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撒き餌
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最初はそれ程大きな話では無かった、シュバイクとツバルの領土線の中間点南にある森林地帯の周りに中型のトラの類が目撃された程度で、シュバイク領南にある小さな街で監視防衛に報告され王国も一時、増援を出したが、一戦もする事もなく終る
そこから一ヶ月の間にこの頻度が増え大型の魔獣等も目撃される様になり、事件に発展する
実際に現れたのは人間側にも種族知識として認知されているマンティコア。これは姿はバラバラだが人面であったり翼があったりする、巨大なトラに近い姿だ
確認されたのは三匹で翼付きかなりデカく、4~5m程これが、実際シュバイクの南東の街へ接近攻撃を掛けて来たらしい。勿論、事前に目撃情報が頻発していたので本国首都から増援は配されているのだがマンティコア三匹と成れば、まともに戦っても被害だけ増える
その為、街の施設、城壁を使い、遠距離で矢を浴びせて後退されるのが精精だろう、予め警戒情報を出して居た王国も即応し地元住民の疎開、当地の冒険者等にも協力要請を出し、本国でも予備兵員の派遣を検討されるが、相手が悪いというのもある
「三匹となると野良とは考え難いですな‥」
「煙幕や火矢でも後退しない、との事ですから、本格的な討伐軍が必要でしょう、まして翼付きであれば攻撃して誘導が難しい」
「地元の冒険者の言う所ですと大型種は大部隊では還って被害が増えるとの事です」
「対魔基準数では1に付き三十~ですが、正直アテになりませんね‥あまり頼りきりも問題がありますが、やはり、レオ様にも報告しましょう」
「はっ、さっそく」
「それから被害も想定、北伐の可能性も捨てきれないので本国と衛生兵と住民の移動の為の輸送隊も直ぐに出立、東領主府で滞在のアルマ大佐の遊撃軍にも伝心を」
「はっ」
「あの、一ついいですか閣下?」
「?何だ?エスター」
「私が行きましょうか?」
「しかし‥」
「‥鬼姫らに協力を求めるのが問題があるなら私が行けばよいかと。私は国内でも大将閣下の手下、との扱いだし周知もされているから問題ないハズ」
「いいのか?」
「人間の軍だと現地へ移動も時間も掛かるし、大型過ぎる相手だと殆ど戦力にならない、勇者の援軍待ちにしろ、人間の重装備兵の追加にしろ、数日は掛かると思うのですが?」
「ううむ、やむおえないか、任せてよいな」
「了解です」
こうして緊急事態な事もあり、レオにも伝達が行く事になる、人間側の国の問題は、なんぼ鬼や竜と共闘、とされていても実際、魔物の援軍が派遣出来ない事にある
当たり前の話だが、例えば今回の例で言えばマンティコアが複数で領土内に進撃してきて、秋なりゼノなりが部下を使って、オーガや竜が援護に来たとしても、知らない住民からすればどっちが敵か味方か判断付かないし恐怖でしかないだろう。
首都の住民は商売的とかの交流があるのである程度、受け入れるだろうが、それもまだ謎だ、そもそも、魔物の攻撃に対して、自国の軍隊が何もしないという訳にも行かないし自衛の範囲は自衛するのが必然だというのもある
伝達を受けたレオも「は?」としか云い様が無い
「南の自然地帯て、鬼の哨戒網があるんじゃね?」
「報告は受けてませんねぇ‥野良じゃないのかと」
「もしかして、新しい敵か??」
「可能性はあるかと‥」
「まあ、何れにしろ、現地に行くか‥んー‥鳳も来てくれ」
「私も?ですか?」
「この際だから、魔物側、鬼っ子の娘も頼りに成るんだぞ、という所を見せておきたいな。鳳だと見た目がかなり人間に近いし」
「なるほど、エスター様が受け入れられるなら鬼上位種もいずれ、ですか、しかし、私あまり強くないですよ?」
「援護してくれればいいさ」
という事で、敢て姿を隠さずレオと鳳で首都に跳躍、城に上がって、面会と一連の事件の詳細を受け取る、そこで王国の閣僚らとも顔合わせだ
「という訳で、こちらが鬼の上位種、鬼姫の側近でもある御前のホウロンだ」
