20 / 56
少女と夏
2.生物
しおりを挟む
同一の感情を持てとは言えないけれど、何か、少しくらいは思うところがあるものではないのか。どうして、と彼女の脳は焦燥感に焼かれながら疑問符を浮かび上がらせる。
「餌よりもゴミの方がずっと多くて、どうしたってゴミが口に入ってしまって。
昔のプラスチックは溶けて自然に還ったりしないから消化もできなくて、体に詰まって、そのまま、何も食べることも、出すこともできなくなって」
技術が発達した今でさえ、還ることのできない物質は数多存在し、海や山は汚染されている。
浄化ができるようになっただけマシと言えばそれまでかもしれないけれど、ポスターの中に描かれた魚のように苦しみ、死んでいく生物は少なくないだろう。
自然のために、今の豊かな生活を捨てろと言われても受け入れることはできない。しかし、共存を望み、より良い方向へ世界が進むことを望むことはできる。
「なるほど」
つくづく感心した、とでも言いたげにシオンが言葉を零す。
「ホーリーさんには芸術の才能があるんじゃないかな」
「えっ?」
マリユスの言葉にホーリーは目を見開く。
彼女は特別絵が上手いわけではなく、工作の類も壊滅的ではないが上手とも言えぬレベルだ。どう贔屓目に見たところで才能があるとは言えない。
「感受性が豊かじゃないか。
こんな絵一枚でそこまで考えられるなんて」
ニコニコと笑うマリユスに小さな違和感。
教科書には絵に対する解説は書かれていない。翻訳や使われたであろう画材については記載されているが、それだけだ。
見る者の感性に全てを委ねているのか、この教科書を作成した人間すら解説を載せることができなかったのか。ホーリーは不安に襲われる。
定期的な浄化があるおかげで、取り返しのつかぬ環境汚染は無くなった。そのため、人々は過去の時代に比べ、世界を汚すという行為に対して強い意識を割かなくなってしまっている。
ポスターに書かれた言葉が胸に刺さらないのは、周囲の意識という背景があるのかもしれない。
いや、だとしても、だ。
ゴミと死んだ異様な魚。愚直なまでにストレートな言葉。
感受性の問題だろうか。あのポスターに込められた意味を汲み取ることができたのは。
「おーい、もうチャイムが鳴るぞ」
「っと。んじゃ、また次の休み時間に!」
生物を担当しているイリネイが教室に入ってきた。
時計を確認すれば、あと数分でチャイムが鳴る時間だ。
エミリオ達はホーリーに一声かけると、自身の席へと帰って行く。
余談であるが、エミリオの席は先頭の列のど真ん中がライノによって指定されており、何度の席替えを経ても動くことのない特等席として据えられている。
「それでは今日の授業を始める」
チャイムの音が鳴り響くと同時に、イリネイは壁に設置されているスクリーンに蝶とネズミの絵を表示させた。
「前回までは植物と生物の定義についてやってきた。
今日からは動物についての話になる」
彼は蝶とネズミの下に、無脊椎動物、脊椎動物という単語を付け加える。
それぞれに関する簡単な説明が行われ、分類や特徴についての説明がスクリーンに映し出された。生徒達は各々、電子ノートに図を書き写し、文字を入力していく。
イリネイの授業はテンポが速いのが特徴で、無駄なお喋りが非常に少ない。教室も静かなもので、不真面目というわけではないのだが、どうしても騒ぎがちなエミリオでさえ彼の授業では静かなことが多かった。
「ヒトには六つの生理的欲求が存在している。
さて、誰に答えてもらおうか……」
ぐるりと教室を見渡し、教室の隅にいるマリユスへ目を向ける。
「マリユス君。
わからなくてもいいから何か一つ答えて」
「えっと……。
食欲、ですか?」
「正解」
モニターに食欲、という単語が付け加えられた。
「次はエミリオ君」
「はいはい!
