境界線の知識者

篠崎流

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現在と未来の為に

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ユルングとの連合への署名、加入の翌日には現地にそのまま滞在しているマルギットらとも城で会談、今後のとりあえずの指示をする

「フォレス様、わらわは滞在するのか?」
「いや、ピスノラとユルングの中間、領土線辺りに一定の兵力置いておくで良いだろ。連合つってもユルングにピスノラの君主ずっと居ても向こうが嫌だろうし。マルギットも統治がある」
「左様か、んでは、カルディア殿もじゃな」
「そうだな、後方滞在、つっても滞在施設の建築を急がないと」
「先のピスノラ内の公共事業で6割方出来てはいるので急がせよう」
「其れと橋の方は?」
「土台は出来ているので、後二ヶ月くらいだろう、ここは現地から人を増やして、実際の監督指示はクォーレに任せている思ったより早いな」
「そっか、とりあえず頼む」
「ああ」

「それから、テスネアが実兵力をユルングに振り向ける事も無いとも云えない、そこでユルングに直接援護滞在する人選だが」
「カンツォーネに任せればよかろう守ってる分には、これほど優秀な奴もおらん、兵力も二万あるし、事が起こっても、ユルングは六万あるし、直ぐ後ろから兵も持って来れる」
「うむ、という訳だが?」
「まあ、別に構わんよ、ただ、参謀か軍師の類は欲しい策の面でテスネアと遣り合えないと困る」
「んー‥、当面、オレがここに滞在するので問題ないかなぁ、何れハーベストを持ってくるので、そこまでは居る」
「ふむ、ならいい」

これでユルングへの滞在が、実軍援護指揮にカンツォーネ、知略面の補佐にそのままフォレスが、それ以外の面子はピスノーラ側に引く事と成った

ここから一週後にはロベルタのハーベストにも連絡を取り
派兵準備が指示された

アノミアらに任せた東地域内の一定の調査、根回しのとりあえず先行情報が届き、フォレス自ら、ベルーサ側への訪問が予定され、ハーベストを入れ替えでユルングへの滞在援護派兵が出される

同時、ティアのヴァルグフロークも前で使う方針からハーベストに合流を指示、これらの人事がなされ、両将がユルングへ着いたと同時フォレスも出立、ティアとヴァルグフロークの護衛数人と最小限のメンツで共に東地域へ向かった

五日後、ルーチベルーサに入るが、事前通達と同意もあり、スムーズに王城での会談が行われる、が、和やかとも、言えず緊迫した謁見の間での会談となった

「グランセルナ連合の盟主という事になっている、フォレストだ」
「ベルーサの王、グラーフだ」
「‥今回の会談の目的だが、単刀直入に云って、協力だな」
「‥、連合に入れという話なら受けぬ」
「だろうな。だから、期限付きという事で頼みたい」
「どういう事だ?」

とベルーサ側は怪訝な顔のまま疑問を呈した

「今更、こっちに付けと言ってもベルーサ側も「はいそうですか」という訳にはいくまい?、なのでこの一連の乱、中央限定の話だが一定の区切りが付くまで、不可侵としたい」
「どちらにも付くな、という事か?」
「そう、今と成っては、テスネアにもグランセルナ側にも付けまい、なら、こちらは、ベルーサが動かぬなら、そのままで良いと考える」
「具体的には?」
「双方の戦闘行為の禁止、領土の通過を、そちらが東地域のどこかに攻められるなら、援護してもいい、それでテスネアからのどんな要請も無視して中立を保てばよい、ロベルタ側と何かを交わすのはやりにくかろう、故に、条約は期限付き、オレと交わす、これで、中央の乱が終り、ペンタグラムが本国に戻り、条件が達成される、それで改めて会談の後、継続するかしないか、以降はソチラの好きにすればいい、で、どうだ?」

