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二章 アヴァランチェ編
77 ポピーの特訓 2 魔力切れ と 魔力譲渡
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アレナリアの言われた魔力操作を、なんとかクリアして喜んでいたポピーは、次の特訓に移ることになる。
「ポピー、何をそんなに喜んでいるの?」
「サブマス出来ました! 魔力操作で言われた通り、水玉を操りました」
「それじゃあ、見せてもらいましょうか。たまたま出来ただけじゃあ、意味がないからね」
「はい。見ててください」
「ポピー、さっきと同じように、慌てずにやれば大丈夫」
「カズさん。ありがとう」
「ポピー」
「お待たせしました。始めます!」
ポピーは成功した時と同じように、一回一回を慌てずに、自分の行動を確認しながら、魔力操作を行う。
ゆっくりではあったが、水玉を出し、それを崩さずに操作することが出来た。
「どうですかサブマス!」
「そうね、時間は掛かったけど、出来たから取りあえずは、良しとしましょう」
「アレナ…サブマス、もうちょっと褒めてあげても、良いんじゃないの?」
「まだ基礎よ。ここで褒めて調子に乗ったら、実戦で死に目に会うわ。そうならない為に、キツイ特訓をしてるんだから。全部ポピーの為よ」
「た、確かに(正論を言われたら、何も言えない)」
「そこまで私のことを、考えてくれたんですね。ありがとうございます。これからも、よろしくお願いします」
「わ、分かったわよ。ただし音を上げたら、もっと厳しくするから、覚悟しなさい」
嬉しかったらしく、アレナリアは、ちょっと照れている。
「お、お手柔らかに(早まったかしら)」
ポピーは若干後悔したような、表情している。
「それでポピー、魔力の方は大丈夫そうなの?」
「自分の感じでは、もう少し大丈夫だと思います」
「そう。じゃあ今度は、攻撃魔法の特訓をするから、向こうに移動して」
「はい」
「カズちょっと」(小声)
「何?」(小声)
「ポピーの魔力の残量を、常に見ておいて。倒れずに使用出来る、魔力量の限界を測る為の、特訓でもあるから。本人には、まだ内緒にしてるけどね」(小声)
「分かったけど、アレナリアも確か
アナライズ(分析)が使えるんでしょ? ならステータス見れるはずじゃ?」(小声)
「使えるけど、私はポピーの身体的なとこを見ておきたいのよ。魔法を使った時に、体への負担が、どの程度現れるか気になるしね。だからカズには、魔力量の変化を常に見ていてほしいの」(小声)
「分かったよ。ポピーの残り魔力は、三割程度しか残ってないから、気を付けて」(小声)
「分かったわ。ありがとう」(小声)
「サブマス、今回は、なんの魔法を使えば良いんですか?」
「そうね……カズも居ることだし、以前依頼で使ったって言ってた、ウォーターカッターにしましょう。的の岩を切断してみて」
「あれ(岩)を切断……分かりました。やってみます!」
的用の岩は、高さ幅共に2mはある。
「フゥー……〈ウォーターカッター〉」
ポピーは息を整えてから魔法を使い、手から水が勢いよく放出され続けてた。
その放出されている水を、岩に当て続けているが、水圧が弱く、表面を傷付けてるだけで、切断するには程遠い。
しかも魔法で水を放出し続けているので、魔力がみるみる減っていく。
ポピー魔力《21/336》
ポピーの魔力が、そろそろ切れそうなので、アレナリアに合図を送って、魔法を止めてもらう。
合図に気付いたアレナリアは、直ぐにポピーに魔法を止めるように指示した。
「そこまでよポピー。そろそろ魔力も切れる頃でしょ」
「わ、私なら大丈夫です」
「自分の魔力量を分かってないと、戦闘で足手まといになるし、場合によっては死ぬわよ。それで、本当にまだ出来そうなの?」
「い、いえ。少しふらつきそうに、なりました」
「魔法主体で戦う私達は、魔力が切れたら、仲間のサポートも出来なくて、自分だけならまだしも、仲間を危険にさらすことになるのよ。だから自分の使用出来る魔力量の限界を、知っておきなさい」
「はい。すいません。ご指導ありがとうございます」
「無茶をしないで、自分に見合った依頼を受けていれば、そうそう命の危険になるようなことは、ないと思うけどね。でも冒険者なんだから、常に危険が直ぐ隣に、あると思ってないと」
「はい。それで、サブマスはどうやって、私の魔力が残り少ないと、分かったんですか?」
「私の場合は、スキルで調べることが出来るから、それで分かったのよ」
「さすがサブマスですね。そういったそとの出来ない私はどうしたら?」
「先ずは感覚で、残りの魔力量を感じとることね。これも特訓! まあ手っ取り早いのは、何度も魔力を枯渇させて、倒れれば分かることだけどね。ただし一人これをやると、死ぬわよ」
「そんな怖いことを、一人ではしません! 特訓で死にたくないですから!」
「なら、残りの魔力量を感じとれるまで、毎回特訓で魔力切れる寸前まで、魔力を消費することね。そうすれば自然と、分かる様になるわ」
「それでも、毎回倒れる寸前まで特訓……(やっぱり死んじゃうよ~)」
「ポピー落ち着いて、例え話しだから。取りあえず一回休もうか」
「カズは甘いわね。まぁいいわ。ポピー、少し休憩してなさい」
回復薬って、魔力も回復したってかな?
