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主
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「よし、農具やら道具やらある者は其々持ってきてくれ、兎に角農地から食い物を作る、それが先だ、年齢、性別で労働配分する」
「具体的には?」
「若い連中は石場だ、金銀が取れるなら採掘と、同時に住居が居る」
「判った」
「それ以外の者は当初は苗木の作成、肥料の作成、当面は商人隊と森の住民から、あまりの実、果物は来る、が、それに頼りきりはまずいし限度がある」
「それと、専門技術のある者は名乗り出てくれ、何でもいい、商売人、料理、裁縫、建築、鍛冶、経験者ならそれに従事したほうがいい」
「了解」
「兎に角、最速でやるぞ、技術も知識も全て教える」
「おう!」
と全員其々、出来る事を行った
「インファル、ターニャ、はさっき教えた苗木作りを皆に」
「は、はい」
「男子はオレらと石場に行く」
「はい」
と、云っても石場や採掘場もまともな施設でない
その為、基礎から作り直しか補修も必要だった
その辺りは苦労しない、そもそもフォレスの知識があれば1から何かを作るという面に置いて誰にも真似出来ない物がある、当日には採石機材を整え、翌日には採掘が再開される
「不要な石の類、砂の類も使う、そのまま家屋の材料にする、捨てずに全部置いてくれ」
「使えるのか?」
「ああ、この際、思いっきり頑丈な手法でやろう、どうせ石は死ぬ程あるしな、それに適した材料も出てる、珪石や石灰石やら」
「了解ッ」
「んで、運び出しも砦付近に頼む、オレはあっちで建築技術と溶接財を作る、何かあれば呼んでくれ」
「はい」
そして今度は中央に移動して家作りの指導である
「で、だな、高炉で焼いた白石で出来た砂と水を混ぜる、配分は正確にな」
「は、はい!」
「んで、この出来上がった物を積み上げた石の隙間に入れたり塗ったりする天気のいい日限定だ、乾くと凄まじく固くなる」
「なんなんすか?この泥」
「大昔の建築に使われた「セメント」という石の接着剤だ。兎角、頑丈で補修が楽だ、配合だけは間違うな、間違うと極端に強度が落ちる」
「お、おす」
「それと固まると壊すのも大変だ、使う分だけ作れ」
「はい」
更に翌日には森の住民から余る食材や草木、材木の輸送も続き、あっという間に基固めは整った
「悪いなアノミア、まだ鉱石類は大して取れてない、とりあえず中央の統一金貨で払う」
「まあ、別に構わんよ、金あっても今の所使い道もないし、こっちの余りモンだし」
「そういう訳にもいかんな、一応払う100キロ1でいいか?」
「構わんよ」
と手持ちから金貨を出して購入の形を取った
その日の夜には全員集まって一種宴会に成った、マトモな物が食えたのは住民にとっても初の事で大いに盛り上がった、その場でアノミアを一同に紹介する
「森の長のアノミアだ、今回の食料や材料は彼女らの協力あって実現したものだ、皆、種の違いという小さな事は忘れて、いや、誤解しないで欲しい、オレ達と何も変わらないんだ」
そうフォレスに宣言され、「人間側」一同も受け入れる
「有難う、アンタらが居なかったらオレらも食えてない‥」
「恩人だ、有難う」
と入れ替わりアノミアに感謝を述べた
そういわれると彼女も悪い気はしない
実際問題、苦境であればこそ、くだらないことで争っている場合ではない、それが今全員に実体験として眼の間にあるのである
そして5日後には既にフォレスの教え無しでも皆採石、建築、農地開拓が進むようになる
覚えたことを即実践して、わからない事があれば聞き、直ぐに修正して動く、既に住民は何をするべきなのか、を全て理解して兎に角必死で取り組んだのである、それも「目の前にある事例」である
開始から一週間後には植樹や、安定した農地への作物の種まきが始まる、そして待望の「種」と蔓が商人隊から届く
「これは耕して無くてもいい、どこでも育つ」
「なんだこれ?」
「これも大昔に飢餓の対策として作られた芋の品種だ、後は環境に特に強い豆類、葉物、根菜、これに手を加えて栽培を急ぐ蔓を地面に刺して放置でいい」
「ほう‥」
「クルメールという後年作られた特殊品種だ、ただ、こいつは雑草並みに広がる、計画書通りに区画を割って離して埋めろ他の作物を駆逐しかねん」
「わかった」
「指定通り、豆、葉物、根菜は西街道方面へ、木の類は北側街道方面、これは日光少なくても育つので区域が混ざらんようにな」
「はい」
「作物と別に北街道左右街路樹に埋める木の苗木は30メートル以上離して植えろ、これもとんでもない成長と実を付ける」
「どれも見た事ない苗木ですね…」
「ああ、これも大昔にあったキウイという奴の改良品種だ、寒さにも暑さにも強いし土壌が悪くても育つ、環境に極端に強く、実る実もかなりの栄養物だ。もう一つはリンゴの一種だな、これはどこでもまあまあ見かけるな、後はまあナッツ類も少しある」
「なるほど、やってみます」
「うむ、それと一緒に特性のコイツも少量蒔け」
と農作人に大袋を渡した
「これは?」
「自前の促進剤、配合は簡単だ、どの作物、木や花にも効く、出来たらどんどん中央からも原種が来る、植えと同時に少量撒け」
「マジかよ‥」
「兎に角頼む」
「お、おう!」
フォレスが離れて戻った所でアリオローラに声を掛けられた
「ちょっとの間にえらい事になっとるな‥」
「まーな、今の所順調だ、促進剤も使ってるし、二週で地元生産品で食える分の最初が出来るだろう」
「ホント、何者だよお主‥」
「単なる術士さ」
「まあ、いいか、所で問題もあるんじゃが?」
「なんだ?」
「やはり、このままだと大規模な輸出入には弊害がある、信用の問題と通貨の問題じゃな」
「ふむ、現状金銀も取れているが、物々交換もアレだな‥」
「砂金と鉱石と通貨の交換もアリちゃアリだが、それにしても中央との交渉など要る」
「たしかにな、それにこのままだと牧畜の展開がし難い」
「本格的な輸出入にはやはり国家としての形が必要になる、統一通貨が導入出来んと売買が難しい」
「そうだな…」
「そこで私も思ったんじゃが、やはり誰かが音頭を取らねば成るまい?」
「ローラがやったらどうなんだ?」
「まあ、定住してもいいのだが‥長には無理だな、やはり所詮商売人じゃ」
「ふむ?」
「んで、お主領主に成ったらどうじゃ?」
「‥正気か?‥」
「冗談を言ってるつもりもないが。それに現状お主あってのココ、という展開じゃ何かあっての対応の手段と知識が尋常ではない、もう一つは皆お前を認めている、私としても後ろ盾と拠点があるのは色々助かる、多分皆も反対せんじゃろ」
