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バトン
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葉月のソフトの決勝から三日後
再び溜り場メンバーはメンツを変えて競技場へ集合
そう、今度は鳳静女子サッカーの準決勝である。ただ、事前の情報あってこちらは先のソフト部と違い決死の覚悟の類はまだ無い
というのも鳳静の新たに投資、強化した部活の中でも最も安定感と強化の進んだ部活で既に過去、葉月の一年の頃の大会とは事情が違い、叶の評した「うちのサッカーはあんまり‥」という部分は無い
一つにチームメンバー、特待生の類も拡大しチーム力も既に高い、不動のダブルエースでキャプテン三年の七海と萌が居る事
二つに、その事情あって、これも既に全国の常連だ
しかも七海に関して云えば既に学生選抜に選ばれている
三つに、これも既に度重なる対抗試合の中、当然、葉月と同じ様に「エース封じ」があったが、一人に限定されないことと、実際七海を封じる作戦も何度かあったが、一度も成功していない点である
ソフトは圧倒的に葉月が抜きん出ている為、先の様に避ける勝負しない、が出来るがサッカーの場合これがコレが難しい、というのも七海はそもそもオフェンスの選手ですらないからだ、これに専属でマークを付けるというのも基本無い
そう七海は最初の練習試合から今まで守備的MFかセントラルMFのどちらかでポジションが固定されている
彼女の公式試合は三年で80試合程、総得点86点というFWでもありえない脅威の得点力で一試合に一本は確実に決めている
その全ての得点がオーバーラップからペナルティエリア外から弾丸ミドルシュートか、セットプレイ、コーナーキックからの「二階からヘッド」に寄るものだ
「エース潰し」「徹底マーク」も3度ほどあったのだが、その全てが全く通用しない、これは七海のプレイスタイルとスペックによる結果だ
まず、快速である事、上がるタイミングが独特、普通に女子では七海の足について来れる相手がマズ居ない要は捕まえて置けないのである
そしてよしんばついてこれたとしても大抵前半で相手が潰れる、つまり「超足が速くて、尚且つフルタイム走れる」選手など高校サッカーには存在しなかった点
もう一つが後半から出て来る司令塔の萌が居る事、どっちも自由にするといいようにやられる、両方は抑えられないという事これが「封じれない」理由、分散である
その意味ではサッカー部は全体の強化や優秀な後輩が育っており、これも七海と萌の指導のお陰でもある細かい足元のテクニックでは萌が
チーム全体の方針では七海中心の走る早いサッカーを追及した結果、特に監督の指導もあまりなく自由にやらせた。自然と現代で云うトータルフットボール。全員守備、全員攻撃となるべく少ないタッチで動かし萌と七海のスペースを作るマークを固定化させないという
フランス代表の「シャンパンサッカー」華麗で奔放なパスを回すゲームメイクをあわせた様なチームスタイルになった事だ、故に準決勝でも比較的楽なムードとなっている
実際試合開始後も応援に来ていた溜り場メンバーも余裕の観戦だった、そうできるくらい試合運びも安定している、最早弱小だった嘗ての面影すらなかった
「暫く見ない間にえらく強いチームになったな」
「そうなんですよ!もう全国制覇も一回やってますし!」
とここでも別の意味で叶が盛り上がっている
「彼女も調子良さそうだなぁ」
「まー、最初から抜きん出て適正あったッスからねぇ」
「ボクの方と違って全体的にかなり強いから個人に掛かる負担も少ないしねぇ」
「んだな、ま、どっちにしろ今後は良い結果が続くだろうな」
「そうだね、折角ここまで強くなったし、そうなって欲しいね」
「ソフトもサッカーも偉大なエースが居なくなった後、だな」
「そこも大丈夫じゃない?ボク抜きでも全国の常連だしサッカーも七海ちゃん二世が登場したみたいだし」
「そーなんか?」
「一年生で凄い子が入ったらしいよ」
「ああ、オレもチェックしてますよ、柏木優、て子」
「へー、どんな選手なんだ」
「そーッスね‥七海二世て程プレイスタイルは似て無いッスけどやっぱ守備的選手で、どこでも守れてユーティリティ、上手いし、冷静スタミナもあるし攻撃参加での攻撃力もある感じッス、何より空中戦が強いッスからね」
「へ~」
「何時もの名選手で例えると?」
「うーん‥、ザネッティとかマテウスとかて感じッスね」
「新人なのにベテラン感があるんだが?」
「それはしゃーないッスよ、てか見た目がもう一年じゃないし」
「既に悟君より背高いしね」
「そーなんですよ‥」
「試合出てないのか?」
「えーと‥あ、あの後ろ目のストッパーの前、ロングヘアの子です」
「‥15番?」
「そそ」
「成る程‥」
と言ったとおり、見た目からまず回りの選手より頭一つ大きい、だがガタイがいいとかではなく、スラッとした長身で一年で既に170cm超えている結構なクール美少女だった