疲労してるみたいだから、ポピーに渡しておくか。
間違えて以前と同じ物を渡さないで、薄めた回復薬にしないと。
「はいこれ飲んで、少し休憩すると良いよ」
「ありがとうカズさん」
「今度はカズが魔法を使ってみて。ポピーも見て参考にしなさい」
「はい。カズさん、がんばってください」
「参考になるか分からないけど、同じ魔法を使うよ」
先程ポピーが傷を付けた的の岩に、同じ魔法を放つ。
前回はやり過ぎたから、今回は的の岩を、切断出来る程度に、威力を押さえて、ゆっくりと切断する。
「では〈ウォーターカッター〉」
ポピーの時とは違い、手から放たれた細い水は、比べ物にならない勢いのある水圧で、的の岩を縦方向に切断していき、真っ二つにした。
ゆっくりにしたつもりでも、時間は10秒と掛からなかった。
「これがカズの魔法……」(ボソッ)
「カズさんやっぱり凄い! でもサブマス、これじゃあ参考になりませんよ」
「……」
「サブマス?」
「そ、そんなことないわ。自分と何が違うか、考えることだけでも、参考になるものよ。そこでもう少し休憩しながら、考えてなさい」
「はい」
「次の的を用意するから、カズ手伝ってちょうだい」
「分かりました。ポピーは言われた通り、休んで待ってて」
「は~い」
俺とアレナリアは、ポピーから離れた場所に移動した。
するとアレナリアが、ポピーに聞こえないように、小声で話してきた。
「ねぇカズ」(小声)
「何?」(小声)
「私に魔法を習えば、カズと同じくらいの魔法が使えるって、ポピーに言ったわよね」(小声)
「……そんなことあったよ~な……」(小声)
「しらばくれないで!」
「声が大きいよ。あの時はつい誤魔化す為に……ごめん」(小声)
「ハァーどうしましょう」(小声)
「まだ習い始めたばかりだから、取りあえず、あの的にしてる岩の、半分ぐらい厚さを、切断出来るのを目標にしたら」(小声)
「そ、そうね。取りあえずそうしましょう」(小声)
「何をしたって、人それぞれ違うから」(小声)
「この借りは、今夜も一緒に寝ることで良いわよ」(小声)
「えぇー」
「カズ、声が大きいわ。それに一緒に寝るの嫌なの? 誤魔化す為に、私に押し付けたのに」(小声)
「うぐっ……わ、分かりました」(小声)
その場しのぎに、アレナリアの名前を出して誤魔化したツケが、ここで回ってきてしまった。
やはり知らない相手と、パーティーを組むのは、しんどい。
なので、これからも一人で依頼をしていこうと思った。
この後もポピーの特訓に付き合い続け、特訓を終える頃には、夕方になっていた。
結局今日の特訓は、魔力操作を重点的にしていった。
ポピーは何度も、自分の魔力量を見極めようと、魔力切れをおこし倒れていた。
その度にアレナリアが【魔力譲渡】をして、魔力の回復をしてあげていた。
魔力譲渡は、お互いの魔力適性や、魔法属性の相性が良くないと、譲渡率が悪く、あまり使うことはないと言う。
アレナリアとポピーは、どちらも水魔法の適性が有り、しかも得意とするので、譲渡率は良いらしい。
今日の特訓を終了したので、帰りがけに回復薬をポピーにあげた。
俺とアレナリアは、ギルドには戻らず、そのまま家に帰る事にした。
「ふぅ~、やっと家に帰って来たわ」
「ふぅ~って、アレナリア殆ど動いて無かったと思うけど」
「魔力譲渡は疲れるのよ。自分の魔力を、相手に渡しちゃうんだから」