「ふむ‥」とベルーサの王も腕を組んで考え込んだ、これは明らかに「こちら側」に配慮した、内容である

そして期限付きという事は、終れば東地域の制覇なり、拡大政策なり好きにしろという事だ

「悪くない条件だ、こちらは一定期間、何もしなければ良い、か」
「受けるか?」
「いいだろう、こちらに何も損は無い」

ここで両陣営の緊迫した空気も切れる

「が、フォレス王、疑問がある」
「何かな?」
「今や連合は、世界最大の規模と武力を誇る、何ゆえ其の力を持って制覇を行わない?」
「‥無駄だから」
「無駄?」
「こっちの連合にそういう考えの君主は居ない、たしかに今の現状なら世界を楽に取れるだろう、が、領土を拡大して多くの人を死なせて、何になる、誰の得だ?」
「‥誰のか」
「やろうと思えば出来るかも知れん、が、オレはアデンスターカに成るつもりは無い、今までもこれからも」
「フ‥、連合の盟主がどういう男かと思って居たが、青臭い事を云う」
「そりゃ視点の違いだ、お前さんも立場を変えて見てみろ」
「?」
「グラーフ王、お前が一国民だったとする、普通に働いて結婚して、子供を作る、そこへ、政府や国王が重税を課し、戦に寄り、拡大を望んだとする、お前の子供も兵に取られるかも知れんそんな国の王は尊敬と賞賛を受けるか?国民はどう思う?だな」
「‥なんと国民を軽視した王か、そういう評価だろうな」
「そういうこっちゃ、覇者が歴史上、何故常に惨めな終わり方をするか考えれば誰でも分る、今を生きる者からすれば迷惑と畏怖と恨みの対象でしかない、民衆からも、その他の国の者からしてもな」
「分らなくも無い、が、それでワシを説得しようと言うのか?」
「まさか‥、視点の違いを説明しただけだ、俺には王という視点は無いというな。それにオレは自分の言論を持って、誰かが変わる、等と思っちゃいないだからソッチはソッチで好きにすればいい、それを提示した」
「成るほど、条件に不満は無い」
「では、書を交そう」

その場で双方、約定と、一応の握手を交した、フォレスらはそれ以上の交流を持たず、同行したティアらと共に、当日にはベルーサを出ユルングへとんぼ帰りである

「しかし、あれで良かったのか?フォレス」
「まぁ、議論しに来た訳では無いし、無意味に交流を持ってもしょうがない」
「そうじゃなく、ベルーサを使わんのか?という事だ」
「連合に入れなくて?」
「そう」
「向こうが受け入れる可能性は低い、こっちがどんな条件出してもな、メンツに拘るお方の様だし、そもそも‥ベルーサに連合に入られても逆に困る」
「と言うと?」
「オレとしては、拡大政策をするつもりないし、野心のある君主とかはいらない、内部での乱の元だし、大体、こっちの連合は殆ど、自己利益を求める王は居ない、それだけに反発も出る」
「ふむ、そうだな」

「ティアの言う通り、単身兵力五万は魅力的だがもう、それに頼らざる得ない状況でもないし」
「しかし、理解はされなかったな」
「残念ながら、人間とはそういうモノだ、益、と一言で云っても、それは千差万別、話し合って分るものなら世の中に争い等無いさ」
「フ‥そうだな。この状況にも成ってないだろうし」

一行はユルングに戻った後、ピスノーラに建築を急がせた滞在施設が完成するのを待ってから近くに居る味方と滞在施設に集まる、そこで、今後の方針を話合う事と成った

フォレス、ハーベ、カルディア、マルギット、ティア

「と言う訳で、皆の意見を聞きたい」とのフォレスの開始の一声からである

「フォレスは大体道筋があるんだろ??」
「一応」
「なら、まずそれを聞きたいが?」
「ああ、これはどっちかって云うとオレの希望優先なんだが‥」
「うむ」
「テスネアをどうにかする、のは当然なんだが、この際戦いを回避出来るならしたいと考えて居る、それからなるべくならだが、向こうの将も失わずに済ませたい」
「‥そいつは中々、難しい注文だな」
「だから一応だよ」
「其の方針が良いとして、具体的には?」
「降伏勧告?」
「無いわー」
「わらわとしては、主様が、そうしたいと思うならやっても構わぬと思うが?別に、それほど無茶な事でもない」
「そ、そうですね~、内部崩壊策とか分裂策とか、或いは勧告等は実兵力は使いませんし、どちらにとっても、被害が少ないですし~」