性欲!」
「正解。でも、そんな大声はいらなかったね」
「性欲ねぇと子孫残せねぇもんな!」
「私の話を聞いていないのかな?」
わざわざ席を立ったうえの大声だ。
思春期の男子生徒にありがちな行動とはいえ、こうも明け透けにやられればため息も出る。ノリの良い教師であれば話はまた違っていたのだろうけれど、イリネイはジョークを好む性質ではない。
答えそのものは正解であるし、生物としての本能である「性欲」に恥じらいを感じる必要はないけれど、時と場合というものが存在していることを、エミリオには一刻も早く理解してもらう必要があるだろう。
イリネイの言葉を聴いているのかいないのか。エミリオは平然と席に座り、前のモニターを見ている。
彼にこれ以上の注意をしても無駄だろう。イリネイは気持ちを切り替え、次の生徒、次の生徒と指名していくが、残りが中々上がらない。
「そうだね。じゃあ一つヒントを上げよう。
生理的ってというのはね、身体が勝手にしてるってことなんだ。
食欲や性欲は意識できる部分だけど、それだって胃が動いて消化して、栄養を体に取り込んで、っていうところまでは私達も意識してないだろ?
だから、生きるためには何が必要か、ってのを考えるといいかもね」
彼の言葉に頭を働かせてみる者、ノートにメモする者、思考を放棄する者、とそれぞれが己にあった行動に出る。しばしの間それを眺め、生徒に猶予を与えたイリネイは、再び名指しで指名していく。
「……息?」
「正解。呼吸も欲求の一つだね」
「えっと、おトイレ、とか?」
「そうだね。排泄も大切な欲求だ」
またしばしの間が開き、ヒントを経て体温調節と飲水欲求が出た。
これにより、六つの生理的欲求が出揃ったことになる。
「はい。これの六つがヒトの持つ欲求の主流。
でも、もう一つ……」
イリネイの目が動く。適当な生徒を探しているのではない。ただ一人、お目当ての存在を探す動きだ。
「ホーリー君、わかるかな」
「あっ」
名を呼ばれ、小さな声が漏れ出る。
答えがわからないわけではない。勤勉な彼女は、短い自由時間の中で毎日の予習復習を欠かさず行っており、今日の授業も万全の状態で受けている。否、そうでなくとも、ホーリーならば答えがわかって当然なのだ。
「――睡眠」
か細い息が漏れるような答えだった。
機械やヒト、それと極一部の生物だけが睡眠を不要としている。
鳥類、哺乳類、爬虫類、両生類、魚類。その他の無脊椎動物達。睡眠を必要としない種は少なく、生物全体として見れば、睡眠を不要とするヒトは少数派であった。
「正解。一年の最後でもやるけど、昔はヒトにもその欲求があった。
今じゃすっかり失われ、ホーリー君だけにその特性が残っている」
「そう、ですね」
言葉は細かく途切れてしまう。
「ん? あ、もしかして答えたくなかったかな。
配慮が足りなくてすまない」
「いいえ、別に、そういうわけじゃなかったんですけど」
答えたくなかったわけではない。
ただ、口にすると、改めて自分を認識してしまうだけだ。
血の繋がった両親とも、クラスメイトとも、教師達とも違う。ヒトと同じ姿形をして、同じように生きているはずなのに、見過ごすことのできない部分が大きくずれてしまっている。
周囲はホーリーを受け入れてくれ、将来のために手助けをしてくれている大人も多い。
受けとめきることができていないのは、当の本人だけなのだ。
大好きな人達と違う自分が、本当にヒトであるのか。
何度も何度も答えを出し、諦め、受け入れてはまた悩む。同じこと性懲りもなく繰り返してしまう。
「なら話を続けよう。
ヒト以外の生物には睡眠というものが残っている。
何故、現代まで彼らが進化の中で睡眠を残し続けてきたのか。睡眠の有無によってもたらされるものは何か。
すべては謎のままだ」
高度な文明と科学を得た現代においても、不明瞭な事象というのは山のように存在している。
神の領域とでもいえばいいのか。答えなど存在しない偶然の部分であるのか。どちらにせよ、人間がこの先を見ることはないだろう、と学者も政治家も、誰もが口を揃えていた。
「進化の全てが合理的であるわけではない。