「魔力譲渡なんて、初めて知ったよ」
「使える相手が限られてるし、魔力量が渡す相手より多くないと、意味無いからね。上手くいかないと、魔力の無駄遣いだから、訓練とかじゃなければ、やらないのよ」
「へぇー! そうなんだ」
「カズもそろそろ依頼を受けなくちゃ。暫くの間は、ポピーの特訓もお休みだしね」
「何かあるの?」
「五日後には、収穫祭の前夜祭が始まるから、人が増えて忙しくなるのよ」
「収穫祭! そう言えば、そんなことがあるって聞いたな」
「アヴァランチェ以外の都市や、街に村からも人が集まるから、揉め事も増えるし、面倒な依頼も来るのよ。しかも今回は、盗賊が潜伏してる可能性があるから、とても厄介だわ」
「サブマスは大変だね」
「そうよ! しかもギルマスが、さぼり癖のあるあれ(ロウカスク)だから。昨日の書類も、収穫祭に関する物ばかりだったしね」
「ロウカスクさんには、しっかり働いてもらわないと」
「いざとなったら、ギルドの職員全員で、ロウカスクを縛り上げてでも、働かせるわよ! そうすれば収穫祭を、カズと回れる時間が取れるわ」
「んっ?」
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど、アレナリア大丈夫? 凄い人が多いんでしょ」
「大丈夫よ……多分。それより夕食を食べたら、お風呂に入って……ムフフッ」
「……」
残ってる材料で夕食を作り食べて、その後湯船にお湯を入れ、お風呂に入ったら、またアレナリアの部屋で、一緒に寝ることに……
いつか一線を越えてしまいそうな、自分が怖い。
アレナリアは好意をよせてくれているけど、俺はまだ……
念の為に、お互いに何もしないと、今回もしっかり約束をした。
アレナリアは俺がまた、抱き枕と間違えて、抱き付くと思ってるらしいが、そう毎回抱き付きはしない……と思う。
「ポピー、何をそんなに喜んでいるの?」
「サブマス出来ました! 魔力操作で言われた通り、水玉を操りました」
「それじゃあ、見せてもらいましょうか。たまたま出来ただけじゃあ、意味がないからね」
「はい。見ててください」
「ポピー、さっきと同じように、慌てずにやれば大丈夫」
「カズさん。ありがとう」
「ポピー」
「お待たせしました。始めます!」
ポピーは成功した時と同じように、一回一回を慌てずに、自分の行動を確認しながら、魔力操作を行う。
ゆっくりではあったが、水玉を出し、それを崩さずに操作することが出来た。
「どうですかサブマス!」
「そうね、時間は掛かったけど、出来たから取りあえずは、良しとしましょう」
「アレナ…サブマス、もうちょっと褒めてあげても、良いんじゃないの?」
「まだ基礎よ。ここで褒めて調子に乗ったら、実戦で死に目に会うわ。そうならない為に、キツイ特訓をしてるんだから。全部ポピーの為よ」
「た、確かに(正論を言われたら、何も言えない)」
「そこまで私のことを、考えてくれたんですね。ありがとうございます。これからも、よろしくお願いします」
「わ、分かったわよ。ただし音を上げたら、もっと厳しくするから、覚悟しなさい」
嬉しかったらしく、アレナリアは、ちょっと照れている。
「お、お手柔らかに(早まったかしら)」
ポピーは若干後悔したような、表情している。
「それでポピー、魔力の方は大丈夫そうなの?」
「自分の感じでは、もう少し大丈夫だと思います」
