晴海様の神通力

篠崎流

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対応策

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一同も驚きの情報だが、其れ以外への拡散は防ぐ方針となった、というのも高砂が先に口を開いて制したのもある

「そこまで一気に分ったのは確かに凄い、しかしこれはあまり全体共有出来ない情報ですね‥」
「それは?」
「一つに分ったからと言って言説の話しである事です、二つに市民に知らせてもこれまでの対応が何も変わりません、事件が多く無い訳ですし、対抗手段が無いですし手法は同じです、一つ一つ予防、防止するしか無い、三つに雹ちゃんの危険性もあります」
「そうですね‥本質的に僕等のやる事は変わらないかも‥」
「ええ、従ってもう少し根拠というか実証が出る、或いは公的対応の広がりまで待ってください其の点は私側の話しです」
「分りました、そこはお任せします」

という流れである。

おそらく、このまま広く情報共有してもあまり意味がない、病気とかでもなく個人個人で気をつけて防止出来る事でもないし反って混乱にしか成らない

事件も年数百発生していない訳で。公人組織で装備なり手法を確立し、今まで通り裏で対応し、減らす事の方が効率性が高いし、また危険な対応は公人がすべきだろうともあった

そもそも相手側、妖怪に明確な意思とか集団意思というのがある訳でもなく、交渉とか外交とか可能な訳でもない、稀に向こうの世界からこちらに来て捕食、しかも全部が全部そうではなく、それも一部なので、事故に近い為、晴海と高砂の言う通り本質的にゼロ防止出来る事でもないので、対応その物は今までとそう変わらないのである

雹に関しても一先ずこのままで良いとは成った、彼女その物に害はないし、手放して例えば元の世界に戻しても寧ろ意味がない

最悪発覚して「それ捕まえろ」という事になっても彼女は自由に反面世界に移動出来るので、拘束等不可能だし、懐柔策というと聞こえが悪いが晴海を好いて此処に居るならその方がメリットが多い

その判断も自由意志を持つ生命体である以上、彼女自身がすべきだろうとも考えた

「あの~、妖怪のこちらでの活動の目的・襲う基準が霊力だとすると私なんかも今後も危険なんでしょうか~」
「向こうから美味しそうに見えるなら可能性で云えばそうなるな」
「ひぃ~」
「まあ、この敷地内や周囲ならそこまででもないだろう、ただ護衛の類は必要だろうな、開発部でもECMでも、軍事経験者等も入っているので遠出の際は要請しろ」
「は、はい~」

「それと、この情報は父さんに報告したほうがいいのかな」
「慶様には良いと思いますよ、何れにしろ上手く活かしてくれるハズですから」

そうして当日には晴海も分った情報の断片を、確定ではないが、として箇条書きして封書に纏めて送る

特に雹の事であるが、これは結論から言えば御大、慶も晴海の判断を否定しなかった。単にメリットの話で言えば手放すとか処分するとか全く意味が無く、情報もそれ以上無くなるし、傍に置いて晴海の友とする、或いは味方とするならそれが最善であろうと提示し

更に「そのまま匿っていても構わない、必要とあらば神宮寺か外家の養子という措置をとっても構わない」とまで返答した

「正し成長し、今以上に強く成るとすればお前に噛み付く可能性も否定出来ない故に、そのリスクを自覚しておくべき」とも書かれている

敢て具体的指示をしなかったのも、それもまた「人間万事塞翁が馬」だからで、基本的に晴海の意思を尊重したからでもある

尤も、先に述べた通り、雹が今より成長し手におえないくらい強くなったとしてもお互い同士が敵と認知していない以上、そんな事には成らないだろうともあったのだが


慌しくも五月に入り、開発部から新たな装備が追加される。此れも全員が持っているサーモグラフグラスから小さい物になった

「高砂さん、これは?」
「今までの片眼鏡型からスポーツ型の眼鏡に近い形にしました。先日齎された情報から機能が追加されています、今までの警戒予報、サーモ機能、通信機、モバイル機能に追加しメモリ録画機能と《線量計》が追加されています」
「こっちのがズレないし軽いかも」
「お洒落」
「でしょ?耐久性も向上してますよ」

