【R18】性奴隷の憂鬱な夢

なみ

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歌声

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オリバーが部屋を出て行って俺はようやく一人になった。強すぎる薬の副作用なのか頭痛が酷くて頭がボーッとする。
身体中の骨が軋むみたいにズキズキする。

部屋が移されたのは何となくわかる…。

でも、ここへ来て一体どれくらいの月日が経ったんだろう…ーー?

僅か数日の気もするし、もう何年もいるような気もする…。

ああ、だめだ。頭が痛過ぎて考えることも辛い。


いつの間にか意識を失って泥のように深い眠りに落ちる…ーー。




カツ、カツ、カツ、カツ、カツ……。

真っ暗闇の中で不思議な音が聴こえてくる。何かを弾くような…、機械音…?いや、足音……?


その音の正体を知りたくて耳に神経を集中させてみると、足音に混ざって小さな鼻歌のような…歌が聴こえてきた。

誘われるようにその歌を頼りに闇の中を進んで行く。

歌はどんどん大きくなり、それと共に音は次第に聞こえなくなった。

大きくなっていく歌声……。

鼻歌と言えど、とても心地良く胸に響いてくる。

…このメロディーを俺は知っている。

精霊を讃え、祈りを捧げる讃美歌。

かつて人々が俺たちに感謝を込めて作ったといういにしえの歌。

精霊への祈りには魔力が必要だ。

俺たち精霊へ呼びかける『声』が魔力なのだから。歌も同じ原理だ。
でも、四大精霊には届いても原初の精霊である俺の耳までは滅多に聴こえないのに。しかも、こんな鼻歌で……。


歌声を辿ると狭くて暗い部屋に行き着いた。

部屋の真ん中には小さな少年が小窓から星空を眺めながらあの歌を歌っていた。

ふと気がつくと俺は少年の身体にぴったりと寄り添い、その肩に頭を寄せてその歌を聴いていた。



「心地良い…。」

少年が歌い終えると俺はポツリと呟く。

「へへ…っ。ありがとう。下手くそだけど…。」

少年が照れ臭そうに答える。

「いや、とても上手だよ。歌声が俺の魂まで響いたのは君が初めてだ。」

俺が笑うと彼も微笑んだ。
その笑顔を見ると胸が熱くなる。

ふと目が合って唇を重ねた。

彼と俺は直接触れることは出来ない。

俺は実体のない精神体だからむやみに触れようとするとお互いの身体をすり抜けてしまう。

でも俺たちは感覚を研ぎ澄ませばお互いを感じ取り、触れ合う事が出来る。

お互いの温もり、感触を。

初めて出会った時、この薄暗くて狭い部屋で彼は傷だらけだった。

自分はとても汚れていると言っていたけど、俺にはそうは見えなかった。

むしろ誰よりも聡明で美しく、純粋な人間だと思った。この世界の最高位精霊の俺の魂をも震えさせるこの歌声が何よりの証拠だと思う。

今、こうやってお互いを感じることさえ出来るのだから……。

唇が離れるとまた目が合って、何だか恥ずかしくて微笑みで誤魔化した。

「……ヨル様…。お、俺…も、ヨル様に触れたい…。」

顔を真っ赤にしながら彼が言う。

「"様"はいらないって言ってるのに。」

俺は言いながら彼の手を取り、自分の頬にその手を当てた。

温かい空気の塊を掴んでいるような…、不思議な感覚。この熱が…彼の温もり…。
そう思うと自然と胸が高鳴ってくる。

「だって…、ヨル様は神聖で…。本当は俺なんかが…、…っ!?」

「"なんか"じゃない。君はとても綺麗だ。」

「だって俺…っ、俺は…。」

彼の声が震えている。深紅の美しい瞳に涙が滲んで揺れていた。

彼を安心させたくて再び彼の唇に自分の唇を押し当てる。

「じゃあ俺がもっともっと綺麗にしてあげる。」

「え…っ、あ…っ!だ、め…です…っ」

そのまま彼の全身にくまなくキスの雨を降らせていく。

彼の身体には昼間に散々汚い男達に嬲られた傷跡やが沢山あって、俺が唇を添えるとその傷跡が綺麗になっていった。

「………っ、……ん…っ」

次第に彼の唇から甘い吐息が漏れてくる。

「あ…っ、完全に…っ、消えたら…っ」

「わかってる。」

傷跡や痕跡キスマークを全部消してしまったら、これをつけた奴らに俺達の秘密の逢瀬がバレてしまう。

完全には消えない程度に綺麗にしていく。俺の愛撫で彼の表情が蕩けてきて、それを見て俺は幸せな気持ちになる。

人間とこうして寄り添うことなど、彼と出会うまでは想像もつかなかった。

ここから彼を逃してあげることは容易だけど、それは彼が嫌がった。弟が心配だからって…。

小さな彼が、もっと小さい弟を連れて逃げたとしても行くところがないからって。そんなのだって精霊の力を使えばどうにでもなるのに。

でも何より俺の手を煩わせたくないと言って彼は聞かなかった。

盗賊が仕事で出払っている夜ーー。

俺達の秘密の時間。

その僅かな逢瀬だけで充分幸せだから、と……。

そう告げた彼の純粋な笑顔をふと思い出して胸が苦しくなる。





ーー………あ。

その時、俺の大好きな匂いが鼻を掠めた。

これは…、大好きなあの子の匂い。
温かいお日様の香り。太陽の光の匂い。

「もうすぐ夜明けだ……。」

俺が離れようとすると、彼から唇を寄せてきた。唇に当たる仄かな感触が心地良い。

「あ…っ、また会いに来てくれる?」

唇が離れて彼から縋るような目で見つめられて、俺は優しく微笑んでみせた。


『…リュカ。……またね。』


その時、突然何かに身体を強く揺さぶられてふわりと宙に浮いたような浮遊感を感じ、俺の世界がまた真っ暗闇になる。



またね。


またね。


リュカ……。


また………。



暗闇の中で自分の声が頭に何度も響く。


なに……?……これ…?

こんなの、俺、知らないよ。


……………リュカ…?


あれは一体……、いつの……?


………夢?

…………ああ、夢…、か。

昔からリュカを知っていたなんて、なんて都合の良い夢だろう。

それにしても…、何だか変な夢…。

俺が人間に興味を持ってるなんて。

…夢だから変なのも当たり前か。

リュカは今どこで何をしているんだろう?

リュカを思い出して寂しくなる。


カツ、カツ、カツ、カツ、カツ……。

またあの変な音が聞こえてきた。

もう、何なんだ、一体。

頭が痛い。金槌で何度も鈍く殴られているみたい。

カツン、カツン、カツン……。

フワフワとした浮遊感に身体が揺らされると共に変な音が頭に響いて酷く不快で吐き気がする。

うるさい。うるさい。うるさい。

気持ち悪い。気持ち悪い。



『………目を覚ませ……。』

どこからか低くてよく通る声が聞こえてきて、より強く身体を揺さぶられる。

いやだ、いやだ、やめてよ、もう。

俺を揺らさないで。

うるさい。うるさい。うるさい。

頭が痛いーー…。身体が痛い。


気持ち悪いよ。


誰か助けて……。



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