「うーん‥」
「ある程度作り上げたら、誰かに譲ってもええし、とりあえずじゃ」
「そうだなぁ‥このペースなら一年も掛からんだろうし、その後は譲ればいいか‥」
「うむ」
「判った、とりあえず皆に聞いてみよう」
「うむ、其の方が私もやりやすい」
そして其の日の夕方にはその旨が通知された
が、「え?!、フォレスさんここに居てくれるんじゃないんですか!?」だった
反対する者等、既に居なかったのである。結局そのまま、あれよあれよという間に領主の座に就任というかさせられたが
ただ、彼自身、悪い気はしなかった、これまでとやる事が変わる訳でもなし、一応の事とした暫定統治であるし、安定すれば地元から代わりも出るだろうという事
そして案外悪くない点が二つ
「オレの知識が役に立つなら」という思いと
「安住の地が無いなら作ればいいのか」という事だった
その意味1から作るのは悪くない、優位な環境があったとも云える
一ヶ月もすると、砦周囲の町の形も整い、中央官舎から元々ある十字に街道を整備し、領内には複数、北から南への川もある為、そこから分水し、そのメイン街道の路肩にも水道整備、今で言う上下水で別けた蓋をしたコンクリ水路側溝という形に二本メインに作って使い分けする形にした
無論北から川水取って使う、流して捨てるだけでなく、取水場には井戸に近い円形施設を作り炭などを沈めて浄化する簡易な方法で綺麗にして使うモノも作り、下水側には下流に微生物分解ため池を四方系に四段作り置いてこれも浄化してから下流川に合流させる処理施設も作る。この時代でも可能な環境改善、循環生活、農法も整備して基本を整えた。
その為、路水から左右の緑化も眼に見えて進む、食料の類も最初の生産収穫が達成されてとりあえずの自給自足も始まった
意図した事ではあるのだが特に凄まじかったのは南と西に植えた豆と芋である、南に埋めたのだが採掘場まで広がるほど勝手に増えた
「採れすぎだろ」としか生産に関わった農民も言いようが無い、しかも殆ど手入れすらしてない
「薬と術が効き過ぎたな‥」
「これ、消費出来ないレベルなんですが!?」
「いや、余ったら売ればいいし、後、豚とかに食わせると肉も美味くなる」
「そーなんすか‥」
「ああ、ただ、牧畜がまだな‥」
「ソッスね、馬は居るんですけど、まだ、鳥牛豚は少ないですね」
「うーん‥アノミアの所に運んでやれ、猪とかに食わせてもいいだろう」
「判りました!」
「それと砦街周辺の作物の収穫終わったら西から人魔の森への街道方向も稲作始める、ノーブルミレットていう激レアな雑穀種が手に入ったんでな」
「それも凄いんですか??」
「ああ、日光水分少なくても育つ収穫も年中複数回可能ていう強くて珍しい穀物だ」
「おお…」
まだ、と云ったとおり、牧畜もチマチマ拡大していったのが、ローラの他国との交易と交渉の類が間に合わない程とんでもない速度でこの街は発展していた
この様な現状になると地域全体から人が集まる、そして元々人口が多い故、それぞれアチコチから人が集まり、街の規模もドンドン拡大していくのである
ただやるべきこと、作り上げねばならないものはごまんとある、それだけに雇用や労働の面は問題ないが
特に問題と思われた「交易」「通貨」なのだが、基本的にココで取れる金銀の原石との、周囲国との交換の類で賄っては居たが、それも追いつかない程の拡大ぶりであった
そこでフォレスは問題が表面化する前に手を打った、街に構えたヘッジホッグの本店に行ってローラと面談である
「と、いう訳で後々、通貨問題が出る、中央との交渉を頼みたい」
「金貨、銀貨の増産だな」
「直ぐどうこうでは無いし、まだ国内は通貨取引を主体にする段階ではないが、このまま行くとデフレになりかねん」
「なんじゃ?デフレ??」
「いや、何でもない、これも大昔のマクロ経済という学問の現象だ、物が多くて交換通貨が少ないと皆買えない、物の価値が下がり捲るという現象だ」
「まあよい、とりあえずペンタグラムに通知だけしよう、イチイチ行っててはキリが無いし遠い」
「そうだなぁ‥」
「向こうも世界統制する役目の連中じゃ、今の現状を見せておいた方がいい、百聞は一見にしかず、じゃ」
「勝手に来て、見て、決めろ、か?」
「それもある、ついでに納得してもらえば「世界」の統制地域として認めてもらえる」
「そうだな、オレらで治めるてる食えてるからいいだろう、だと規制もこのままだし、外交も交易も移動も制限されるしな、まあ頼むわ」
「うむ、エルザ!」
「は、はい!」
「そういう訳じゃ、手紙を頼む、とりあえずコッチも忙しいし、向こうに来てもらう」
「ハイ!」
そしてその「ペンタグラム」の役人が来たのは5日後である、連絡を庁舎で受けたローラもフォレスも驚きだった
「早すぎないか?」
「どういう事じゃ」
実際相手を迎えた所でその理由はハッキリする
「途中までは移動陣がありますので」
「ああ‥ある程度は転移施設があるのか」
「左様です、私はペンタグラムの外交、査察官でカイルといいます」
「一人なのか?」
「はい、今日は。別の者が来る事もありますが、数人で回しています」
一応の事として身分証、いわゆる、胸に付けた証章を見せる
「オレは暫定自治領主、という事になるのかな、フォレストだ」
「一回りさせて貰いましたが、始まったのは何時頃ですか?」
「まだオレが来て2ヶ月経ってないな」
「恐ろしい程の治世ですね。昨年視察した際は手のつけられない状況であったと思いますが」
「売る物はあるからな、草木が育たない様な環境でもないし、住民もやる気はある、労働力も馬鹿程ある、知識と方向性だけ示せば立ち直りは出来る環境にはある」
「成る程、それでも賞賛に値します、実際誰もここの統治は引き受けませんでしたし」
「と、云う事は一度ならず何とかしようと言う意見なり行動なりあったという事か」
「はい」
「それでどうしょうもないと見切りを付けられたのか、呆れるな」
「ご尤もでありますが、こちらとしても強要は出来ないので、精精話を候補者に持っていく程度の事しか出来ません、ペンタグラムから直接統治や人材を送る事は禁じられています」
「それが如何なる状況にあっても行うのはその国の者である、という思想だな」
「はい」
「役に立つ様な立たん様な曖昧な組織じゃな‥」
「まあ、仕方無いさ、そもそも全てをペンタグラムがちょっかい出すという事であれば、統一国家や独裁に成りかねない、思想としては間違いではないが」
「そういうもんかのう」