「あれでプレイも凄いてなると真面目に有望過ぎるな」
「でしょ?」
「しかし、あのポジションて‥」
「そうッス、リベロです」
「いきなりかよ」
「何の問題も無くこなしているみたいですね、アノ子を最初から使って後ろを任せたお陰で七海が守備専にならなくなったし」
「詳しいな」
「まー、サッカーは好きですから毎試合見てますし、ただまだちょっと足元はイマイチッスかね、股下抜かれて失点に繋がりそうな流れが一試合に数回ありますし」
「それはまあ、まだ一年だしな」
「兎に角、楽しみッスね」
そう悟が〆て観戦したが、これもその通りと成った
鳳静は早いワンタッチでのパス回しと、ここぞという時の総攻撃、DFからの組み立て上がりで後ろから中距離砲
先のリベロ柏木、七海らのミドル、空中戦でのヘッドから決め前半だけで2-0にして後半に折り返した、そして後半投入の萌を中心にボールを集め点差が広がる
「なんだかんだ萌ちゃんが出ると安定するよね」
「前と違って回りがフルタイムで走りますからね、受け手がちゃんとしてるから、コロコロキラーパスやヘロヘロワンタッチループが活きますわ」
「それ褒めてないんじゃ‥」
「ネーミングセンスの問題よね」
「しゃーないっしょ!相手チームからもそう呼ばれてるんですから!」
「マジデ‥」
実際ホントにそう呼ばれているのだから仕方無い
ただ、ネーミングがアレなだけで馬鹿にしている訳ではない、これは「ゆるい遅いパスだけど何故か必ず通る」事に由来している、そしてそれは、ちゃんと理由もある陣にも葉月にも分った
「成る程な、相手の体重が掛かってる軸足を見切って反対側に転がして出してるのか」
「萌ちゃんならではだね」
「どゆことですか?」
「パス出す前にちょっとだけ左右どちらかに足元で転がすだろ?」
「ええ」
「そうして相手を左右どちらかに出足を出させる、そこに軸足つまり踏ん張ってる足方向に転がして出してる」
「成る程‥」
「コンパスの回転支柱と同じ原理だね、支点は動けない、だから動けない側の足を見切って出してる、分ってるんだけど、足が出せなくてパスカットできない」
「凄い‥そんな事狙って出来るんだ‥」
「まー武芸でもそういうのはあるしね」
「確かにそうですね」
もう一つの「ヘロヘロループパス」もただゆるい山なりボールではない、常にバックスピンが掛かっており、落下点、足元のトラップでボールは弾まずピタリとその場で止まる
つまり大きく蹴りだして出したボールでもラインアウトせずにその場で止まる、ボールの受け手のトラップの上手いヘタが関係なく足元で止まる非常に処理しやすい優しいボールという事
「でも、それ滅茶苦茶難しいんじゃ‥」
「ノーミスでやってるんだから出来るんだろうな」
実際、スタッツ、数字上の成功率だけみても
萌の全試合平均のパス成功率は90%を下回らない
「あれどうやってスピンかけてるんだろ?」
「ボールの中心、1,2センチ下を切る様に蹴るんだが、まあ、実際は難しいよなアウトサイドキックでもやってるし」
「狙った所に出すのも難しそうッスね、でもミスは略無い」
「天才、なんだろうな技術面に関しては」
萌のもう一つの特徴、ドリブルスキルがあるが、これはこの時期になると殆ど使っていない、先に説明あった通り、最早チーム全体が連動して走りスペースへ走りこむ、裏を突く動きがある為、最初の頃の様に萌がキープして相手を引き付ける必要も無くなっていた為だ
こうして結局鳳静は全国準決勝にも関わらず5-1というスコアで全体的には危なげなく勝利して決勝にコマを進めた、唯一の「危ない」場面がこの一失点である
これも悟評と同じく新人の柏木優のミスだった
相手FWのキックフェイントから切り返し突破に対応出来ず振り切られて焦って足を伸ばしてカットに行った、これが相手の後ろ足に引っ掛かってエリア付近で倒して不運にもPKを取られる
ペナルティでのファールかは微妙な所だったか主審の判断はそうだった、これが1失点の原因
勝利してベンチに引き上げた後柏木は七海らに謝った
「す、すみません、キャプテン、また私からのミスで失点が‥」
「なんで私がお前をスタメンに押し込んでる、入って二ヶ月のお前に上手いプレイとか完璧なプレイなんて要求してない、どんどんミスしろ」
「へ!?」
「あたしだってミスはする。問題なのは何がダメなのか分らない事、間違いを直せない事だ、ダメだと分るなら直せば良い来年4月まであたしも萌ちゃんも居る今のうちにどんどんミスして修正点を表に出すんだ、そうすればあたしらが教えてやれる」
「そうですよ、最初から上手い人なんていませんから優さんはまだ一年です、これから上手くなるんです」
「それだけ将来を期待してるから毎試合なんらかの形で出してるんだからな、つか云わせんなよ恥ずかしいな!」
「は、はい、すみません、頑張ります!」
