上 下
2 / 4

あり得ない再会

しおりを挟む


「神子さま・・」

 じーっと奴の顔を見て──

 こいつ絶対気づいてるだろう

 それを確かめたいのだが昔からポーカーフェイスのエリオルには無茶な話で真意を確かめるのは無理のようだ。

 さて、オレはここでこいつらに正体を明かすべきか否か。状況によっては隠した方がいいだろうけど、さっきこいつらの名前を呼んじまったしな。

 左手で首を掻きながらどうしたもんだか考えるが突然のことで思考がまとまらない。

 エリオスはあの時と比べたら貫禄がついたみたいだし。ルイスも体つきがよくなっているが強面なのは変わってない。ドイルは身のこなしが柔らかくなったみたいだな。さすが優秀な従者だ。コールはこの中で一番年寄りだったが髭がますます似合うようになったし貫禄もついたか。ラスは相変わらずの筋肉がすげえな。

 全員の視線っがオレに向けられ、顔が引きつる。オレが桜井雄介だと言って信じてくれるだろうか?

 それにしてもなぜ召喚されてこんな姿に?何かトラブルでも起きたのか?


「神子様・・・とりあえずお部屋にご案内しますね」
「え、ああ頼むド・・」

あぶねえ、危うく名前を呼ぶところだった。まあ、今更だけど・・

「陛下、今日は神子様もお疲れでしょうから詳しいことは明日にでもされたほうかよろしいかと・・」
「・・・わかった」

 ニコッと笑うドイルの後に続く。

 ああ、名前を名乗らなかったからきっと内心警戒しているだろうな。


 知り尽くしている廊下を歩いて行くと、侍女や使用人の視線が突き刺さる。

「・・・では」
「いや、・・・」
「まさ・・・・・も?」

 おいお前ら聞こえているぞ!

 子供だったら何なんだよ!オレだってこんな姿で召喚されるとは思ってなかったよ!ていうか、何でまたオレなんだよ!せっかく、こいつらの気持ちを振り切って帰還したっていうのに。


 そこで、はたって気づく。

 あれ、あれから何年経ってんだ?オレは帰還してからまだ1年も経ってなかった。だけど、こいつらの顔を見ればそれ以上なのは間違いない。もしかしてその辺が関係しているのか?


「では、神子様。このお部屋をお使いください」

 案内されたのはオレが以前に使っていた部屋だった。

 ドアが開いて中に入ると家具も壁紙も何もかも変わっていない。漂う空気も窓から差し込む光もなにかも以前のままで懐かしくて目を細めた。

「ここは勇者さまがお使いになってたお部屋でございます」
「・・いいのか、オレが使っても」
「ええ、あなたさまなら勇者様もお喜びになるでしょう。」
「・・・そうか、なら遠慮なく使わせてもらう」
「はい。お食事は夕刻6時時からでございますので4時にお清めと身支度をさせていただきますので、それはでゆっくりとお休みください」
「わかった・・」


 軽く頭を下げるとそのまま下がって行った。


 ベッドに倒れこむとこれからのことを考える。オレがこの姿で召喚されたのには何か理由があるはずだ。
しかも神子だなんて・・そういえばステータスはどうなっているんだ。

「ステータス、オープン」

 ピカッと光って現れたステータスを確認していくと・・


職業・・・・神子
レベル・・・10,000
魔力・・・・3,000,000
攻撃力・・・2,000,000
防御力・・・3,000,000
瞬発力・・・2,000,000
知力・・・・150,000
運・・・・・20,000


スキル
鑑定・忍耐・アイテムボックス・言語翻訳・気配探知・回復魔法・浄化

称号
異世界人・元勇者・神々に愛されし者



「ゲッ!前とそんなに変わんねえな。違うのは防御力と回復魔法とか。まあ、神子っていうんだからこうなるか・・」

気になるのは称号だ。

「神々に愛されし者って、これも神子だからか?」

  帰還するときに魔導師がもう召喚されることはないって言ってたのに、何でこうなった?
  何か、原因があるはずだが、それはエリオルに聞かねえとわかんねえか・・。

 顔を上げてじっと見つめる。小さくてまだ何の力もない子供の手だ。この手をまた血で汚すのか?

 前に召喚された時オレはまだ16歳だった。殴り合いのケンカは日常茶飯事だったが、命の関わるようなことをしたことはなかった。
 
 目を閉じてぎゅっと力を入れる。

 もう、ここに来ることはないって思ってたんだけどな・・・

 だんだんと心が沈んでいく。勇者としての殺略は思い出したくもないほど悲惨だった。
 魔族を殺しても何の感情もなく、ただ剣を振るい魔法を放つだけ。まるで心のない人形のような日常だった。


*************************

回復魔法と浄化を追加しました。
神子なのにこれがないと・・・


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妹を侮辱した馬鹿の兄を嫁に貰います

ひづき
BL
妹のべルティシアが馬鹿王子ラグナルに婚約破棄を言い渡された。 フェルベードが怒りを露わにすると、馬鹿王子の兄アンセルが命を持って償うと言う。 「よし。お前が俺に嫁げ」

異世界転生して病んじゃったコの話

るて
BL
突然ですが、僕、異世界転生しちゃったみたいです。 これからどうしよう… あれ、僕嫌われてる…? あ、れ…? もう、わかんないや。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 異世界転生して、病んじゃったコの話 嫌われ→総愛され 性癖バンバン入れるので、ごちゃごちゃするかも…

異世界に召喚されて失明したけど幸せです。

るて
BL
僕はシノ。 なんでか異世界に召喚されたみたいです! でも、声は聴こえるのに目の前が真っ暗なんだろう あ、失明したらしいっす うん。まー、別にいーや。 なんかチヤホヤしてもらえて嬉しい! あと、めっちゃ耳が良くなってたよ( ˘꒳˘) 目が見えなくても僕は戦えます(`✧ω✧´)

○○に求婚されたおっさん、逃げる・・

相沢京
BL
小さな町でギルドに所属していた30過ぎのおっさんのオレに王都のギルマスから招集命令が下される。 といっても、何か罪を犯したからとかではなくてオレに会いたい人がいるらしい。そいつは事情があって王都から出れないとか、特に何の用事もなかったオレは承諾して王都へと向かうのだった。 しかし、そこに待ち受けていたのは―――・・

【完結済】王子を嵌めて国中に醜聞晒してやったので殺されると思ってたら溺愛された。

うらひと
BL
学園内で依頼をこなしていた魔術師のクリスは大物の公爵の娘からの依頼が入る……依頼内容は婚約者である王子からの婚約破棄!! 高い報酬に目が眩んで依頼を受けてしまうが……18Rには※がついています。 ムーン様にも投稿してます。

【父親視点】悪役令息の弟に転生した俺は今まで愛を知らなかった悪役令息をとことん甘やかします!

匿名希望ショタ
BL
悪役令息の弟に転生した俺は今まで愛を知らなかった悪役令息をとことん甘やかします!の父親視点です。 本編を読んでない方はそちらをご覧になってからの方より楽しめるようになっています。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

処理中です...