境界線の知識者

篠崎流

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弱者の戦略

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ペンタグラムからロベルタに着いたのは当日の昼、ペンタグラムの移動魔法陣がロベルタに西にある為と、フォレスもティアも風術がある為飛べるという事だ、近くに転移出来るなら後は飛べば直ぐだ

「やっぱり魔力に余裕があると、飛行も楽だな」
「意外と役に立っている様だな、その似合わん杖」
「だな、デカイ石だし、結構連打出来る」
「所で何日ほど滞在だ?」
「ワカラン、が、森に里帰りするなら構わんぞ、伸ばす」
「読んでたか」
「まあ、近い、という程でもないがお前なら飛べるからな、行って来い」
「すまんな、そうさせてもらう」
「ああ」

と二人は別行動に、フォレスは一人で王城へである。迎えられて城の客間に案内されて、その後はロッゼに呼ばれての雑談である、一時間程お茶の場で雑談しながらも

「よくそんなにしゃべることがあるなぁ」とウンウン聞いていた

客室に戻る前に、ある用事の為にシンシアに「いらない密室で、狭い部屋無いか?」と聞いて案内される。そこで道具を出して作業

「何をするつもりなんですか?」
「んー、こことオレの国じゃ遠いしな、転移陣でも置いておく」

魔法陣を書いて、古代言語もビッシリ書いた
陣の周囲に魔石を置いて固定する

「これって‥」
「そ、ペンタグラムの転移装置の小型版だ、一応特別調整したものだが、連続では使えん、ここぞという時だけ使え、多分年7~10回くらいしか石が耐えられん」
「わ、わかりました」
「それと鍵だシンシアなら信用できるだろ」

そして指輪「鍵」も2個、彼女に託した

「ここは秘密のがいいんですかね」
「んー、クロスとかも大丈夫だろ、まあ、鍵無いと発動自体しないから問題ないが、壊されたり消されたりするとアレだしな」
「わかりました」
「念のため、だ。どっかに攻められる、事もあるかも知れんし、内部に不安があるというのも、前に聞いている、オレに聞きたい事とかそんとき使え」
「はい、助かります」
「後は滞在も一週間くらいする、其の間に別なアイテムも作る、出来ればエンチャント向きの石が欲しい」
「なんとかなると思います、こちらでは使い道が無いので、ロッゼ様がそのままお持ちです」
「4,5個あればいい」
「了解しました」

必要な事だけ交換し、部屋を出た後鍵を掛け、何気ないフリして別れて其々戻った

30分後にはシンシアが再びフォレスの部屋に戻り石を預けてフォレス自身はそのまま篭って作業となった

キッチリ三日後には「伝心」のエンチャント武具を作りこれもシンシアに任せる

「3個ある、これで遠隔で会話出来る」
「ほほう‥」
「近衛で共有してもいいだろう、正直距離がどこまで届くかしかとは判らんが」
「成る程」
「まあ、それほど重要ではないな、それより同盟だが」
「ええ、ですがこれももめてます」
「表面上のメリットが余り見えないからな‥」
「そうなんですよね。なんのメリットがあるのかと、色々と‥」
「ロッゼの個人的な考えでの表面的なモノに近い感じだしな、ま、そこはいいだろ、無理矢理やらんでも。紙の上での事に拘りはすまい」
「そうですね」

実際、城でフォレスとロッゼの両国での友好パーティーの類は行われたが、それ自体表面的な事である、フォレスの歓迎会に近い。そもそも外交も無ければ、国交も無い、隣接地でもない

軍事、商売、戦略のどれにも当て嵌まらない為、結局紙の上の同盟も成されなかった

きっちり7日目にはティアも戻って合流、そのまま何かするでも無くロベルタを後にした、ロッゼも城門まで出て手を振って見送った

来たルートを「転移」でそのままグランセルナ方面まで飛んで帰国である、歩きながらティアはポツリと云って、問いかけた

「ロッゼ様はお前に気がある様だな」
「そうか?」
「全然他の奴と接する時と態度が違うぞ?」
「ふむ、なんか明るいよな、普段はなんか憂いがある感じだし」
「眼の輝きが違う」
「向こうも女王だしな、まさか嫁ぐ訳にもいかんだろ」
「確かに‥‥めちゃくちゃもめそうだ」
「ま、状況が変わったら考えるさ、今の所答えてやる事も出来んよ、国が潰れかねん」
「というか判ってたんだな」
「まぁな、一応そこまでニブチンではないぞ」
「しかし軽い奴だ‥」
「どうにも成らん事を考えても仕方無いさ、つーかオレのどこが気に入ったのか‥」
「さてね‥」

