境界線の知識者

篠崎流

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捨てられた地

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バルクストから南の領土境界線へ向かい、一応南街道に横に併設してある関所のような場所で軽く審査のようなモノを受けて通過。これはどこでもあるという訳でなく、国によってあったり無かったりする

バルクスト自体は領土の出入りは一般には規制していない、所有する領土の街とか、首都の出入りでチェックする程度だったり、ロードランドの様に四方八方から商売の出入りがあるような場所ではそれすら無い場所もある

フォレスらが通過したこの審査施設はペンダグラムの管理でここから南は世界の国でも地域でもないので、現在でいうパスポートのようなモノが必要とされている。別にガチガチな規制統制でもないので個人でも抜けるのは簡単だが、基本的にどこの誰だか分からない者が勝手に出入りされたら困るので今の所、簡易にそう規制を掛けてある程度だが

そのままヘッジホッグは南進したが、三日程移動した所で風景が一変する、思わずローラも「なんじゃこれは?」と、出る程だった

何しろいきなり荒地、草もまばら、まるで鉱山の様である、要するに「自然らしきもの」が極端に減るのだ「どういう事だ」フォレスも思わず出たがそれは直ぐに判る

更に半日進んだ所で地元民と思わしき者が僅かに残った草や木を刈っている場面を見る、自然に生えた物を

そしてその住民もボロボロの服と汚れた体、明らかに痩せて覇気も無い。

「そこの人」
「‥なんだ?」
「何故草や木を刈っている」
「‥ナンかには使えるだろ、木材なら売れるかもしれんし‥」

思わず「はぁ?!」と出かかる程の事だ

「街とか国はあるのか?」
「ああ‥真っ直ぐいきゃあるぜ、そんなに遠くねぇ‥」

めんどくさそうに彼は返してそのままだった

「つまり、この惨状は地元民が刈り取ってしまうから、なのかの?」
「らしいな、そうとう貧乏らしい‥」
「あんなモンで商売になる訳なかろうに‥」
「しかし、これはまずいな、信じられんほど悲惨な国だ、国があればだが」
「あったとしたら暴政、無ければ無法地帯じゃな‥」
「兎に角、情報だな、街の類はあるらしい」

が、「街」というレベルの物は最初から存在しなかった、更に一日移動した最初の街は住宅や住居の形を保った集団に近かった

ポツポツとボロボロの板を打っただけの家々、周囲に柵らしきやはり板を立てただけの廓、現代で言う所のバラックに近い、アチコチにする事もなく、放浪する人等しかも人数だけはかなり多い

「なんだこれは‥」としかフォレスも云えなかった、いや、一同もだろう

一応住人に「この土地には国とか領主とかあるのか?」と聞いたが

「仕切る奴ならコロコロ変わるが一応いる、更に南に丘があって砦がある、首都と言っていいのかどうか」
「砦?」
「ああ、色んな連中であそこの取り合いだな‥尤も、仕切りたって統制してる訳じゃねぇ」
「何故この様な現状になってる」
「どういう意味だ?‥」
「皆ボロボロだし、マトモに食えてる感じもない」
「‥東にいきゃ大河はあるが、魚、くらいしか捕る物ねえな‥それも取り合いだ、何しろ人が多すぎる」
「何故人が集まる?」
「さぁね、ただ、外、中央地に行っても捕まるような奴も多いからじゃねーか」
「例えば人魔とかか?」
「それもあるだろな‥戦争避けて逃げてきた連中も多いし、南の外世界から来る奴も多い‥」
「成る程」

要するにこういう事だ、世界中、それ以外からも人が逃れて集まる、人間じゃない奴もいる、統治の類も無ければ統制も無い、人口が多すぎて補うだけの自然も管理も無い、という事だ