「始めまして、鳳狼です」と
勿論、始めて会った者が大半で驚きはあるがそこまででもない、鬼上位種の中でも鳳は特に人間に見姿が近いし人間の感覚で云ってもかなりの美女で、優しい印象だから。角はあるが、アルと比べても違和感はない、魔物ぽさは殆ど無いから
「こ、これはお初にお目にかかります」
一同、おっさんらも恐縮して礼を払った
「この国の代表を預かります、クラルス=シュバイクです、お会いできて嬉しく思います」
「これはご丁寧に」と両方軽く礼をする
「見た目は我々と余り違わないんですな」
「鳳は人間の血も入っているからな、それと鬼でも御前という種は知学者や術士の様なタイプだ怖がる事はない」
「な、なるほど」
「それでとりあえず事件の話を」
「そ、そうでしたな」と簡易会議に移行する
「ではエスターが現地に?」
「はっ、当人の希望もありますが、移動が早いので即応出来る事、人間の兵が大量に居てもあまり役に立たないし、時間も掛かる、という事らしいので」
「まあ、妥当な判断だろうな。首都本国から援軍つっても、南東領地までは軽く三日は掛かるし‥」
「ですね」
「対応は?」
「はっ、既に医療班や人の移動に備えて、支援部隊は出立しております、本軍を動かす事は早計と考え、出撃の準備だけはしてあります。それから東領主が近いのでこちらも伝令はしてありますが、基本迎撃です現地周辺から援護と、街に入れない事、非戦闘員の被害を避けるのが優先の方針です」
「ふむ、どう思う?鳳」
「野良でない事は十中八九間違い無いかと、いくら飛べる種とは言え、南側は我々オーガの部隊が複数展開していますのでこの哨戒網を潜り抜けて急に人間の生存領域に出て来た、というのは考え難いですね‥」
「同感だ」
「それと、追い返すのも効果が出てないとなれば目的あっての事でしょう獣種なんて別に武装した人間の集団を態々襲わないですし」
「対応は現状で問題ないでしょうか?」
「ええ、翼付きと言ってもマンティコアの類はそこまで高く飛べませんし長距離の飛行はしません。ジャンプの補助程度が殆どですね、遠距離武器でも攻撃は出来ます、勿論、術士やこちらも飛べる者が居るのが最善ですが」
「ふむ、やはり対魔スペシャリスト中心にやった方がいいか」
「あるいはこちらも翼人を投入するか、ですねまあ、何れにしろ、レオ様やエスター様が現場に出るなら大丈夫でしょう」
「そうだな、とりあえず俺らも行くか」
「はい」
「シュバイク本軍は現状の対応でいい、民間人の避難と援護だけで、とりあえず俺らが行く、手に余るなら要請する」
「はっ」
として、そのまま二人で城を出て現地に向う。というのも、移動手段の問題。レオは一人ならシャドウウォークで高速移動出来るのでコレを使うか鳳の乗り物を使うかの二択で、何れ大人数は難しい点である
ただ、このとき、既に魔獣の類は南東の街から引いて、北伐。人間側が使っている街道を北に向かっていた。
現地の治安維持軍はこれを伝達して封鎖と共に、移動の住民も避難させるが丁度北にある東領主府がわらわの対応だった
幸いと言ってはなんだが、此処はラディウス大将の両嫡子の滞在する大町である
「こちらに北伐?」と情報を聞き即、アルマが自軍を展開し、街南の外へ出撃し南下と共に街道で迎撃体勢を取った
相手が街道を使って道なり北伐なら確実に此処へくるが、東領主は、街の規模がでか過ぎるので、非戦闘員の避難と言っても屋内避難なら兎も角、街から移動となれば、軽く3,4日は掛かる
ツバルとの領土線であり、軍兵、施設、砦等併設した場所だ
後退だの撤退だの出来る場所じゃないから
ただ彼女は
「いくら大型獣三匹と言っても対魔基準数で十倍も用意すれば突破は出来まい」
とは思っていた、彼女の自由遊撃軍は五百与えれているし追い返すくらい出来るだろう、という誤解もあった
が、実際街道で北伐して来た連中と対峙し防御線を張ったが、通常の戦法等、殆ど効果が無い、何しろ「円陣を敷いて防御線を保ちつつ、弓で落す」との指示を出し、重装備な兵を前に出した所で、相手が飛んだのだから