「それより、森はどうだった?」
「やはり‥不安の類は多いみたいだな。あの辺りから北二つも小競り合いの防衛戦があったようだ」
「そうか」
「結局どこでも拡大の不安は多い、何が目的で戦っているのか‥」
「まあ、国家的プライド?、其の辺りは当事者にしか判らんだろうが、勝てれば国は増えるとか、防衛の為に先に殴っとけとか、周りにせっつかれてやる事もあるし、国民とか」
「アホなんじゃないか?」
「国家間会議で判るだろう、大体あんなもんだ」
「そうだな、歴史的にも大体そうだし」
「うむ、当時はどうか知らんが、後から読むとどれも碌なもんじゃない理由で始まってるしな」

自室に戻った所で「お疲れ様でした如何でしたか?」とメリルに聞かれたが、どうにも言いようの無い会議だった

「議論に成ってない、全員言いたい事を言ってるだけ、つか、集まる意味が無いな」
「‥なんですかそれは」
「行ってみりゃ判るよ、次は任せる‥というかそうとうむかつくと思うが」
「それは遠慮したいですね」
「ま、実際ホントに集まり悪いしな、半分来てないし、まともな人間なら皆同じ見解から来ないだろうな」
「つまり来ない所がまとも、となりますか」
「半分そうかな、ロッゼも来てるし、中央の意思を探りに来てる面もあるだろな、ぶっちゃけ、ペンタグラムに媚を売る名目もあるだろう」
「なるほど、所で戦略的に今後ですが」

「ウチはやる事ないなぁ、引き続き様子見だな」
「王様ならどうします、例えば中央なら」
「さーね、話通じる奴だけ集めて軍事か経済協力だろうな、威圧くらいしかやる事ねーな」
「ロベルタとの同盟は成されなかったようですね」
「ロッゼの独断に近いからな、周りから反対されて立ち消え、彼女の立場を悪くしかねないんでオレも無理はさせなかったな」
「それも周り、ですね」

「ルートが無くても繋がる所、例えば、心、でも重要なんだけどな、ま、これは仕方無いさ」
「心ですか?」
「どこどこの国と国は仲が良いし、あっちを攻めたら後ろから突かれるとか、経済的圧迫される事があると敵に思わせるだけでも大分違うんだが」
「成る程ねぇ‥」
「別に地図上の「隣接」に拘る必要も無い、そもそも二つが組めば日和って自分も、という国が出てくる事もある、それがデカクなれば成る程、情勢も動きにくくなるからな」
「確かにそうですね、だから例の指示のあった「東」なんですね」
「北も西も一応期限付き不戦はした、後は東の川をどうにかして、向こうの部族連中と組めれば、今度はカハルとも繋がる、カルディアも優秀な王だし、知り合いだからな」
「流石王様」
「ま、とりあえずコッチはそれを進めよう、東に橋か船用意するさ」

「ええ、屯田兵や工作兵の類が現在500ほどコチラの川族の村に行ってます、復興と建築で生活の安定を図るのが先ですね」
「懐柔出来てるのかな?」
「問題ないです、食料と石家、苗、種の援助も始まってます、自活も進むと思います、南側も調査が入ってますが、まだ全部では」
「うん、判った、とりあえず内部の事が先だな」
「はい」

領土がデカイ、というのがまだ内政の安定が終ってない理由でもある、何しろ、アチコチ分散して住んでいる人間が多い、しかも種類もバラバラ、色々な地方から流れてきた人間が多く、元々未開の地なので地元の部族なんかも大量に居る

ただ、何れも、初期の「食えてない」状況がある為中央からの援助や自活方法の伝授で、今の所フォレスに心服する者が多く問題は出ていない、そもそも税自体も極端に安く、不満を覚える者もまず居ない

