剣雄伝記 大陸十年戦争

篠崎流

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傭兵団編

フラウベルトの剣

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ライナは砦の門の前に行き、衛兵と思わしき門番に自分達はベルフから逃れてきた者だと伝え保護を求めた。

向こうも流石に怪しんだが、武器を自ら渡し、敵意の無い事を示して納得させる

一時軟禁と言う形になり、そのまま兵の宿舎の一室に通されて食事と休息を受けた、正直相当疲労していたのでむしろそれは有難いくらいだった

ただ、ゆっくり休息する暇も無く夕方前にはそこを出され砦の作戦室の様な場所に通されたが。そこで意外すぎる人物が彼女を出迎えた、お互いの姿を見てライナ自身も驚いた

「ライナ!」
「ロック!」と同時に言った

そう出迎えたのは傭兵団に居た頃の盟友ロックだった

二人は大きなテーブルを囲んで出されたコーヒーを啜って話した

「ずいぶん髪が伸びましたね、その方が美しい」
「貴方は変わらないわね、相変わらず少年ぽいわ」

思わず二人共笑ってしまった。

「もう、会えないかと思ってましたよ」
「私もよ」
「それで、何故このような所に?」

そうロックが言いお互いの経緯を話す

「なるほど、それでこの方面に」
「そっちは変わった事は?」
「ええ、結局ここに残ったあの時のメンバーは僕とバレンティアさんだけです。団は団の形を残していますが、実質我々はフラウベルトの指揮官や将の様な立場に、一応見た目の区別をする為にこういう制服を着てますけどね」
「なんだか変な感じね‥」

それは白地に緑のラインの軍服だ、団の名前は有益であるし、フラウベルトにはこれといった将が少ない、故に、吸収合併の様な形に収まってフラウベルトの軍の一部と成っているらしい

「ただ、団の方針、少数による特化部隊というのはベルフの百人騎馬と同じく有効であるので、個別に指揮権はありますね」
「フリット団長が責任者に?」
「はい、あの頃と変わっていません、上にフラウベルトの王族が付くと言うだけですね。ところで‥」
「うん?」
「ライナさんは団に戻ってくれるのですか?」
「ええ、其の為に戻ってきたわ」

それを聞いてロックは明るい表情を見せて言った

「それは良かった、貴女は敵に回したくありませんからね」
「そんなつもりは無いわよ、私にとってはここが家だもの」
「そうですか、そうですね」

「ところで、戦局は?」
「ええと、フラウベルトの王は、ま、聖女と呼ばれてますが彼女の加護で周辺国への援護が出され今のところは、ここと、北に2国の所でベルフの進軍は止まっています。ずっとそのまま膠着状態ですね」
「優秀な人みたいね」

「と、言うより、お人よしというか。兎角周辺国への援助と援軍、庇護を働きかけ、結果ベルフの侵攻を防ぎとめ、膠着状態になっているだけですね」
「ところで」
「ライナさんの連れてきた、相方?の少年はどうします」
「彼も家族を失った子よ、恐らく残ってくれると思うわ」

「そうですか、とりあえず、其の後の事は何れ、でしょうか」
「ええ、まず、ちょっと休みたいわね」
「わかりました、つい嬉しくて、配慮に欠けてましたね」
「それは私も同じよ気にしないで」

「どこかまともな宿を取っておきます」
「うん、それと、クイックの事だけど」
「ああ、知ってますよ、一度自分とイリアさんの現状を手紙で報告してきましたら」
「そっか」
「彼には彼の思惑あって事でしょう、実にらしいと言えばらしいですが」
「その事を知ってるのは?」
「僕とバレンティアさんだけです。あの時のメンバーには知らせておこうと思ったんでしょう」
「なら、私も秘密にした方がいいかしらね」
「でしょうね、まあ、ただ特定の誰かに力貸している、という訳でもないようですし。聞かれなければ答える必要は無い、という程度でしょうか」
「妥当ね」