一行は言われた通り南の「砦」に2日掛けて移動するがそれも砦と云えない様なものだった

中央にぽつんとある低めの山に平地とまた山、木材の粗雑な家屋、周囲山や壁に横穴を掘っただけの住居というだけだ、文化レベルが此処だけ急に中世後期から古代になっているような感じだ

兵、とか住民と言っても一応居るだけ、戦争等という気の利いたモノがあるとも思えない

一応中央の山の施設に向かいコンタクトしてみるがそれも労せず責任者と面会できる、正直向こうも「軍」というより地元部族に近い中央官舎の類も木造の急造に等しい

「オレが一応責任者という事になるが、ロベルト=アダールだ、で?何の用だ?」

そう責任者と官舎で面会したが相手も意味不明でそう聞いたくらいだった、そいつ自身も見た目から蛮族か山賊の親方という感じだったが、暴虐な感じは殆ど無い、ガタイのいい、おっさんという感じだ

「一応、ここが中央施設、という事らしいんでな、国の現状を聞きたい、何故こんな悲惨な状況なんだ?政治の類はどうなってる?」
「政治?‥そんなんやる奴いねーよ」
「お前が元首という事ではないのか?」
「今は一応ここを持っているというだけだな、偶に統制管理しようてやつも来るが大体失敗する」
「お前もボスという割には痩せてるな、食えてないのか?」
「まーな‥、食料が全然足りてねーしな、一応農作も頑張ってはいるが直ぐ無くなっちまうし、んで自然に生えた物とかも取られるし」
「無茶苦茶だな‥それで自然やら草木まで無くなってるのか‥それだとジリ貧だろうに」

「ハァ‥、そうかも知れんが、どうする事もできんよ‥どんどん他所から人が入ってくる、まあ、「人」だけじゃねーけどな」
「どこかに移住の類は?」
「外からコッチには入れる、が、コッチから外には出られない、関所の類で入国拒否なんて当たり前だし、北の大湖、東の川越えて逃げる奴も居るが、船だの橋だのもねーからな、大抵渡る前に死ぬわな」
「かなりの大河だな地図では」
「そうだな、大抵流されて溺れるわな、川の魚にしてもそうだろうよ、一応川住人てのも居て、食えてはいるが絶対量が足りてねぇ」
「ふむ‥争いの類があるそうだが?ここの取り合いだとも聞いたが」
「どこの情報だそりゃ‥、ここには、居たい奴だけ来てる、争いなんざ大してねえよ、一応過去には統制管理の人材がペンタグラム経由で来た事はあるが…大抵1,2か月以内に逃げちまうな」

「つまり支配者がコロコロ変わるというのはあれか、単に入れ替えがある、てだけか?」
「どうせここもナンもねーしな‥ココ押えたからって別に食える訳じゃねー、大体マトモに食えてねぇのに戦争する元気もねーよ‥」
「成る程な‥」
「別にアンタが「長」に成る、てなら好きにしたらいいぜ‥誰も反対はしねぇよ、誰もやりたがらないし誰もどうにか出来ない、だから国の概念もねぇ」
「おやじさんは移住しないのか?」
「一応此処の生まれ育ちだしな、まあ、純地元民てやつだし」
「なるほどな」

正直呆れて物も云えない現状だった
が、同時に仕方の無い状況に自然に成っているとも云える、細かく言えだが。元々そこまで酷い地域では無かった、普通にそれなりに田舎ながら自然はあるし、農地生産や生活していたのだが大陸全体の乱や、南外世界から、流民や戦禍を逃れて人が集まる、入れる、様々な事情で逃げて来るのはいいが容易に出れないので、それが増え続けて領土内のキャパを段々超えて最終的には現在の状況になったそう、ただ此処まで悲惨な事になったのは近年、5年くらいの話らしい

昔で言う広大な空白地なのだが、ここまで状況が悪いと他国も侵攻して確保するというのもなく、ペンタグラム等から統治の人間を充てても統治者が逃げるそう、要は「これはどうしょうもない」とそのままにされている、正に捨てられた地である

