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二章 アヴァランチェ編

45 魔鉄鉱石の価値 と 基本魔力元素

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 冒険者ギルドに着くと、時間は昼という事もあり、食事休憩でもしているのか、受付の職員は数人しかいない。
 と言っても、ギルドの食堂は混んではなく、依頼の終わった夕方以降の方が、混む傾向にあるよだ。

 依頼専用受付には、ルグルがまだ居たので、そこに行き依頼書と『鍛治屋組合』から渡された書類も一緒に出す。

「カズさんお疲れさまでした。それでは書類の確認をしますので、少々お待ちください」

 ルグルが奥に書類を持って行き、戻って来るのを待つ……が、なかなか戻って来ない?
 受付の前に居ても邪魔になるので、依頼書が貼ってある掲示板の所に行って、何があるか見て、時間を潰すことにした。
 依頼書を見て暫くすると、ルグルに呼ばれた。

「お待たせしました。それで言いにくいのですが……」

 んっ? 何かやらかしたか?

「な、何ですか?」

「またのことで申し訳ないのですがて……」

 またのこと……まさか……呼び出し?

「……部屋は分かりますよね」

「ギルマスのですか?」

「……はい」

 やっぱりか! 今回は何をした? 昨日の昼間はアヴァランチェにいなかったし、戻ってきても宿屋に直行して晩飯食って寝たから……何にもしてないはずだけどなぁ。

「またどうして? なんで?」

「申し訳ないです。私にも分かりかねます」

 しまった。ルグルさん文句を言ってどうすんだ。

「すいません。ルグルさんに苦情を言ってるようになってしまって。直ぐにギルマスの部屋に行きます」

「そんなことは、呼び出しの理由を聞かなかった、私も悪いですから」

「いえ、そんなことないです。すいません」

 ここで言い合っていても仕方がないので、急いでギルマスの部屋に行った。
 部屋に行くまでの間、何が呼び出しの理由か考えてはいるが、全く分からない。
 結局理由が分からないまま、ギルマスの部屋に着いた。
 ノックをして部屋に入る。

「カズ君来たか」

「今日の呼び出しは、なんですか? 昨日は依頼で、アヴァランチェには居なかったですし、理由が分からないんですけど」

「呼んだ理由は、ついさっき、ある所から連絡が来てな」

「ついさっき? ……鍛治屋組合?」

「そうだ!」

「依頼で調達してきた素材を、持っていっただけですが……量が多過ぎなのが悪かったとかですか?」

「いやいや、それはない。なんせ一度に大量の鉄鉱石が入ったと、喜んでいたからな」

「では、どうしてですか?」

「鍛治屋組合で、鉄鉱石を大量に届けに来た者が、変わった鉱石を持っていたと連絡が来てな。心当たりは?」

「……」

「ありそうだな」

 おかしい……俺の方が先にギルドに来たはずなのに、なんで連絡が来てるんだ?

「連絡が来るの早くないですか?」

「あの連中に珍しい鉱石を見せたら、行動が早いからな。場合によっては色々と手をまわしてくるぞ」

「なんですかそれ、鍛冶職人怖いですよ」

「それで、何を見せたんだ?」

「見せたと言うか、見せようと思ったら目付きが変わったので、やめて来たんですが」

「それであちらさんは、曖昧な言い方をしてきたのか。見せてもらえるかな」

 まぁ、いつかは見せて、聞こうと思ったから良いか。

「これです」

 【アイテムボックス】から、鍛治屋組合で見せようとした、拳ぐらいの大きさがる『魔鉄鉱石』を取り出し、ギルマスの前に出した。

「これか、なるほど。鍛治屋組合の連中が気になった訳だ。カズ君、これが何か知っているか?」

「調べたら『魔鉄鉱石』と出ましたが、違いますか?」

「いや確かに『魔鉄鉱石』だ。この価値は分かるか?」

「そこまでは知りません」

「う~ん、ならどこから説明するか……そうだな。まず鉄鉱石だが、持っていった場所でも分かると思うが、鉄を作る素材だ。生活で使う鉄製品を作ったり、武器や防具にも使われる。使わなくなった鉄製品を溶かし再利用もするが、それでも新しい物を作る為に、必ず必要とされるのが、鉄鉱石だ。なのでとても重宝されている」