「そう。じゃあ今度は、攻撃魔法の特訓をするから、向こうに移動して」
「はい」
「カズちょっと」(小声)
「何?」(小声)
「ポピーの魔力の残量を、常に見ておいて。倒れずに使用出来る、魔力量の限界を測る為の、特訓でもあるから。本人には、まだ内緒にしてるけどね」(小声)
「分かったけど、アレナリアも確か
アナライズ(分析)が使えるんでしょ? ならステータス見れるはずじゃ?」(小声)
「使えるけど、私はポピーの身体的なとこを見ておきたいのよ。魔法を使った時に、体への負担が、どの程度現れるか気になるしね。だからカズには、魔力量の変化を常に見ていてほしいの」(小声)
「分かったよ。ポピーの残り魔力は、三割程度しか残ってないから、気を付けて」(小声)
「分かったわ。ありがとう」(小声)
「サブマス、今回は、なんの魔法を使えば良いんですか?」
「そうね……カズも居ることだし、以前依頼で使ったって言ってた、ウォーターカッターにしましょう。的の岩を切断してみて」
「あれ(岩)を切断……分かりました。やってみます!」
的用の岩は、高さ幅共に2mはある。
「フゥー……〈ウォーターカッター〉」
ポピーは息を整えてから魔法を使い、手から水が勢いよく放出され続けてた。
その放出されている水を、岩に当て続けているが、水圧が弱く、表面を傷付けてるだけで、切断するには程遠い。
しかも魔法で水を放出し続けているので、魔力がみるみる減っていく。
ポピー魔力《21/336》
ポピーの魔力が、そろそろ切れそうなので、アレナリアに合図を送って、魔法を止めてもらう。
合図に気付いたアレナリアは、直ぐにポピーに魔法を止めるように指示した。
「そこまでよポピー。そろそろ魔力も切れる頃でしょ」
「わ、私なら大丈夫です」
「自分の魔力量を分かってないと、戦闘で足手まといになるし、場合によっては死ぬわよ。それで、本当にまだ出来そうなの?」
「い、いえ。少しふらつきそうに、なりました」
「魔法主体で戦う私達は、魔力が切れたら、仲間のサポートも出来なくて、自分だけならまだしも、仲間を危険にさらすことになるのよ。だから自分の使用出来る魔力量の限界を、知っておきなさい」
「はい。すいません。ご指導ありがとうございます」
「無茶をしないで、自分に見合った依頼を受けていれば、そうそう命の危険になるようなことは、ないと思うけどね。でも冒険者なんだから、常に危険が直ぐ隣に、あると思ってないと」
「はい。それで、サブマスはどうやって、私の魔力が残り少ないと、分かったんですか?」
「私の場合は、スキルで調べることが出来るから、それで分かったのよ」
「さすがサブマスですね。そういったそとの出来ない私はどうしたら?」
「先ずは感覚で、残りの魔力量を感じとることね。これも特訓! まあ手っ取り早いのは、何度も魔力を枯渇させて、倒れれば分かることだけどね。ただし一人これをやると、死ぬわよ」
「そんな怖いことを、一人ではしません! 特訓で死にたくないですから!」
「なら、残りの魔力量を感じとれるまで、毎回特訓で魔力切れる寸前まで、魔力を消費することね。そうすれば自然と、分かる様になるわ」
「それでも、毎回倒れる寸前まで特訓……(やっぱり死んじゃうよ~)」
「ポピー落ち着いて、例え話しだから。取りあえず一回休もうか」
「カズは甘いわね。まぁいいわ。ポピー、少し休憩してなさい」
回復薬って、魔力も回復したってかな?