「で?あんたら何だ?他所から逃げてきたようには見えんが?」
「私はアリオローラ、移動商人じゃよ」
「ああ‥確かに物は売れるだろうな‥、なんかあるなら売ってくれよ」
「む?、けど金なんざないだろう?」
「いや、南東の石場で鉱石は出る、金の類は結構出るな、それ以外の物資があんまねーけど」
「は!?、なら外から買えば‥て、取引も出来んのか‥」
「そういうこっちゃ‥そもそも商人なんかこんな土地こねぇよ‥国ですらねーから、輸出入の国家間条約も取引も無いな、ま、貨幣じゃねぇけど鉱石や砂金の類はかなりあるぜ‥」
「ふむ‥‥ま、よかろう、エルザ、馬車に戻るぞ、とりあえずここで商売しよう」
「は、はい!」

そしてあっという間に馬車に積み込んだ荷物も商品も無くなったのである、連中も「ありがてぇありがてぇ」と物資を購入、そしてまともなモノが何ヶ月ぶりかに食えたのである

その日の夜にはヘッジホッグの面々はそのまま砦に滞在しローラはこう告げた

「うむ、これは独占状態じゃな、意外とウマイぞ」
「そーですけど、いくら物資があっても足りませんよ?」
「いや、工夫すればどうとでもなるなぁ、ここに固定して店やってもいい」
「正気ですかボス‥」
「うむ、とりあえずやってみる、ここが貯金の使いどころじゃ」
「具体的には?」
「馬車を離して周辺国から往復して物を集めて売る、の繰り返しじゃな、ウチらなら移動規制もなかろう、たぶん、周辺国と交渉は要るだろうが、イケルじゃろ」
「同時に移動馬車も拡大する、ただ、問題は治安じゃが」
「ここで商売する‥てならオレらが護衛してやってもいいぞ‥物品を輸入してくれる、てならコッチとしては、ありがてぇ‥」
「おう頼めるか!親方」
「ああ‥あんたらが襲われる事になったら物品が入ってこなくなるからな‥」
「うむ、そういう訳だ、明日から早速動くぞ、それとフォレス殿」
「いや、オレらも現状が良いとは思わん、暫く滞在するよ」

そして翌日早朝からローラは動いた、馬車隊を切り離し道のある北、西、に其々移動、本体をそこに残し、固定店として置き

各地から物資を仕入れ交換しながら本体の商品を可能な限り絶やさず売る、という手法「石の国」でやった方法を取った

ローラ自身も馬車隊に乗り、同時に各地の領主や国家との交渉を図った、それの移動のついでに手持ちの金の3割を消費して馬車、馬等の購入して、当初の馬車隊の規模10台を一気に3倍の30台に拡大、人も集めて雇った

各国との交渉も比較的スムーズだった。元々が有名な商人隊という側面もあるが、「袖の下」を袖の下というレベルで無い程展開して容易に通行許可証を勝ち取った

「世界」の南西地域と南4国の移動権を確保して只管移動商売を展開する

「で?我々はどうする?フォレス」
「暫くここに居る事になりそうだなぁ‥ま、俺らもやれる事、やるか?」
「どういう風に?」

そしてフォレスはこういう手段を取った、周囲の環境調査と地理調査である、情報自体は族連中が持っておりそれは難しくない

とりあえず地図を手書きで作り、集団、集落、自然環境などの基本マップを作る、それが出来たところでの計画の作成だ

「雨もあるし、西には森も多いな、土が痩せているという事もない、統制し、農業生産始めればどうにかなるだろ」
「それに元から何もしていないという事でもないし、放棄されているが施設や道具も街道もあるし、水路もある。まあ全補修必要だが…」

