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カイン、キレる!

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「さっきからあなたは何を言ってるんですか?」


ギリギリと手首を締め上げ殺気をとばすカインにクリスは怯む。


「な、何を・・する」


カインはエレンのことだけでなく、今まで散々迷惑をかけられたことに憤りを隠せなく、いやもう隠すのをやめた。

あんなクズでも兄だと我慢していたが、もうやってられないとキレたのだ。



「もう、いい加減にイヤになったんですよ。ダグラスのお守りも権力を振りかざし弱いもの虐めをするあんたにもっ」


「グっ・・」



苦痛に顔を歪ませるクリスを睨みながらも話を続ける。


「昔から正妃の子供にしか王位は継げないこをなぜあいつに言わなかったかわかったよ。あんたはこうやってオレに何らかの罪を着せて王太子の座から引きずりおろしてダグラスを王太子にするつもりだったんだろ?」


そう淡々と冷静に呟くカインの瞳の奥に、何か得体のしれないものを感じた。


心の底から凍り付きそうな恐怖に体が震える。王太子といえどもただの子供だというのに・・。


「ただ、誤算だったのはダグラスがクズで無能だったってことと、平民を伴侶だと言って連れてきたことだ」


ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべながらバカにして煽ってやる。




さあ、もっとボロを出せ―――と・・




「ほんっと、こいつバカだから本気で平民と結婚するつもりだったみたいだぜ。」


ダグラスの胸のポケットから小さな箱を見つけて手に取る。

開けてみると、中には青い宝石がついた指輪が入っていた。

それを箱から取り出し指でくるくると回して玩ぶ。

大きいとはいかないがそれなりの大きさから高額だと推測する。それが国民の血税かクリスからせびり取ったものかは知らないが無駄遣いしやがってと鼻で笑う。


「見ろよ、こんなものまで用意して・・」


クスクスと笑いながらクリスの小指にそれを嵌めてやる。


「結婚できない相手にこんなの送ったら怖くて逃げたんじゃねえの?」

いつも冷静で温和なことで知られているカインだがキレるとその言葉遣いは荒くなることはごく一部の人間しか知られていない。だから、この場にいる貴族たちは茫然とカインを見つめていた。


「あれがカイン様・・?」

「信じられない・・」

「でも、ワイルドで・・カッコいい」


首を左右にふり信じられないとショックで口を押える者や目を潤ませるもの。嬉しそうに微笑みものと反応は様々だが、一番おどろいているのはアレクだった。


「兄・・うえ・・?」


いつもアレクの前ではいい兄でいようとニコニコしていたし、言葉遣いもこんな風ではなかった。

意外な兄の一面を垣間見て嬉しいやら悲しいやら何とも言えない気持ちだった。

そんなアレクの様子に気付かないほどカインはキレていたわけで転がっているダグラスの背中を踏みつけながらクリスをあざ笑う。



「さて、どうする?ク・リ・ス・様ぁ?」




怯えるクリスに顔をグイっと近づけてドスの利いた低い声で脅すカインに腰が抜けたのかその場にへなへなと座り込んだのだった。
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