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第4章 生きるために紐解く

43話 異世界転生事件

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「私は大丈夫、でも休ませて」

「せやな。今は休むのが一番やで」

リュネは頷くと岩にもたれ掛るようにして座り込んだ。今はそっとしている方が良いだろう。あの崩落の中で敵に向かっていくなんて、凄い子だ。

「ショウ。もう大丈夫よ。限界ギリギリまで魔力を注いだから、足は動くと思う。私も、休憩…」

ヨーコは疲れ果てて眠りについた。僕は足を動かす。痛みはあるが何とかなりそうだ。愛情に比例する家庭魔法の威力とデタラメな魔法の威力で、潰れた足が元の姿に戻ってしまった。裂傷と痛みはあるが今すぐにでも走れそうだ。愛情を感じずにはいられない。

「凄い魔法やな。ほんまその姉ちゃん頭が下がるで」

子供達は全員無事なようだ。崩落する岩もドラゴンの障壁魔法で今は抑えられている。凄い魔法だ。

「この状態のキープ、意外と辛いねんで?まぁ子供達傷つける訳には行かんからな」

何より凄いのは…助けてくれたドラゴンのあの重厚な喋り口がその場の雰囲気で作ったもので、

素が関西弁だということだ。

ここまでコテコテの関西弁のドラゴンにはさすがに違和感がある。

「ワイは生まれがオオサーカやからな。そら喋り方も違うわい」

食の都オオサーカ国か。改めてこの世界は日本に似ているな。オオサーカ、トーキョ、ホンシューetc…。

「助けに行くつもりが何の役にも立たなくてごめんな」

「えぇねん。皆無事やったやんけ。まぁワースは残念やったけどな」

「あぁ良い奴だった。僕がもっと早く駆けつけていれば…」

「わしかて誘拐された子供をその国に帰す為とはいえ、ここを離れてしもたんや、一緒や一緒」

「なぐさめありがとう…」

不思議だ。ドラゴンと喋っている。20m位のドラゴンと違和感なく喋っている。いや、違和感は…1つだけある。

「なんや?なんかあるんか?あるんやったら言っとき!腹に一物抱えたままでダチになれるかいな」

「うん。いいのか?」

「構へん構へん!言っとき言っとき!まぁドラゴンと喋るなんて普通やないからな、そら思う所も」

「お前関西弁変じゃね?」

「・・・・えっ?」

「いや何ていうかコテコテ過ぎると言うかさ、いや観光客相手にも普段商売してる身としてはオオサーカの言葉と言うより、芸人が使う関西弁を真似して使うエセ関西弁みたいな。さ…」

「恥ずいぃぃぃぃぃぃバレてもうたぁぁあぁぁぁあぁ!!」

「えっマジ?」

「ドラゴンなって、でも人の言葉喋れて、どうせなら関西弁にしたろ思って、そもそも大して人に会わへんし、良いかなって。ピース王国周辺なら余計に大丈夫だろうと…やばいっ恥ずかしい!!!」

「落ち着け。ごろごろするな!お前がごろごろすると人が死ぬ!」

「うわぁ恥ずかしい。マジで恥ずかしい。死にたい。なんでだよ。なんでばれんだよ。無いわぁ。さんまさん気取っていたのにこれは無いわぁ」

「まぁ人生一度は憧れるよな関西弁。ついテレビでてる芸人の真似するよな。学校でクラスメートに笑われて初めて自分の愚かさに気づくんだよなぁ」

「そう!それっ自分ではイケてるって思ってて練習すんねん。御殿とか、から騒ぎとか見て、周りからすると違和感ありまくりなんだよなぁ、あぁこの世界ならばれないと思ったのに・・・・・・・」

「えっ?」「えっ?」

2人は目を合わせる。しかし言葉が発せないでいる

そもそも関西弁ってあるのか、あるとしてもカンサーイ弁とかじゃないのか?うんっ?さんまさん?ってあのさんまさん?テレビに御殿にから騒ぎ?・・・・この世界

僕は思わず尻餅をつく。もしかして、いやもしかしなくても・・・

「お前、異世界ってか地球出身?」

「えっあっ、えっ、あっはい。あなたも・・・?」

「「えぇぇえぇえぇええぇぇえぇぇぇぇええぇぇぇええぇえぇぇぇぇltqのうぇくぉwんどんうぇうcwqrぽmvf3ぽfjw@jcpwm!?!?!?!?!?!!?」」


2人の声が洞窟にこだまする。僕は初めて同じ境遇の人間に会った。いやドラゴンに会ったのだ。
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