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第5章 生きるためにかえす
54話 オカマと少年の協奏曲
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「本当に良いんですかぁ?もっと強くなれる能力もお渡しできるんですが?」
「いやだからですね、もう地球には戻れないというか、あっそれは良い」
「えっ猫が欲しい?そういうのは取り扱ってないといいますか…」
「はぁ収納は多めに、服がお好きなんですね…」
「えぇ名前はタンゴ!?本名じゃなくて!?色々注文多いですね。あぁじゃぁもうその辺まとめて適当にやっときます。とにかくお達者で」
私が目覚めたのは、大きなお屋敷の大きな部屋の一室でね。生まれたままの姿でさ、もう散々だったわよ。女の乳房に口付けて、乳飲まないといけなかったのよ。
でも何より散々だったのは、あの子、一番大事な性別の変更を忘れやがってた事、前の世界でもそれに悩んで、ストレス発散に万引きばかりしてたってのに…。
タンゴと僕は2人で牛乳を飲んでいた。タンゴの借りた部屋には彼の手癖で盗まれた商品で溢れている。
「へぇこれが年間パスなんだ。初めて見た」
「移民禁止されてすぐこの辺りに来たのよ。だから毎日毎日パスが必要で、この国食糧不足でしょ?だから万引きしては闇市で売ってね。生活してたわ。いつの間にかお金もたまって、年間パスを購入。これ持ってる宿泊所じゃなくて、部屋も借りれるのよ。あなたは?」
「僕は、さっきの魔法使ってた女の人と結婚しまして、」
「結婚!?この異世界で?すごいじゃない!」
「まあなし崩し的に…向こうの世界では何を?」
「…これでも名家の生まれの箱入り娘、いや息子だったのよ。次男でね。男なのに心は女って事でね。それがばれてからは軟禁されて、よく祖父に折檻されてたわ。性根を鍛えなおすとか言って」
「すごい、ご家庭ですね。なんていうか、昔ながら…あっこの世界に来たのはいつなんですか?」
「この世界で生まれたのは、もう30年も前よ。でも何も変わらなかったわ。私この世界でも箱入り息子だったのよ。シッコク大陸の南にある、獣人の国の貴族。戦い嫌いでいっつも隠れて、戦士失格とか言われ続けて、逃げ続けた結婚までさせられそうになって、私逃げたわ。すべてを捨てて。地球と全く一緒よ。私の人生…」
「30年も前…」
「まあ外の世界に出ても、モンスター殺す事も出来ずに安住の地を求め続けて、一番平和だっていうこの国に流れ着いたの。まぁその結果選んだのが泥棒人生なんだもの。ほんと、嫌になるわ…」
「タンゴさんが来たのは。1986年の地球からですか?」
「?そりゃそうだけど?どうして?」
「僕は今年この世界に来ました。2016年の世界からです。この世界とあっちの世界、たぶん少しだけ連動してるんですよ」
「えぇっ!そうなの…じゃぁあんた未来人なのね。うん、違うか?」
「今あっちの世界ではね、レズもゲイも、かなり市民権が得られてるんですよ。東京の渋谷なんて同性間での結婚、っていうかまぁそういうのを認めてるくらいです」
「凄いわね…私の時代には、考えられないわ。今さら元の世界に戻りたくなったわ」
「だから、きっとこの世界も、まだ何十年かかるか分からないですけど、そういうのが認められる世界が来ると思います。だから、まっとうに生きてみてください。万引きなんかやめて」
「真っ当にか。思えば真っ当な生き方なんて、一度もしたことなかったわね。大体私、何にもないし・・・」
「ありますよ。タンゴさんにぴったりな仕事。運送業です」
「あはっ。なるほどね。そうか。インベントリで収納すれば何でも運べるものね。何で気づかなかったんだろ。今まで」
「人生に絶望していると、視野が狭くなるものですよ。黒ネ…黒ハクビシンタンゴの宅急便ってとこですね」
「もう需要しか見えてこないわね。真っ当に、生きるか。私、戻れるかしら?」
「戻らなくていいんですよ。ここから始めればいいんです。あと出来ればおこぼれをください。儲かりそうだし、ブレイン的な感じで」
「ははっあんたがめついわね。もっと善人かと思ってたのに」
「出会って2日で結婚、借金2000万イエン、ドラゴンと2回遭遇、人生七転八倒ですから。お金の大事さは染みついてますよ」
「じゃぁ事務と営業はあんた達夫婦に任せようかしら」
「是非とも」
異世界から来た手癖の悪いオカマと友達になりました。名前はタンゴ。
僕はおじいさんに色々理由を話して、全商品の購入を条件に許しを請い、その他ピース王国の全ての店でも謝罪を行い、連帯保証人になる事で彼を助けました。まさかタンゴの借金が800万イエンにもなるとは思わなかったし、責任を取って店を辞める事になるとは思わなかったが…それでも異世界人を救えたことは誇らしかった。
合計借金が1400万イエンに増えたので、正直ピンチだ。
どうしよう。
ほんの数話で幸せが零れ落ちていく。
いや、これはチャンスだ。運送業で成功して、何としても借金を返す。ヨーコ、だから怒らないでほしい。いや、今回は100%僕が悪いから、仕方がない。刺されても我慢しよう。
-------------------------------------------------------------------------------------
しばらく5話完結程度で話を進めていきたいです。感想・登録お待ちしてますね.
