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3章 禁忌を連れた聖女

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 魔法学校は王都からも見える距離にあった。瑠璃色の屋根と白い壁が映える大きな建物だ。棟は二つに分かれており、それに挟まれるような形で生徒達が憩う噴水広場が円状に広がる。瑞々しい葉を生い茂らせた木々や賑やかな声が心地良い。

 それにしても大きな学校だ。王城とそう変わりない大きさに見える。ミストルテインにも学校はあったのだが、ここまでではなかった。隣でじっと学校を見つめるメノウに、ジストは声をかける。

「これほど大きな学校だとは思っていなかった。この中からクレイズを探すのは骨が折れるな」
「そこらの生徒にでも聞けばえぇやん。三賢者やし、大方知っとるやろ」

 それもそうだ、とジストは頷く。きょろきょろと広場を見回し、ふと目についた青い髪の少年に近づく。

「君、少しいいか?」

 ベンチに座って本を読んでいた彼は鬱陶しそうに顔を上げる。友人同士で仲良く肩を並べている生徒が多い中、この少年は一人のようだ。澄んだ青い瞳が目の前に立つ者を品定めするように上下に動いた。

「なんですか? ボクは今読書に忙しいんですけど」

 ぶっきらぼうに彼は言う。コホンと咳払いしたジストは改めて姿勢を正した。

「私はジストという。君はこの学校の生徒か?」
「見ればわかるでしょう」

 確かに、少年は周囲の者達と似たような服を着ている。制服だ。それにしても無愛想な学生である。傍らに立つメノウは眉をひそめた。会話において鈍感そのもののジストは気にせずに笑顔でいる。

「クレイズ・レーゲンという人物を知っているか? 私達は彼に用事があってここまで来たのだ」
「クレイズ……博士ですか? それはもちろん、知っていますけど」

 ますます少年の顔が険しくなるが、ジストは気にしない。

「どこにいるのか教えて欲しい。思いの外大きい学校で、少々困っているのだ」
「博士に何の用事ですか? 来客の話は、今日は聞いていません。ただの野次馬なら帰ってください。たまにいるんですよね。物珍しさで、珍獣か何かを見に来たのかって勢いの馬鹿な人達が」

 ――クレイズに会わせたくないのだろうか。なかなか辛辣な返しであしらわれる。しかしこちらは大事な用があるのだ。ジストは少し悩んでから、事情を少しだけ説明する。

「彼に検死結果を詳しく聞きに来た。その理由では駄目だろうか?」

 それを聞いた少年は目を丸くし、やっと本を閉じた。

「……そうですか、わかりました。そういう事情なら、失礼しました。ボクについてきてください。研究室まで案内します」

 少年は本を片手に抱えて立ち上がった。座っている姿では気付かなかったが、随分と華奢な者だった。思わずジストは隣にいる長身のメノウと目の前の青髪少年を見比べる。それに気が付いた少年はあからさまに不機嫌そうな顔つきになった。

「黙ってついてきてください。あと、博士に失礼のないように。何かあったらすぐに学長を呼びますからね」

 そう脅迫され、ジストは慌ててわかったと頷いて彼についていく。
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