「流石に知識者はよくお分かりで、ペンタグラムが何もかもやるというのであれば、そもそも、個々人や国の意思を軽視している事に成ります、それは我らの教理から反します」
「だから中立的立場からの、あくまで援助、話し合いの薦めだな」
「ええ」
「まあ、それはいいとして、コチラの要望の一件じゃが?」
「問題ありません、そちらの金銀原料の2倍の通貨を交換提供いたします、既に申請のあった分は製造が始まっています、同時に紙手形も増産中です」
「助かる」
「そこで今後ですが」
「そこも問題ない、半年、一年は大した問題は出ないだろう、対処もする」
「人外の森はどういうスタンスでしょう?」
「当初は相互不可侵のつもりだったがアチラが積極的に協力してくれている、そしてそれを示した事に寄り、人間側の住民も彼らを差別しなくなっている」
「ふむ‥では、経過を見守らせてもらいます」
「ペンタグラムは人魔の類への偏見は無いのかの?」
「ありません、混ざり物だから、という理由では少なくともありません、ポイントは「問題を起こすかどうか」だけです、そもそも混ざり物だから、で否定するなら、我国の歴代君主も「そうだ」という事になります」
「確かに、天魔戦争の頃からの「天」の側の一族だからな」
「ええ、中には神の血筋も居ます、初期ですが。故に其の点は問題としていません」
「よくわかった」
「それとフォレス殿の手法を見たいのですが、滞在しても構いませんか?」
「構わんが‥」
「個人的な興味です、自分も学者ですから」
そうしてカイルは「個人的興味」で砦街に数日留まった
少々面倒くさい人間ではあったが
「え?!一月でこの量の収穫が!?」
「最初の1回だけだな、成長促進剤と自然術を使った、とりあえずの食料を賄わないといけなかったのでね」
「そんな農法は聞いた事が‥」
「品種も元々環境に強いイモや豆の原種に改良を加えた物だ。農法も大昔のやり方にアレンジした物だ、材料も大抵ゴミや廃物から作れる」
「なんと‥」
「もうすぐ北街道方面では最初に植えた果物類も大量に出来るだろう、これも通常の数倍くらい採れる予定だ」
「ふむ…これも見た事ないモノですな…鮮やかな緑の実で甘酸っぱい」
「ああ、今は殆ど見かけないがキウイというモノの改良種だな、これもどこでも育つようにしてある、特に栄養価が高い」
「なるほど~」
街を回っては
「この石家の壁はなんです??人工物ですよね?」
「これも大昔に使った石の接着剤だ「セメント」という、固まると石と同じくなる」
「‥おお、石膏や粘土に近い物ですか?」
「そうだな、あれの強化版という感じか、ただ、密度と強度は比較にならん風雨に強いしな」
「ほほう」
夕食の場では
「さっきの豆ですよね??」
「だな、稲類は普通に育ててるから、まだ掛かるんでね、果物や猪の肉が森から、ここで今採れているのが香草と豆と芋と果物が少しだけだな、一通り一回目の収穫が終わって土壌が安定すれば稲麦もやる」
「むむ、しかしこれは無茶苦茶甘い」
「蒸すとかぼちゃに近い甘さを出す、エネルギーが主で労働者の栄養補給に役立つ、余りは家畜に食わせると肉が美味くなる」
「なるほど~」
という感じだった
そして勿論、やり方もメモって帰った
「いやはや、貴重な知識を惜しみなく教授して頂いて」
「何、構わんよ、どこかで役に立ててくれ」
「はい、有難う御座いました」
転移魔法で一人戻った
その後の展開も速かった、ペンタグラムから地域称号、いわゆる国号を「サウスグランセルナ」と定められ通知される、初代領主にフォレストの名前が載ったのである
2週間後には等価交換された金貨や銀貨、紙手形、通貨等が届き国庫に、そのまま通貨経済も始まり、国号を定められた事により周辺国との外交、輸出入も解禁、移動規制も緩和、後北、西とも関所も撤廃され自由化もスタートする
ここで賊だった親方らも解散してそのまま治安維持軍に当ったおっさんは
「オレらが生きていられるのはフォレスのダンナのお陰だ、どこまで着いていくぜ!」
という事だった。人数は300程度だが、別に争いがある訳でも無く、特に問題は無い、賊と言っても別に略奪だの盗難だのしていた訳でもなく単なる集まりだし、地元民の集まりで現代知識で言えば先住民とか部族みたいなもん、そもそもフォレスに従うなら別にいいかという程度だった
3ヶ月に成る頃には砦街の官舎も一新されてマトモな施設に成る程の発展復興があり、周囲の国からの規制緩和で家畜、馬、牛等も大量に買い付けた
そしてここまで来るとほぼ「世界」でも有数の大都市に成りかけていた、何しろ、新領主の治世の評判と元々の流入者が多いという点から人口は増える
それに合わせて建築物も凄まじい勢いで建てられて増えていき、雇用もあれば、食料難も既に解消された故だ、生産品は独自のやり方で収穫量が尋常でなく、既に国内消費量の三倍収穫出来ている
特に住宅「セメント工」は誰でも作れる、簡単な木の支柱の周りに石を大小適当に積み、セメント塗装するだけだ、面白がって女子供までやってる始末である
「秘密基地」を作ってる感覚で
更に云えばミス、しても補修が非常に楽でぶっ壊れても廃材がまたそのまま使える
治世から半年の頃にはヘッジホッグもグランセルナを拠点にドンドン拡大、周辺国に支店を構える勢いすら見せた
砦街周りも最早大都市の様相であった、緑多く、人多く、家も頑丈で豪華、街道中心にコンクリの上下水も整備し、そこから一面に広がる収穫物と自由に芋食ってる動物、皆明るく、安心感のある都市となっていた
しかも大抵は廃棄物から作っているので完全循環社会でもあるだけにどれ程拡大しても左程問題は無い
「問題はやはり軍事力かの?」
「そこはまあ、当分大丈夫だろう‥周りが防波堤に近いからなぁ‥」
「北はバルクスト、西は元々戦火は来てない、東は大河が二本あるしの」
「大河も船も橋もまだ無いからな、まあ東に行く意味もないが」
「南はまた別世界じゃしの」
「そもそも遠いからな、まあ、外交なり同盟なりは必要だろうなぁ」
「ここに攻め込もうというアホも現状居らんじゃろ」
「んー、暫くは発展から安定まで放置で問題ないな、問題があれば逐次対応か」
「税はどうする?」
「まだ、早いな、通貨経済が浸透して収まった所で始める、とりあえず手持ち国庫金だけは、おっさんらに払ってと政府としての仕事の依頼で普及させる」
「ふむ」
「まあ、軍隊の規模が少ないうちは大して要らんだろ」
実際「税」制度が始まったのは8ヶ月経過後である、とは云え、個人収入の1%~程度で負担と言うものは無く、特に反対の類は無い
他国と比較しても10分の1、特にフォレスの「政府」としての姿勢と投資の類は寧ろ国を良くする物だったからだ
