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5章 凍てつく壁の向こう側
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ひんやりと冷えた海風が髪を撫でる。暗闇の中でも、彼の橙の髪はよく映えていた。
「コーネル!」
岩場に座る彼に声をかける。はぁ、とため息が聞こえた気がした。
「一人にさせろと伝えておいたはずだ」
「どうしたのだ? もう城が恋しいのか? フフフ」
「戯けが」
彼は身軽に岩から下りる。こちらを向いたコーネルは険しい面持ちだ。
「よくも面倒な事にしてくれたな、貴様。あの召喚士がいなかったら全員海の藻屑だったんだぞ」
「まぁまぁ、結果的に助かったのだから良いではないか!」
「貴様は何も考えなさすぎだ!! どこの馬鹿が海の上で風を起こすか!!」
「調子に乗った事は認めよう」
ヒョイ、と近場の岩に座り、彼を隣に招く。仕方なさそうに彼はそこへ腰を下ろした。
「あの二人組はお前の知り合いだったのか?」
「男の方は以前戦った事がある。もっとも、私ではなくメノウが、だがな」
「またあの傭兵の話か」
チッ、と舌打ちが漏れる。
「……そう気に病むな。私も最初は君と同じだった」
ジストの察しの良さに、コーネルは黙り込む。予想が当たった事を読み取り、ジストは自らの宝剣の柄をそっと撫でる。
「やはり、私達がいつも行う稽古と実戦は違うのだな。振るえば人一人の命が左右されるのだから」
「……フン。何の話だ」
「抜けなかったんだろう? ……その剣を」
腕を組むコーネルは目を逸らす。
「私達は温い幻想に浸っていただけなのかもしれない。我々の代わりに人に剣を振るう者達がいた事も忘れて」
「遊びだと笑うのか? ……俺はこれでも真剣にやってきた」
なのに、と彼は歯を覗かせる。
「……やるか、稽古!」
「は?」
スッと立ち上がり、ジストは剣を抜く。
「確かめたいのだろう? 君が剣を抜く事ができるのかどうか」
「そんなもの……。第一、お前、今さっき気が付いたばかりだろうが。不完全なお前とやり合ったところで何の意味も……」
「『戯れ』でもよいではないか。気晴らしにはなるだろう?」
「……これだからお前という奴は」
彼もまた剣を引き抜く。不思議と刃が軽く感じたのだった……――。
「コーネル!」
岩場に座る彼に声をかける。はぁ、とため息が聞こえた気がした。
「一人にさせろと伝えておいたはずだ」
「どうしたのだ? もう城が恋しいのか? フフフ」
「戯けが」
彼は身軽に岩から下りる。こちらを向いたコーネルは険しい面持ちだ。
「よくも面倒な事にしてくれたな、貴様。あの召喚士がいなかったら全員海の藻屑だったんだぞ」
「まぁまぁ、結果的に助かったのだから良いではないか!」
「貴様は何も考えなさすぎだ!! どこの馬鹿が海の上で風を起こすか!!」
「調子に乗った事は認めよう」
ヒョイ、と近場の岩に座り、彼を隣に招く。仕方なさそうに彼はそこへ腰を下ろした。
「あの二人組はお前の知り合いだったのか?」
「男の方は以前戦った事がある。もっとも、私ではなくメノウが、だがな」
「またあの傭兵の話か」
チッ、と舌打ちが漏れる。
「……そう気に病むな。私も最初は君と同じだった」
ジストの察しの良さに、コーネルは黙り込む。予想が当たった事を読み取り、ジストは自らの宝剣の柄をそっと撫でる。
「やはり、私達がいつも行う稽古と実戦は違うのだな。振るえば人一人の命が左右されるのだから」
「……フン。何の話だ」
「抜けなかったんだろう? ……その剣を」
腕を組むコーネルは目を逸らす。
「私達は温い幻想に浸っていただけなのかもしれない。我々の代わりに人に剣を振るう者達がいた事も忘れて」
「遊びだと笑うのか? ……俺はこれでも真剣にやってきた」
なのに、と彼は歯を覗かせる。
「……やるか、稽古!」
「は?」
スッと立ち上がり、ジストは剣を抜く。
「確かめたいのだろう? 君が剣を抜く事ができるのかどうか」
「そんなもの……。第一、お前、今さっき気が付いたばかりだろうが。不完全なお前とやり合ったところで何の意味も……」
「『戯れ』でもよいではないか。気晴らしにはなるだろう?」
「……これだからお前という奴は」
彼もまた剣を引き抜く。不思議と刃が軽く感じたのだった……――。
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