そこでこの会談は一時終わった
夜には街の宿を取ってもらいカミュと共にそこに泊まる事になる

普通のまともな宿だけに、ウン年ぶりにまともな料理も出てきてそれを平らげた。そもそも、暖かい食事すら久々だ

その場でライナは前後の事情とこれからの事を話した

「そういう訳で私は団、或いはフラウベルトに復帰という事になるが、君も所属してはどうか?」
「そうですね、僕も帰る場所がある訳では無いので‥」
「じゃ、決まりだな。と、言っても戦う事になるんだが‥」
「いえ、今更戦いが嫌だ等と言いませんよ。もうそれしかないんですし」
「そっか‥」

ここでライナは、本当にそれでいいのか?とも思った、そもそも別な生き方があっても良いのではないか、そういう思いだ、しかし、カミュはそれを見抜いていたかのように

「別の道、はあるかも知れません、けど、それも戦争が終わらないと難しいでしょう。何をするにしても、その後の事はその後考えればいいと思いますよ」
「うん‥そうなんだよな」
「それに、自分達の様な不幸な目に合う人を、戦う事で減らせるならそれは優先していいと思います、まして、僕はライナさん程じゃないですけど「力」があるわけだし」
「まいったなぁ‥先に全部言われちゃったよ」
「ライナさんって隠し事が出来ないタイプですね」
「かもね‥」

そこにロックが現れる

「やあ、どうもお二人さん」
「どうも」
「あんた暇なの?」
「酷いなぁ、まあ、そうなんですけど、ていうか口悪くなってません?ライナさん」
「あんな環境に居ればそうもなるわね」
「ハハ、微妙に笑えませんね」

「ところでロック、何でここに?」
「はい?」
「ここってフラウベルトの領土じゃないでしょう」
「ああ、そうですね、別の国ではあります。フラウベルトの庇護を受けていますから、僕は出向というか援軍というか」
「なるほど、けど援軍って事は戦闘があるのかしら?」
「いや、睨み合いだけですね、実質的な戦争はまだ一度も行われていません、精精戦闘、小競り合い程度です」
「なんか微妙な場所ね」

「ですが、砦街ですからね、放置も出来ないんですよね防壁として優秀ですし、一応ベルフとの隣接地ですし、それで僕がここに」
「ふーん」
「ところでお話は決まりました?彼の、えーと‥」
「カミュですよろしく」
「どうもロック=ヘリベウトです」

「カミュも団に入るわ、協力もやぶさかではない、という事よ」
「それはそれは、歓迎しますよ」
「ど、どうも」
「まあ、実際の事はフラウベルト本国に行ってください、団長はそっちに居られますので、後で馬を用意しましょう。と言っても2~3日程で着きますけど」
「分かったわ」
「では、僕はこれで、ゆっくり休んでください」

今までの駈け足過ぎる生活とただ剣だけを振っていただけの一日を取り戻すかのように二人は眠った。が、あくまでそれは休息に過ぎないのだろうか

後日、二人は用意された馬に乗り再び進み出す、目的地は大陸最南の神聖国フラウベルト、大陸南部でおそらく単独でベルフと戦える唯一の国であろう場所に

一方ベルフ領土となったクロスランド周辺地域で内治を任されていたアリオスは相変わらずそこでも事務仕事に追われていた

そこで「罪人島」の一連の報告を受け取り相変わらずの安ホテル司令室で紙の山に埋もれての出来事だ

「ふむ‥上手く行ったようですね」
「ハ‥」報告を上げたキョウカは短く答えた

「いや、ほんとにご苦労様でした。何もかも任せてしまって‥」
「いえ、それが仕事ですから」
「これは伝えてもいいでしょう、イリアさんを」
「ハイ」

と同時に二人は立った、アリオスは奥の自室に、キョウカは別部屋で事務に当たるイリアの所に。アリオスの部屋で、イリアは今回の罪人島での報告を受ける

「アリオスさんの言う通りでしたね」
「でしょ?」
「ほんとにライナは凄いわ‥」
「ええ」
「でも、色々手を尽くしてくれたみたいで、ありがとうございます」
「身内の処断半々ですから、礼には及びませんよ」
「でもいいんですか?、一応お味方でしょう」
「ああ、所長の事ですか?。‥まあ、一罰百戒というのもありましてね、そう言った意味でも放置できませんし」
「なるほど」
「ただ利益に成れば良いという勘違いは国を損ないますから。それはまあ何にでも言えますけど」
「‥」
「意外ですか?」