集めた税から「公」の側の人材を雇い、同時に基礎教育制度も開始、しかも無料で
とは云え、難しい事ではない、簡単な読み書きと計算、日常商売で使うもの、農業、建築、製造、の希望者の指導だけだ
軍、自体にはロベルトのおっさんの元にエミリアを充てて剣技の指導もやらせた
「基本暇なんだが?」と彼女が言った事にある
ターニャに教えていたのを見て、やらせてみたのだがこれも上手くいった、元々彼女の武力が高いというのもあるが、王族の軍司令官でもあった訳だし、専門家には違いなかった、何故か軍錬の類にターニャやインファルも通った様だが
肝心の外交だが、それもコチラが何かするまでも無く向こうから来た
西と北の両国にしてみれば「背後から沸いた国」に等しく戦略上の面で、放置すると後ろを突かれかねないという理由だ
その為理由も目的も明確で外交会談を持つまでも無くそこは決まる、要するに「当面の不戦条約」と「協力関係」と成った、どちらも、ちょっかい出されては敵わんというだけだ
特に北のバルクストは正面と左右に3国の相手が居る、ここで南も相手には出来ないという事である
ただ、現状グランセルナは軍の国ではないし、こっちから争いを起こす理由もないので、そこは簡単に決まる
10ヶ月を過ぎた所で領内各地から中央に集まった領民は30万にも成っていた、当然僅かな税だが、ここまで人が多いと収入がかなりのモノとなった
合わせて軍の増強も図り一応3千程度の規模まで増えた、特に募集を掛けている訳ではないのだが志願してこうなった
おっさんの統制能力を軽く超えたのでそのまま元山賊軍は首都警備隊に、集まった志願兵はそのままエミリアに任せた、これが最初の正式な国家軍である
ただ、別に戦争がある訳でもなく、これも過去の歴史であった「屯田兵」に近い物にした、普段の仕事や公共事業等やりつつ、一時賞与を上乗せして半々兵という扱い
希望して一般事業の手伝いをする兵も多く、やってるほうもあり難いという事もあり、かなりの規模の公共事業が行えるようになった
それでも税が余ったので防備の面を強化した、お上依頼で金を出して、装備の作成と遠距離武器隊、そして北と西街道、町の外側に官舎の建築である、この官舎の最大の、というよりこの国の家屋の最大の強みが
「石家」である
官舎を街の拡大に合わせて〇型外に廓にし、更に大きく成れば◎にと横に並べる様に作り、住宅でありながら城壁にしたのである、まず、矢など通らないし、火すら無効だ
無論破壊工作すら通らないし、街の外側には兵が常に滞在している、街に侵入出来た所でそこもコンクリ家だ恐ろしく境涯で固い、既に十字に街道と小道、並走して水道も整備してある為、家、施設の町割りも完璧で通行も不自由なくしてある、災害、火災、衛生、生産、収穫、なども完璧に整えた
「よく考えてるなぁ‥」と視察の場でエミリアも云った
「大昔の忍者屋敷だな」
「なんだそれは?」
「家屋でありながら、外敵の防衛拠点になる、しかも色々工夫もある」
「例えば?」
「街道の外側だけ全部窓が小さいだろ?」
「ああ」
「あそこから射撃武器だけ出して一方的に打てる」
「むごい‥」
「それと二階に隠れ場所、武器部屋、進入された場合の罠も用意するつもりだ、まあ、色々考えては居る、召喚類も出せたらいいな」
「お前を敵に回したくは無いものだな‥」
「まあ、せめて来られなきゃやる事もないさ、コッチは数少ないからな」
「確かにそうだな」
「あくまで「守り」の意味での対処になる」
「私らの軍もその方がいいんだな?」
「数の増強は大規模にやらん、領民がどう思うかも判らんし、森の住人も嫌だろ」
「なるほど。それとだが」
「ん?」
「私が司令官なのは問題では?過去のアレがあるし‥」
「攻めなきゃ別に問題ないな、ここで戦う分にはオレが全体指揮してもいいし」
「司令官、兼軍師か、まあ、お前なら両方出来るか」
「多分な、お前は気にせず前線で好きにやればいいさ」
「そりゃ楽でいい」
「まあ、ここに攻める事があるとも思えんが」
「そうだなぁ」
「ただの転ばぬ先の杖のつもりさ、全部な」
「が、人材は欲しいな、数の割りに隊長の類が少ない」
「ふむ‥、それも時間が要るなぁ、基礎軍訓練か教室でも開くか」
と、一週間後には中央官舎での戦略戦術授業も始まったが、軍関係者だけでなく無関係な住民まで集まった
フォレスが何かしようとすると大体この様な事になる「何か凄い事を教えて貰えるのでは?!」という領民の統一見解からだ
結局、数回の臨時講義の後、元々ある学校施設を強化して、歴史や軍事の基礎などの学科も作った、ついでに図書館もである
「四六時中開いてるから好きに自習しろ」というスタンスで
勿論ここの主になったのはターニャである、殆ど一日中居る
、それ程蔵書が無いのでこれもローラに依頼して買い取り、ちゃんとした物に仕上げた
基本的に領主フォレストは何も変わってない、自分が何でもやるのは面倒だ、というのがまず先にある為、ある程度やったら誰かに任せる、あるいは自習しろ、というスタンスで
なるべく自分が動かない様にシステムを構築していった、それだけに厳しい主だったとも言えなくも無い
「自分で考えて動け、学べ、困ったら聞け、助けてやる」だった
だから一年に成ろうかと言う頃には殆どの人間が自発するようになったのと、フォレス自身は相談役の様な立場になった、ありとあらゆる面で、理想どおりの「国」となっていたのである
学校から教師、生徒から各ジャンルに進む者も出て
軍も勝手に増えた
士農工商もムラ無く育ち、ドンドン発展し人口も40万には成っていた、もはや「領主国」ですらない規模と発展である
「人事」の最大の活かし方は正にそれである
上は困った時に手を差し伸べ、下は専門家に自由にやらせる、だから皆不自由も無く、そのジャンルで力を発揮出来るし、ダメになってもフォレスは見捨てたりしない
生活や経済もそうだが、その「安心感」が何より重要である
故に「相談」にしてもかなり多い
「こういうのをやりたいんですが!」という相談がかなり多い、大抵一日に20人は来る、ただ、会談は直ぐ終るので負担ではないが
「良い、それは上手く行く」
「ダメ、それは歴史上の実例で成功した例は少ない」
で大体済むからだ。
つまり人類の数千年の歴史、事業、学問などの中身が全て彼の頭にあり、事例・確率論での、YES、NO、での判断だからである、それだけに失敗や目利きでの間違いも極端に少ない
彼にとっては、単なる確率論だが相談してやってみる当人からすれば、それが99%予測を外さないので、それも噂になり何時からかフォレスも
「予言の領主」とか呼ばれる事になる