「大量に必要なら、採取しに行く人がもっと多くても良いと思うんですが? (あ、でも今回は、依頼書が貼り出される前だったから、誰も採取している人がいなかったのか)」

「ただ重宝されてはいるが、現物を持ち帰るのはかなり大変でな、大量に運搬する手段を持ってないと、報酬が少なく割に合わないから、採取する人物が限られてくるんだよ」

「それはそうですね。薬草等と違って重たいですし、採取場所も荷馬車が通れなような山道でしたから」

「まぁそれは鉄鉱石のことなんだが、問題は魔鉄鉱石なんだが……カズ君は魔鉄鉱石が、どうやって出来るか知っているか?」 

「大気中の魔素を取り込むと、出来るんでしたっけ」

「間違ってはいないが、カズ君は『魔素』が何か知っているか?」

「大気中にある魔力の源?」

「大雑把に言えばそうなんだが……」

「ロウカスク。それについては、私から話しましょう」

 おっ! ずっと黙ってたから、機嫌が悪いかと思ったが、そうじゃなかったみたいだな。

「そうだな。アレナリアに話してもらった方が良いだろう」

「まず基本を教えるわ。『魔素』とは『魔力元素』のこと。現在この世界では『基本の魔力元素』と言われてる四つ『火 水 風 土(地)』に加えて『光 闇』があるわ。この六つ全てを引っくるめての総称が『魔力元素』略して『魔素』と言われているの」

 へぇ~、最初クリスパさんに魔法適正を見てもらった時は、そこまで教えてくれなかったな。
 
「カズが持ってきたのは、採取場所からして『水の魔素』を溜め込んでいる魔鉄鉱石ね」

「確かにそれは、川の中にあった岩から出てきた物だけど、それを加工すると、出来た物に何か特徴が現れるの?」

「そうね……例えば、水の魔素を溜め込んでいる魔鉄鉱石を、使って剣を作ると、火の効果を持つ物や生物に対して、有効な攻撃が出来たりするわね。ただしこれは補助的な役割で、使用者の能力で変化するわ」

「使用者の能力で?」

「そう。水の魔法や属性を得意としている者が使うと、火の属性に対して有効な攻撃が出来るけど、水の魔法や属性を持たない者が使うと、ただの鉄で出来た剣より、火の属性に対して多少有効なのと、あとは少し頑丈なことかしら」

「う~ん。使い道あるの?」

「これはあくまで、この量の魔鉄鉱石を使って剣を作った場合」

「そんな小さいので剣を?」

「もちろんこれだけの魔鉄鉱石では、剣を作れないわ。剣を作る鉄の一部に組み込むことで、得る効果が、今言った例え話よ」

「それじゃあ、魔鉄鉱石だけで剣を作ったら?」

「蓄積されてる魔素の量や質それに、剣を作る鍛冶師の腕にもよるけど、固有名詞を持った『魔剣』や『聖剣』なんて物になることもあるかしら。遺物(アーティファクト)に匹敵するランクの武器になるわね」

 武器のランク? 以前クリスパさんに、ソーサリーカードの説明をしてもらった時に、言ってたランクと同じかな?

「なるほど! それで、魔鉄鉱石の価値を聞いてきたんですか?」

「カズ君。そのことなんだが、これをギルドに譲ってはくれないか? もちろん良い値で買い取る」

「別に構いませんが」

「それじゃ直ぐに代金を用意す……」

「待ってロウカスク。まだしっかりと、それの価値を説明してないでしょ!」

「ぐっ……わ、分かってる……」

 なんだか言いにくそうだな。

「すまん。つい渋られる前に、買い取ってしまおうと焦った」

「カズが渋るなんて、そんなことするわけないでしょうが! 買い取るなら、価値と金額を言ってからになさい」

 よくわからんが、アレナリアがこっち側に、ついてくれてるみたいだな。

「カズ君すまん」

「別にいいですよ。さっき良いって言いましたから、それはギルドに売りますよ」

「そうか! ありがとう」

 なんかよくわからんが、感謝されてるな。

「とりあえず、買い取りの代金を持ってきてから説明しよう。それと、こいつをちょっと調べてくるが良いか?」

「どうぞ」

「私も行くわ。カズはちょっと待っててね」

 『魔鉄鉱石』を調べると言って、ロウカスクとアレナリアが一旦部屋を出ていく。
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