疲労してるみたいだから、ポピーに渡しておくか。
間違えて以前と同じ物を渡さないで、薄めた回復薬にしないと。
「はいこれ飲んで、少し休憩すると良いよ」
「ありがとうカズさん」
「今度はカズが魔法を使ってみて。ポピーも見て参考にしなさい」
「はい。カズさん、がんばってください」
「参考になるか分からないけど、同じ魔法を使うよ」
先程ポピーが傷を付けた的の岩に、同じ魔法を放つ。
前回はやり過ぎたから、今回は的の岩を、切断出来る程度に、威力を押さえて、ゆっくりと切断する。
「では〈ウォーターカッター〉」
ポピーの時とは違い、手から放たれた細い水は、比べ物にならない勢いのある水圧で、的の岩を縦方向に切断していき、真っ二つにした。
ゆっくりにしたつもりでも、時間は10秒と掛からなかった。
「これがカズの魔法……」(ボソッ)
「カズさんやっぱり凄い! でもサブマス、これじゃあ参考になりませんよ」
「……」
「サブマス?」
「そ、そんなことないわ。自分と何が違うか、考えることだけでも、参考になるものよ。そこでもう少し休憩しながら、考えてなさい」
「はい」
「次の的を用意するから、カズ手伝ってちょうだい」
「分かりました。ポピーは言われた通り、休んで待ってて」
「は~い」
俺とアレナリアは、ポピーから離れた場所に移動した。
するとアレナリアが、ポピーに聞こえないように、小声で話してきた。
「ねぇカズ」(小声)
「何?」(小声)
「私に魔法を習えば、カズと同じくらいの魔法が使えるって、ポピーに言ったわよね」(小声)
「……そんなことあったよ~な……」(小声)
「しらばくれないで!」
「声が大きいよ。あの時はつい誤魔化す為に……ごめん」(小声)
「ハァーどうしましょう」(小声)
「まだ習い始めたばかりだから、取りあえず、あの的にしてる岩の、半分ぐらい厚さを、切断出来るのを目標にしたら」(小声)
「そ、そうね。取りあえずそうしましょう」(小声)
「何をしたって、人それぞれ違うから」(小声)
「この借りは、今夜も一緒に寝ることで良いわよ」(小声)
「えぇー」
「カズ、声が大きいわ。それに一緒に寝るの嫌なの? 誤魔化す為に、私に押し付けたのに」(小声)
「うぐっ……わ、分かりました」(小声)
その場しのぎに、アレナリアの名前を出して誤魔化したツケが、ここで回ってきてしまった。
やはり知らない相手と、パーティーを組むのは、しんどい。
なので、これからも一人で依頼をしていこうと思った。
この後もポピーの特訓に付き合い続け、特訓を終える頃には、夕方になっていた。
結局今日の特訓は、魔力操作を重点的にしていった。
ポピーは何度も、自分の魔力量を見極めようと、魔力切れをおこし倒れていた。
その度にアレナリアが【魔力譲渡】をして、魔力の回復をしてあげていた。
魔力譲渡は、お互いの魔力適性や、魔法属性の相性が良くないと、譲渡率が悪く、あまり使うことはないと言う。
アレナリアとポピーは、どちらも水魔法の適性が有り、しかも得意とするので、譲渡率は良いらしい。
今日の特訓を終了したので、帰りがけに回復薬をポピーにあげた。
俺とアレナリアは、ギルドには戻らず、そのまま家に帰る事にした。
「ふぅ~、やっと家に帰って来たわ」
「ふぅ~って、アレナリア殆ど動いて無かったと思うけど」
「魔力譲渡は疲れるのよ。自分の魔力を、相手に渡しちゃうんだから」
「魔力譲渡なんて、初めて知ったよ」
「使える相手が限られてるし、魔力量が渡す相手より多くないと、意味無いからね。上手くいかないと、魔力の無駄遣いだから、訓練とかじゃなければ、やらないのよ」
「へぇー! そうなんだ」
「カズもそろそろ依頼を受けなくちゃ。暫くの間は、ポピーの特訓もお休みだしね」
「何かあるの?」
「五日後には、収穫祭の前夜祭が始まるから、人が増えて忙しくなるのよ」
「収穫祭! そう言えば、そんなことがあるって聞いたな」
「アヴァランチェ以外の都市や、街に村からも人が集まるから、揉め事も増えるし、面倒な依頼も来るのよ。しかも今回は、盗賊が潜伏してる可能性があるから、とても厄介だわ」
「サブマスは大変だね」
「そうよ! しかもギルマスが、さぼり癖のあるあれ(ロウカスク)だから。昨日の書類も、収穫祭に関する物ばかりだったしね」
「ロウカスクさんには、しっかり働いてもらわないと」
「いざとなったら、ギルドの職員全員で、ロウカスクを縛り上げてでも、働かせるわよ! そうすれば収穫祭を、カズと回れる時間が取れるわ」
「んっ?」
「嫌なの?」
「嫌じゃないけど、アレナリア大丈夫? 凄い人が多いんでしょ」
「大丈夫よ……多分。それより夕食を食べたら、お風呂に入って……ムフフッ」
「……」
残ってる材料で夕食を作り食べて、その後湯船にお湯を入れ、お風呂に入ったら、またアレナリアの部屋で、一緒に寝ることに……
いつか一線を越えてしまいそうな、自分が怖い。
アレナリアは好意をよせてくれているけど、俺はまだ……
念の為に、お互いに何もしないと、今回もしっかり約束をした。
アレナリアは俺がまた、抱き枕と間違えて、抱き付くと思ってるらしいが、そう毎回抱き付きはしない……と思う。
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