「確率論であって、別に予言じゃねーんだけど‥」と思ったがイチイチ説明するのも面倒なのでそのままにしといた
「具体的には?」
「若い連中は石場だ、金銀が取れるなら採掘と、同時に住居が居る」
「判った」
「それ以外の者は当初は苗木の作成、肥料の作成、当面は商人隊と森の住民から、あまりの実、果物は来る、が、それに頼りきりはまずいし限度がある」
「それと、専門技術のある者は名乗り出てくれ、何でもいい、商売人、料理、裁縫、建築、鍛冶、経験者ならそれに従事したほうがいい」
「了解」
「兎に角、最速でやるぞ、技術も知識も全て教える」
「おう!」
と全員其々、出来る事を行った
「インファル、ターニャ、はさっき教えた苗木作りを皆に」
「は、はい」
「男子はオレらと石場に行く」
「はい」
と、云っても石場や採掘場もまともな施設でない
その為、基礎から作り直しか補修も必要だった
その辺りは苦労しない、そもそもフォレスの知識があれば1から何かを作るという面に置いて誰にも真似出来ない物がある、当日には採石機材を整え、翌日には採掘が再開される
「不要な石の類、砂の類も使う、そのまま家屋の材料にする、捨てずに全部置いてくれ」
「使えるのか?」
「ああ、この際、思いっきり頑丈な手法でやろう、どうせ石は死ぬ程あるしな、それに適した材料も出てる、珪石や石灰石やら」
「了解ッ」
「んで、運び出しも砦付近に頼む、オレはあっちで建築技術と溶接財を作る、何かあれば呼んでくれ」
「はい」
そして今度は中央に移動して家作りの指導である
「で、だな、高炉で焼いた白石で出来た砂と水を混ぜる、配分は正確にな」
「は、はい!」
「んで、この出来上がった物を積み上げた石の隙間に入れたり塗ったりする天気のいい日限定だ、乾くと凄まじく固くなる」
「なんなんすか?この泥」
「大昔の建築に使われた「セメント」という石の接着剤だ。兎角、頑丈で補修が楽だ、配合だけは間違うな、間違うと極端に強度が落ちる」
「お、おす」
「それと固まると壊すのも大変だ、使う分だけ作れ」
「はい」
更に翌日には森の住民から余る食材や草木、材木の輸送も続き、あっという間に基固めは整った
「悪いなアノミア、まだ鉱石類は大して取れてない、とりあえず中央の統一金貨で払う」
「まあ、別に構わんよ、金あっても今の所使い道もないし、こっちの余りモンだし」
「そういう訳にもいかんな、一応払う100キロ1でいいか?」
「構わんよ」
と手持ちから金貨を出して購入の形を取った
その日の夜には全員集まって一種宴会に成った、マトモな物が食えたのは住民にとっても初の事で大いに盛り上がった、その場でアノミアを一同に紹介する
「森の長のアノミアだ、今回の食料や材料は彼女らの協力あって実現したものだ、皆、種の違いという小さな事は忘れて、いや、誤解しないで欲しい、オレ達と何も変わらないんだ」
そうフォレスに宣言され、「人間側」一同も受け入れる
「有難う、アンタらが居なかったらオレらも食えてない‥」
「恩人だ、有難う」
と入れ替わりアノミアに感謝を述べた
そういわれると彼女も悪い気はしない
実際問題、苦境であればこそ、くだらないことで争っている場合ではない、それが今全員に実体験として眼の間にあるのである
そして5日後には既にフォレスの教え無しでも皆採石、建築、農地開拓が進むようになる
覚えたことを即実践して、わからない事があれば聞き、直ぐに修正して動く、既に住民は何をするべきなのか、を全て理解して兎に角必死で取り組んだのである、それも「目の前にある事例」である
開始から一週間後には植樹や、安定した農地への作物の種まきが始まる、そして待望の「種」と蔓が商人隊から届く
「これは耕して無くてもいい、どこでも育つ」
「なんだこれ?」
「これも大昔に飢餓の対策として作られた芋の品種だ、後は環境に特に強い豆類、葉物、根菜、これに手を加えて栽培を急ぐ蔓を地面に刺して放置でいい」
「ほう‥」
「クルメールという後年作られた特殊品種だ、ただ、こいつは雑草並みに広がる、計画書通りに区画を割って離して埋めろ他の作物を駆逐しかねん」
「わかった」
「指定通り、豆、葉物、根菜は西街道方面へ、木の類は北側街道方面、これは日光少なくても育つので区域が混ざらんようにな」
「はい」
「作物と別に北街道左右街路樹に埋める木の苗木は30メートル以上離して植えろ、これもとんでもない成長と実を付ける」
「どれも見た事ない苗木ですね…」
「ああ、これも大昔にあったキウイという奴の改良品種だ、寒さにも暑さにも強いし土壌が悪くても育つ、環境に極端に強く、実る実もかなりの栄養物だ。もう一つはリンゴの一種だな、これはどこでもまあまあ見かけるな、後はまあナッツ類も少しある」
「なるほど、やってみます」
「うむ、それと一緒に特性のコイツも少量蒔け」
と農作人に大袋を渡した
「これは?」
「自前の促進剤、配合は簡単だ、どの作物、木や花にも効く、出来たらどんどん中央からも原種が来る、植えと同時に少量撒け」
「マジかよ‥」
「兎に角頼む」
「お、おう!」
フォレスが離れて戻った所でアリオローラに声を掛けられた
「ちょっとの間にえらい事になっとるな‥」
「まーな、今の所順調だ、促進剤も使ってるし、二週で地元生産品で食える分の最初が出来るだろう」
「ホント、何者だよお主‥」
「単なる術士さ」
「まあ、いいか、所で問題もあるんじゃが?」
「なんだ?」
「やはり、このままだと大規模な輸出入には弊害がある、信用の問題と通貨の問題じゃな」
「ふむ、現状金銀も取れているが、物々交換もアレだな‥」
「砂金と鉱石と通貨の交換もアリちゃアリだが、それにしても中央との交渉など要る」
「たしかにな、それにこのままだと牧畜の展開がし難い」
「本格的な輸出入にはやはり国家としての形が必要になる、統一通貨が導入出来んと売買が難しい」
「そうだな…」
「そこで私も思ったんじゃが、やはり誰かが音頭を取らねば成るまい?」
「ローラがやったらどうなんだ?」
「まあ、定住してもいいのだが‥長には無理だな、やはり所詮商売人じゃ」
「ふむ?」
「んで、お主領主に成ったらどうじゃ?」
「‥正気か?‥」
「冗談を言ってるつもりもないが。それに現状お主あってのココ、という展開じゃ何かあっての対応の手段と知識が尋常ではない、もう一つは皆お前を認めている、私としても後ろ盾と拠点があるのは色々助かる、多分皆も反対せんじゃろ」
「うーん‥」
「ある程度作り上げたら、誰かに譲ってもええし、とりあえずじゃ」
「そうだなぁ‥このペースなら一年も掛からんだろうし、その後は譲ればいいか‥」
