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6章 光に背いた聖者達

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「さて。次はサフィとア……いや、護衛の彼を助けなければな。しかし、二人は一体どこへ……」
「それなんだけど」

 ラリマーがテーブルの上に広げられていた地図を引っ張る。地図の上にあったビンや本がガタガタッと音を立てて崩れ落ちたが彼女は気にしない。

「聖都の西にある要塞の付近をうろついてた傭兵仲間が、物々しい感じで何かを運んでいる皇族の関係者を見たって。この時、あの可愛いお姫様が一緒に連れて行かれたかもしれないって」
「証拠は?」

 メノウが聞くとラリマーはフフ、と笑う。

「女のカンってやつよ」
「おい、ジスト。あの化粧女のカンとやらを信用するのか?」

 小声でコーネルが尋ねる。もちろん、とジストは頷いた。

「二人がどこへ消えたか、今の私達では掴む手段がない。何やらキナ臭さも感じる。ここは彼女の情報に乗ってみたい。君とて、リシアを嫁がせる先の潔白を証明したいのではないか?」

 ぐ、とコーネルが唸る。



 それにしても、とジストは空を見つめた。

「クロラは随分長い事臥せっていると聞いてはいたが……何故だろう。何か違和感がある」
「違和感? どういう事だ?」

 コーネルにとっては未来の義兄だ。彼が話題に食いついてきた様子を見て頷き、ジストは腕を組む。

「私やメノウは投獄されていたのだが、どうやらクロラの手引きで救い出されたようなのだ。どこかでこの一連の出来事を見ているような気がしてならない。寝込むほど体調が優れないのであれば、そこまで出来る余裕があるのかどうか」

 なだれ落ちた荷物をテーブルの上に戻していたフェルドは苦笑いだ。

「クロラ殿下は昔からそうなのさ。表向きは無関心を装っているようでいて、実は俯瞰で物事を見つめている。賢い人なんだよ。だから教皇の期待も一身に受けている。まぁ、あの方は皇位には全く興味がないみたいだけどね。ただ単に、波風を立てそうな世の中を宥めているのさ」
「よく知っているのだな、フェルド?」
「まあね。俺は、傭兵になる前は宮殿勤めの騎士だったんだ。いろいろあって、辞めてしまったけどね」

 その横顔は何かを懐かしむような、後悔するような、複雑な笑みを浮かべている。彼の過去に何があったのか気になるところだが、メノウやラリマーはジストの目配せに小さく首を振るだけだった。
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