「線量計て?」
「はい、簡単に言ってしまうと特定のエネルギー波長を数値化して表示、探査出来る様にしました」
「どういう事でしょうか」
「えーと、科学の基礎知識に成りますが、例えば電球の光とか、あるいは電波、γ線とかありますよね?」
「はい」
「あれは全て波長の違うエネルギーだというのは知ってますか?」
「確か習ったような‥見えてないけどあらゆる既存の物質は元素、原子や分子で構成されてる、それらは移動、振動に寄って何らかの波長の違うエネルギーを発している」
「そうです、生物は勿論、物質も此れを発しています、故に其れがどの波形かを捉えれば測る事も可能です。そこでアスカさんやメイさんにも協力して貰い実験、検証の結果、皆さんが云って居る《霊力》の存在を一部探知出来ました」
「ええ?!」

「ただ、あまりにも些少のは無理でしたが‥とりあえず人間の標準を主体として波形生体エネルギー的なモノは探査出来ます」
「じゃあこれからは妖怪から見た「美味しそう」も分る訳ですね‥」
「指針には成りますね、群集の中では混じってしまうので極端に大きい数値を追う感じでしょう」
「それでも凄い‥流石ですね」
「ですが実際どこまで有効かはこれからですね、街中で使った実験はしましたがあまりに同系のエネルギーが周囲に多いと役立ちませんし」
「なるほど」

そういう話と流れで今回も先行してECMが使う事になった

余談だが、特殊開発部も資金・予算・人員の増加から実験実戦部隊も投入されている。初期、高砂と始めて会った時は機動隊に近いゴテゴテした装備だったが。現在は、カマイタチ事件の時の名雪が装備していた見た目と実践性の高い、そのまま街を歩いても第三者に威圧感というか「あ、何か大事が有ったんだ」とハタ目には分らない装備に成っている

前線実験部隊は全員、防刃・板金プレートを足した黒ロングコートで、腰の下や背辺りに改造拳銃や、電磁警棒、腿に巻くタイプのナップサックに回復剤、煙幕など其々の希望と役割で携帯している。事件発生時には眉から額上部をカバーする

鉢がねの様な同素材防具に、スポーティなレシーバーやインカム、キャッツのグラスを装備して対応となるので別の意味で威圧感はあるのだが

端的に云ってしまえば「どこのマフィアだよ」感もあるが
まあ此れは高砂側のセンスもあるし、市民に配慮しての形だろうし、隊員にはすこぶる好評ではある

特殊訓練を受けた実戦でも耐えうる人員は特殊開発部だけで十五名程居り、これらも名雪の手法に習って、バイク部隊としてパトロールにも投入される

考えてみれば名雪のやり方は「特殊な術・才能に依存しない」の最先端であり、街中行動では此れが最も効率的と判断され、その運びと成った

事実、先日の戦いでも名雪は「術」的なモノに殆ど頼っておらず、己が体術と最先端、近代装備であれだけ戦えている訳で凡人には最高の模範である、開発部も成果や有効性が確認出来て一石二鳥という事になる

名雪も退魔の一族であるし、家に術も幾らかあるのだが彼女も霊力が多く無い為、実際不完全な形でしか使えない、まあ
現状でも戦闘に過不足が無いのだから、良いと云えばいいのだろうし、事実、中途半端にしか発動しなくてもそれ程問題の無い業ではある

ただ名雪は先の戦闘の記録・データ等で此れも検証され極めて有効な体術、という扱いになり。レイナやマコト以外にも
開発部の戦闘隊員に指導に引っ張りだこになったが

まあ、人数は多く無いし、レイナに教えた様に最低限此れだけは守れという基礎だけでもかなり違うだろう
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