「うむ」
「判った、とりあえず皆に聞いてみよう」
「うむ、其の方が私もやりやすい」
そして其の日の夕方にはその旨が通知された
が、「え?!、フォレスさんここに居てくれるんじゃないんですか!?」だった
反対する者等、既に居なかったのである。結局そのまま、あれよあれよという間に領主の座に就任というかさせられたが
ただ、彼自身、悪い気はしなかった、これまでとやる事が変わる訳でもなし、一応の事とした暫定統治であるし、安定すれば地元から代わりも出るだろうという事
そして案外悪くない点が二つ
「オレの知識が役に立つなら」という思いと
「安住の地が無いなら作ればいいのか」という事だった
その意味1から作るのは悪くない、優位な環境があったとも云える
一ヶ月もすると、砦周囲の町の形も整い、中央官舎から元々ある十字に街道を整備し、領内には複数、北から南への川もある為、そこから分水し、そのメイン街道の路肩にも水道整備、今で言う上下水で別けた蓋をしたコンクリ水路側溝という形に二本メインに作って使い分けする形にした
無論北から川水取って使う、流して捨てるだけでなく、取水場には井戸に近い円形施設を作り炭などを沈めて浄化する簡易な方法で綺麗にして使うモノも作り、下水側には下流に微生物分解ため池を四方系に四段作り置いてこれも浄化してから下流川に合流させる処理施設も作る。この時代でも可能な環境改善、循環生活、農法も整備して基本を整えた。
その為、路水から左右の緑化も眼に見えて進む、食料の類も最初の生産収穫が達成されてとりあえずの自給自足も始まった
意図した事ではあるのだが特に凄まじかったのは南と西に植えた豆と芋である、南に埋めたのだが採掘場まで広がるほど勝手に増えた
「採れすぎだろ」としか生産に関わった農民も言いようが無い、しかも殆ど手入れすらしてない
「薬と術が効き過ぎたな‥」
「これ、消費出来ないレベルなんですが!?」
「いや、余ったら売ればいいし、後、豚とかに食わせると肉も美味くなる」
「そーなんすか‥」
「ああ、ただ、牧畜がまだな‥」
「ソッスね、馬は居るんですけど、まだ、鳥牛豚は少ないですね」
「うーん‥アノミアの所に運んでやれ、猪とかに食わせてもいいだろう」
「判りました!」
「それと砦街周辺の作物の収穫終わったら西から人魔の森への街道方向も稲作始める、ノーブルミレットていう激レアな雑穀種が手に入ったんでな」
「それも凄いんですか??」
「ああ、日光水分少なくても育つ収穫も年中複数回可能ていう強くて珍しい穀物だ」
「おお…」
まだ、と云ったとおり、牧畜もチマチマ拡大していったのが、ローラの他国との交易と交渉の類が間に合わない程とんでもない速度でこの街は発展していた
この様な現状になると地域全体から人が集まる、そして元々人口が多い故、それぞれアチコチから人が集まり、街の規模もドンドン拡大していくのである
ただやるべきこと、作り上げねばならないものはごまんとある、それだけに雇用や労働の面は問題ないが
特に問題と思われた「交易」「通貨」なのだが、基本的にココで取れる金銀の原石との、周囲国との交換の類で賄っては居たが、それも追いつかない程の拡大ぶりであった
そこでフォレスは問題が表面化する前に手を打った、街に構えたヘッジホッグの本店に行ってローラと面談である
「と、いう訳で後々、通貨問題が出る、中央との交渉を頼みたい」
「金貨、銀貨の増産だな」
「直ぐどうこうでは無いし、まだ国内は通貨取引を主体にする段階ではないが、このまま行くとデフレになりかねん」
「なんじゃ?デフレ??」
「いや、何でもない、これも大昔のマクロ経済という学問の現象だ、物が多くて交換通貨が少ないと皆買えない、物の価値が下がり捲るという現象だ」
「まあよい、とりあえずペンタグラムに通知だけしよう、イチイチ行っててはキリが無いし遠い」
「そうだなぁ‥」
「向こうも世界統制する役目の連中じゃ、今の現状を見せておいた方がいい、百聞は一見にしかず、じゃ」
「勝手に来て、見て、決めろ、か?」
「それもある、ついでに納得してもらえば「世界」の統制地域として認めてもらえる」
「そうだな、オレらで治めるてる食えてるからいいだろう、だと規制もこのままだし、外交も交易も移動も制限されるしな、まあ頼むわ」
「うむ、エルザ!」
「は、はい!」
「そういう訳じゃ、手紙を頼む、とりあえずコッチも忙しいし、向こうに来てもらう」
「ハイ!」
そしてその「ペンタグラム」の役人が来たのは5日後である、連絡を庁舎で受けたローラもフォレスも驚きだった
「早すぎないか?」
「どういう事じゃ」
実際相手を迎えた所でその理由はハッキリする
「途中までは移動陣がありますので」
「ああ‥ある程度は転移施設があるのか」
「左様です、私はペンタグラムの外交、査察官でカイルといいます」
「一人なのか?」
「はい、今日は。別の者が来る事もありますが、数人で回しています」
一応の事として身分証、いわゆる、胸に付けた証章を見せる
「オレは暫定自治領主、という事になるのかな、フォレストだ」
「一回りさせて貰いましたが、始まったのは何時頃ですか?」
「まだオレが来て2ヶ月経ってないな」
「恐ろしい程の治世ですね。昨年視察した際は手のつけられない状況であったと思いますが」
「売る物はあるからな、草木が育たない様な環境でもないし、住民もやる気はある、労働力も馬鹿程ある、知識と方向性だけ示せば立ち直りは出来る環境にはある」
「成る程、それでも賞賛に値します、実際誰もここの統治は引き受けませんでしたし」
「と、云う事は一度ならず何とかしようと言う意見なり行動なりあったという事か」
「はい」
「それでどうしょうもないと見切りを付けられたのか、呆れるな」
「ご尤もでありますが、こちらとしても強要は出来ないので、精精話を候補者に持っていく程度の事しか出来ません、ペンタグラムから直接統治や人材を送る事は禁じられています」
「それが如何なる状況にあっても行うのはその国の者である、という思想だな」
「はい」
「役に立つ様な立たん様な曖昧な組織じゃな‥」
「まあ、仕方無いさ、そもそも全てをペンタグラムがちょっかい出すという事であれば、統一国家や独裁に成りかねない、思想としては間違いではないが」
「そういうもんかのう」
「流石に知識者はよくお分かりで、ペンタグラムが何もかもやるというのであれば、そもそも、個々人や国の意思を軽視している事に成ります、それは我らの教理から反します」
「だから中立的立場からの、あくまで援助、話し合いの薦めだな」
「ええ」
「まあ、それはいいとして、コチラの要望の一件じゃが?」