前衛の兵も「え?」と思った、途端百メートルくらい相手が飛んできて前に居る盾を構えた兵の上から陣の三段目に飛び降りて踏み潰され、降りた勢いのまま、マンティコアは右前足で横に払ってまとめて二人、兵も吹き飛ばされた
幸いは、こちらも対魔装備である点、予め特に防御力重視の装備にはしてあるので、即死する程ではないが、この一手だけで、七人昏倒
となれば、もう軍隊としての戦い方等通用しない
「おのれ!」と味方後衛も弓を撃つが別な魔獣がまた横から飛来して同じ様に上から踏みつけられ、そのまま胴体から噛み千切られる。後衛は逆に重装備でないので、上空からジャンプ踏み付けと爪や牙の一撃だけで略、致命傷となった
「魔物相手に大軍を揃える」が相手に寄ってはマイナスにか成らないのはこういう事だ、ヘタに纏まって行動すると渋滞して逆に避けられないし陣形なんてホイホイ変えられない、人数が多ければ多い程、混乱する、だ
「ええい!全軍後退!散会して翼陣に再編!」
とアルマも指示を出して槍を取って前に出た、この場合、味方兵は集団だと還って邪魔になるので一番戦えそうな奴が、デコイになるか、自由に動けるスペースの中でタイマンやるほうがまだ戦える
実際、アルマと護衛兵の十人くらいで戦った方が効果がある、魔獣も前に出て来て槍を振るうアルマを狙ってくる、彼女の護衛も一対多数に成らない様に、残り二匹を引き付けた
単純に魔獣と戦う、ならこの方法のがマトモに機能するだろう、飛んだり転がったり出来る十分なスペースが確保されていれば彼女ならタイマンなら何とか成る
爪や牙での噛み付きを避けながら、長槍を返して相手を斬るが、残念ながら殺傷力が足りてない
「クソ硬い!」とは言ったが、それも仕方無い軍で使ってる刃先三十cmのただの長槍なのだから、大型には攻撃力が足りないし、相手も肉体自体が強いので
通常の武器では致命的負傷には届かない、精精深さ十センチ斬れればいいほうだ
これも「軍」である事の問題で、この状況に成ると後衛からの援護がし難い、近接混戦なので、弓を撃つって訳にもいかないし
軍隊の弓隊は「狙撃」では無く、複数人の一斉正射での面での攻撃なので誤爆の可能性が高いし、狙った的の五センチの範囲に入れるなんて器用な技術なんぞ誰も持ってない。
まして前線で戦っているのが上官である、ヘタな行動をすれば邪魔に成るし、咎められる可能性もある「どうしたらいいんだ」と殆ど全員動けなくなった
それからもう一つの問題なのが、アルマは戦えるが、他はそうではないという事、タイマンならどうにかなるのだが、護衛兵も他の二匹に突撃を受けて吹き飛ばされる。そしてアルマにも向かって来るが流石に二匹以上は無理だ
前足を横に払ってくる爪の攻撃を後ろに跳躍して攻撃範囲から逃れるしか出来なかった、が、ここで援軍が間に合う
彼女が大きくバックジャンプして着地した地点を狙ってダッシュ体当たりを掛けて来た魔獣が当たる手前で何かに衝突して仰け反った
「え?!」と驚いて構えたアルマの周囲に白い光が下から吹き上がる様に登りアルマの負傷も癒える
「魔法か!?」
「ふん、人間にしてはよくやる」
そう答えながら横に歩いて剣を抜いて並んだのが彼女、エスターである
「お前か‥確か父の」
「うむ、大将閣下の命により、援護に来た、後は私が引き受ける、回復が終るまで下がってろ」
「す、すまん」
エスターはそのまま剣を面前の空間に振って陣を書き詠唱
「サモン・グレーターデーモン」
空間に描いた形に魔法陣が鈍い光と共に発光し中から悪魔が一体現れる、そう、暗黒召喚魔法である。
見た目は「悪魔」という表現とイメージがピッタリな奴だ。男性型で黒い翼の生えた身長二メートル半くらいの屈強ムキムキな体格と藍に近い色の肌と般若の様な表情でヤギに近い顔の悪魔。一応中級~上位くらいの悪魔に違い無いのだが、強さで言えば、かなりのモノだ
実際、召喚されて、マンティコアと殴り合いが始まるがかなりいい勝負だ
ハタから見てると完全に怪獣戦争である、魔獣の前足での横払いを左腕でブロックしてパンチで殴り返しヘッドロックして顔面を殴りつけて引かせる、そのまま前ダッシュして左右パンチして吹き飛ばした