「いいえ、私はアリオスさんを知ってますから」
「ま、それはいいとして‥今後の事ですが」
「今後?」
「ライナさんも元鞘に戻りましたし、イリアさんも戻りたいというなら、何か手を考えますが」
「私が居ないとお困りでしょう?」

「ま、たしかに、どうもこの国は脳筋の方ばかりですからね、事務仕事の負担が全部私にですね‥」
「じゃあ残ります」
「即断過ぎませんか?‥」
「じゃあ帰ります」
「‥私で遊ばないでくれませんかね‥」
「フフ‥」

「冗談はさておき、私としてはもう少し平和な時でいいと思ってます」
「まあ、たしかに、今は相当荒れてますね」
「大体私、皆みたいに強くないですし、ここの仕事の方が性に合ってますから」
「そうですか、ま、後10年も続く訳ではありませんからね、それもいいでしょう‥」

「というからには見立てがあるのですか?」
「此処に来て、各国がようやく軍備を整えてきましたからね、実際、攻めているにも関わらずベルフは殆ど国を取れていませんから、よほどの事が無い限りこれ以上の拡大は‥」
「では、もう少しここに居ます、お邪魔でなければですけど」

「いやいや、大変助かりますよ。今後ともよろしくということで」
「はい」

こうして、其々が別の道を歩みだす事となる。それが再び交わる道なのか、幸か不幸か、今の時点では誰にも分からなかった


神聖国フラウベルト
学術都市でもあり宗教国でもあり。盾の軍と呼ばれる王に尽くす強固な軍を持つ強国である

第二次大陸戦争開始ほどなくして、王が倒れ、後事を託された実子で娘の、エルメイア=フラウベルトが13歳で即位

それまでは宗教国としての側面からか、その信徒以外には厳しい制限があり。どちらかと言えば、そうで無い者からすればあまり住み良い土地とは言い難かった

しかし、新王、聖女エルメイアは「信徒で無い者が差別される国は良くない」とし自由を広げた

それまでは公的施設の立ち入りや税の不公平等があったがそれらも解消される

大戦勃発から孤児や流民、敗残兵等も広く受け入れ、いわば弱き者の積極的な庇護を与えた

周辺国には無償の援助や援軍を出し、大陸南方地域では多くの国の寄り何所となり、また、その惜しみない援助と援軍、庇護が結果的に多くの国の後ろ盾となり、ベルフの南方侵攻を食い止めていた

エルメイアは氷の女王マリアとは逆方向の名君と言えるだろうか、殊更策動を巡らせた結果では無く

「聖女と呼ばれる者が弱き人々を守らないなどあってはならない」という

極めて裏の無い、正道な考え方に寄る結果である、その為人々から「聖女の名に相応しい聖女」「究極のお人好し」と二つ名で呼ばれる事になる

そうした結果「草原の傭兵団」も彼女の元に集う事に成ったのだからそれは正しいといえるだろうか

ライナとカミュはその王都に訪れていた、広く、活気があり、栄えた、美しい街だ

歩き回るにもどこへ行ったらいいのか、簡単に迷ってしまう程の広さ。人伝いに「草原の傭兵団」の所在を聞きどうにか団の官舎に辿り着いたのが3時間後だった

そこまで時間が掛かった一つの理由が「草原の傭兵団」とは呼ばれて居らず改名され「ライティスの矛」等と呼ばれていた為でもある、それでも団長のフリット=レオルの名前だけで所在は分かったのだが

その官舎は官舎というより、丸ごとホテルの様な豪華さであった「変われば変わる物ね‥」そうライナは思ったが

ロックの話しでは個別に軍を指揮出来る立場にあり、もはや、ただの私兵集団では無い事を考えればそれも当然なのかもしれない

その官舎で二人を迎えたのはバレンティアだった。応接室で再会した瞬間ライナはいきなりバレンティアに抱きしめられた

「ほんとに、ほんとにまた会えるなんて‥」としばらく彼女は泣いていた、正直反応に困ってしまう事態だがライナは

「うん、ただいま」と言ってバレンティアの頭を撫でてそれに答えた


どっちが年上なのか分からないアベコベな状況だが。第三者から見ればライナの方がお姉さんに見えるかもしれない

ライナはこの時、背はバレンティアより大きかったし、面持ちもライナの方が大人っぽかった。それだけバレンティアはあの頃と変わってなかったともいえるが

ようやく落ち着いて其々挨拶も済ませ3人でテーブルを囲んで話す事になった

「大まかな状況はロックから伝書が来て皆知ってるわ」
「団長は?」
「さっそく王城に行って事態の説明と貴女の軍の登録ね。間違いなくうちでは貴女が一番の剣士だろうし。それなりの待遇になると思うわ」