「問題ありません、そちらの金銀原料の2倍の通貨を交換提供いたします、既に申請のあった分は製造が始まっています、同時に紙手形も増産中です」
「助かる」
「そこで今後ですが」
「そこも問題ない、半年、一年は大した問題は出ないだろう、対処もする」
「人外の森はどういうスタンスでしょう?」
「当初は相互不可侵のつもりだったがアチラが積極的に協力してくれている、そしてそれを示した事に寄り、人間側の住民も彼らを差別しなくなっている」
「ふむ‥では、経過を見守らせてもらいます」
「ペンタグラムは人魔の類への偏見は無いのかの?」
「ありません、混ざり物だから、という理由では少なくともありません、ポイントは「問題を起こすかどうか」だけです、そもそも混ざり物だから、で否定するなら、我国の歴代君主も「そうだ」という事になります」
「確かに、天魔戦争の頃からの「天」の側の一族だからな」
「ええ、中には神の血筋も居ます、初期ですが。故に其の点は問題としていません」
「よくわかった」
「それとフォレス殿の手法を見たいのですが、滞在しても構いませんか?」
「構わんが‥」
「個人的な興味です、自分も学者ですから」
そうしてカイルは「個人的興味」で砦街に数日留まった
少々面倒くさい人間ではあったが
「え?!一月でこの量の収穫が!?」
「最初の1回だけだな、成長促進剤と自然術を使った、とりあえずの食料を賄わないといけなかったのでね」
「そんな農法は聞いた事が‥」
「品種も元々環境に強いイモや豆の原種に改良を加えた物だ。農法も大昔のやり方にアレンジした物だ、材料も大抵ゴミや廃物から作れる」
「なんと‥」
「もうすぐ北街道方面では最初に植えた果物類も大量に出来るだろう、これも通常の数倍くらい採れる予定だ」
「ふむ…これも見た事ないモノですな…鮮やかな緑の実で甘酸っぱい」
「ああ、今は殆ど見かけないがキウイというモノの改良種だな、これもどこでも育つようにしてある、特に栄養価が高い」
「なるほど~」
街を回っては
「この石家の壁はなんです??人工物ですよね?」
「これも大昔に使った石の接着剤だ「セメント」という、固まると石と同じくなる」
「‥おお、石膏や粘土に近い物ですか?」
「そうだな、あれの強化版という感じか、ただ、密度と強度は比較にならん風雨に強いしな」
「ほほう」
夕食の場では
「さっきの豆ですよね??」
「だな、稲類は普通に育ててるから、まだ掛かるんでね、果物や猪の肉が森から、ここで今採れているのが香草と豆と芋と果物が少しだけだな、一通り一回目の収穫が終わって土壌が安定すれば稲麦もやる」
「むむ、しかしこれは無茶苦茶甘い」
「蒸すとかぼちゃに近い甘さを出す、エネルギーが主で労働者の栄養補給に役立つ、余りは家畜に食わせると肉が美味くなる」
「なるほど~」
という感じだった
そして勿論、やり方もメモって帰った
「いやはや、貴重な知識を惜しみなく教授して頂いて」
「何、構わんよ、どこかで役に立ててくれ」
「はい、有難う御座いました」
転移魔法で一人戻った
その後の展開も速かった、ペンタグラムから地域称号、いわゆる国号を「サウスグランセルナ」と定められ通知される、初代領主にフォレストの名前が載ったのである
2週間後には等価交換された金貨や銀貨、紙手形、通貨等が届き国庫に、そのまま通貨経済も始まり、国号を定められた事により周辺国との外交、輸出入も解禁、移動規制も緩和、後北、西とも関所も撤廃され自由化もスタートする
ここで賊だった親方らも解散してそのまま治安維持軍に当ったおっさんは
「オレらが生きていられるのはフォレスのダンナのお陰だ、どこまで着いていくぜ!」
という事だった。人数は300程度だが、別に争いがある訳でも無く、特に問題は無い、賊と言っても別に略奪だの盗難だのしていた訳でもなく単なる集まりだし、地元民の集まりで現代知識で言えば先住民とか部族みたいなもん、そもそもフォレスに従うなら別にいいかという程度だった
3ヶ月に成る頃には砦街の官舎も一新されてマトモな施設に成る程の発展復興があり、周囲の国からの規制緩和で家畜、馬、牛等も大量に買い付けた
そしてここまで来るとほぼ「世界」でも有数の大都市に成りかけていた、何しろ、新領主の治世の評判と元々の流入者が多いという点から人口は増える
それに合わせて建築物も凄まじい勢いで建てられて増えていき、雇用もあれば、食料難も既に解消された故だ、生産品は独自のやり方で収穫量が尋常でなく、既に国内消費量の三倍収穫出来ている
特に住宅「セメント工」は誰でも作れる、簡単な木の支柱の周りに石を大小適当に積み、セメント塗装するだけだ、面白がって女子供までやってる始末である
「秘密基地」を作ってる感覚で
更に云えばミス、しても補修が非常に楽でぶっ壊れても廃材がまたそのまま使える
治世から半年の頃にはヘッジホッグもグランセルナを拠点にドンドン拡大、周辺国に支店を構える勢いすら見せた
砦街周りも最早大都市の様相であった、緑多く、人多く、家も頑丈で豪華、街道中心にコンクリの上下水も整備し、そこから一面に広がる収穫物と自由に芋食ってる動物、皆明るく、安心感のある都市となっていた
しかも大抵は廃棄物から作っているので完全循環社会でもあるだけにどれ程拡大しても左程問題は無い
「問題はやはり軍事力かの?」
「そこはまあ、当分大丈夫だろう‥周りが防波堤に近いからなぁ‥」
「北はバルクスト、西は元々戦火は来てない、東は大河が二本あるしの」
「大河も船も橋もまだ無いからな、まあ東に行く意味もないが」
「南はまた別世界じゃしの」
「そもそも遠いからな、まあ、外交なり同盟なりは必要だろうなぁ」
「ここに攻め込もうというアホも現状居らんじゃろ」
「んー、暫くは発展から安定まで放置で問題ないな、問題があれば逐次対応か」
「税はどうする?」
「まだ、早いな、通貨経済が浸透して収まった所で始める、とりあえず手持ち国庫金だけは、おっさんらに払ってと政府としての仕事の依頼で普及させる」
「ふむ」
「まあ、軍隊の規模が少ないうちは大して要らんだろ」
実際「税」制度が始まったのは8ヶ月経過後である、とは云え、個人収入の1%~程度で負担と言うものは無く、特に反対の類は無い
他国と比較しても10分の1、特にフォレスの「政府」としての姿勢と投資の類は寧ろ国を良くする物だったからだ
集めた税から「公」の側の人材を雇い、同時に基礎教育制度も開始、しかも無料で
とは云え、難しい事ではない、簡単な読み書きと計算、日常商売で使うもの、農業、建築、製造、の希望者の指導だけだ