「グァアアアアア!」
「ギャアアアア!」と威嚇しながら殴り合う姿は中々熱い
三対一なのだが、グレーターデーモンは割りと平気らしい、後ろから殴られても「ああ?!」みたいな感じで殴ってきたマンティコアを蹴り飛ばしてガンガン踏みつける
このプロレス現場に遅れて駆けつけたのがレオと鳳である
「あれ?何この状況‥」
「勇者と鳳狼か、丁度いいところに来たな。大型魔獣なんぞまともに相手にしてもしょうがないから私が召喚を呼んだらこうなった」
「グレーターデーモンですね‥普通に戦えるんですね」
「呼んどいて何だが私も始めて知った」
「まあ‥魔物同士の殴り合いなんて普通は起きませんからねぇ‥」
(グレーターデーモンてこんな悪魔だっけ?‥)感は凄くある
「それより、負傷者が結構出てる治療してやれ、私の回復なぞ単体にしか効かん」
「分りました」
と鳳が回収された負傷兵の治療に中る
「ただ、高種召喚はそう長く留まれん、何れ時間経過で勝手に引き戻される、勇者と娘、後はどうにかしろ」
「まあ‥そうな」
言いつつもレオも剣を抜いて自身とアルマにホーリーウェポンとプロテクションを掛けた
「アルマ大佐、今なら三対三だ、いけるか?」
「お、おう!」と答えて、其々突撃
結論から言えば人間側は三人とも勝った、通る武器があれば、レオもアルマも武力と技術では上だ
アルマは横切りで相手の翼の片方を両断して飛び上がる姿勢から地面に落とし、横倒しの相手の腹に槍を叩き付けて殺し
レオは相手の前ダッシュの勢いを利用して軽く横に避けながら剣を喉元に突き返して脳天まで貫通させ絶命させる
デーモンは魔獣の飛び掛って来た所を膝で蹴り上げ、そのまま肩に担ぐ、アルゼンチンバックブリーカーの体勢に抱え上げたまま背骨を折り掴んで居る手の強烈な爪で喉元も引き裂き殺して投げ捨てた
「ほう、流石にやるな」とかエスターも言ったがレオにはまだ余裕だ、デカくて硬いてだけで、まだ見て避けて、急所を狙って刺し殺せる範囲だし
「はぁ‥死ぬかと思った‥」とアルマだけはその場に崩れ落ちたが
こうしてあっさり片付けて、この事件は終った。幸い、現場の死傷者は治療術のお陰で5人で済んだ、発生から終結まで合わせても民八、兵二十なので事態の割には大惨事にならずに済んだ、とは言える範囲だろう
そこから一ヶ月の間にこの頻度が増え大型の魔獣等も目撃される様になり、事件に発展する
実際に現れたのは人間側にも種族知識として認知されているマンティコア。これは姿はバラバラだが人面であったり翼があったりする、巨大なトラに近い姿だ
確認されたのは三匹で翼付きかなりデカく、4~5m程これが、実際シュバイクの南東の街へ接近攻撃を掛けて来たらしい。勿論、事前に目撃情報が頻発していたので本国首都から増援は配されているのだがマンティコア三匹と成れば、まともに戦っても被害だけ増える
その為、街の施設、城壁を使い、遠距離で矢を浴びせて後退されるのが精精だろう、予め警戒情報を出して居た王国も即応し地元住民の疎開、当地の冒険者等にも協力要請を出し、本国でも予備兵員の派遣を検討されるが、相手が悪いというのもある
「三匹となると野良とは考え難いですな‥」
「煙幕や火矢でも後退しない、との事ですから、本格的な討伐軍が必要でしょう、まして翼付きであれば攻撃して誘導が難しい」
「地元の冒険者の言う所ですと大型種は大部隊では還って被害が増えるとの事です」
「対魔基準数では1に付き三十~ですが、正直アテになりませんね‥あまり頼りきりも問題がありますが、やはり、レオ様にも報告しましょう」
「はっ、さっそく」
「それから被害も想定、北伐の可能性も捨てきれないので本国と衛生兵と住民の移動の為の輸送隊も直ぐに出立、東領主府で滞在のアルマ大佐の遊撃軍にも伝心を」
「はっ」
「あの、一ついいですか閣下?」
「?何だ?エスター」
「私が行きましょうか?」
「しかし‥」
「‥鬼姫らに協力を求めるのが問題があるなら私が行けばよいかと。私は国内でも大将閣下の手下、との扱いだし周知もされているから問題ないハズ」
「いいのか?」
