混血の守護神

篠崎流

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旅立った。との通り、そういう表現が妥当な行動を円は行っていた

中国から旅に近い生活をしながら南まで抜け西回りで各地を移動し、まだ見ぬ技術、知識などを探し、時にまた自然に入り、修行に明け暮れた

先の事件あって色々考えては居たのだが時代的な技術を超えた発想であった為「こうしたら有効」という道具とか防具とかも幾つか考案したのだが、現実には不可能で断念した面があった

一つは後、或いは現代で言う所の防刃服とか布の類、仙術や体術に重い道具や武具、阻害する様な機能性を損なうものは論外と考え

より軽く、阻害しない物をと考え。今で言うワイヤーを編みこんだ服等出来ないか?と思ったのだが、糸の如く細い鉄糸などこの時代ではまだ不可能だったし。自身でもやってみたが加工技術の面でとても実現出来なかった

だが似たような物、は一応作った皮製品である、これを本来の一枚布にせず、可能な限り細くし、これで編んでチョッキの様にして内側に身に付けた事

実際試しに小刀で切ってみたのだが打撃を防ぐにもそこそこ衝撃を防ぎ、斬りなら刃物を弾く事には成功した

もう一つは自身の技の面、仙術でこれ以上、何か新しい技というのは無く硬気功が防御面で殆どの物理攻撃を防ぐ為それ以上というのは難しかった。その為発想の転換を図った。

これは拳法に置ける「化勁」流れるとか、柔らかく受け流すという発想

「硬気功は確かに今の私なら殆どの物理を防ぐが無敵という訳ではない、何れにしろ気を消費する為、使い続ける事は不可能」
「そして使うのに咄嗟というのも難しく使っている間は体が硬直する」

という所。どの気功、仙術も百歩神拳程ではないが準備、先の戦いの被弾でも分るが呼吸を乱されると最悪出せない事すらある

これは術とか技がどうこうというより。人間の反射速度の問題。見て、体を動かす、呼吸、集中を準備して使う。これに最低、どんなに早くても秒程度は掛かる

その為元々やっていた気功とは別の気察の精度を高め。尚且つ、受け止めるで無く、流すの発想。思想で云う所の上善は水如しを目指した

再び自然の中に身を置き、皮膚感覚での、空気、気、意思を読み取る修行の精度を高める。

これは近代の武術でも稀ではあるが存在する、例えば、眼を閉じたままミットなどに相手に打撃を打ってもらう、これをカンで避けて空振りさせる。刀などを突き付けて貰い見ないまま避ける訓練とかだ

人間の反応速度が限界を超えて早く成る訳ではないが、見て「来た」と思って行動するより、「来る」と感じて事前に回避するに近い訓練。第六感とも言う

南越から時計回りに様々な物を見て学んでフィリピン、タイなども回り。時に修行を繰り返しチベットに入ったが、ここには留まらず再びシルクロードに入った

本来なら円の興味的に素通りする所ではない場所ではあるのだがこの時期はまだチベット仏教の成立前の話しで、それ程興味を惹かれる物ではなかった点

これは回った国其々にも云えるが新しい技術とか面白い物というのもそれ程無かった

唯一得たのが短刀術くらいだろう、これは片刃の湾曲したナイフが主流で自分が知っている使い方と少々違う為面白かった

持ち手が通常と逆。順手で無く逆さまに持ち構える、親指側を上で無く、小指側下に向けて握る、籠手の代わりにナイフを使う形で「結構いいな」と思った

何しろ拳法の基本の動作とかなり合う、移動しながら駆け抜けながら攻防に使えるし、突くとか刺すで無く、パンチで云う所のフックの様に打って撫で斬りする

種類も様々ありS時の様な上下に刃が付いてモノによっては指輪の様な指を掛けるものが付いている物もありヘタに操る練習をしなくても人差し指等に掛けて回したり、投げて使ったり出来る。所謂、暗器の源流の形で小型の物も多い