「いきなりね‥実際戦ってもいないのに‥」
「でもあの時ですらエリザベートと互角じゃない?しかも闘技場で二年も戦ったんだし。もう私なんか相手にならないんじゃない?」
「そこから成長してるならね‥」
「あら、ご謙遜」

「これと言った相手と戦ってないから基準が分からないのよ‥誰と比べてとか」
「たいした武芸者は居なかった?て事?」
「一番強敵だったのは最終戦の人造魔人と練習相手のカミュかな‥」
「え!!え?!?」

意味が分からない風だったバレンティアに闘技場での詳しい経緯を説明した

「人造魔人を倒すなんて‥無茶苦茶ね‥第一次大戦の頃、数百の兵に匹敵する兵器と言われてたハズだけど‥」
「二人がかりだけどね‥」

チラリとバレンティアはカミュを見て

「彼強そうに見えないんだけどね‥どっか良い所のおぼっちゃんぽいし‥」
「そうですかね‥」
「それを言うならバレンティアもだけどね」
「うーん、たしか王国の重臣の長男だっけ?」
「はい」
「けど、腕は保障するよ、私でも彼の相手は苦戦するくらいだからね」
「なんか凄い拾い物したみたいね‥美男子だし‥」
「あのね‥なんかよからぬ想像をしてませんか?」
「え?よからぬ?」とカミュは意味が分からなかったようだ

そこへフリットとグレイが戻り部屋に入ってくる

「ライナ!」
「団長」と答えてライナは立ち上がる

そこで最初にフリットは頭を下げて言った

「すまぬ‥俺が無能なばかりに、このような状況になって」とまず謝罪したのだ

「いいえ、団長の判断が間違っていたと思う所は一つもありません。謝らないでください」と返し続けて
「私はそのおかげで逆に良い経験をしました。結果論ですが、それはむしろ良かったと思ってます」

フリットはライナのその言に暫く黙っていたが

「そういわれると救われるよ‥ほんとうによく戻ってきてくれた」
「それに落ち着いた良い女になったな」

フリットは本当に嬉しそうに、グレイは茶化して言った

「そして君が‥」フリットはカミュに近づいて手を差し出した
「カミュエル=エルステルです初めまして」
「団長のフリット=レオルだ、歓迎するよ、今後ともよろしく」と握手した

「二人共凄いですよ色々、闘技場での事。ほらライナ」
「もう一回話すの?‥」

そうバレンティアに言われて、またも闘技場での細かい経緯を話す事になる

ただ、アリオスやクイックの一件はまだ言わない方がいいかと思いそこは省いたが

フリットもグレイも流石に驚いた様だが同時に感心してもいた

やはりカミュに対して「そんなに強そうに見えないな」とまたも二人に言われ

じゃあ「俺とやってみるか?」と半ば強引に官舎の庭で手合わせする事になった

ただ、カミュの場合武器が大型剣なので同じく大型剣を使うグレイが相手という事になった

主に団のメンツだがギャラリーも集まって「まあ、力を見るだけだ気楽にな」とグレイは言って始めたが5分後、地面に落とされたのはグレイの方であった。

これには一同も驚愕だった、尻餅をついて肩で息するグレイは「し、信じられん‥どういう鍛え方してんだ‥」と言った

一方カミュは呼吸一つ乱さず立ったまま剣を下ろして
「どうと言われても‥」と困惑していた

これに対して冷静に分析をしながら見ていたフリットが変わりに答える

「あくまで基礎に忠実で有りながら、それを極限まで極めている、しかも重い武器を使いながら早く、無駄が無い、そういう戦い方を身に着けている。おそらくそういう相手との戦いを考慮した結果だろう」

