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第2章 生きるために闘う

第18話 生きる為に説き伏せる

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「これもダメか。こっちはまあまあ。これは!!!過去一!!!」

夜が明けた。モンスターと下半身、ダブルの危機と闘うため、一日中起きていた為、僕は変なテンションになっている。

精神的な疲れはハイになっているのか感じることなく、回復魔法のおかげで体力には余裕があった。

結果一晩の間、スライムの食べ頃は水に漬けてから何時間くらいなのか、という自分を使った人体実験に勤しんだ。深夜のテンションは恐ろしい。

食べては吐き、吐いては食べを繰り返す中で、徐々に食べ物として成立していくスライムに一喜一憂していた。

「塩をかけると尚美味い」

結果、体感4時間で獣臭は一気に消えはじめ、適度に噛み応えのある触感になる事がわかり、6時間で最高の状態を迎える。

「アハハッ火で炙るともう肉みたい」

また棍棒で叩くことで時間の短縮にはなるが、噛み応えの調整が難しく、ナイフでの筋切りが最も望ましい調理方だといえるだろう。

ナイフに刺したスライムの焼き加減を調整する。その眼差しはもう職人である。

「ご飯、作ってくれたの?助かるわ」

「あっよっヨーコ。起きたんだ」

ショウは現実に引き戻された。不味いな。いやスライムは美味い。けど不味い。この世界でモンスター食は間違いなく異端。あのヨーコがドン引きするほどなのだから相当だろう。

「お肉獲ったんだ。野生動物狩るのって大変だったでしょ?いいわねぇ味見味見♪」

「あっあの・・・」

ヨーコは俺の手を引き寄せて、ナイフの先のスライムに噛り付いた。

「うん。これ、かなり美味しい。肉汁が飛び出てぷりぷり。さすがは異界の料理人ね、すぐにもう一口ほしくなるわ」

ヨーコは一口、また一口とスライムを頬張る。1kgは超える塊が一瞬で半分に無くなった。

「しかしこれは、濃厚だけどガンガン進むわね。どうやって調理するの?また水に漬けるの?」

「あっあぁ…肉ってのは水に漬けるとその水分をゆっくり吸収するんだ。水分量が多いと肉は柔らかくなる。食感も若干変わるからどのくらい漬けるかは注意が必要なんだ。あっあと出来れば塩水がベスト。」

汗が止まらない

「なるほどね。確かに食感が、しかしこのプリプリ悪くない。なによりこの歯ごたえととろける感じ、まるで昔一度だけ食べた高級な牛肉みたいだわ。」

おぉ、絶賛だ。心苦しい

「それで、これ何の肉なの?この辺なら泉鳥、いや鶏肉じゃないわね。洞窟イノシシとかね?どう、当たり?」

「えっとっそのっ・・・」

「ケチケチしないでよ。仮にも一緒に命がけで戦った仲でしょ。他言はしないわ。教えて。」

「えっとその、スラ…ムです」

「ん?なに?ス?スカイ鳥?」

「ス・・・らい・・む」

「ん?」

「スライムっです!!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・!?」

「バーーーーー↓」

ヨーコは無表情のまま、まだ口の中に残っていたスライムを吐き出した

「はっ何っっえっ!!?これっショウっ!!!」

「落ち着けヨーコ。明らかにキャラじゃない」

「だって、もうこれモンモンモン、モンスター」

「ドンドンドン、ドンキみたいだな」

「何それ!?だって、えっいやっえっ」

あのヨーコが目に涙を浮かべている。これはあれか、向こうの世界で言う。虫食みたいなもんか、原住民の芋虫的な…もしくはゴ・・・辞めておこう。

「うぇぇぇぇぇん!ショウがだまじだぁぁぁぁっぁぁぁあ!!!」

あーあ女の子泣かせちゃった。18年間で1回も泣かせた事なんて無かったのに。スライム食わせて泣かせちゃった

「落ち着け。ヨーコ。なんていうか…ドンマイ!」

「うわぁぁぁぁぁあん!いやぁぁぁぁあぁぁあっぁっあぁ!!!」

ヨーコが上空へと掲げた手のひらに火球が出来上がる。これまで見たことがないほどの大きさだ。

「おっ落ち着こう。ヨーコ。ねっ?話せばわかる。話せば」

「いあぁだぁぁぁあよぉぉぉ!!!もおぉおぉおよめでぃーーーいげなでぃーー!!!!」

火球が光り出す。やばい。こいつ自分もろともモンスター食いの証拠を全て打ち消す気だ。

「いや、あれだよ。俺さ、この世界で最初空腹で知らなくて、それで仕方なく食べちゃったんだよスライム」

「いやぁぁぁぁぁぁっぁぁあぁぁぁあぁぁ!!!」

火球が僕に向けられる。やばい奴認定された

「仕方なくだよ。仕方なく。でも、調理するとさ、あんまり不味くは無くてさ、その後ヨーコに聞いたら不味いから、ま・ず・い・か・ら食べないのが主だって言うじゃん。こう異世界の感覚で調理してただけなんだ。自分から好んで食った訳じゃないっていうか」

「わだしばごのんでたべじゃっだじゃないかぁぁぁぁぁ!!!」

火球の形が槍に変わり、ヨーコはその先を自分の喉元に向ける。

「いやっあのっ止めよう!!美味しく調理したから仕方ないじゃん。美味しかったでしょ?」

「そごが逆になっどぐでぎないぁいぃっぃぃ!!!!!!!!」

火の槍に翼が生える、まるで火の鳥のようだ。もうこれは何か最強クラスの魔法が生まれたんじゃないだろうか。

「落ち着け。美味しかったんだからいいじゃない。あんなに幸せそうに食べてたし」

「ぎずぐぢにぃぃぃぃぃいぃぃ!!!じおをぬぅるぅなぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

『ギャーーーオゥ』

火の鳥が吠えた。赤かった火の鳥は蒼くなり。敵意を持った目で僕をにらんでいる。

「落ち着けぇぇ!!それを向けないで振りかぶらないでぇあっあのっ!!向こうの世界では、すっスライムっよく食べるからぁぁぁっぁああぁぁぁああぁl!!!!!!!!」

「・・・・・・・・・・・・・・ほんどに?」

火の鳥の色が・・・・・赤く!

「本当だよ。向こうの世界じゃ定番なんだよ。もう皆朝は必ずスライムだったくらい」

「・・・・・・わだし・・・・べんじゃない?」

火の鳥がただの火槍に!

「変じゃないよ。むしろ異世界出身の僕としてはもう日常!いやもう一番人気だったよ。学校帰りは皆でコンビニ行ってスライムの買い食いだよ!」

「誰にも・・・・・いばない??」

火の槍は玉に、そして収縮していく。

「言う訳ないだろ。もう墓場まで持っていくよ。ほんと。あっ良かったらもう少し食べる?」

「ヴわぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁあ!!!」

「やばい!対応間違えた!!!」

その後約1時間、ヨーコへの説得は続いた。途中二回ほど蒼い火の鳥が放たれたが、コントロールがつかないのか、森の木々が焼失して、中々大きい焼野原が出来ただけで、僕は奇跡的に無傷だった。
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