「人間の軍だと現地へ移動も時間も掛かるし、大型過ぎる相手だと殆ど戦力にならない、勇者の援軍待ちにしろ、人間の重装備兵の追加にしろ、数日は掛かると思うのですが?」
「ううむ、やむおえないか、任せてよいな」
「了解です」
こうして緊急事態な事もあり、レオにも伝達が行く事になる、人間側の国の問題は、なんぼ鬼や竜と共闘、とされていても実際、魔物の援軍が派遣出来ない事にある
当たり前の話だが、例えば今回の例で言えばマンティコアが複数で領土内に進撃してきて、秋なりゼノなりが部下を使って、オーガや竜が援護に来たとしても、知らない住民からすればどっちが敵か味方か判断付かないし恐怖でしかないだろう。
首都の住民は商売的とかの交流があるのである程度、受け入れるだろうが、それもまだ謎だ、そもそも、魔物の攻撃に対して、自国の軍隊が何もしないという訳にも行かないし自衛の範囲は自衛するのが必然だというのもある
伝達を受けたレオも「は?」としか云い様が無い
「南の自然地帯て、鬼の哨戒網があるんじゃね?」
「報告は受けてませんねぇ‥野良じゃないのかと」
「もしかして、新しい敵か??」
「可能性はあるかと‥」
「まあ、何れにしろ、現地に行くか‥んー‥鳳も来てくれ」
「私も?ですか?」
「この際だから、魔物側、鬼っ子の娘も頼りに成るんだぞ、という所を見せておきたいな。鳳だと見た目がかなり人間に近いし」
「なるほど、エスター様が受け入れられるなら鬼上位種もいずれ、ですか、しかし、私あまり強くないですよ?」
「援護してくれればいいさ」
という事で、敢て姿を隠さずレオと鳳で首都に跳躍、城に上がって、面会と一連の事件の詳細を受け取る、そこで王国の閣僚らとも顔合わせだ
「という訳で、こちらが鬼の上位種、鬼姫の側近でもある御前のホウロンだ」
「始めまして、鳳狼です」と
勿論、始めて会った者が大半で驚きはあるがそこまででもない、鬼上位種の中でも鳳は特に人間に見姿が近いし人間の感覚で云ってもかなりの美女で、優しい印象だから。角はあるが、アルと比べても違和感はない、魔物ぽさは殆ど無いから
「こ、これはお初にお目にかかります」
一同、おっさんらも恐縮して礼を払った
「この国の代表を預かります、クラルス=シュバイクです、お会いできて嬉しく思います」
「これはご丁寧に」と両方軽く礼をする
「見た目は我々と余り違わないんですな」
「鳳は人間の血も入っているからな、それと鬼でも御前という種は知学者や術士の様なタイプだ怖がる事はない」
「な、なるほど」
「それでとりあえず事件の話を」
「そ、そうでしたな」と簡易会議に移行する
「ではエスターが現地に?」
「はっ、当人の希望もありますが、移動が早いので即応出来る事、人間の兵が大量に居てもあまり役に立たないし、時間も掛かる、という事らしいので」
「まあ、妥当な判断だろうな。首都本国から援軍つっても、南東領地までは軽く三日は掛かるし‥」
「ですね」
「対応は?」
「はっ、既に医療班や人の移動に備えて、支援部隊は出立しております、本軍を動かす事は早計と考え、出撃の準備だけはしてあります。それから東領主が近いのでこちらも伝令はしてありますが、基本迎撃です現地周辺から援護と、街に入れない事、非戦闘員の被害を避けるのが優先の方針です」
「ふむ、どう思う?鳳」
「野良でない事は十中八九間違い無いかと、いくら飛べる種とは言え、南側は我々オーガの部隊が複数展開していますのでこの哨戒網を潜り抜けて急に人間の生存領域に出て来た、というのは考え難いですね‥」
「同感だ」
「それと、追い返すのも効果が出てないとなれば目的あっての事でしょう獣種なんて別に武装した人間の集団を態々襲わないですし」
「対応は現状で問題ないでしょうか?」
「ええ、翼付きと言ってもマンティコアの類はそこまで高く飛べませんし長距離の飛行はしません。ジャンプの補助程度が殆どですね、遠距離武器でも攻撃は出来ます、勿論、術士やこちらも飛べる者が居るのが最善ですが」
「ふむ、やはり対魔スペシャリスト中心にやった方がいいか」
「あるいはこちらも翼人を投入するか、ですねまあ、何れにしろ、レオ様やエスター様が現場に出るなら大丈夫でしょう」
