上 下
50 / 79

第50話 マジで痛いのって久々だな

しおりを挟む


「――コカッ!?」

「……ごめんお前のそれ、もうシロップと変わらんわ」


 ――ビシュッビシュッ!!


 一向に毒の影響を受けない事に理解が追い付かないのか、コカトリスは毒液を吐く事を止めようとしない。


 完全に気が動転してるな。

 吐き出す毒の狙いもまともに定められてない。


 俺はそんなコカトリスとの距離を一歩一歩と詰める。

 このダンジョンを踏破するまではこいつのテイムも出来ないだろうから、毒ももう怖くないし、出来ればここでこいつを飼うみたいな事をしたいな。


 ダンジョン【NO9】、コカトリス保管計画っていうところかな。

 

「……はぁあっ!!」

「――コケッ!」


 俺はコカトリスの元に飛び込みなんとか蛇の顔の尻尾を掴んだ。


 じたばたと暴れて俺の手を振りほどこうとするコカトリスだが、強力な毒とは打って変わって力はそこまでじゃない。


「つっても動かれると鬱陶しいから……ちょっと黙ってろ」


 俺はコカトリスの尻尾の蛇を軽く小突いて気を失わせた。

 ちょっと力を入れ過ぎたから焦ったけど、コボルトやゴブリンと比較してもこのコカトリスはHPも防御力もかなり高い水準にあるらしい。


「ふぅ。もう大丈夫だからみんな普通に探索を続け……え? いない?」


 コカトリスを無力化した事を周りの探索者達に伝えようとしたけど、居た筈の探索者達はもうそこにいなかった。


 あいつら、あんだけいろいろ野次ってたのに……。

 これだから探索者って奴は――


「おじさん凄いね。毒耐性に半端ない攻撃力。いやぁ、そいつだけは毒がネックで諦めてたんだけど……。そいつ……そのコカトリスを殺さずどこかに閉じ込めようってんでしょ?それ、本当に助かるよ」


 声のする方へ視線を移すと、そこには1匹のモンスターと高校生くらいの男性が1人。

 

 モンスターは2メートルくらいの大きさの、ドラゴン?

 口から火が漏れてるところを見ると、攻撃を仕掛けようとしていたんだろう。


 もしかしてさっきまでいた探索者達はこのドラゴンの攻撃とコカトリスの持つ可燃性の体液による爆発を恐れてどこかに消えてしまったのかもしれない。

 そもそもこのドラゴン……野生じゃないのか。


「うちの会社としてもコカトリスは害悪モンスター困っていたし、いやぁ助かる助かる」

「えっと、話が見えてこないんですけど」

「ん? ああ、俺がそのコカトリスっていう種をコントロールしてあげるから渡してって事」

「……」

「反応が悪いねえ。もしかしてこのダンジョンは初めて?」

「ま、まぁ」

「仕方ないなあ。このダンジョンって上階は人が多いけど、この辺になると一気に人が減るでしょ。しかも上階には豊富にモンスターもいて、中にはドラゴン擬きのワイバーンとかレアなモンスターもいてさ。でもそれってうちの会社が上階のモンスターの発生をある程度コントロールしてるからなんだよね」

「それがなんでコカトリスを渡す事に繋がるんですか?」

「それは俺が、うちの探索者がテイムしたモンスターの発生をコントロール出来るから。だからそれを渡してって」

「……えっとぉ、なんでそんな慈善活動みたいな」

「あー……まぁ別に言ってもいいか。30階層以降はうちの会社にとって大事なドラゴン肉の生産所になってくる。だから、他の探索者にはこっちでモンスターの発生をコントロールした上階で満足してもらおうってわけ。それで1~9階層はまぁまあ上手い事いってるんだけど、10階層だけそいつ、コカトリスが邪魔で人が停滞してるんだよ。あんまりに1階層が混むもんだから最近はうちの会社にクレームが企業からくる事もあって……」

「なるほど……」

「君らとしても悪い話じゃないしさ。大人しくそのコカトリスを渡してくれよ」

「……いいですけど、無料っていうのはちょっと」

「ふーん金が欲しいって事? おじさん結構がめつ――」

「いや、そっちがこのコカトリスの発生を操作出来るのなら卵の生産に協力してくれませんか?」

「ふーん。ビジネスを持ちかけるってわけ」

「俺は毒耐性を持ってますし、コカトリスの扱いも問題なし。この10階層を焼肉森本とあなたの会社の為の養鶏場として運用しませんか?」

「確かに、卵も、コカトリスの肉も流通出来るようになればそれなりの利益が期待出来るもんね。それはいい案だと思う」

「だったら――」

「でも、それを企業で協力関係になってってなれば利益は半減。それなら俺、もっといい案があるよ」

「……それはどんな案ですか?」

「おじさんにうちの会社に来てもらう。うちの探索者として働きなよ」

「……それは出来ません」

「そう。だったら実力行使。無理やりって事も出来なくないよ。俺これでもこのダンジョン踏破してて……強いから。まあおじさんくらいならこいつで十分かもだけど」


 そう言って男性はドラゴンの尻を蹴飛ばした。

 

 するとドラゴンはぎろりと俺を睨みんで凄む。

 

 こんな強引な、暴力で従わせようっていうやり方……こいつは探索者やくざって言ってもいいかもしれないな。


「――グオオオオオオオオオオオオ大オオオオオオンッ!!」


 力強い鳴き声と共にドラゴンは超低空超高速飛行で突進してきた。

 俺はコカトリスを投げ捨ててそれを受け止めるが……。


「痛っ」


 スキル『大器晩成』が覚醒してから結構な期間が経ったけど……こんなに痛い思いをしたのはあの日以来だよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」 万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。 地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。 これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。 彼女なしの独身に平凡な年収。 これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。 2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。 「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」 誕生日を迎えた夜。 突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。 「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」 女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。 しかし、降り立って彼はすぐに気づく。 女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。 これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ブチ切れ世界樹さんと、のんびり迷宮主さん

月猫
ファンタジー
異世界へ拉致された主人公。目が覚めた先はボロボロの世界樹の中だった?! 迷宮の主となった主人公は、ダンジョンの能力【創造】により全く新しい”モノ”を世界に作り出し、現状の打破に挑む。 新しい魔物を創ったり、予想外な成長に困惑したり。 世界樹の愚痴を聞いたり、なだめたり。 世界樹のため、世界のため、世界樹の治療と環境改善を目指し、迷宮はどんどん大きくなる。そんなお話。 始めは少々危険な場面がありますが、ダンジョンが成長してからはその様な場面は少なくなり、周りの生物の方がダンジョンに抗う感じになります。 俺TUEEEならぬ、ダンジョンTUEEEもの。チート能力ならぬ、チートダンジョンの予定。 (チート能力者が居無いとは言っていない) 初投稿です。山なし谷なし作品ですが、暖かい目でみてください。 異世界なのだから、元の世界の常識が当てはまらなくても、おかしくないのでは? をコンセプトに、スキルやら魔法やらの仕組みを表現できたらと思っています。 ※「小説家になろう」にも掲載 ※ストックが切れたら、更新が遅くなると思います、ご容赦下さい

処理中です...