そこで時代を先取り、という訳ではないが思いついて作ったのが現代で云う、警棒、旋棍、琉球武術の「トンファー」である

これも諸説あるが、武器として形になったのは、おそらくこれがちゃんとしたものだろう、一説には古代中国でも近い物はあったがそもそも杖で武器として使ってなかったともある

作るのも簡単、元々棍棒だしそこに手掛けト字に足を足しただけだし金属製の物を作って所持するようになった

何しろ元から不殺に近いし、これなら防御にも使えて強い、相手が武器持ちなら態々硬気功で防がなくて良い訳だつまり主に防御用である

シルクロードに入った時にはまた結構な年月が経過していた、先の懸念あって警戒はしていたのだがお役目の類も無く、先の様な道と関係ない強敵も無かった

適当に商館集落に入って安いゲルを借りた、ここで再びヤオとも合流する、というか神出鬼没で何時の間にか居たのだが

「戻ったぞ」
「どーだった?」
「うむ、一応ある事はあるが、ウチが借りるのは難しい、先に云った防御用とかだが、ただ、法具の類とは別にして術としては幾つかある」
「ほほう」
「まあ、それも今のウチでは使えん、触媒も要るし、代わり、という訳ではないが「薬」は何本か持ってきた」
「そこはまあ、今はいいかな‥私も色々考えて人界にある物だけでどうにか出来る構想とかアイディアはあるし、ただ、今の加工技術だと基本的に無理ね」

そこで円も自身で思いついてやってみたこれまでの経過を話した

「なるほどなぁ~、鉄の糸を服に編みこんでしまおうと」
「やってはみたけど無理ね、精錬、鍛冶とか加工技術が進めば出来るかもしれないけど、ただ一応、元々ある皮製品での物は作ってみた動きの邪魔にならないし、刃物が容易に通らない」
「ふむふむ」
「まあ、こっちの技術が進めば何れ出来る様にはなるでしょ、で、新たに疑問もあるのだけど?」
「なんじゃ?」

「道とは関係ない、とは言え妲己みたいのって放置していいの?」
「これは明確にこっちから手を出さぬ、で良い」
「そうなんか‥でもさ、明らかに悪い要素よね、しかも人間と別な話しだし」
「それも明確に基準があるし、心配無用という扱いじゃな」
「なんで?」
「こっちで生まれ育った者、だ」
「ああ‥そういう事か」

「そして干渉するしないに関わらず和合するなら問題ではないし、人の敵となるなら何れ討伐される、実際そういう歴史になる」
「そういえば史記でもそう書かれているわね」
「そう、目立って表舞台で荒らすなら人間の集団に何れ駆逐される、妖怪め!となってな、人間の圧制者でも何れ反撃されて殺されるのと同じ道理だ」

「なるほど、分った、私達に個人的に絡んでくるなら戦う、打ち返す、けど人間の社会とか国家とかの範囲なら人間が軍なり集めて討伐する、て事ね」
「そ、後は道への干渉、だから向こうが隠れてひっそり生きて、動かない分には放置して構わん、という事らしい」
「うーん‥一応現在は反対側に協力してるんでしょ?」
「そういう事になるが、何れにしろ、こっちから探して態々倒す必要が無いし、探して回るのは難しい、具体的に干渉でないと予想予知にすら引っ掛からない」

「確かに‥こないだみたいに妖気垂れ流しで行動してくれてる訳じゃないし、ひっそり行動されたらどうしょうもないわね、精精分る範囲も目の届く距離だろうし」
「そういうこっちゃな」
「ま、それはいいとして、戻ったからには何か仕事?」
「まだ何とも云い様がないが、妙な予想予知が見えての」
「道と関係ない??また来るのかしら?」

「なんと云ったらいいのか、ウチのレーダーに色んなもんが、反応しとる、ウチらに何か直接干渉する事だな」
「直接私達に、か」
「何れにしろまだなんとも言えぬ。分岐も僅かに見えるし」
「先、て事?」
「多分な、このままヨーロッパに向かう」
「わかった」