一説によれば、ヒト意外の生物は体内時計を用いて時間の管理を行うため、定期的なリセットが必要となる。その役目を睡眠が担っているらしい」
そこまで話したところで、授業の本筋である動物の体の構造や進化の過程の説明へと戻っていく。スクリーンには生物としての特徴や細胞の図が映し出されていた。
ホーリーはどこか落ち着かぬ気持ちを抱きながらも、首を軽く横に振り、授業へ集中できるよう努力する。
テンポの速い授業は彼女の思考から余計な不安を追い出すのに最適であった。
「餌よりもゴミの方がずっと多くて、どうしたってゴミが口に入ってしまって。
昔のプラスチックは溶けて自然に還ったりしないから消化もできなくて、体に詰まって、そのまま、何も食べることも、出すこともできなくなって」
技術が発達した今でさえ、還ることのできない物質は数多存在し、海や山は汚染されている。
浄化ができるようになっただけマシと言えばそれまでかもしれないけれど、ポスターの中に描かれた魚のように苦しみ、死んでいく生物は少なくないだろう。
自然のために、今の豊かな生活を捨てろと言われても受け入れることはできない。しかし、共存を望み、より良い方向へ世界が進むことを望むことはできる。
「なるほど」
つくづく感心した、とでも言いたげにシオンが言葉を零す。
「ホーリーさんには芸術の才能があるんじゃないかな」
「えっ?」
マリユスの言葉にホーリーは目を見開く。
彼女は特別絵が上手いわけではなく、工作の類も壊滅的ではないが上手とも言えぬレベルだ。どう贔屓目に見たところで才能があるとは言えない。
「感受性が豊かじゃないか。
こんな絵一枚でそこまで考えられるなんて」
ニコニコと笑うマリユスに小さな違和感。
教科書には絵に対する解説は書かれていない。翻訳や使われたであろう画材については記載されているが、それだけだ。
見る者の感性に全てを委ねているのか、この教科書を作成した人間すら解説を載せることができなかったのか。ホーリーは不安に襲われる。
定期的な浄化があるおかげで、取り返しのつかぬ環境汚染は無くなった。そのため、人々は過去の時代に比べ、世界を汚すという行為に対して強い意識を割かなくなってしまっている。
ポスターに書かれた言葉が胸に刺さらないのは、周囲の意識という背景があるのかもしれない。
いや、だとしても、だ。
ゴミと死んだ異様な魚。愚直なまでにストレートな言葉。
感受性の問題だろうか。あのポスターに込められた意味を汲み取ることができたのは。
「おーい、もうチャイムが鳴るぞ」
「っと。んじゃ、また次の休み時間に!」
生物を担当しているイリネイが教室に入ってきた。
時計を確認すれば、あと数分でチャイムが鳴る時間だ。
エミリオ達はホーリーに一声かけると、自身の席へと帰って行く。
余談であるが、エミリオの席は先頭の列のど真ん中がライノによって指定されており、何度の席替えを経ても動くことのない特等席として据えられている。
「それでは今日の授業を始める」
チャイムの音が鳴り響くと同時に、イリネイは壁に設置されているスクリーンに蝶とネズミの絵を表示させた。
「前回までは植物と生物の定義についてやってきた。
今日からは動物についての話になる」
彼は蝶とネズミの下に、無脊椎動物、脊椎動物という単語を付け加える。
それぞれに関する簡単な説明が行われ、分類や特徴についての説明がスクリーンに映し出された。生徒達は各々、電子ノートに図を書き写し、文字を入力していく。
イリネイの授業はテンポが速いのが特徴で、無駄なお喋りが非常に少ない。教室も静かなもので、不真面目というわけではないのだが、どうしても騒ぎがちなエミリオでさえ彼の授業では静かなことが多かった。
「ヒトには六つの生理的欲求が存在している。
さて、誰に答えてもらおうか……」
ぐるりと教室を見渡し、教室の隅にいるマリユスへ目を向ける。
「マリユス君。
わからなくてもいいから何か一つ答えて」
「えっと……。
食欲、ですか?」
「正解」
モニターに食欲、という単語が付け加えられた。
「次はエミリオ君」
「はいはい!