軍、自体にはロベルトのおっさんの元にエミリアを充てて剣技の指導もやらせた
「基本暇なんだが?」と彼女が言った事にある
ターニャに教えていたのを見て、やらせてみたのだがこれも上手くいった、元々彼女の武力が高いというのもあるが、王族の軍司令官でもあった訳だし、専門家には違いなかった、何故か軍錬の類にターニャやインファルも通った様だが
肝心の外交だが、それもコチラが何かするまでも無く向こうから来た
西と北の両国にしてみれば「背後から沸いた国」に等しく戦略上の面で、放置すると後ろを突かれかねないという理由だ
その為理由も目的も明確で外交会談を持つまでも無くそこは決まる、要するに「当面の不戦条約」と「協力関係」と成った、どちらも、ちょっかい出されては敵わんというだけだ
特に北のバルクストは正面と左右に3国の相手が居る、ここで南も相手には出来ないという事である
ただ、現状グランセルナは軍の国ではないし、こっちから争いを起こす理由もないので、そこは簡単に決まる
10ヶ月を過ぎた所で領内各地から中央に集まった領民は30万にも成っていた、当然僅かな税だが、ここまで人が多いと収入がかなりのモノとなった
合わせて軍の増強も図り一応3千程度の規模まで増えた、特に募集を掛けている訳ではないのだが志願してこうなった
おっさんの統制能力を軽く超えたのでそのまま元山賊軍は首都警備隊に、集まった志願兵はそのままエミリアに任せた、これが最初の正式な国家軍である
ただ、別に戦争がある訳でもなく、これも過去の歴史であった「屯田兵」に近い物にした、普段の仕事や公共事業等やりつつ、一時賞与を上乗せして半々兵という扱い
希望して一般事業の手伝いをする兵も多く、やってるほうもあり難いという事もあり、かなりの規模の公共事業が行えるようになった
それでも税が余ったので防備の面を強化した、お上依頼で金を出して、装備の作成と遠距離武器隊、そして北と西街道、町の外側に官舎の建築である、この官舎の最大の、というよりこの国の家屋の最大の強みが
「石家」である
官舎を街の拡大に合わせて〇型外に廓にし、更に大きく成れば◎にと横に並べる様に作り、住宅でありながら城壁にしたのである、まず、矢など通らないし、火すら無効だ
無論破壊工作すら通らないし、街の外側には兵が常に滞在している、街に侵入出来た所でそこもコンクリ家だ恐ろしく境涯で固い、既に十字に街道と小道、並走して水道も整備してある為、家、施設の町割りも完璧で通行も不自由なくしてある、災害、火災、衛生、生産、収穫、なども完璧に整えた
「よく考えてるなぁ‥」と視察の場でエミリアも云った
「大昔の忍者屋敷だな」
「なんだそれは?」
「家屋でありながら、外敵の防衛拠点になる、しかも色々工夫もある」
「例えば?」
「街道の外側だけ全部窓が小さいだろ?」
「ああ」
「あそこから射撃武器だけ出して一方的に打てる」
「むごい‥」
「それと二階に隠れ場所、武器部屋、進入された場合の罠も用意するつもりだ、まあ、色々考えては居る、召喚類も出せたらいいな」
「お前を敵に回したくは無いものだな‥」
「まあ、せめて来られなきゃやる事もないさ、コッチは数少ないからな」
「確かにそうだな」
「あくまで「守り」の意味での対処になる」
「私らの軍もその方がいいんだな?」
「数の増強は大規模にやらん、領民がどう思うかも判らんし、森の住人も嫌だろ」
「なるほど。それとだが」
「ん?」
「私が司令官なのは問題では?過去のアレがあるし‥」
「攻めなきゃ別に問題ないな、ここで戦う分にはオレが全体指揮してもいいし」
「司令官、兼軍師か、まあ、お前なら両方出来るか」
「多分な、お前は気にせず前線で好きにやればいいさ」
「そりゃ楽でいい」
「まあ、ここに攻める事があるとも思えんが」
「そうだなぁ」
「ただの転ばぬ先の杖のつもりさ、全部な」
「が、人材は欲しいな、数の割りに隊長の類が少ない」
「ふむ‥、それも時間が要るなぁ、基礎軍訓練か教室でも開くか」
と、一週間後には中央官舎での戦略戦術授業も始まったが、軍関係者だけでなく無関係な住民まで集まった
フォレスが何かしようとすると大体この様な事になる「何か凄い事を教えて貰えるのでは?!」という領民の統一見解からだ
結局、数回の臨時講義の後、元々ある学校施設を強化して、歴史や軍事の基礎などの学科も作った、ついでに図書館もである
「四六時中開いてるから好きに自習しろ」というスタンスで
勿論ここの主になったのはターニャである、殆ど一日中居る
、それ程蔵書が無いのでこれもローラに依頼して買い取り、ちゃんとした物に仕上げた
基本的に領主フォレストは何も変わってない、自分が何でもやるのは面倒だ、というのがまず先にある為、ある程度やったら誰かに任せる、あるいは自習しろ、というスタンスで
なるべく自分が動かない様にシステムを構築していった、それだけに厳しい主だったとも言えなくも無い
「自分で考えて動け、学べ、困ったら聞け、助けてやる」だった
だから一年に成ろうかと言う頃には殆どの人間が自発するようになったのと、フォレス自身は相談役の様な立場になった、ありとあらゆる面で、理想どおりの「国」となっていたのである
学校から教師、生徒から各ジャンルに進む者も出て
軍も勝手に増えた
士農工商もムラ無く育ち、ドンドン発展し人口も40万には成っていた、もはや「領主国」ですらない規模と発展である
「人事」の最大の活かし方は正にそれである
上は困った時に手を差し伸べ、下は専門家に自由にやらせる、だから皆不自由も無く、そのジャンルで力を発揮出来るし、ダメになってもフォレスは見捨てたりしない
生活や経済もそうだが、その「安心感」が何より重要である
故に「相談」にしてもかなり多い
「こういうのをやりたいんですが!」という相談がかなり多い、大抵一日に20人は来る、ただ、会談は直ぐ終るので負担ではないが
「良い、それは上手く行く」
「ダメ、それは歴史上の実例で成功した例は少ない」
で大体済むからだ。
つまり人類の数千年の歴史、事業、学問などの中身が全て彼の頭にあり、事例・確率論での、YES、NO、での判断だからである、それだけに失敗や目利きでの間違いも極端に少ない
彼にとっては、単なる確率論だが相談してやってみる当人からすれば、それが99%予測を外さないので、それも噂になり何時からかフォレスも
「予言の領主」とか呼ばれる事になる
「確率論であって、別に予言じゃねーんだけど‥」と思ったがイチイチ説明するのも面倒なのでそのままにしといた
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