「そうだな、とりあえず俺らも行くか」
「はい」
「シュバイク本軍は現状の対応でいい、民間人の避難と援護だけで、とりあえず俺らが行く、手に余るなら要請する」
「はっ」
として、そのまま二人で城を出て現地に向う。というのも、移動手段の問題。レオは一人ならシャドウウォークで高速移動出来るのでコレを使うか鳳の乗り物を使うかの二択で、何れ大人数は難しい点である
ただ、このとき、既に魔獣の類は南東の街から引いて、北伐。人間側が使っている街道を北に向かっていた。
現地の治安維持軍はこれを伝達して封鎖と共に、移動の住民も避難させるが丁度北にある東領主府がわらわの対応だった
幸いと言ってはなんだが、此処はラディウス大将の両嫡子の滞在する大町である
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相手が街道を使って道なり北伐なら確実に此処へくるが、東領主は、街の規模がでか過ぎるので、非戦闘員の避難と言っても屋内避難なら兎も角、街から移動となれば、軽く3,4日は掛かる
ツバルとの領土線であり、軍兵、施設、砦等併設した場所だ
後退だの撤退だの出来る場所じゃないから
ただ彼女は
「いくら大型獣三匹と言っても対魔基準数で十倍も用意すれば突破は出来まい」
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幸いは、こちらも対魔装備である点、予め特に防御力重視の装備にはしてあるので、即死する程ではないが、この一手だけで、七人昏倒
となれば、もう軍隊としての戦い方等通用しない
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「魔物相手に大軍を揃える」が相手に寄ってはマイナスにか成らないのはこういう事だ、ヘタに纏まって行動すると渋滞して逆に避けられないし陣形なんてホイホイ変えられない、人数が多ければ多い程、混乱する、だ
「ええい!全軍後退!散会して翼陣に再編!」
とアルマも指示を出して槍を取って前に出た、この場合、味方兵は集団だと還って邪魔になるので一番戦えそうな奴が、デコイになるか、自由に動けるスペースの中でタイマンやるほうがまだ戦える
実際、アルマと護衛兵の十人くらいで戦った方が効果がある、魔獣も前に出て来て槍を振るうアルマを狙ってくる、彼女の護衛も一対多数に成らない様に、残り二匹を引き付けた
単純に魔獣と戦う、ならこの方法のがマトモに機能するだろう、飛んだり転がったり出来る十分なスペースが確保されていれば彼女ならタイマンなら何とか成る
爪や牙での噛み付きを避けながら、長槍を返して相手を斬るが、残念ながら殺傷力が足りてない
「クソ硬い!」とは言ったが、それも仕方無い軍で使ってる刃先三十cmのただの長槍なのだから、大型には攻撃力が足りないし、相手も肉体自体が強いので
通常の武器では致命的負傷には届かない、精精深さ十センチ斬れればいいほうだ
これも「軍」である事の問題で、この状況に成ると後衛からの援護がし難い、近接混戦なので、弓を撃つって訳にもいかないし
軍隊の弓隊は「狙撃」では無く、複数人の一斉正射での面での攻撃なので誤爆の可能性が高いし、狙った的の五センチの範囲に入れるなんて器用な技術なんぞ誰も持ってない。
まして前線で戦っているのが上官である、ヘタな行動をすれば邪魔に成るし、咎められる可能性もある「どうしたらいいんだ」と殆ど全員動けなくなった
それからもう一つの問題なのが、アルマは戦えるが、他はそうではないという事、タイマンならどうにかなるのだが、護衛兵も他の二匹に突撃を受けて吹き飛ばされる。そしてアルマにも向かって来るが流石に二匹以上は無理だ
前足を横に払ってくる爪の攻撃を後ろに跳躍して攻撃範囲から逃れるしか出来なかった、が、ここで援軍が間に合う
彼女が大きくバックジャンプして着地した地点を狙ってダッシュ体当たりを掛けて来た魔獣が当たる手前で何かに衝突して仰け反った
