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愚かな兄2
しおりを挟む「何の騒ぎだっ」
広場に響くその声に緊張が走った。
声の主は国王陛下だ。
長身でがっちりした体形。緩いウエーブのかかった長い銀色の髪にエメラルドグリーンの瞳。
口元はこの状況に少し歪んでいた。
今日は第三王子の五歳の誕生日。その祝いに来てみれば第一王子の微量な魔力と不審な魔力を感知して急いで来たということだ。
「父上っ」
最初に声をあげたのはダグラスだ。
彼は愚かにも自分の味方だと思い込み嬉しそうに笑みを浮かべた。
国王は辺りを見回し、カインの後で固まっている貴族とダグラスとともいいる見知らぬ者を見て顔をしかめた。
そしてダグラスとフランから火属性の魔力の痕跡を見つける。
「今日はアレクの誕生日で祝いの席だというのに、これはどういうことか答えよっ!」
声の感じから怒っていると誰でもわかるのにダグラスは意気揚々と声をあげた。
「父上、私から説明します。
「・・・話せ」
「学園で私の伴侶となるフランを虐めていたのです・・」
「・・・・・」
国王は眉が微かにピクッと動いた。だが、ダグラスはそれに気づかず話を続ける。
「教科書をかくしたり、制服を破いたり、先日は階段から突き落とそうとしたのです。やめるように言っても王子の権力でなかったことにした。私は弟でもカインを許せません!こいつを追放してくださいっ!!」
ビシッと指をさしドヤ顔で一気に言い切った。
その顔は希望に満ちていた。
だが・・・・
「何を言っておる。カインを追放だと?たわけたことを言うでないっ!」
ギロリと睨まれそう言われたダグラスは信じられないという顔だ。
「ですが・・」
「そうです、陛下!カイン様は私を虐めてダグラス様の足を引っ張り王太子の座から引きずり落そうとしたのですっ!」
「黙れっ!」
許しも得ていないのに口を出したフランに騎士が拘束しようと前に立つ。
「貴様、陛下のお許しもなしに口を開くとは不敬であろうっ!!」
「ひっ!
肩を掴まれそうになってフランは震えあがる。だが、ダグラスがそれを阻止した。
「貴様、フランに何をする!」
「陛下に対し不敬をはたらいたので拘束を・・」
「ええぃ!うるさい!フランに触れるな!貴様こそ不敬であろうっ!」
怒りの矛先を騎士に向けるダグラスに国王は彼を止めた。
「止めよ!それよりその者は何だ?見たところ平民のようだが、なぜここにおる?」
国王の登場でみんな敬意を払って跪いているというのに平民であるフランはダグラスに腰を抱かれている態勢だった。
これは、死刑に値するものであるが、ダグラスもフランも全く気付いていない。
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