「条件としては、最終決戦はやる事になるだろう、と言うか、向こうが其の方針だと思う、なので、そこに持ち込む前の話で何かないかと」
「その条件でしたら結構ありますね~」
「それは?」
「はい~、引き続き、相手を動かし難い状況にして、東、北からの圧迫が続けば、小競り合いで疲弊する事もあります~、それから、決戦をするとして、相手の手持ち三国の連動を乱し内政から崩す事も出来ます~」
「他地域からの侵攻を促す、あるいは経済的圧迫、具体的には、物の出入りを規制か、通貨の規制だろう、ペンタグラム本国を取り返したし、通貨権や造幣施設も取り返した、材料もだな、そこを突けば長期的には圧迫できるな」
「はい~、向こうの疲弊が多くなれば、住民が逃げ出す事もあります、改めて時期を見て降伏勧告の成功率も上がります~」
「もう一つはペンタグラムから告知じゃろう、既に、前の告知から流れが反テスネアに成っておる、全国に号令を掛けて、一斉包囲も出来るじゃろな」
「兎に角やってみるわ、色々参考になった」

との会議の流れから、フォレスは各地に指示と整えを急いだ

九月の頭、既に始まっているがペンタグラムの麓の新しい防衛施設の建築、これはグランセルナ本国の、官舎+城壁の形、そこに、周辺への農地の開拓と、一部民間施設の作成も行う

先に述べた通り、取り返した、首脳部を戻した、だけでは生産、人口、防備、の面で以前の「実力無きペンタグラム」のままだ

グランセルナ側から参加した作業兵も現地の者と合わせて一万投入、実指揮は内政、軍事、両方隙の無いメリルが当たった

「しかし、なんとなくで云った会議の結果が、こうなるとはなぁ」

そう視察の場でエミリアも云ったが考えてみれば、この政策はかなり有益で意味がある

「今も先も効果の高い策ではありますし、守ってもらう、では、いざ中央で事が起こっても何も出来ない、という状況の改善になりますね」
「今、というのは?」
「はい、現状防備施設として固ければ、テスネアも迂闊に攻められません、あくまで中央で権力を奪取するにはペンタグラム本国は必須です、通貨と、拠点、統制地という立場ですね」
「成るほど」
「しかも商売上のメリットも大きいです」
「ああ、教皇様も資金を出すと云ってるんだっけ?」
「本国の材と施設を使い、通貨を増産し、建築資金の分グランセルナの国庫に入れよ、との事です」
「流石というべきか」
「そうですね、それと、決戦を行うのは規定の戦略らしいのでここが固いのは非常に後もやり易いです、後、王様は「後」と云わず、山岳都市の状況の整いに合わせて元の住民と首脳部を戻せと御達しです」
「なるべく現地の者がやった方がいいしな」
「ええ、来週には一部官僚とペンタグラム神騎士団、希望住民が戻るそうです」

それら建築の作業の中
外側の施設の一部に本国にも無い建物を見つける

「あれは何だ?転移陣施設に似てるが?」
「小さい社の様な物ですね、王様の指示で建てています」
「社??」
「周囲に結界を張るそうです、やはり災害の類は魔の関係と見ている様で‥」
「それはどうなのかな‥」
「いえ、予防のつもりだと、それと元々宗教国家の側面もありますし。あっても景観を損ねないので」
「成るほど」

ペンタグラムとは云え、別に元々神の加護があるという訳ではない、ただの知名度の高い、豪華な山岳都市というだけだ、故に、後顧の憂いを消す、予防する意味でもこれを真っ先に作らせた

東西南北の麓付近の官舎の一部に併用して建てられ、簡単な防壁術式のエンチャントアイテムが備えれているだけだが、これだけで不浄な者が入り難いという効果がある

フォレスはこの、ペンタグラム奪還戦に関わった将らの会議から、防衛施設建築の案、これにアレンジを加えると同時、全く別の作戦を考案し、実行する事と成った

翌週には告知通り、ペンタグラムの元の住民の一部で希望者を本国に戻す、ペンタグラムの高官も山岳都市に戻し、国の運営を内政面から少しづつ移譲

ペンタグラムの神騎士団三千も到着し、既に下の平地にとりあえずの開墾を行った農地も任せて、これも住民に移譲する

当初の内政管理と現地、麓街の指示は学者でもあり、グランセルナ本国に初期から関わっていて、作物や建築のやり方も知っているカイルに任せる

直後にフォレスはバルクスト滞在の教皇とも連絡を取り
「策」というより「基本方針」を伝えて了承をとった、全て、第二戦略の布石である
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