として動く事に成ったが特に急な事でもなく、通常の旅で向かう事になったのだが欧州の情報収集を行うとこれもまた、あまり状況が宜しくない

丁度フン族と西欧州連合との決戦の手前の時期で欧州全体で争いがあり、どちらかと云えば旅はし難い

ただ、円とヤオが個人の範囲で動くには別に関わりがなく、通常の徒歩や馬などの移動で見ながら向かう

その程度なら誰も巻き込まないし、二人で動くだけならどこにも容易に侵入出来る

とりあえず的に近隣であまり関係が無いトルコに向かい適当な宿をとって今後を話した

「何かわかった?」
「うーん、歴史の方は今後荒れるな此処から北は行き難いが、まあ、ウチらには大して問題ない、ただ、この戦争の動きにも連動しているので様子を見た方がいいな」
「なんだかよくわからない流れね」
「実際には東で干渉が起こるのだが今動くと、戦争の混乱の中、干渉に干渉が重なる道もある、正直ここから動かず糸の絡みが少なくなってからのが安全というかめんどうがない」
「ふむ、んじゃ、この辺りで暫く待つか」とした

そこで円は「まだ時間はあるよ」との所から現地で勤め人として生活をした

「時間あるみたいだし暇だから現地料理でも習うか」

という程度の事だが。それと「ダイナミック料理」も確かに問題あるなとも思った

ヤオも云った事だが、ただ生きてお役目をこなすというのも、勿体無いと思った

半年程してヤオの指示あってロシアとカザフスタンの中間の街へ、そして再び宿を取って時を待ちつつ現地で情報収集を行う

ここで聞いたのが地元怪事件である、初めて耳にした円も「なにそれ??」としか言いようが無かった

ここだけでは無く、周辺から西も偶にあるらしく伝承の類に近いのだが、所謂「神隠し」の類、しかも「三日消失」と言うらしい

夜に人が襲われ、人が消える、だがそれはほんの短い期間で、長くて数日、戻った住民の類は前後の記憶も無く、何かに襲われた、までしか分らないらしい

特に身体的にケガとかしている訳でも無いという、訳のわからないものだった

それら事情、謎過ぎる為、討伐の類もされてないらしい、そもそも相手が何かすら、分らない、これが数年とか数十年とかの間隔であるとの事だ

「しかし、噂になる、というのは最近またあったのか?」
「ああ、先月一回‥例によって被害者、と言っていいのどうか、分らんが森に狩りに入った若者がでた、二日後には戻ったが」
「確かに謎だねぇ、獣の類なら無傷て事も無いし‥」
「ああ、国の側でも調査はあったがこれと言ってなにも‥」

そうして現地民と交して再びヤオとも情報交換するが
この辺りでヤオの道照らしも明確に形があった

「たぶん、コレじゃな」
「ハッキリしてきたの?」
「うむ、まだウチにも訳分らん部分もあるが。映像はハッキリしてきた。ウチらと対峙する事になる」
「相手は?」
「女、だな見た目は」
「また??」
「いや‥、明確に西洋の人間だな」
「訳分らん部分、は?」

「うーん、どうもあんまり脅威とか敵とか感じないんじゃよな他の要因も絡んでるし」
「?なんだろう‥」
「ま、会ってみれば分るじゃろ」
「どこで?」

「‥んー、建物は見える、だがボロくてデカイ廃墟、かもしれん、かなり暗い事から閉鎖されたとか日の届かない、という系統かの」
「この辺りでそういうのを探せばいいのか」
「そういう事になるな」

そして再び現地で聞き込み、ヤオはあちこち飛んで探した。事前にある程度の情報が分る、見る事が出来る強みはここだろう。五日程の探索の末、候補はいくらか出たのだが

街周辺ではそういった物は無かったが年寄りから「あれではないか??」という、情報は得られる

「南東にかなり行った所だが、廃村はあったはず」

との事からそちらへ移動して確認してみる事になった「かなり」と言ったとおり軽く百キロはあったが、山の麓の石切り場に併設したゴーストタウンの様な場所へ夕方近くに辿り着いた

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