という事だ

「西の森は無事なのか?」
「まーなー、あそこは人外の集まりだ、誰も近づかねーよ」

そう云われた為彼は単身そのまま西の深い森へ、そこでも直接交渉して、堂々と森に入って住人に言った

「このままの現状が続くと何れここも刈り取られる、協力を願いたい」

向こうもまた人間と争って追い出されては敵わないと云うのもありシブシブながら一応同意する、無論それだけではない

「森を拡大する?!」
「ああ、失った自然を元に戻すと共に、恵みの恩恵を増やす」
「そんな事出来るのか?」
「ああ、砂漠や荒地という訳ではない、増やそうと思えば増やせる、オレにはその知識がある」
「‥イマイチ信用ならねぇな」
「このまま行くと双方共倒れに成りかねん、それが良ければ、構わんが?」
「‥いいだろう、コッチは何をすればいい?」

「枯れた草、葉、木、種子の類をくれ、それをこっちの中央の禿げ山に植樹の類をして緑化する」
「そんなんでいいのか‥こっちに損はないな‥まあ、いいだろ」
「もう一つはこの森自体の管理だ、新芽の類、つげ木、それとここまでジャングルに近いと非効率だ、ある程度間引きが要る、それ自体こっちにやらせてくれ」
「それは‥まあ、オレはいいが、他の連中はどうかな」
「責任者や代表者は居ないのか?」
「まあ‥一番力のあるボスは居るが‥それは俺らがどうこう、て話じゃねぇな、話したきゃ一応案内するが?」
「それでいい、頼む」

更に奥に入る事になる
森の奥、北東付近に進んだ所で集落の様な場所に出る、木々を切り開いた村、大木をくり貫いて家にしたような家屋が多数ある

見たところ「人外」と言っても人間系が多い、殆ど「人魔」の類か、混ざり物なんだろう、そこに招かれ、大木の上に作られた家に案内される

「私が一応長、という事になっている、アノミアだ」

アノミアと名乗った「彼女」は黒い肌のエルフだった、確かにこの種も外世界では迫害の対象でもある

「黒エルフか‥フォレストだ」
「残念ながら私もハーフだ。で?話とはなんだ?」

そこでフォレスはこれまでの経緯を話した

「酔狂な事だ、そんな事をして何になる?」
「飢えや貧困は物事を良くせん、ある程度の安定が必要だ、どちらにも、な」
「どちらにも、ね、正直人間がどうなろうと知った事ではないし個人的には恨みすらある、が、折角辿り着いたこの地を追われるのは確かに困るな」
「不可侵、ならそれが良いと思うがね、そちらの目的がソレならオレも尊重しよう」
「‥お前は向こうの代表でもあるまい?尊重とはなんだ?」
「そうだなぁ、一応人間側、つまり向こう側もあまり関わりたくない事情があるだろう、人外の者自体恐ろしいという見解がある」
「で?」
「だから今までどおりでいいだろう、不可侵のまま、ソッチはソッチで好きにしたらいい、オレは向こうにその条件を飲ませる、必要とあらば書くが」
「が、お前は長でも王でもなかろう、約束の類を守るとも思えんが」

「ま、確かにそうだな、オレはよそ者だ、が、代表と言っても向こう、人間側のこの国は長だの王だのいない」
「要するに、森の手入れ、ある程度の種子の類をよこせ、お互いそれ以上の干渉は無しだ、という事か?」
「そうだな、それと、こっちに安定が出来れば、礼の類は多少出来るだろうし。協力してくれれば、向こう側からの印象も変わるだろ、それをアピールしても損はないが」
「ふむ」
「何時までも種違いだから、混ざってるからと言っていがみ合ってても碌な事には成らんだろう、ここで恩を売ってもいいと思うが?」
「‥実質、その条件でもこっちの損は何もないしな‥たしかに貴様の言う事も判る」