流石にフリットという利き目だった

「はい、相手が常にライナさんでしたから、早いし上手いし、隙の無い相手ですし、それに対応しなくては勝負ならなかったので自然にこういう形に‥」
「ついでに言うと彼は基礎練習だけでも平気で5~6時間は繰り返すわよ?武器の大小に関わらず同じ戦い方、使い方が出来るし」

これにはグレイもバレンティアも呆れ顔だ

「無茶苦茶だなぁ‥俺の部隊内ランキング下がりぱなしだわ‥」
「なんでそこまで‥て聞くのも野暮ってものかしらね」
「生きること=強くなる事だからね」
「でもライナさんには一度も勝ててませんけど」

(この子らって‥)と一同思ったが口には出さなかった

「まあ、頼りになる事には違いないな。敵だったらどうしようかと思うが」
「違いない」

その後ライナとカミュは、フラウベルトの軍籍に入る、あくまで「草原の傭兵団」改め「ライティスの矛」の隊員としてである。軍や集団の指揮経験がある訳ではない為だが、階級的に低い訳ではない

ライティスの矛はフラウベルト全体の軍の中では近衛隊と同等の立ち位置で城周辺とか王族とかに付く専属護衛でなく、外、戦場などでの特殊部隊に中る。その為、隊員は一番下でも少尉待遇になっている

団は独自に行動人事権があり、このように宿舎も与えられている、メンバーは主力150人、予備兵に150人と分けられる、いわば野球で言う所の一軍、二軍だが

負傷者、離脱者が出た場合予備から補充や入れ替えが成される。少数による戦局を変えられる集団としての立ち位置は正しいのでそれが維持された

ただ、見た目はフラウベルトの軍と分けられ、本軍は白地に青の軍服、ライティスの矛は白地に緑の軍服と一目で分かる様色分けされている

彼ら団はその勇名は多くの人が知る所であり。それを誇示するだけでも心理的効果が高かった

常に戦争がある訳でもなく、衛兵、援軍、斥候、果ては街での守り、見回りもするので

団のメンツが姿を晒しているだけでも様々事への牽制、抑制効果が多いにあったためである

二人は官舎に部屋も貰い装備も中々の物を与えられる

当面大陸情勢が動かなかったというのもあり。街の見回り、周辺の見回り等のとりあえず任務をこなす事となっていた

その中でライナはバレンティアと二人で確認の意味も含めて話した

「ところで、イリアの事なんだけど‥」
「私が知ってるのもロックと同じね。それ以外の人には話してないわ」
「その方がいいかしら」
「ええ、イリアにはイリアの考えがあるし、敵側に居るからあんまり大きな声では言えないわよね」
「それなんだけどね」

とライナはアリオスとエリザベートによる配慮があってこの様な事態になった事を話した

「うーん‥義理とか恩、みたいのがあるのかもね」
「ええ、少なくともベルフという物をひとくくりに考えない方がいいと思う」
「そうね、イリアがそれで安全ならそれに勝る事も無いと思うわ」
「それで、私たちが捕まった後なんだけど」
「団の方でも色々手を尽くして貴女達の事を追っていたみたいだけど、収穫は無かったみたいね。残念ながら、まともに動ける人も居ないし、こちらには専門家が居ないからね」
「一時壊滅の危機になったからね」

「クイックが残ってくれてたら大分違うんでしょうけど、ただ、彼が送ってきた情報だけでも貴女達の安全は知りえたから、マイナスという事もないけど」
「彼も凄いわねぇほんと‥」
「ショットも言っていたけど「生きていればまたどこかで会える」があるからね、悲観的に考えてもしかたないわ。もう私たちは自分の道を行っている訳だし」

「ところでそのショットは?」
「無能な国に使われるのも負け戦も御免だ、て言ってたから、まあ、北が西でしょうねぇ」
「銀の国か獅子の国かな?」
「でしょうね、あの子おっそろしく単純でストレートだし、ま、あの子の腕ならどこでもやっていけるでしょう」
「そうね」

と答えて一連の出来事に区切りを付ける事にした、というより自分達に出来る事の小ささにそう納得するしかなかった
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