性欲!」
「正解。でも、そんな大声はいらなかったね」
「性欲ねぇと子孫残せねぇもんな!」
「私の話を聞いていないのかな?」
わざわざ席を立ったうえの大声だ。
思春期の男子生徒にありがちな行動とはいえ、こうも明け透けにやられればため息も出る。ノリの良い教師であれば話はまた違っていたのだろうけれど、イリネイはジョークを好む性質ではない。
答えそのものは正解であるし、生物としての本能である「性欲」に恥じらいを感じる必要はないけれど、時と場合というものが存在していることを、エミリオには一刻も早く理解してもらう必要があるだろう。
イリネイの言葉を聴いているのかいないのか。エミリオは平然と席に座り、前のモニターを見ている。
彼にこれ以上の注意をしても無駄だろう。イリネイは気持ちを切り替え、次の生徒、次の生徒と指名していくが、残りが中々上がらない。
「そうだね。じゃあ一つヒントを上げよう。
生理的ってというのはね、身体が勝手にしてるってことなんだ。
食欲や性欲は意識できる部分だけど、それだって胃が動いて消化して、栄養を体に取り込んで、っていうところまでは私達も意識してないだろ?
だから、生きるためには何が必要か、ってのを考えるといいかもね」
彼の言葉に頭を働かせてみる者、ノートにメモする者、思考を放棄する者、とそれぞれが己にあった行動に出る。しばしの間それを眺め、生徒に猶予を与えたイリネイは、再び名指しで指名していく。
「……息?」
「正解。呼吸も欲求の一つだね」
「えっと、おトイレ、とか?」
「そうだね。排泄も大切な欲求だ」
またしばしの間が開き、ヒントを経て体温調節と飲水欲求が出た。
これにより、六つの生理的欲求が出揃ったことになる。
「はい。これの六つがヒトの持つ欲求の主流。
でも、もう一つ……」
イリネイの目が動く。適当な生徒を探しているのではない。ただ一人、お目当ての存在を探す動きだ。
「ホーリー君、わかるかな」
「あっ」
名を呼ばれ、小さな声が漏れ出る。
答えがわからないわけではない。勤勉な彼女は、短い自由時間の中で毎日の予習復習を欠かさず行っており、今日の授業も万全の状態で受けている。否、そうでなくとも、ホーリーならば答えがわかって当然なのだ。
「――睡眠」
か細い息が漏れるような答えだった。
機械やヒト、それと極一部の生物だけが睡眠を不要としている。
鳥類、哺乳類、爬虫類、両生類、魚類。その他の無脊椎動物達。睡眠を必要としない種は少なく、生物全体として見れば、睡眠を不要とするヒトは少数派であった。
「正解。一年の最後でもやるけど、昔はヒトにもその欲求があった。
今じゃすっかり失われ、ホーリー君だけにその特性が残っている」
「そう、ですね」
言葉は細かく途切れてしまう。
「ん? あ、もしかして答えたくなかったかな。
配慮が足りなくてすまない」
「いいえ、別に、そういうわけじゃなかったんですけど」
答えたくなかったわけではない。
ただ、口にすると、改めて自分を認識してしまうだけだ。
血の繋がった両親とも、クラスメイトとも、教師達とも違う。ヒトと同じ姿形をして、同じように生きているはずなのに、見過ごすことのできない部分が大きくずれてしまっている。
周囲はホーリーを受け入れてくれ、将来のために手助けをしてくれている大人も多い。
受けとめきることができていないのは、当の本人だけなのだ。
大好きな人達と違う自分が、本当にヒトであるのか。
何度も何度も答えを出し、諦め、受け入れてはまた悩む。同じこと性懲りもなく繰り返してしまう。
「なら話を続けよう。
ヒト以外の生物には睡眠というものが残っている。
何故、現代まで彼らが進化の中で睡眠を残し続けてきたのか。睡眠の有無によってもたらされるものは何か。
すべては謎のままだ」
高度な文明と科学を得た現代においても、不明瞭な事象というのは山のように存在している。
神の領域とでもいえばいいのか。答えなど存在しない偶然の部分であるのか。どちらにせよ、人間がこの先を見ることはないだろう、と学者も政治家も、誰もが口を揃えていた。
「進化の全てが合理的であるわけではない。
一説によれば、ヒト意外の生物は体内時計を用いて時間の管理を行うため、定期的なリセットが必要となる。その役目を睡眠が担っているらしい」
そこまで話したところで、授業の本筋である動物の体の構造や進化の過程の説明へと戻っていく。スクリーンには生物としての特徴や細胞の図が映し出されていた。
ホーリーはどこか落ち着かぬ気持ちを抱きながらも、首を軽く横に振り、授業へ集中できるよう努力する。
テンポの速い授業は彼女の思考から余計な不安を追い出すのに最適であった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる