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東からの一手
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年明けから暫くは動きが無く、一旦落ち着いたが、アノミアから連絡が届き、兆候があったのが一月十四日
「フォレス、テスネアから軍が動いた」
「どこへ?」
「北、以外の全方位」
「む‥」
「残念ながら私らでも明確な目的地は掴みきれん」
「分った、やむおえん、無理せん程度で監視を」
「了解した」
最初にグランセルナ連合への軍事行動が表れたのが、十八日、東から、つまりロベルタ方面であった
ロベルタ本国にも斥候隊から情報が届きロッゼに伝えられ、即、高官会議と成った、二年前と同じ形である
「ベルーサか‥」
「南北街道を南進、街道中間点コチラ側に陣を敷き、牽制の動きです」
ロッゼも直ぐに外交会談の指示を出したがそれが行われる前にベルーサからの布告が来る、同時、テスネアからの「我共闘連合は先の宣誓通り、グランセルナ連合から皇様をお救いする」と布告が出される、つまり「問答無用」と言う事だ
こうなると如何に穏健派のロッゼでも防衛戦をする、という以外の判断は無い、そして過去の対ベルーサ戦とは違い、事前にフォレスから注意喚起が成されている、その為、混乱というのも殆ど無い
予定調和に近く兵、軍の準備も既に整えてある、直ぐにロベルタ、元の共和国との合同会議を開き告知と防衛戦の用意、策自体も「街道に布陣し、守って防ぐ」に決まり、各国軍をロベルタ北に集める事と成った
そしてもう一つ過去と違う点はグランセルナ連合として既に一つに纏まっており、共和形態の時と違い、連動し、精神的、実力共に強固である点である、ゼントラム連合はグランセルナ側とは違いそこが欠点ではある
情報の連絡を受けたフォレスもインファルもそこが逆に気掛かりな点だ、そう「何故テスネアはこの様なムチャな形を進めるのか」だ
これは先に両者から指摘が有ったとおり「脆い共闘」「仮に勝ったとしてその先の展望があるのか?」という部分である
ベルーサ側は過去の開戦と同じ形、街道に陣を敷き、自軍5万、これにテスネアからの後発援軍を待つ形だろう、一方、ロベルタは周辺と合せ、同数五万に、グランセルナ滞在軍のハーベストの軍、八千である
「一体何を考えているのでしょう‥」
ロベルタ本国会議でも、グランセルナ本国会議でもそこが疑問だ
「攻めなのに戦力に違いが無い、というのもどうかと思うが‥」
「しかも、過去、優勢戦力で負けていますが‥」
どちらの会議もそう周囲から発言が出る程の意味不明に近い「攻め」だった
「問題はテスネアだな。完全にそれ待ちであるのは明白だ」
「テスネアは軍力、数だけは半端じゃない、どこまで増援を出すかに寄る」
「ご尤もですね」
「と、なれば、先に仕掛けるのも悪くないが」
「基本的に私達連合は守るが信条ですが‥」
「ふむ、北からなら先年と同じ対応で宜しいかと」
「ハーベストさんはどう思われます?」
「え、え~と、ロッゼ様の仰るとおりですね基本防御戦でしょう、ただ、フローデ領王様の仰る事も間違いではありませんが」
「正直、僕も意味不明に近い、何か向こうに策が無い限りこの戦争は無謀だ」
「同感です~」
「ただ、相手の後ろにテスネアが居る以上、ヘタに進むのも罠の可能性もあるがな」
「そですね‥、私も積極策はあまり打ちたくありませんねぇ~」
「分りました、兎に角、軍の結集と防衛戦で向こうに動きが出てからで宜しいかと思います」
「分った」
と一旦会議は切られた。この意味不明な「攻め」の全容は時間の経過と共に明らかに成って来る、この会議から翌日朝には本国グランセルナのフォレスの元に次々と報が届く
「南西地でも動き?」
「はっ、西地域から南下の動きがあります、先の中央連合からの布告を見る限り、おそらく狙いはココかと‥まだ実兵は動いていませんので、確定ではありませんが」
そう、グレゴールが伝心を送ってきた
これで「向こう」の打った手が分った
「成る程な、全方位からの同時包囲戦か」
「おそらく、グランセルナ連合は相手と比べて数が多くありません、全方位から同時侵攻でこちらの戦力分断を図るつもりでしょう」
「同感だ、しかし、こりゃ動き難いなぁ」
「とりあえずウィステリアは、防衛軍の準備を始めています主国様にもご配慮願いたい」
「了解した、直ぐにリコ滞在軍に追加派兵する」
「お願いします」
そして次が中央斥候隊、アノミアからである
「中央中立街道にテスネアの王直属軍が出陣だ」
「む‥南下か?」
「それは分らんが数は十万だ」
「多いなぁ‥だが、これは別にいいか」
「どういう事だ?」
「中央からロドニ攻めとしても軽く五、六日は掛かる、動き見てからでいいかな」
「成る程、では監視だけ続ける」
「うむ、それと一応、ブライドレスのメリルにも」
「もう人を出している」
「分った、何かあったら連絡くれ」
「ああ」
ここで伝心を切って、本国でも各地に告知、まず、ロドニのミルデにである
「と、いう訳で相手がどこまで動くか分らん」
「中央街道からのロドニ侵攻は少々無謀かと」
「同感だ、で、だが」
「はっ、先の指令のあった街道以外からの派兵ですが間の国との交渉は進んでいます」
「流石だな」
「恐縮です」
「ミルデはどう思う?」
「フォレス陛下と見解は同じです、ですが、この同時行動の場合、ブライドレスへの攻めもあります、中央街道に十万配備した以上封鎖策、南下、ブライドレスへの侵攻、どれもありえます」
「うむ」
「こちら、ロドニへの援護派兵は現状それ程必要ありません、事前の用意で両国で五万近くあります、代理指揮の人材の派遣を、それと交渉が纏まり次第、陛下の姫君への追加軍を送った方が宜しいかと」
「同感だな、グランセルナ側は敵と面した国は無いバルクストから派兵する」
「お願いします」
ここでグランセルナ本国で閣僚会議である
「という訳で、ロドニからブライドレス、というかターニャらの軍を送るので手配」
「はっ、早速」
「テスネア本国から中央街道への配置はそのままロドニへ南下もある、が、そうなった場合も援軍はバルクストから出すで問題ない」
「了解しました」
「事前に各国責任者と話を通してあるし、各地のこっちの滞在施設への追加派兵も増やしているのでここはまあ、急なモノはないが」
「そうね、向こうが動いてからでも間に合うでしょ」
「問題はどこまでテスネアが援軍、追加派兵を送るかだがこれも今の所、こっちでやる事もないが」
「今はロベルタね」
「うむ、実際、最速でベルーサが動いた、で、これの援軍だが」
「カルディアが直ぐいけるしょ?」
「んだな、アッチ方面は既に人材も整ってるし、軍力、装備、全部あるんだよね‥」
「ほんでウチらが動きすぎると、今度は他所に対応出来ないし‥」
「同感だ、かなり兵の数も整ったけど、全方位と成ると流石に過剰援護しすぎるのもなぁ‥」
「単に兵法の基礎で云えば「出しうる最大の兵力を援軍で出す」なんだけど‥こっち空にも出来ないのもね」
そうこう悩んでいる内に、そのロベルタから情報が届く、フォレスへの直接伝心、これで方針も決定する事になる
「今、ロベルタから情報来た、テスネアの後発援軍の陣容が判明こないだの軍将と兵員三万だそうだ‥」
「ベステック?だっけ?」
「らしい」
「数は問題じゃないけど‥不味いわねこれ‥ターニャと良い勝負なんでそ?」
「メリルも云ってたが、戦術も相当上手いらしい」
「となると、相手の特注軍の対応も要るわね‥」
「だな‥ターニャクラスの個人武と、部隊戦はハーベにヴァルグフロークが居るが」
「ええ」
これで援軍の方針も決まる、というより相手に対応した場合テラ、ティア、エミリア、と成るが
エミリアは軍司令でもあるし現在中央街道、ウィステリアの対処もある為見送られ、テラは騎士団の3人纏まった方が良い事から、ティアと数人の護衛だけがそのままバルクストから援軍に向かう
同時、ロベルタから最も近いカルディアへの伝達であるが当人は状況を見て動くと、参戦の判断は任される事になる、というのも
「なんか引っ掛かるんだよなぁ‥」
「何が?」
「戦略は分った、けど、戦術でテスネアがただ攻めて来た「だけ」てのがね」
「ふむ‥けど、こっちに選択肢が無いしなぁ」
「いや、そうでもないぞ」
「例えば?」
「これはアタシが思ってるだけ、だが「策」てのは防ぐより仕掛ける方が楽だ、それは戦略でも、裏でも同じ」
「うむ、確かに、だが今回に限れば向こうの意図が明確だ豊富な軍力を使い、グランセルナ連合に共闘国と共に、多重包囲、連続戦を仕掛けて兵の分散と陥落を狙ったモノだ、ロベルタ側に裏の展開は仕掛けられないし、元々守り型だ」
「ああ、でだな、アタシはアタシでこっちから仕掛け型にしたい構わないか?」
「カルディアが何かするってなら構わんよ」
「有り難い」
「で?ヒントくらいくれるよな?」
「コッチは全部騎馬軍である、だ」
それでフォレスも即座に理解した
「成る程」
「という訳でロッゼ様にその旨を伝えてくれ、こっちからの援軍派兵は分割して行う、元々こっちに居るお前さんとこの滞在兵から送る」
「了解した」
というフォレスとカルディア間の「策」が出された事にある
二十日には第二次ロベルタ開戦が動く、ベルーサ側は街道に配置した五万の軍勢がそのまま南下、テスネアから出されたベスッテクの軍三万が後ろから同じく南下である
二十二日にはロベルタ側も過去戦と同じく、南北街道の十字路手前に三万八千布陣、正統的な正面決戦の形と成った
過去戦と同じく三陣、左右中央と軍を分けた正統陣同士で対峙、ここにロベルタ領と成っているトロント、西からの出撃参戦の形が取られる
主軍にそのままベッケルス大将
ハーベストが参謀兼分隊指揮官である
午前十時に開戦と成ったが、実戦闘は始まらなかった、というのもベルーサ側は過去、特に奇抜でない戦術面だけで敗戦している
もう一つが過去と事情が違い街道の西からも挟まれる格好であるこれで向こうから動かなかった
一時間の睨み合いの後「一応」の進軍から両軍ぶつかり合うが、殆ど手合わせに近い戦闘である「相手からすれば」ヘタ攻めは出来ない事情もあるが余りに積極性が無い、防衛なら兎も角攻め
そしてもう一つ、そうなった要素がハーベストの指示から相手が前に出れば、ロベルタ側が下がる引き込み策を見せた事だ、こうなれば、痛い目にあった方からすれば非常に押し難い
正午から相手の動きが極端に無い事
向こうの後発援軍が参戦する前に数の差を縮めるハーベストの方針から左右味方陣から「弩」で削りに掛かる、これに即座にベルーサ側も後退防衛で下がる
相手将も陣容が過去と同じ為グランセルナ軍の「弩」の強さは知っている、故、大型盾兵を並べて徹底した防御から下がって受け流し同じく距離を保ったまま弓で返して来る
「う~ん‥これは削るのも難しいですねぇ~」
戦術でも戦略でもそうだが「策」というのは相手が乗ってくれないと基本動かない、要は「欲を出す」面があって初めて華麗に展開する
相手が初めから進む気が無い以上、相当奇抜な事をしないと引っ掛かってはくれない、落とし穴も相手が前に進まないと落ちないのと同じ理屈だ
同日、午後三時までこの押し引きが続いたが、ここで連合側、カハルから出たグランセルナ滞在軍の援軍五千、先に到着してハーベの指揮下に入る
「ロベルトさんは~?」
「これからかと」
これでハーベストも閃いた。即座に一旦前線から離れ「陛下」フォレスとロベルトに伝心する、戦況の伝達と、策の指示である
「え~と、ロベルトさんは輸送軍の往復を、矢だけ死ぬ程持ってきてください~カハルの生産もフル稼働で~」
「!?」
「相手はヘタな策に掛からないのでもう武装のみを持って崩します」
が、フォレスにこの意図は分る
「成る程、攻撃面の優位性「だけ」を使う、か」
「はい~」
「こっちもそれで行く、直ぐに直轄両国から生産と輸送を繰り返す」
「お願いします~」
と、フォレスはカハルと自国の職人らに指示
同時、本国からも全輸送隊を十分割して即座に送り出した
伝心での伝達を終え、再び主軍に加わりベッケルス大将にも策を指示、午後四時から超絶ふざけた作戦が始まった
「連弩をフル稼働して打ちまくります、ベッケルスさんは前線の相手を、細かく攻めて嫌がらせを」
「しかし‥初手からやると矢がもちませんが?」
「大丈夫です~こっちの矢は尽きませんので~ロベルタからも持ってきます」
「???」
ベッケルスはこの指示で兎に角相手前線に食い付き小規模に仕掛けて足を止める、ハーベストの部隊が全弩で辺り構わず敵前線後ろや斜め横から矢を浴びせかける
「あるだけ打ちつくしていいです~矢弾切れを気にしなくて良いです~」
「策」と呼べるようなモノではない、最初から最後まで連弩での全力射撃である、ボクシングの試合で言えば開始から終わりまで猛ラッシュ、と言う事だ、当然弾切れ、スタミナ切れを起こすが矢は後から追加される
グランセルナ連合側に攻めた場合、こちら側は各地の国が近い、ロベルタ周辺も南もグランセルナ本国も輸送物資はあるし、カハルも一日半で着くと言う事だ
だが、これはやられた方はたまったものではない
防御配慮してきた、と言っても全部防げる訳ではない
「向こうの矢も何れ尽きる無意味に反撃して疲弊するな」とベルーサ将も指示したがそもそも終わりが無い
二時間の打ちっぱなし戦で、ベルーサ側が崩れ後退する事になる、勿論、それを許してくれる相手ではない
ハーベストは弩を出して、相手の後退する進路に遠距離矢を置き打ちそこに連弩を再び浴びせ前と後ろを同時に削る、足止めと陣形の前と後ろを叩きに行く、こうなるともう後退もままならない
やむなくベルーサ側も反撃近接戦に持ち込む、剣盾兵で反転して攻勢、意図して接近戦を作りつつ反撃、混戦を作ってグランセルナ側の弓を使えなくした
が、反転攻勢と言っても「前」を防ぐはロベルタの固い軍であるベッケルスの前線部隊が立ちはだかり跳ね返した、そもそもロベルタ軍とまともに近接しても崩せる軍はそうはいない
異常な程重武装の歩兵だ、武装に掛けている金額が違う、ある意味この当日の戦いは両国の「内政」の問題の戦いとも成った
ロベルタの豊か過ぎる国土と財政、グランセルナ本国の飛び抜けた後方支援力の力である、これは他所が改善しようととか真似しようとして出来る物ではない、人口、経済力、生産力、技術の差だからだ、国の起こりから全て準備されて作り上げて来たものだ
夕方に両軍一旦収集、当日凌、ベルーサ側将もどうしょうもない、実際、「こちら側」だけ終始劣勢で被弾率にも大きく差が出た
兵損耗、ベルーサ千五百。 連合百二十である
翌日、朝9時にはグランセルナ連合に早速の輸送第一団、カハルから最速で「矢」だけの輸送がロベルタに届く、そしてこの輸送軍はそのまま帰って再び矢を補充に戻る
つまりこの作戦の肝はこれだ、細かく分けた輸送で只管、カハルやグランセルナから、矢を絶やさず持って来て、前線のハーベストが有るだけ撃ちまくるという、非常に単純な「後方支援力」を活かした攻めである
「尽きない矢作戦です~」と「えっへん」と自慢げにハーベストに説明されたがロッゼらも「な、なるほど」としか言いようが無い(ネーミングセンス悪)というのもあるが
戦場、戦術でここを活かして打ち崩す、という発想がそもそも、普通の軍将では思いつかない、これはハーベが、元々武力面で著しく能力が無い所
戦略、戦術、政治、両面に置いて適正が高い事にある、兎角、指揮官、軍将と成ると自己の武力や能力を使い打開を図りたがるがハーベにはそこが元々皆無。馬に乗れば落っこちるし、剣を振るってはすっぽ抜けてすっ飛んでいくレベルの武の無さで
だから「物事への拘りが無い」事。優位に出来るなら、何でも使う、この作戦はある意味最も彼女らしさが発揮された、とも云える
2日目の開戦も同じ形で進み、10時から12時の二時間で
ベルーサ側は更に千近い被害を上乗せする
対応、と言っても武装的優位性と有り得ない後方支援力を利用した全力連弩射撃である、どうにも改善する手が無い、そもそも遠距離反撃でも負けるし同じく打ち返しても向こうの矢が尽きない上に
グランセルナ軍は元々「壁盾隊」があり防御線の強さが違うのだ、やむなく、前日と同じく近接戦闘を仕掛けて相手の矢を打ちにくくするしかない
ベルーサ将も臍を噛んだが、14時にはテスネアからの援軍三万が来援して参戦の形に成った為多少展開は変わるだろうと考えた
それは其の通りでベステックは参戦と同時
自軍をベルーサの左に布陣して早速の初手の突撃を打つ、突撃、と言っても三万の突撃である、まして相手司令はベステックだ
「数を活かす、全軍左回り薙ぐ様に突撃」だ
グランセルナ連合側右翼は防御陣に展開して一時これを防ぐが、数と武力が違う
が、これで即座に主軍を預かるベッケルが横並び陣形から、円陣に戦いながら再編しつつ、防御を厚くすると同時、連合別軍を一つに集めて合流して防ぎとめる
グランセルナ連合軍のもう一つの強みは、高い連携力と、其々から参戦している指揮官の能力の高さである、其々が其々、どこの国の主将を務めても不思議が無い程人材が豊富だ
要は最初から示し合わせなくてもアドリブで動いて効率的に動ける、急な展開での対応力が違う
ベッケルがこの行動を取ると略同時、ハーベの軍も合わせて円陣の内側に下がり今度は「弩」での反撃を横突撃してくるベスッテクの軍中段に遠距離「上」から矢のスコールを浴びせる
ここで相手の進軍が鈍った瞬間ベッケルスが最前線に重装備兵を展開しつつ、突撃を打ち返して相手を引かせる、流石にベステックも「上手いな」と呟いて進軍を停止する
即座にハーベは円陣の中からの射撃を継続しつつ百単位の弓騎馬軍を十部隊編成して出撃、横を突いて来たベスッテクの更に側面を駆け抜けながら射撃を行いを連続で続け、相手の側面から切り崩す
丁度ベルトコンベアがグルグル回るように弓騎馬で回りながらの終らない射撃戦である、これにはベステックも「維持」は無理と考えて防御後退せざる得なかった
十字街道決戦は再び膠着戦の様相を呈した
「フォレス、テスネアから軍が動いた」
「どこへ?」
「北、以外の全方位」
「む‥」
「残念ながら私らでも明確な目的地は掴みきれん」
「分った、やむおえん、無理せん程度で監視を」
「了解した」
最初にグランセルナ連合への軍事行動が表れたのが、十八日、東から、つまりロベルタ方面であった
ロベルタ本国にも斥候隊から情報が届きロッゼに伝えられ、即、高官会議と成った、二年前と同じ形である
「ベルーサか‥」
「南北街道を南進、街道中間点コチラ側に陣を敷き、牽制の動きです」
ロッゼも直ぐに外交会談の指示を出したがそれが行われる前にベルーサからの布告が来る、同時、テスネアからの「我共闘連合は先の宣誓通り、グランセルナ連合から皇様をお救いする」と布告が出される、つまり「問答無用」と言う事だ
こうなると如何に穏健派のロッゼでも防衛戦をする、という以外の判断は無い、そして過去の対ベルーサ戦とは違い、事前にフォレスから注意喚起が成されている、その為、混乱というのも殆ど無い
予定調和に近く兵、軍の準備も既に整えてある、直ぐにロベルタ、元の共和国との合同会議を開き告知と防衛戦の用意、策自体も「街道に布陣し、守って防ぐ」に決まり、各国軍をロベルタ北に集める事と成った
そしてもう一つ過去と違う点はグランセルナ連合として既に一つに纏まっており、共和形態の時と違い、連動し、精神的、実力共に強固である点である、ゼントラム連合はグランセルナ側とは違いそこが欠点ではある
情報の連絡を受けたフォレスもインファルもそこが逆に気掛かりな点だ、そう「何故テスネアはこの様なムチャな形を進めるのか」だ
これは先に両者から指摘が有ったとおり「脆い共闘」「仮に勝ったとしてその先の展望があるのか?」という部分である
ベルーサ側は過去の開戦と同じ形、街道に陣を敷き、自軍5万、これにテスネアからの後発援軍を待つ形だろう、一方、ロベルタは周辺と合せ、同数五万に、グランセルナ滞在軍のハーベストの軍、八千である
「一体何を考えているのでしょう‥」
ロベルタ本国会議でも、グランセルナ本国会議でもそこが疑問だ
「攻めなのに戦力に違いが無い、というのもどうかと思うが‥」
「しかも、過去、優勢戦力で負けていますが‥」
どちらの会議もそう周囲から発言が出る程の意味不明に近い「攻め」だった
「問題はテスネアだな。完全にそれ待ちであるのは明白だ」
「テスネアは軍力、数だけは半端じゃない、どこまで増援を出すかに寄る」
「ご尤もですね」
「と、なれば、先に仕掛けるのも悪くないが」
「基本的に私達連合は守るが信条ですが‥」
「ふむ、北からなら先年と同じ対応で宜しいかと」
「ハーベストさんはどう思われます?」
「え、え~と、ロッゼ様の仰るとおりですね基本防御戦でしょう、ただ、フローデ領王様の仰る事も間違いではありませんが」
「正直、僕も意味不明に近い、何か向こうに策が無い限りこの戦争は無謀だ」
「同感です~」
「ただ、相手の後ろにテスネアが居る以上、ヘタに進むのも罠の可能性もあるがな」
「そですね‥、私も積極策はあまり打ちたくありませんねぇ~」
「分りました、兎に角、軍の結集と防衛戦で向こうに動きが出てからで宜しいかと思います」
「分った」
と一旦会議は切られた。この意味不明な「攻め」の全容は時間の経過と共に明らかに成って来る、この会議から翌日朝には本国グランセルナのフォレスの元に次々と報が届く
「南西地でも動き?」
「はっ、西地域から南下の動きがあります、先の中央連合からの布告を見る限り、おそらく狙いはココかと‥まだ実兵は動いていませんので、確定ではありませんが」
そう、グレゴールが伝心を送ってきた
これで「向こう」の打った手が分った
「成る程な、全方位からの同時包囲戦か」
「おそらく、グランセルナ連合は相手と比べて数が多くありません、全方位から同時侵攻でこちらの戦力分断を図るつもりでしょう」
「同感だ、しかし、こりゃ動き難いなぁ」
「とりあえずウィステリアは、防衛軍の準備を始めています主国様にもご配慮願いたい」
「了解した、直ぐにリコ滞在軍に追加派兵する」
「お願いします」
そして次が中央斥候隊、アノミアからである
「中央中立街道にテスネアの王直属軍が出陣だ」
「む‥南下か?」
「それは分らんが数は十万だ」
「多いなぁ‥だが、これは別にいいか」
「どういう事だ?」
「中央からロドニ攻めとしても軽く五、六日は掛かる、動き見てからでいいかな」
「成る程、では監視だけ続ける」
「うむ、それと一応、ブライドレスのメリルにも」
「もう人を出している」
「分った、何かあったら連絡くれ」
「ああ」
ここで伝心を切って、本国でも各地に告知、まず、ロドニのミルデにである
「と、いう訳で相手がどこまで動くか分らん」
「中央街道からのロドニ侵攻は少々無謀かと」
「同感だ、で、だが」
「はっ、先の指令のあった街道以外からの派兵ですが間の国との交渉は進んでいます」
「流石だな」
「恐縮です」
「ミルデはどう思う?」
「フォレス陛下と見解は同じです、ですが、この同時行動の場合、ブライドレスへの攻めもあります、中央街道に十万配備した以上封鎖策、南下、ブライドレスへの侵攻、どれもありえます」
「うむ」
「こちら、ロドニへの援護派兵は現状それ程必要ありません、事前の用意で両国で五万近くあります、代理指揮の人材の派遣を、それと交渉が纏まり次第、陛下の姫君への追加軍を送った方が宜しいかと」
「同感だな、グランセルナ側は敵と面した国は無いバルクストから派兵する」
「お願いします」
ここでグランセルナ本国で閣僚会議である
「という訳で、ロドニからブライドレス、というかターニャらの軍を送るので手配」
「はっ、早速」
「テスネア本国から中央街道への配置はそのままロドニへ南下もある、が、そうなった場合も援軍はバルクストから出すで問題ない」
「了解しました」
「事前に各国責任者と話を通してあるし、各地のこっちの滞在施設への追加派兵も増やしているのでここはまあ、急なモノはないが」
「そうね、向こうが動いてからでも間に合うでしょ」
「問題はどこまでテスネアが援軍、追加派兵を送るかだがこれも今の所、こっちでやる事もないが」
「今はロベルタね」
「うむ、実際、最速でベルーサが動いた、で、これの援軍だが」
「カルディアが直ぐいけるしょ?」
「んだな、アッチ方面は既に人材も整ってるし、軍力、装備、全部あるんだよね‥」
「ほんでウチらが動きすぎると、今度は他所に対応出来ないし‥」
「同感だ、かなり兵の数も整ったけど、全方位と成ると流石に過剰援護しすぎるのもなぁ‥」
「単に兵法の基礎で云えば「出しうる最大の兵力を援軍で出す」なんだけど‥こっち空にも出来ないのもね」
そうこう悩んでいる内に、そのロベルタから情報が届く、フォレスへの直接伝心、これで方針も決定する事になる
「今、ロベルタから情報来た、テスネアの後発援軍の陣容が判明こないだの軍将と兵員三万だそうだ‥」
「ベステック?だっけ?」
「らしい」
「数は問題じゃないけど‥不味いわねこれ‥ターニャと良い勝負なんでそ?」
「メリルも云ってたが、戦術も相当上手いらしい」
「となると、相手の特注軍の対応も要るわね‥」
「だな‥ターニャクラスの個人武と、部隊戦はハーベにヴァルグフロークが居るが」
「ええ」
これで援軍の方針も決まる、というより相手に対応した場合テラ、ティア、エミリア、と成るが
エミリアは軍司令でもあるし現在中央街道、ウィステリアの対処もある為見送られ、テラは騎士団の3人纏まった方が良い事から、ティアと数人の護衛だけがそのままバルクストから援軍に向かう
同時、ロベルタから最も近いカルディアへの伝達であるが当人は状況を見て動くと、参戦の判断は任される事になる、というのも
「なんか引っ掛かるんだよなぁ‥」
「何が?」
「戦略は分った、けど、戦術でテスネアがただ攻めて来た「だけ」てのがね」
「ふむ‥けど、こっちに選択肢が無いしなぁ」
「いや、そうでもないぞ」
「例えば?」
「これはアタシが思ってるだけ、だが「策」てのは防ぐより仕掛ける方が楽だ、それは戦略でも、裏でも同じ」
「うむ、確かに、だが今回に限れば向こうの意図が明確だ豊富な軍力を使い、グランセルナ連合に共闘国と共に、多重包囲、連続戦を仕掛けて兵の分散と陥落を狙ったモノだ、ロベルタ側に裏の展開は仕掛けられないし、元々守り型だ」
「ああ、でだな、アタシはアタシでこっちから仕掛け型にしたい構わないか?」
「カルディアが何かするってなら構わんよ」
「有り難い」
「で?ヒントくらいくれるよな?」
「コッチは全部騎馬軍である、だ」
それでフォレスも即座に理解した
「成る程」
「という訳でロッゼ様にその旨を伝えてくれ、こっちからの援軍派兵は分割して行う、元々こっちに居るお前さんとこの滞在兵から送る」
「了解した」
というフォレスとカルディア間の「策」が出された事にある
二十日には第二次ロベルタ開戦が動く、ベルーサ側は街道に配置した五万の軍勢がそのまま南下、テスネアから出されたベスッテクの軍三万が後ろから同じく南下である
二十二日にはロベルタ側も過去戦と同じく、南北街道の十字路手前に三万八千布陣、正統的な正面決戦の形と成った
過去戦と同じく三陣、左右中央と軍を分けた正統陣同士で対峙、ここにロベルタ領と成っているトロント、西からの出撃参戦の形が取られる
主軍にそのままベッケルス大将
ハーベストが参謀兼分隊指揮官である
午前十時に開戦と成ったが、実戦闘は始まらなかった、というのもベルーサ側は過去、特に奇抜でない戦術面だけで敗戦している
もう一つが過去と事情が違い街道の西からも挟まれる格好であるこれで向こうから動かなかった
一時間の睨み合いの後「一応」の進軍から両軍ぶつかり合うが、殆ど手合わせに近い戦闘である「相手からすれば」ヘタ攻めは出来ない事情もあるが余りに積極性が無い、防衛なら兎も角攻め
そしてもう一つ、そうなった要素がハーベストの指示から相手が前に出れば、ロベルタ側が下がる引き込み策を見せた事だ、こうなれば、痛い目にあった方からすれば非常に押し難い
正午から相手の動きが極端に無い事
向こうの後発援軍が参戦する前に数の差を縮めるハーベストの方針から左右味方陣から「弩」で削りに掛かる、これに即座にベルーサ側も後退防衛で下がる
相手将も陣容が過去と同じ為グランセルナ軍の「弩」の強さは知っている、故、大型盾兵を並べて徹底した防御から下がって受け流し同じく距離を保ったまま弓で返して来る
「う~ん‥これは削るのも難しいですねぇ~」
戦術でも戦略でもそうだが「策」というのは相手が乗ってくれないと基本動かない、要は「欲を出す」面があって初めて華麗に展開する
相手が初めから進む気が無い以上、相当奇抜な事をしないと引っ掛かってはくれない、落とし穴も相手が前に進まないと落ちないのと同じ理屈だ
同日、午後三時までこの押し引きが続いたが、ここで連合側、カハルから出たグランセルナ滞在軍の援軍五千、先に到着してハーベの指揮下に入る
「ロベルトさんは~?」
「これからかと」
これでハーベストも閃いた。即座に一旦前線から離れ「陛下」フォレスとロベルトに伝心する、戦況の伝達と、策の指示である
「え~と、ロベルトさんは輸送軍の往復を、矢だけ死ぬ程持ってきてください~カハルの生産もフル稼働で~」
「!?」
「相手はヘタな策に掛からないのでもう武装のみを持って崩します」
が、フォレスにこの意図は分る
「成る程、攻撃面の優位性「だけ」を使う、か」
「はい~」
「こっちもそれで行く、直ぐに直轄両国から生産と輸送を繰り返す」
「お願いします~」
と、フォレスはカハルと自国の職人らに指示
同時、本国からも全輸送隊を十分割して即座に送り出した
伝心での伝達を終え、再び主軍に加わりベッケルス大将にも策を指示、午後四時から超絶ふざけた作戦が始まった
「連弩をフル稼働して打ちまくります、ベッケルスさんは前線の相手を、細かく攻めて嫌がらせを」
「しかし‥初手からやると矢がもちませんが?」
「大丈夫です~こっちの矢は尽きませんので~ロベルタからも持ってきます」
「???」
ベッケルスはこの指示で兎に角相手前線に食い付き小規模に仕掛けて足を止める、ハーベストの部隊が全弩で辺り構わず敵前線後ろや斜め横から矢を浴びせかける
「あるだけ打ちつくしていいです~矢弾切れを気にしなくて良いです~」
「策」と呼べるようなモノではない、最初から最後まで連弩での全力射撃である、ボクシングの試合で言えば開始から終わりまで猛ラッシュ、と言う事だ、当然弾切れ、スタミナ切れを起こすが矢は後から追加される
グランセルナ連合側に攻めた場合、こちら側は各地の国が近い、ロベルタ周辺も南もグランセルナ本国も輸送物資はあるし、カハルも一日半で着くと言う事だ
だが、これはやられた方はたまったものではない
防御配慮してきた、と言っても全部防げる訳ではない
「向こうの矢も何れ尽きる無意味に反撃して疲弊するな」とベルーサ将も指示したがそもそも終わりが無い
二時間の打ちっぱなし戦で、ベルーサ側が崩れ後退する事になる、勿論、それを許してくれる相手ではない
ハーベストは弩を出して、相手の後退する進路に遠距離矢を置き打ちそこに連弩を再び浴びせ前と後ろを同時に削る、足止めと陣形の前と後ろを叩きに行く、こうなるともう後退もままならない
やむなくベルーサ側も反撃近接戦に持ち込む、剣盾兵で反転して攻勢、意図して接近戦を作りつつ反撃、混戦を作ってグランセルナ側の弓を使えなくした
が、反転攻勢と言っても「前」を防ぐはロベルタの固い軍であるベッケルスの前線部隊が立ちはだかり跳ね返した、そもそもロベルタ軍とまともに近接しても崩せる軍はそうはいない
異常な程重武装の歩兵だ、武装に掛けている金額が違う、ある意味この当日の戦いは両国の「内政」の問題の戦いとも成った
ロベルタの豊か過ぎる国土と財政、グランセルナ本国の飛び抜けた後方支援力の力である、これは他所が改善しようととか真似しようとして出来る物ではない、人口、経済力、生産力、技術の差だからだ、国の起こりから全て準備されて作り上げて来たものだ
夕方に両軍一旦収集、当日凌、ベルーサ側将もどうしょうもない、実際、「こちら側」だけ終始劣勢で被弾率にも大きく差が出た
兵損耗、ベルーサ千五百。 連合百二十である
翌日、朝9時にはグランセルナ連合に早速の輸送第一団、カハルから最速で「矢」だけの輸送がロベルタに届く、そしてこの輸送軍はそのまま帰って再び矢を補充に戻る
つまりこの作戦の肝はこれだ、細かく分けた輸送で只管、カハルやグランセルナから、矢を絶やさず持って来て、前線のハーベストが有るだけ撃ちまくるという、非常に単純な「後方支援力」を活かした攻めである
「尽きない矢作戦です~」と「えっへん」と自慢げにハーベストに説明されたがロッゼらも「な、なるほど」としか言いようが無い(ネーミングセンス悪)というのもあるが
戦場、戦術でここを活かして打ち崩す、という発想がそもそも、普通の軍将では思いつかない、これはハーベが、元々武力面で著しく能力が無い所
戦略、戦術、政治、両面に置いて適正が高い事にある、兎角、指揮官、軍将と成ると自己の武力や能力を使い打開を図りたがるがハーベにはそこが元々皆無。馬に乗れば落っこちるし、剣を振るってはすっぽ抜けてすっ飛んでいくレベルの武の無さで
だから「物事への拘りが無い」事。優位に出来るなら、何でも使う、この作戦はある意味最も彼女らしさが発揮された、とも云える
2日目の開戦も同じ形で進み、10時から12時の二時間で
ベルーサ側は更に千近い被害を上乗せする
対応、と言っても武装的優位性と有り得ない後方支援力を利用した全力連弩射撃である、どうにも改善する手が無い、そもそも遠距離反撃でも負けるし同じく打ち返しても向こうの矢が尽きない上に
グランセルナ軍は元々「壁盾隊」があり防御線の強さが違うのだ、やむなく、前日と同じく近接戦闘を仕掛けて相手の矢を打ちにくくするしかない
ベルーサ将も臍を噛んだが、14時にはテスネアからの援軍三万が来援して参戦の形に成った為多少展開は変わるだろうと考えた
それは其の通りでベステックは参戦と同時
自軍をベルーサの左に布陣して早速の初手の突撃を打つ、突撃、と言っても三万の突撃である、まして相手司令はベステックだ
「数を活かす、全軍左回り薙ぐ様に突撃」だ
グランセルナ連合側右翼は防御陣に展開して一時これを防ぐが、数と武力が違う
が、これで即座に主軍を預かるベッケルが横並び陣形から、円陣に戦いながら再編しつつ、防御を厚くすると同時、連合別軍を一つに集めて合流して防ぎとめる
グランセルナ連合軍のもう一つの強みは、高い連携力と、其々から参戦している指揮官の能力の高さである、其々が其々、どこの国の主将を務めても不思議が無い程人材が豊富だ
要は最初から示し合わせなくてもアドリブで動いて効率的に動ける、急な展開での対応力が違う
ベッケルがこの行動を取ると略同時、ハーベの軍も合わせて円陣の内側に下がり今度は「弩」での反撃を横突撃してくるベスッテクの軍中段に遠距離「上」から矢のスコールを浴びせる
ここで相手の進軍が鈍った瞬間ベッケルスが最前線に重装備兵を展開しつつ、突撃を打ち返して相手を引かせる、流石にベステックも「上手いな」と呟いて進軍を停止する
即座にハーベは円陣の中からの射撃を継続しつつ百単位の弓騎馬軍を十部隊編成して出撃、横を突いて来たベスッテクの更に側面を駆け抜けながら射撃を行いを連続で続け、相手の側面から切り崩す
丁度ベルトコンベアがグルグル回るように弓騎馬で回りながらの終らない射撃戦である、これにはベステックも「維持」は無理と考えて防御後退せざる得なかった
十字街道決戦は再び膠着戦の様相を呈した
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