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銀色の腰巻き

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オレの腰巻きは昨日父上から直々に頂いたもので、それは銀色の刺繍が入っており国宝に値する品物だった。

大げさだという者もいるかもしれないが、身分を隠すため胸につけたペンダント型の魔道具で髪を黒に瞳の色を青変えている。

それは代々行われている仕来しきたりによるもので、父上も祖父も通った道だった。

人間関係を肌で感じ取り王族として相応しい人間になれとご先祖様の遺言だったと聞いた。

その腰巻きをオレの油断で盗まれたとはいえ父上の耳の入れば相手はただではすまされない。

爵位をはく奪、一家全員処刑、あるいは追放ともなりかねない。


しかし、何で婚約破棄につながるんだ?

シャルルは何でこいつをけしかけたんだ?

何のメリットもないと思うが?



「ルーク、シャルルに謝罪しろっ!」


「・・・は?」


うん、おかしいな?謝罪しろと聞こえたんだけど?


「聞いているのかっ?王太子候補のシャルルを傷つけたんだぞ」


「・・王太子候補?」


「そうだ。金髪で子を孕むことができるんだからそうだろう?」


「・・・・」


「・・こやつ、やはり切り捨てるっ!」


王太子候補と聞いてラルクの怒りが頂点になり今にも剣を抜こうと手をかけた。


マズイ!ここでラルクが剣を抜けば血の海になるっ!


「落ち着け・・」

「ですが、王太子候補と聞いて黙ってはいられませんっ!」



王太子候補という単語で静まり返っていた会場がざわつき始める。



「シャルルという人が王太子候補?」

「確かに、金髪だけど・・」

「王族にそんな名前あったか?」

「・・まさか、ご落胤、とか」

「いや、あの王様に限ってそんなこと」



会場の人々の関心を引き付けるこができたシャルルは口角をあげて内心歓喜にあふれていた。


思うように成績が上がらず、教師から匙を投げられていたシャルルは面白くなかった。貴族とはいえ没落寸前で後継者と言われてもまともな結婚なんてできるはずがない。

だが、見た目はかわいいので学園ではモテた。特にこの男爵の息子は夢中になってなんでも貢いでくれた。

愛してはいないがこいつを利用して貧乏から抜け出したかった。虐められたと偽りこの卒業パーティーで婚約破棄をさせて注目を集めたかった。

王太子候補は余計だったが、男爵の息子の勘違いをそのまま利用することにした。

これで、うまくいく!

王太子候補となり貧乏から抜け出せる!

そんな安易考えからシャルルはルークの腰巻きを盗み男爵の息子にプレゼントしたのだ。





その腰巻きに重要な意味があるとも知らずに・・




それが間違いでえあるとこに・・・








ドォーーン!ドォーーン!




会場にドラムの音が響き渡る。



「国王陛下、王妃様のおなーりぃーー・・」


金色の扉が開き、金色の刺繍が入った豪華な衣装をまとった二人がゆっくりと入って来た。

そして、会場にいた全員が片膝をつき右手を胸に当て敬意の姿勢をとった。


「・・・・」


会場にいる者たちを見まわし、そしてルークを見つけると微笑んだ。



「頭を上げよ・・」




国王が謁見でもない限り姿を現すことはない。だが今日は成人の儀のを迎えた若者を祝福するためにやってきた。



「今日は成人の儀を迎えた若者に祝福をささげよう・・」


杖を高く上げると天から王族の印である天使の羽が降り注ぎ、床につくと光輝き消えてく。

何とも夢を見ているような光景に彼らは恍惚した。

国王も王妃もそれに満足して微笑んだ。

成人の儀の終了である。

だが、和やかに進んだ儀式に爆弾を落とされた。




「陛下、こいつを追放してくださいっ――」



許しもなく声を上げたのはルークに婚約破棄を宣言した男爵の息子だった。


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