カズ大丈夫よ。私頑張るわ。でないと、カズに嫌われちゃうもの」

「そうよアレナリア。明日の前夜祭でも平気だったら、アヴァランチェを離れる前に、カズさんが、抱いて心身共に満たしてくれるって」

「えっ? カズ兄!」

「えっ? カズ私と!」

「んっ? 抱く? 何だって……!! ちょっとクリスパさん、何を言ってるのさ! 初耳なんだけど!」

「カズがついにその気に!」

「そんなアレナリアさんだけ……私も初めてはカズ兄が良い……」

「と、言うことですので、キッシュも一緒に抱いてあげてね」

「いやいやキッシュも、何言ってるのさ。クリスパさんも、勝手に話を進めないで!」

「二人ともカズさんに、これだけ好意を寄せてるのよ。カズさん自身の気持ちはどうなの!」

「お…俺は……」

「カズ兄ぃ、私とじゃ嫌なの?」

「カズ、私とも嫌? 今までもずっと、何もしてくれなかったし」

「……三人に俺のこと話したでしょ。見つかれば、元の世界に戻って、二度と会えないかも知れないんだ。それなのに、子供が出来る行為は出ないよ」

「カズさん堅いですね。一度や二度で、そんな簡単に子供は出来ませんよ。それとも、カズさんの居た世界の人は、皆さんそんな風な考え方なんですか?」

「その言い方は、節操のない、尻軽女に聞こえますけど」

「なんですって!」

「ご、ごめんなさい。言い方が悪かったです」

「それで、どうなんてすか?」

「キッシュとアレナリアのことは好きだよ。でも俺は異世界人だし、さっきも言ったように、二度と会えなくなるかも、知れないから」

「カズさんは真面目と言うか、堅いですね。それを聞いて、キッシュとアレナリアの気持ちはどう?」

「私はカズ兄が異世界の人でも、本当はお父さんぐらいに、歳が離れてても気にしないよ!」

「私もカズが良いの! 初めてはカズが良いのよ……あっ……」

「アレナリアも初めてなの? 今まで一度も? みんな初めて!?」

  アレナリアはうつむき、顔を真っ赤にして答えた。

「そ、そうよ悪い。前に話したでしょ。ロウカスクやクリスパ達と会うまで、人と親しく付き合いは、しなかったって。村にいた頃も、小さいって誰も相手にしてくれなかったし」

「ご、ごめんアレナリア。昔の嫌なこと思い出させて(悪いこと言ってしまったな)」

「別にいいわよ。ずっと前のことだから。それに、カズも経験が無いなら一緒でしょ」

「えっ?(なんでそれを)」

「今の話で『みんな初めて』って言ったでしょ!」

「あー……(墓穴を掘った)」

 俺もアレナリアの様に、うつむき恥ずかしくなった。(穴があったら入りたい)

「じゃあ、三人初めて同士で、経験をしようよ」

 俺とアレナリアは、同時に顔を上げて、キッシュを見た。
 するとクリスパも驚き、キッシュを見た。
 それを言ったキッシュ本人は、ゆで上がったタコの様に、真っ赤にしてになっていた。

 ここまで言われたら、おれも覚悟を決めて、二人と一晩を過ごそうと決めた。

「キッシュ、アレナリアありがとう。そこまで俺のこと思ってくれて」

「それじゃあ!」

「良いのカズ兄ぃ!」

「俺も経験ないし、その……二人を満足させられるか分からないけど」

 キッシュとアレナリアが、抱き合って喜んでいた。

「ふぅ~。やっとですか。カズさんの奥手には、困ったものです」

「クリスパさんが、仕組んでたんてすか?」

「助言をした程度ですよ。キッシュがここに来る目的の一つが、初めてをカズさんとしたいと、相談されたんで。アレナリアは、今日一緒に出掛けてる時に、キッシュが口を滑らせて、この話をしたら、アレナリアが突っ掛かってきて、私もって言うから」

「そう……ですか」

「それじゃあ、さっそく……」

「クリスパさんちょっと待った!」

「なんですか? 怖じ気づいたんですか!」

「そうじゃないて、一応最初の約束は、明日アレナリアが、人の多い所に行けたらって……」

「今二人をを抱くと言ったのに、アレナリアを出しに逃げるんてすか!」

「カズはやっぱり、私とじゃ嫌なの……」

「ちょっと待って、まだ話の途中だから。二人とはするけど、今夜は一人にしてほしいんだ。このまま話の流れでしてしまったら、二人に申し訳ない。二人も一晩気持ちを落ち着かせて、それからでも遅くはないでしょ」

「カズさんが、落ち着きたいだけでしょ」

「それを言ったら見も蓋もないよ。クリスパさん」

「良いよ一日くらい私待つよ。カズ兄の気持ちが落ち着くなら(私も凄いドキドキしてるし)」

「わ、私も一日なら待ってあげるわ(今夜じゃなくて良かったわ。心臓が止まりそうよ)」

「ありがとう。それじゃあ、今夜はもう休むよ」

「私達も寝ましょう」

 俺は自分部屋のベッドへ。
 アレナリアとキッシュとクリスパは、アレナリアの部屋へ入っていった。
 どうやら、少し小さいアレナリアのベッドで、三人くっついて寝るようだ。


「キッシュはカズさんのこと、お父さんみたいって言ってたじゃない。本当に良いの?」

「うん。お父さんみたいに暖かいし、優しいから、カズ兄を好きになったの」

「クリ姉もカズ兄のこと、好きなんじゃないの?」

「ちょっとはね(キッシュと張り合いたくは、ないから)」

「ほんと~に?」

「私のことはいいのよ。さあ寝ましょ」

「二人とも私を挟んでるんだから、話してたら、うるさくて寝れないでしょ」

 ベッドにはクリスパ、アレナリア、キッシュと、川の字になって寝ている。

「ごめんアレナリアさん」

 キッシュがアレナリアに、抱き付いた。

「貴女はなんで直ぐに、抱き付いてくるのよ」

「だってアレナリアさん、可愛いんだもん。妹が出来たみたいで」

「妹とって……仕方ないわね。少しだけよ」

 アレナリアもキッシュに抱き付いて、そのまま二人は寝た。
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