最近順位も上がってきました。週末になるので更新も頑張ります。
「いやだからですね、もう地球には戻れないというか、あっそれは良い」
「えっ猫が欲しい?そういうのは取り扱ってないといいますか…」
「はぁ収納は多めに、服がお好きなんですね…」
「えぇ名前はタンゴ!?本名じゃなくて!?色々注文多いですね。あぁじゃぁもうその辺まとめて適当にやっときます。とにかくお達者で」
私が目覚めたのは、大きなお屋敷の大きな部屋の一室でね。生まれたままの姿でさ、もう散々だったわよ。女の乳房に口付けて、乳飲まないといけなかったのよ。
でも何より散々だったのは、あの子、一番大事な性別の変更を忘れやがってた事、前の世界でもそれに悩んで、ストレス発散に万引きばかりしてたってのに…。
タンゴと僕は2人で牛乳を飲んでいた。タンゴの借りた部屋には彼の手癖で盗まれた商品で溢れている。
「へぇこれが年間パスなんだ。初めて見た」
「移民禁止されてすぐこの辺りに来たのよ。だから毎日毎日パスが必要で、この国食糧不足でしょ?だから万引きしては闇市で売ってね。生活してたわ。いつの間にかお金もたまって、年間パスを購入。これ持ってる宿泊所じゃなくて、部屋も借りれるのよ。あなたは?」
「僕は、さっきの魔法使ってた女の人と結婚しまして、」
「結婚!?この異世界で?すごいじゃない!」
「まあなし崩し的に…向こうの世界では何を?」
「…これでも名家の生まれの箱入り娘、いや息子だったのよ。次男でね。男なのに心は女って事でね。それがばれてからは軟禁されて、よく祖父に折檻されてたわ。性根を鍛えなおすとか言って」
「すごい、ご家庭ですね。なんていうか、昔ながら…あっこの世界に来たのはいつなんですか?」
「この世界で生まれたのは、もう30年も前よ。でも何も変わらなかったわ。私この世界でも箱入り息子だったのよ。シッコク大陸の南にある、獣人の国の貴族。戦い嫌いでいっつも隠れて、戦士失格とか言われ続けて、逃げ続けた結婚までさせられそうになって、私逃げたわ。すべてを捨てて。地球と全く一緒よ。私の人生…」
「30年も前…」
「まあ外の世界に出ても、モンスター殺す事も出来ずに安住の地を求め続けて、一番平和だっていうこの国に流れ着いたの。まぁその結果選んだのが泥棒人生なんだもの。ほんと、嫌になるわ…」
「タンゴさんが来たのは。1986年の地球からですか?」
「?そりゃそうだけど?どうして?」
「僕は今年この世界に来ました。2016年の世界からです。この世界とあっちの世界、たぶん少しだけ連動してるんですよ」
「えぇっ!そうなの…じゃぁあんた未来人なのね。うん、違うか?」
「今あっちの世界ではね、レズもゲイも、かなり市民権が得られてるんですよ。東京の渋谷なんて同性間での結婚、っていうかまぁそういうのを認めてるくらいです」
「凄いわね…私の時代には、考えられないわ。今さら元の世界に戻りたくなったわ」
「だから、きっとこの世界も、まだ何十年かかるか分からないですけど、そういうのが認められる世界が来ると思います。だから、まっとうに生きてみてください。万引きなんかやめて」
「真っ当にか。思えば真っ当な生き方なんて、一度もしたことなかったわね。大体私、何にもないし・・・」
「ありますよ。タンゴさんにぴったりな仕事。運送業です」
「あはっ。なるほどね。そうか。インベントリで収納すれば何でも運べるものね。何で気づかなかったんだろ。今まで」
「人生に絶望していると、視野が狭くなるものですよ。黒ネ…黒ハクビシンタンゴの宅急便ってとこですね」
「もう需要しか見えてこないわね。真っ当に、生きるか。私、戻れるかしら?」
「戻らなくていいんですよ。ここから始めればいいんです。あと出来ればおこぼれをください。儲かりそうだし、ブレイン的な感じで」
「ははっあんたがめついわね。もっと善人かと思ってたのに」
「出会って2日で結婚、借金2000万イエン、ドラゴンと2回遭遇、人生七転八倒ですから。お金の大事さは染みついてますよ」
「じゃぁ事務と営業はあんた達夫婦に任せようかしら」
「是非とも」
異世界から来た手癖の悪いオカマと友達になりました。名前はタンゴ。
僕はおじいさんに色々理由を話して、全商品の購入を条件に許しを請い、その他ピース王国の全ての店でも謝罪を行い、連帯保証人になる事で彼を助けました。まさかタンゴの借金が800万イエンにもなるとは思わなかったし、責任を取って店を辞める事になるとは思わなかったが…それでも異世界人を救えたことは誇らしかった。
合計借金が1400万イエンに増えたので、正直ピンチだ。
どうしよう。
ほんの数話で幸せが零れ落ちていく。
いや、これはチャンスだ。運送業で成功して、何としても借金を返す。ヨーコ、だから怒らないでほしい。いや、今回は100%僕が悪いから、仕方がない。刺されても我慢しよう。
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しばらく5話完結程度で話を進めていきたいです。感想・登録お待ちしてますね.
最近順位も上がってきました。週末になるので更新も頑張ります。
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