「え?!」と驚いて構えたアルマの周囲に白い光が下から吹き上がる様に登りアルマの負傷も癒える
「魔法か!?」
「ふん、人間にしてはよくやる」
そう答えながら横に歩いて剣を抜いて並んだのが彼女、エスターである
「お前か‥確か父の」
「うむ、大将閣下の命により、援護に来た、後は私が引き受ける、回復が終るまで下がってろ」
「す、すまん」
エスターはそのまま剣を面前の空間に振って陣を書き詠唱
「サモン・グレーターデーモン」
空間に描いた形に魔法陣が鈍い光と共に発光し中から悪魔が一体現れる、そう、暗黒召喚魔法である。
見た目は「悪魔」という表現とイメージがピッタリな奴だ。男性型で黒い翼の生えた身長二メートル半くらいの屈強ムキムキな体格と藍に近い色の肌と般若の様な表情でヤギに近い顔の悪魔。一応中級~上位くらいの悪魔に違い無いのだが、強さで言えば、かなりのモノだ
実際、召喚されて、マンティコアと殴り合いが始まるがかなりいい勝負だ
ハタから見てると完全に怪獣戦争である、魔獣の前足での横払いを左腕でブロックしてパンチで殴り返しヘッドロックして顔面を殴りつけて引かせる、そのまま前ダッシュして左右パンチして吹き飛ばした
「グァアアアアア!」
「ギャアアアア!」と威嚇しながら殴り合う姿は中々熱い
三対一なのだが、グレーターデーモンは割りと平気らしい、後ろから殴られても「ああ?!」みたいな感じで殴ってきたマンティコアを蹴り飛ばしてガンガン踏みつける
このプロレス現場に遅れて駆けつけたのがレオと鳳である
「あれ?何この状況‥」
「勇者と鳳狼か、丁度いいところに来たな。大型魔獣なんぞまともに相手にしてもしょうがないから私が召喚を呼んだらこうなった」
「グレーターデーモンですね‥普通に戦えるんですね」
「呼んどいて何だが私も始めて知った」
「まあ‥魔物同士の殴り合いなんて普通は起きませんからねぇ‥」
(グレーターデーモンてこんな悪魔だっけ?‥)感は凄くある
「それより、負傷者が結構出てる治療してやれ、私の回復なぞ単体にしか効かん」
「分りました」
と鳳が回収された負傷兵の治療に中る
「ただ、高種召喚はそう長く留まれん、何れ時間経過で勝手に引き戻される、勇者と娘、後はどうにかしろ」
「まあ‥そうな」
言いつつもレオも剣を抜いて自身とアルマにホーリーウェポンとプロテクションを掛けた
「アルマ大佐、今なら三対三だ、いけるか?」
「お、おう!」と答えて、其々突撃
結論から言えば人間側は三人とも勝った、通る武器があれば、レオもアルマも武力と技術では上だ
アルマは横切りで相手の翼の片方を両断して飛び上がる姿勢から地面に落とし、横倒しの相手の腹に槍を叩き付けて殺し
レオは相手の前ダッシュの勢いを利用して軽く横に避けながら剣を喉元に突き返して脳天まで貫通させ絶命させる
デーモンは魔獣の飛び掛って来た所を膝で蹴り上げ、そのまま肩に担ぐ、アルゼンチンバックブリーカーの体勢に抱え上げたまま背骨を折り掴んで居る手の強烈な爪で喉元も引き裂き殺して投げ捨てた
「ほう、流石にやるな」とかエスターも言ったがレオにはまだ余裕だ、デカくて硬いてだけで、まだ見て避けて、急所を狙って刺し殺せる範囲だし
「はぁ‥死ぬかと思った‥」とアルマだけはその場に崩れ落ちたが
こうしてあっさり片付けて、この事件は終った。幸い、現場の死傷者は治療術のお陰で5人で済んだ、発生から終結まで合わせても民八、兵二十なので事態の割には大惨事にならずに済んだ、とは言える範囲だろう
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そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
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第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
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