まず内地の安定と平定が先だとも言える、立国から日が浅く、拡大の速度の割り、状況の整いがまだ追いついていない

フォレス自身は既に五、六手先を見越していたし、既に計画もあったが、それを行う状況に至っていなかったというのもある

彼の想像を超えて状況がプラスだったのは「人」だろうか。人材の優秀さと、志願兵である、兵に至ってはそこまで強化を急いで居なかったのだが

志願だけで既に八千を超えていた、しかもこれでも人口の0、5%以下である、更に人口がまだ増える予定という

特に「半々兵」の制度のお陰で公共投資の類や整備等が非常にやりやすく、内地の面ではやりたい事が殆ど出来るという状況にあった

そして更に一月後
その中から「なら内政と外交同時やっちまえ」という判断をした

「そろそろ始めとくか」とフォレスは軍と参謀を集めて会議
そこで「次これやるわ」とだけ云って書類を配った

「弓騎馬と牛車と、あと何ですかこれログフット?」
「前二つは元々居るので周知だが、南領土外だが珍しい動物が群生してるのが見つかったんで、捕獲というか確保した、サイの仲間だな」
「ほう…」
「滅茶苦茶頑丈で巨体で温厚でとんでもないパワーを持つ動物と言うか一種の魔物だな」
「大丈夫なんですか?そんなもの飼って…」
「ああ、四メーター二トンくらいで前方に進む力がとんでもなくある、大昔家畜化して使ってた、馬で言うと一頭で10馬力~くらいあるので輸送に使える、餌、特に甘い物を食わすと人に直ぐ馴染むし温厚なんで大丈夫だ」
「ほう」
「まあ、それは後でいいだろう、南耕作地に置いてあるんで興味のあるやつは見に行くといい」
「わかりました」

「馬と牛が食い物と草のお陰でかなり多い、周囲の村なんかの復興にあわせて向こうにも配る、そこでまた増やしてもらう、コッチで全負担、無料でいい」
「判りました」
「んで、輸送もそれ中心で、コッチが牛車と馬車の製作書ね、軍では兵糧隊とか後方支援が最も大事だ、動脈と言っていい」
「ほほう‥」
「まあ、そこは普通のモンだな、護衛隊だけ特殊にするが、後背襲撃対策とか、其の辺りはまた後で、まだ決まってないし、多分、ローラの所みたいにする予定だ」
「はい」

「んで、騎士団が出来たのにあわせて首都警備のやる事が減ったんでおっさんはこの弓騎馬隊の長にする、元々馬は得意だろ?」
「勿論です任してください!」

「んで、もう一つがコレね、連弩。騎馬の機動力を使って距離と速度を活かす、おっさんはこれの訓練も頼む、つっても連打式だし、上手く当てる必要も無いから楽やろ」
「弓はそれなりの錬度が要るのでは?」
「こいつは撃って走りながら逃げればいい、んで、撃てるのが通常の三倍だ、多重装填式のクロスボウになる、狙って当てる事も無い、点じゃなくて面で当てる」
「石を投げる、で無く、ばら撒くですね?」
「そーだ、矢じりに工夫がしてある、小型ハンドクロスボウだけど威力と射程は補った、馬の操作に弊害が出ないように片手持ちにする、これ、設計図ね、街の職人に委託してくれ」
「了解です」

「次に木材の余り分が森からまた来るんで、これを川に向こうに船やろう」
「そうですねぇ」
「まあ、一応作るけど、これ船設計図ね」
「は?!こ、これは?」
「イカダの巨大版、川の上に移動する地面を、という感じだな、ついでにこれで向こうの住人に渡す、上で生活しながら大河の真ん中で魚取れる、んで輸送と建築の足場も楽だ、何しろ家ごと移動出来る」
「発想の転換ですねぇ‥」
「まあ、これも大昔に水上住民てのが居てな、家と船の機能を同時に使ってた、当然丸ごと移動出来るし、下は常に水なんで魚とりとかと同時にやれる、ただ、場所が限定されるな、下流に大河が交錯して一本になる、流れが緩やかになる所があるだろ、そこでいい」
「了解です、それと」
「ああ、治水工事が要るだろうな」
「結構大変ですねぇ」
「そうでもないな、簡単にやろう、波消しを作る、川の一定間隔に巨石を落として放置でいい」
「なるほど」

「これも一部でいい、増水の際の退避場所の確保だな縦にいくつかやって流れの緩和があればいい、通常自には「イカリ」にも使う」
「はい」
「まあ、川の合流点に中州というか陸があるし、それほど流れも速くないから、左程問題ないだろう、一応、両岸にもアンカーを掛けて、ロープを渡す」
「なるほど、わかりました」

フォレスにとっては「君主」というのはやりたい事を出来る、有り余る知識を活かせる場でもあった、1から、という状況がそれにある、彼自身も「めんどくさい」がずっとあったが、この時期から「おもしろい」に変わっていた

20ヶ月の頃には東も掌握した事もあり、大河から東の別の国へ。少数部族の類とも一つ一つ交渉を図った、この辺りは森と山ばかりであり「部族」というだけあって、国家概念が薄い、その為

「そっちはそっちで好きにやればい、援助もするから通行と交易をやろう」

と持ちかけ対等な関係での同盟を図った、というより、一方的な援助に等しく、相手側も臣従する形に近くなった

フォレスはそのまま新設の騎馬隊と大河を渡って東へ、そのまま繋がったルートから北へ流れる、つまりカルディアとコンタクトを取った、カハルレストの宮殿で彼女と再会したのである

「南から外交と言うから何かと思ったがお前か」
「オレだ」
「噂はこっちでも聞いてるよ王様」
「だろうな」
「用件は?」
「同盟、いや、連合だな」
「ふむ、条件は?」
「こっちの農法と種子の提供、人材の派遣、技術の提供、交易と、もう始めているが街道の整備全部こっちでやる」
「それは一方的なそちらの庇護に近くないか!?」
「が、通行権と駐留軍の駐屯をお願いしたいな、街道整備に人が要るし、何をするのもちゃんとした道が要るな」

「うーん‥別にコッチは何も損は無いが‥なんの得があるんだそれ?お前の土地は鉱石類も地元で結構取れるだろ?」
「目的は、なんだろう?戦略的な繋がりかなぁ?ロベルタとも同盟したいし援軍ルートが欲しい」
「ああ、そういう事か‥」
「4地域同盟となりゃ、今後、何があっても対処し易いし、派兵ルートも全部陸地が繋がったほうがいい」
「いいだろう、というかお願いしますだな(笑」
「まあ、オレとお前の仲だ、楽しくやろうぜ」
「王の言葉とも思えんな、が、よく考えている」
「どうも」

「問題は兵力だなぁ、かなり全体領土デカイぞ、反面戦力は極端に少ない、ロベルタも4千ないだろ」
「カルディアのとこは?」
「ウチでも二千程度だ、ああ、だから駐留軍か」
「基本オレの所から出す事になるなぁ、後、ここにある程度兵置いた方が全方面への移動が楽だ」
「そうだなぁ、グランセルナとロベルタの中間点だしな」
「後南東地区の部族も9割組んだ、併合ではないが、ほぼ併合に近い」

「兵力は?」
「まだ、調査中だが、人口は全部で12万くらい、兵は5,6千だろうな、後結構頼りになりそうだ、バラバラだけど、好戦的で度胸がある、大抵狩猟民族だし」
「ふむふむ」
「つーか戦いが好きな連中が多い、お上品でもないしな、反面食い物とか商品とか、家とか極端に劣ってる、こっちの交易と街道整備と装備援助で既に大喜びだ」
「そりゃ楽でいいな」

「んで、義理堅いのが多いしな、もう今から軍錬とか再編やってるわ、ただ、軍列を乱しかねないが」
「そこはいいだろ、遊撃軍とか援軍で、統一行動は時間掛かるし」
「だな、ジョーカー部隊ぽい感じ」

そこでカルディアは話しながら手下に指示して自身は何かを書き始める

「んで?滞在するのか?」
「ああ、このままロッゼ呼んで会談しよう、そのまま同盟に引き込む、つか連合?」
「名前どうする?お前中心でいいのか?」
「個人名とどこかの国中心ぽいのも宜しくない」
「実質お前中心なんだしいんじゃないか?グランセルナ連合で」
「まあ、そうだな、名前はどうでもいいか‥」
「うし、おーい、これロベルタに」

書いた書状を兵に渡した

「とりあえずロッゼ女王充てに書いた、多分来るだろ」
「あそこは周りの一部頭固いのがなぁ」
「ま、国となりゃ慎重にならざる得ないさ、石橋叩いて、て奴が居るもの考慮面でいいし」
「戦略眼は無さそうだけどなぁ、慎重と臆病は違うぜ」
「ここまで条件が整えば断りはしないだろう、兎に角反応待ちだな」
「そーだな」
「とりあえず酒宴の用意だな」
「ああ、オレは寝てるよ、結構強行軍だったし疲れた、ウチの親方でも接待してくれ」
「あの騎馬軍か、わかった、酒でも振舞っとこう」

そんで当日には酒宴である

「ウへ、こりゃいい酒だ」
「ヘタな薄い酒だと酢になっちまうからな、アルコールはきつい」
「オレ好みッスけどね、つまみもパンチが効いてる」
「気温の関係だな、大抵辛い」

おっさんらはうめぇうめぇと飲み食いしてた

「案外他所の土地には売れるのかこれ?」
「みたいだなぁ、後でローラも来るし売ったらどうだ?」
「そーだな、鉱石以外も売れるもんあるのはあり難い」
「ところで食物は?」
「ああ、お前さんに習った水田が良い感じだ。しかも周りから緑化がジワジワ拡散してる、稲、麦がまあまあ、採れるようになった」
「そりゃ良かった」
「後は稲わらの類が家畜にいいね」
「意外と捨てるところないしな、後でコッチの農法と種子も来る、なんか欲しいもんあったら要請してくれ」
「そうだな、砂糖とか余ってないか?」

「あるな、キビ植えてるしかなり大量生産出来てる、特殊な輸送部隊を作るのに必要だったんでね」
「出来れば精製品くれ、こっちじゃキビは育たん」
「分かった」
「逆にお前の方は?」
「んー、こっちに無くてカルディアの所にあるものか、強いて言えば塩?」
「そりゃ都合がいい、メチャあるぞ」
「ほう岩塩?」
「いや、領土と言っていいか謎だが、東南東の外世界側になるが海がある」
「そういや聞いた事あるな…、んじゃ砂糖と塩交換で」
「いいぞ」

「で、あとは精精やるのは駐屯基地くらいか」
「まあ、土地は余ってるし問題無いなぁ」
「建築はこっちでやるからいいけどな、石類だけ貰うが」
「OkOK」

五日後にはロベルタのロッゼが到着、ここで正式会談の後、連合国署名と印、4地域連合と成り周辺国にも告知される、心理的効果だ

それぞれ握手して纏まった、そしてまた立食パーティーである

「この様な形で手を組める日が来るとは思いませんでした」
「反対は無かったか?」
「一応、慎重派からありましたが、この現状で断る等ありえないという賛成派が大勢を取りましたので」
「良かったな」
「ええ、こういう解決法もあるんですねぇ」
「ま、中央がアレだからな、それに皆友達だし」
「そうですね」
「んで、こちらが」
「一応ここの王て事に成ってるカルディアだ宜しくな」
「はい、ロッゼ=ロベルタ=ブランシャールで御座います、今後とも宜しく」

其々席を勧められて、会場の隅の席を囲んだ

「問題はロッゼ殿の所だな」
「と、仰いますと?」
「ああ、既に共和国形態であるという事で派兵も中々な」
「確かにそうですね、元からある周囲国を軽視するのか、などと云われかねないですね」
「そこで、オレの方から懐柔策を掛ける、具体的には人と、周辺国への見せ、ウチと組むとこんな得な事が!という売り込みだな」
「もう既に始まってるわな、アタシんとこや南方地域にやってる事だ」
「無料奉仕に等しい援助ですね?」
「うむ、このままロベルタまで街道整備をこっちでやって尚且つロベルタへの特殊な農作物を独占的に送る、それとカルディアの所の駐屯基地の作成と一部に石家、出来たら、そこからカルディアに大げさに宣伝してもらう」
「なるほど、わかりました、そうなれば、ロベルタに集中的に得面が出れば、周りも自分たちも、と来る可能性ですね」
「そういう事だ、まあ、ここは「上手く行けば」だが」

「あとは商人隊もそっちに送って南方の珍しい物品も交易して蒔く、だな」
「鉱石類とか珍しい物が多いからな」
「了解しました。それにしても‥」
「ん?」
「お二人は頼りになりますね」とロッゼはニッコリ笑った

「セコイ事も出来るしな」
「意外と言っては失礼だがカルディアは戦略眼があるしな」
「勉強したわけじゃないけど」
「ありゃ殆ど才能だ、他人の心が読めれば大抵裏もかけるし、何をしようとしてるか察せられれば対抗策も打てる」
「そりゃペテンとも云えなくない」
「まあ、ただ、問題もまだまだ多いなぁ」
「それは?」
「中央の連中がどう思うか、とか、特にペンタグラム周辺の軍事国家だなぁ」
「確かにそうですねぇ」
「遠いから左程問題無いとは思うが、教皇様はどう思うかねぇ」
「つーか周りの官僚だな‥我々を無視しての連合だと!?とか云いそう」
「この際、反論の種はいくらでもあるからいいがね」
「例えば?」
「そんなら、お前らが纏めてみろ!とか?」
「‥」

「何れにしろ軍力はもう少し無いとマズイな、全地域合わせても、二万くらいだろ」
「そーだな、こっちも儲かってるし、食い物がどうにか成れば増強は容易い、2~3千は直ぐ増やせる」
「頼めるか?カルディア」
「元々人口多いしな、ただ、食い物は頼むぞフォレス」
「問題ない、正直ウチで4地域賄えるだけあるし、まだまだ増産過程だ余裕余裕」
「そりゃ頼もしい」

「ただ、ロベルタは‥」
「ええ、なかなか纏まらないと思います‥」
「イチイチ何でも反対すると話が進まんな」
「わたくしが押し切った方がいいんでしょうか?‥」
「んー?それはロッゼの長所とも云えるしなぁ‥」
「そうだな、協調を図る王てのは平和の治世では稀な才能でもある、変える必要も無いな」
「成る程」

「まあ、それもコッチから人送るかごり押しキャラとか正論の参謀とか付けよう」
「そんなん居るのかフォレスの所は」
「色々居るぞ、政治面も」
「羨ましい事だ」
「繋がり、というか連合だしな、要請すれば人は送るぞ、遠慮するな、まあ、カルディアには要らんだろうが」
「そうでもない、人事面はイマイチなんだよねぇアタシ」
「全部一人でやってる感だしな」

「それもあんだけど、ずうずうしい奴が居ない、お前みたいな奴が居るといいんだが」
「ああ、強烈な指導者にありがちだな、YESマンばっかりなる例だ」

そして会談後
10日早速カハルに屯田兵と騎士団を合わせた混成軍が一千到着、即時に駐留施設の建築に取り掛かった

「始めまして!カハル王、駐留軍を預かります騎士団副長のトリスです」
「ああ、カルディアでいいよ、ざっくばらんに頼む」
「いいえ!王たる者にその様な態度はいけません!」
「そうか、まあ、宜しく」
「それでは早速、施設の建築と視察、指揮に当ります!」

トリスはカツカツと靴音を立てて戻った

「成る程、ありゃ‥忠実でズケズケ云うだろうな」
「そうだろ?オレもよく叱られる」
「それはお前の問題だろうに‥」
「武力もあるし、指揮官としても優秀だ、ダメな物はダメだと王でも言うしな、とりあえず何でも出来るんで遠征援軍を当面任せる予定」
「ま、頼りにはなりそうだ」
「そうだな、んじゃオレも帰るか」
「おう」


「さて、次はどうするかなぁ」
私室に戻って椅子に背中を預けた、一応面会室兼、王座があるのだがまず行く事は無い

「あの、ロッゼ様の所への補佐の人選ですが?」
「んー‥、どうすっかねぇ‥インファルじゃまずいか」
「どうでしょうねぇ‥喧嘩は得意でしょうが」
「面白そうだな、逆に」
「い、一応聞いてみますか?」

それで結局インファルを呼んで聞いてみたが

「んー別にいいけど、好きにやっていいの?」
「かまわんぞ、とりあえずだが、ロッゼの補佐頼みたい」
「んじゃ行ってみる、あの辺りはまだ行った事無いし観光してくるね」

と当人が簡単に決めて飛んでった

「好きにてのが引っ掛かるが」
「頭はキレますから大丈夫でしょう」とフォレスもメリルも云ったがそういう問題ですらなかった

一週後のロベルタの政治官会議での事

「の、前に見慣れん奴が居るが?‥」
「女王陛下から聞いてるでしょ、グランセルナの臨時外交代行よ」
「それは判っている、何故国内会議に出ている」
「ロッゼ様の負担を肩代りせよ、との命よ、話が行ってるのを聞いてないのか?」
「グ‥、だからと言って何でお前が陛下の代わりに出とるのか!」
「ちゃんと会議の結果は伝えるわよ、アンタらガミガミ五月蝿いから臥せってるんでしょ」
「そういう問題か!、他国の官僚が出るなどありえんだろ!」
「うっさいわねぇ、あんたよりロッゼ様の事を考えてるわよ、さっさと始めなさい」

「いえ、折角ですから議論に参加して頂きましょう、今回の件は共和国との協調問題です、我々やインファル殿も無関係ではありません」
「ぬぐぐ」
「えー‥では、グランセルナとの連合への加入と今後の軍事的戦略ですが‥」
「云うまでもないわ!、共和国の連動を無視して新たに連合に単身で加わる等非常識じゃろう!」
「もう書いた事なんだからしかたないでしょう大体女王陛下もそれを望んで居られる元々知己なんだし、フォレスと」
「知己かどうかで決めるな!」
「それ外交では重要でしょう?信頼関係よ、大体、別にソッチに損は無いし周囲国との懐柔策も同時に展開してるわ」

「確かにそうですね、既にこちらに日和る共和国も出ています、無償援助や援軍が直ぐ来る関係と距離も出来てますし」
「損が無いし得のがデカイならそうなるわね」
「元々やってる共和はどうするのか?!だいたい中央が動いたらどうする!?」
「動いたって別にいいでしょ?、ペンタグラムの押さえが利かないならこっちで連合して防備に備えないと」
「他国を刺激するだけだろうが!」
「したって問題無いわよ、全体の戦力や戦略、経済や道で繋がりがあれば向こうもうかつに強攻策に出れないわよ」
「何の保障も無いだろうが!!」
「人間の社会に絶対的保障なんて最初から無いわよ、保障が欲しければペンタグラムにでもお願いすれば?」

「元の戦力が低いのに連合しても牽制になるか!」
「成るわよ、いざ攻められても横や背後を突く状況を作ってるんだから、まさか強大な他国と正面決戦「だけ」する訳じゃないんだし、それともその前提で話してるのかしら?」
「そういう問題ではない!共和政府が瓦解してはこっちの戦力では過小だろうが!」
「だから、ウチやカハルと組んでるんでしょうが、もうカハルも戦力増強してるし、ウチの軍も南北街道に駐留地を作ってるじゃない」

「え~‥それはいいとして、今後の軍事戦略ですが‥引き続き志願兵で戦力強化の意見もありますが」
「そんな事しても焼け石に水だろ!そもそも共和国に睨まれるわ!」
「なら聞けばいいじゃん「戦力が過小」とさっき仰った人の言葉とも思えないわねぇ、だいたい、何の為の共和国よ?、話し合いの場を作って議論して協調するもんでしょ?向こうの顔色見るのが同盟じゃないでしょ?」
「ぐぐ‥」
「全体戦略も同じよ、強国のご機嫌伺いの為の国づくりならそんな政府いらないわよ国民だってそんなもん望んでないと思うけど」
「我々は国を守る立場だ!相手に軍事行動起こさせない対応が必要だと云っている!」
「一理あるけど、それなら戦わないで従属すればいいわ、何を守りたいのか知らないけど、独自性なのか国民なのかアンタの立場なのか明確じゃないわね」
「戦争に成ったら勝っても負けても被害が出るという事だ!それはダメだ!」
「だから、それをさせない為の寄り合いでしょうが‥今やってるのは弱者の戦略、それがダメなら外交しなさい、従属したければそれでもいいし、そういう国がお望み?」
「んな事は云っとらんわ!」

「戦争はダメ、連合はダメ、従属は嫌だ、戦力増強は嫌だ、んじゃ外交で押えるしかないでしょ、それこそさっき言ったアナタの「保障」は無いけどね」
「それでも戦争するよりマシだ!」
「ならそうすればいいわ、別に戦略的間違いじゃないし、まあ、どこと交渉するのか知らないけど」
「それは近隣各国に‥」
「北と西も3~5万は居るし、距離も遠いわね、不足物資も無い、こっちがどんな条件を付けるのかしら、余程状況の変化が無いと難しいわね、不戦にしろ、同盟にしろ」
「こちらは守るに固い国、向こうとて攻める理由は薄い、受け入れるかもしれん!」
「それって、連合と何が違うの?」
「‥」 「な、ならば中央に裁定を頼めばいい!」
「それ上手く行ってないからこうなってるんだけど?」

「やってみねばわからんだろう!」
「じゃあやったら?もういいわ、おっさん、主題からズレまくるし、アンタの権限と責任でやったらいいじゃない?でもロベルタに迷惑掛けないでよね?」
「おっさん!?」
「共和が良くて連合がダメな理由がわかんないわ。戦争したくないのはこっちも同じだし、そうならない為の手を打ってるに過ぎないわ、共和に聞けと云ってる。其の上で共和側がNOなら別に否定しないわよ」

「そうでは無く共和の心情に配慮すべきではないかと」
「だから会談もせずに一方的に配慮してどーすんのよ?堂々巡りやん?共和国でやって続けて、ロベルタを維持するなら別に良い、て云ってるやん、コッチもそれに配慮するわよ?フォレスも無理矢理連合したい訳じゃないんだから」
「し、しかし‥」
「アンタの議論て否定の為の意見だけなのよね。アタシが気に食わないのは判るけど前提からぶっ壊れた議論は止めてくれる?」
「どうぶっ壊れているというのだ!?」
「共和が大事、でも連合はヤダ、聞くのもヤダなんじゃいそれとしか言いようが無いわね。こっちはどっちでもいいから共和に配慮するならそれでもいいよ話し合え、つってるでしょ、それと根本的に「ロッゼの御意」てのが抜けてるのよ」
「ぐ‥」

「普通マトモな脳みそでこの国の高官なら陛下の御意を基本的に叶えながら現実とすり合わせて調整するもんでしょ?その上でここがダメとかアドバイスを云えばいい、その概念が抜けてるのよ。最終決定は君主なんだし、おっさんのは基本概念が無いし、反対の為の反対なのよ、結論ありきならそもそもここに参加しなきゃいいわ」
「な!?私は!‥」
「アンタがどんな立場か知らないけど、何か勘違いしてんじゃないの?君主じゃないのよ?民衆ですらないわ、一行政官が配慮すべきは王か民に対してでしょ?自分の我を通す為に参加してんじゃないわよハゲおやじ」
「き、貴様!!」

おっさんが言いかけてその場にぶっ倒れた「!?」と周囲の一同も驚いて寄ったが血を吐いて仰向けでひっくり返ったままだった

当然会議はそこで終了。おっさんが運ばれて中断、改めてと成った

が、おっさん 政府内政大臣はそのまま帰らぬ人になった。いわゆる発作的癲癇、その際舌を噛んで転倒時、後頭部強打、による事故死である

ただ別にインファルにお咎めは無い
記録係の議事録を見て問題ないとされた為である

早い話熱い議論の最中、一人でヒートアップして勝手にキレただけの事だし実質誰かが、何かした訳でもない

事情を聞いて議事録を確認していたロッゼも私室で記録の最後の部分を読んで吹き出した

「ハゲおやじ」の所で耐えられなかったらしい

一応「申し訳ありません」とインファルも云ったが死ぬ程心がこもってない言い草だった

「い、いえ、大臣が一人で起こした事ですし‥ですが、言い方はもう少しどうにかならないかと‥」
「はい、注意します」

そこでシンシアも云った

「正直、インファルさんに非がある事でもありませんね、亡くなったのはアレですが、毎度、邪魔しに来てる様な人でしたし」
「あ、やっぱり?」
「ええ、会議で自分の意に沿わない決定があると単身乗り込んできて陛下に文句言う様な人ですし」
「もしかしてアレ、反対派の」
「ええ、一応最大権力者ですね‥」
「そりゃ良かったアホが一人消えたわね」
「と、とりあえず、会議は明日ありますので、今度はわたくしも出ましょう」

「ロッゼ様もあんなん排除すればいいのに」
「流石にそれは‥内務大臣ですし」
「云っちゃ悪いけど、アレ、ロッゼ様の事も、国民の事も一ミクロンも考えてないわよ」
「でしょうね」
「ただ、まあ、個人的には後ろで見てて痛快でしたね、あそこまで大臣を口でやり込める人も初めて見ました」
「あら、ありがと、でもあのおっさんはロッゼも民衆の事も考えてないし別に反論は簡単よ?「国の為」の概念が無いんだもん、そういう相手は直ぐ矛盾が出るわ、だから楽ちゃ楽ね」
「そういうものですか」

「民衆と君主、どちらかが大事という前提を持った意見なら、ちゃんと聞くし聞くべき事もある、けど、最初から「自分の意見を通す」しかない、そもそも最初から喧嘩腰だしね」
「そうですねぇ」
「ま、これで少しはまともに議論も動くでしょ」

そして持ち越しになった会議もスムーズに終る、邪魔する「アレ」が居なくなった為である

「え~、そういう事で、基本連合には参加という事で既に紙の上では成されていますので、それと、元からやっている共和国は、周辺国に改めて其々連合へ参加するかどうかの伺いを立てるという事で」
「賛成」
「軍備に関しては共和国側と改めて会談を開くと云う事で宜しいですか?アチラの意見も聞くという事で」
「異議なし」

と10分程度で政策決定が成された、ロッゼの最終裁定も「これで結構です」で、決定、空位の内務大臣も示し合わせて「女王派」から任命して決まった

共和国側もそのまま維持で連合にも協力という形に成った、連合自体の優位性とロベルタの後ろに更に援護があるという大御所の様な存在があった為である

そこはロッゼの人柄と予言の王フォレスの
「穏健と頼りがい」の両立があるからでもある

ロッゼなら強引な強硬手段は取らないだろうし既に行われているがフォレスの援護の期待値の高さがある、故に周囲国との話し合いも

「共和も続けて、ロベルタに連合の後ろ盾があるのはコチラにも損はないでしょう」と、纏まって両方続ける事になった

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