「それにだ、人外の者の集まりという「恐れ」がある、それを解消出来れば不可侵以上の効果も出る」
「そう、上手くいくかな?」
「やって損な事は無いと思うが」
「‥、ま、いいだろ、判った同意しよう」
「ああ」
「だが、お前に何の得がある?正直意味不明だが」
「そうだなぁ‥まあ、オレらは見に来ただけで、ここで商売している商人隊の同行者だ オレらは暇だから、というのもある」
「そんな理由かよ」

「それと、オレは一応術士だし、ここは改善する余地が大いにあるとも思う、もう一つが、「種」の違いの差別は気に入らんというのもある」
「だからバランスを取ろう、というのか?」
「オレの娘も人魔だからな」
「フ、成る程」
「それにオレの資質調査ではあの子は人間でも滅多に居ない程の才能の子だ、それが「人魔」だからと迫害されるのは許せん、だから、後年‥何れ混ざりと判っても生きていける場があってもいいだろうというのもある、保険だな」
「その意味、ここは有った方が良い、という事か?」

「お互いな、純人間にとっても、ここが放置されている理由もソレだ、つまりここで集まって暮らしている分には邪魔にもならんという事だ」
「ふむ‥わからんでもない」
「そういう訳で、オレ個人としても、お前たちを邪険にするつもりは無い、信頼しろとも云えんがソッチの損に成る事もしない、そこはわかってもらいたい」
「いや、よくわかった、こっちもやれる事はやろう」

そうしてお互い協力する事となる。人外の住民が住む森、早速フォレスは住民一同を集め、具体的な手法を指導した

「道具の準備はいいな」
「ああ」

森を10メートル程移動して指示した

「あれだ、ああいうデカくて下が枯れている様な老木過ぎない木を切る」
「ふむ、判った、オイ、あれを切れ」

と長でもあるハーフエルフのアノミアは仲間に指示する、わっせわっせと数人で斧を叩き巨木がズズンと落ちる、無くなった木の隙から日が差し込む

「見ろ、これで下まで日の光が届く、これで下の枝も育ち、地面の草も実も育つ」
「なるほど、で、切った木は道具を作る原料に、か」
「そうだ」
「だが、ここは相当な広さがある、これを繰り返しても木材がかなり余るな」
「不要分はウチで買い取ろう、今後、コッチは家や木製器具がかなり必要になる、それに大規模商人隊が居るからな、木材を売って金を稼いで、ソッチはソッチで好きなモノを買えばいい」
「成る程」

「それとこの間引きという作業は森林火災の防止にもなる、密集し過ぎていると木同士の摩擦で火災が発生する、森林火災の原因は落雷か摩擦に寄るものが9割だ」
「万が一起こっても間が空いていれば拡大を防げるという事だな」
「そうだ、それと人外の森の住民は少ない割り、森の規模がデカ過ぎる、余る実りの類も買い取る」
「了解した」

「ああ、ああいう老木も切っていいぞ、枯れ木に近い物は酸素を作らない」
「酸素?」
「オレら吸ってる空気の成分の一つだ、草木は育つ際、それを作るが老化期には作らない、だから切り倒していい、燃やして蒔なんかにして燃料や暖を取るのに置いておけばいい」
「そうなのか?‥よく判らんが判った」
「間引きも成熟から老化の物を選べ、そうすれば新しいものが勝手に生えてくる」
「なるほどなぁ」

森の集落に戻った所で住民が大袋を抱えて
アノミアらの前に置いた

「とりえず種子の類は集めたよ」
「ああ、有難う、これだけあれば十分だ。意外とレアモノもありそうだ」
「落ち葉や蔓草の類は集まったらそっちに運ぼう、荷車や輸送の家畜程度はある」
「判った助かるよ」
「しかしどうすんだ、そんなもん」
「枯れ物は肥料になる、作物を作る際有効だ、腐葉土とも言うのだが」
「腐葉土??」
「食料ゴミなんかもそうだが、カビとかゴミみたいな腐ったもんは土に埋めると土の栄養になる、廃棄なんて勿体無い」
「そうなのか‥」
「オレらには毒だが菌類は土には栄養だ、覚えておくといい、作物の育ちがまるで違う」
「ほう‥」
「大昔の循環農業や林業というやつだな、森の落ち葉も全部とらなくていい、半分は放置しておけば、また土になる」

種子の類、実にしてもかなりの量である為、結局アノミアらも持って運んだ

「それにしても聞かない知識や学問ばかりだな、どこで学んだんだ」
「術士だからなぁ、古い原書の類に当る事もある、そこで得たものだな」
「ふむ」
「農林知識も、そうだな、数千年くらい前のモンかもしれんな」
「そんなに?!」
「ああ、今より発展した高度な文明があった、が、それが滅びて知識が残った」
「そうだったのか‥」
「オレは幸運だった、とも云える、そういう原書に出会えたのだからな」
「ふむ」

中央砦に荷を運んだ後其々分かれた

「ま、集まったらまた持ってくる」
「ああ、よろしく」

「な、なんだこれ‥」
「種の類だな」 エミリアが聞いた後、フォレスが返すまでもなくティアが答えた

「ああ、これで苗木を作る、それを砦周りに植えて緑化する、ここの周りなら周知させれば、刈り取りは防げるだろ、そこから外に広げていこう」
「なるほど」
「が、ローラの商人隊が今のうちは物品を持ってきてくれるが、それも限度がある、兎に角早く育つ物からドンドンやっていこう、森の住民から協力は得られたのでどうとでもなる」
「私らは何をすればいい?」
「とりあず、後でアノミアが指定した蔓草を持ってくる、それを適当に埋めてくれ、あんま日の当らんとこでいい」
「わかった」
「オレは土と苗木作りだな」

とフォレスが山上の官舎に戻って準備に取り掛かるがインファルとターニャがへばりついた

「ねーねー、何するの?」

丁度勉強にいいか、と土と苗木作りを指導しながらやった、ついでに「成長促進の触媒」だ

「ゴミやらからそんなモン作れるの?センセ」
「ああ、覚えておくといい、荒地とかでも作物を作る事が出来る様に成る、というか土その物の性質を変えちまうんだ」
「ほうほう」

生徒二人が興味深そうにメモメモしていた
ついでにフォレスもメモメモしてインファルに渡した

「ローラが戻ったらこれを探して購入するように頼んでくれ、兎角どこでもアホみたいに育つ、食い物を確保したい」
「了解せんせい、て、なにこれ??聞いたこともないけど…」
「ああ、アホみたいに取れて大量に食い物が確保出来る種類だ、後、環境に強い、寒くても熱くてもイケル、まあ現代でも有ればだが」
「へぇ~」
「この際、食料が急務だ、セコイけど最初だけ魔法ブーストも使う」
「それもおしえて!」
「勿論だ」

遠目に見ていた山賊連中もフムフムと頷いていた

「それと大将」
「んん?」
「ここを中心に全ての物事を展開する、刈り取りの類を防いでくれ」
「ああ、判った、任せとけ」
「それと人手も欲しいな、希望者が居ればそっちでドンドン増やしてくれ、かなり労働力が必要だろう」
「かまわねぇが、給与はどうする?」
「とりあえず食い物の面倒だな、現状をよく思わない連中で協力するて奴だけでいいだろう」
「そうだなぁ‥今ん所、飢えが先だろうなぁ」
「鉱山の類からも確保したいし、家もどうにかしないとならん」
「やる事多いな‥」
「そっちには軍隊という役割はなくなっちまうが」
「まぁ‥それはいいさ、どうせそれで食える訳じゃねーし‥アンタに従うよ」

だが、実際大将の告知を受け入れなかった者は砦の住人に一人も居なかった、もうどうしょうもない、けど彼なら何かを出来る、食えるだけもいい何でもする、そういう統一見解の元、全員集まる事と成った

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