そうして一同明るく笑ってスタジアムから引き上げた
「後ろに繋ぐ、渡す、てこういう事なんだろーなー」と葉月も嬉しそうに呟いた
「そうだな信頼して任せてもらえるってのは嬉しいもんさ後から入った子にはな」
「そうッスね~」
そして翌週の決勝も圧倒的支配率と得点力で鳳静は勝利して優勝、二年連続全国制覇をやってのけた
更に夏休みが終って初日、驚きの報告を七海は顧問から受ける事と成ったそれも直ぐ昼休みには何時もの溜り場で報告した
「ま、マジデ!?」
「凄い‥」
「いやー、七海なら当然しょ、オレから見ても頭一つ抜けてるし」
「おめでとう!」と成った
橘七海、在学中ながら日本代表への選抜である、そして早々にプロからのスカウトが数チームから来たのだ。勿論一番驚いて狼狽して喜んだのは彼女の母親である
「あの七海ちゃんがこんな事になるなんて!」
「だから「あの」てなんだよ~ママ」
「どどどどうしましょう!?と、とりあえずパパに連絡しないと!何か用意する物は!??」
「落ち着いてよ‥ママが試合するんじゃないんだから‥」
「これがお落ち着いていられますか!!」と暫くは橘家は大混乱と成った
ただ代表と云ってA代表には違い無いのだが、所謂、国内で行われる海外代表との親善試合とキャンプへ参加してはどうか?という部分
つまり「それ程評判なら呼んで出してみよう」という事、そこで動けなければそれまで、お試しという軽いものだ
特に七海の場合、メディア受けが元々良く取材関係者と仲がいい、その為派手に良く書かれて報道される部分がある為、関係者からは「人気先行」と思われている側面もある
ただ、七海にとっては幸運もあった。他にも国内学生リーグから見知った顔の選手も呼ばれる事、学生選抜で組んだ全国の学生数人と有馬萌も「一応」キャンプ収集されたことであった
再び溜り場メンバーはメンツを変えて競技場へ集合
そう、今度は鳳静女子サッカーの準決勝である。ただ、事前の情報あってこちらは先のソフト部と違い決死の覚悟の類はまだ無い
というのも鳳静の新たに投資、強化した部活の中でも最も安定感と強化の進んだ部活で既に過去、葉月の一年の頃の大会とは事情が違い、叶の評した「うちのサッカーはあんまり‥」という部分は無い
一つにチームメンバー、特待生の類も拡大しチーム力も既に高い、不動のダブルエースでキャプテン三年の七海と萌が居る事
二つに、その事情あって、これも既に全国の常連だ
しかも七海に関して云えば既に学生選抜に選ばれている
三つに、これも既に度重なる対抗試合の中、当然、葉月と同じ様に「エース封じ」があったが、一人に限定されないことと、実際七海を封じる作戦も何度かあったが、一度も成功していない点である
ソフトは圧倒的に葉月が抜きん出ている為、先の様に避ける勝負しない、が出来るがサッカーの場合これがコレが難しい、というのも七海はそもそもオフェンスの選手ですらないからだ、これに専属でマークを付けるというのも基本無い
そう七海は最初の練習試合から今まで守備的MFかセントラルMFのどちらかでポジションが固定されている
彼女の公式試合は三年で80試合程、総得点86点というFWでもありえない脅威の得点力で一試合に一本は確実に決めている
その全ての得点がオーバーラップからペナルティエリア外から弾丸ミドルシュートか、セットプレイ、コーナーキックからの「二階からヘッド」に寄るものだ
「エース潰し」「徹底マーク」も3度ほどあったのだが、その全てが全く通用しない、これは七海のプレイスタイルとスペックによる結果だ
まず、快速である事、上がるタイミングが独特、普通に女子では七海の足について来れる相手がマズ居ない要は捕まえて置けないのである
そしてよしんばついてこれたとしても大抵前半で相手が潰れる、つまり「超足が速くて、尚且つフルタイム走れる」選手など高校サッカーには存在しなかった点
もう一つが後半から出て来る司令塔の萌が居る事、どっちも自由にするといいようにやられる、両方は抑えられないという事これが「封じれない」理由、分散である
その意味ではサッカー部は全体の強化や優秀な後輩が育っており、これも七海と萌の指導のお陰でもある細かい足元のテクニックでは萌が
チーム全体の方針では七海中心の走る早いサッカーを追及した結果、特に監督の指導もあまりなく自由にやらせた。自然と現代で云うトータルフットボール。全員守備、全員攻撃となるべく少ないタッチで動かし萌と七海のスペースを作るマークを固定化させないという
フランス代表の「シャンパンサッカー」華麗で奔放なパスを回すゲームメイクをあわせた様なチームスタイルになった事だ、故に準決勝でも比較的楽なムードとなっている
実際試合開始後も応援に来ていた溜り場メンバーも余裕の観戦だった、そうできるくらい試合運びも安定している、最早弱小だった嘗ての面影すらなかった
「暫く見ない間にえらく強いチームになったな」
「そうなんですよ!もう全国制覇も一回やってますし!」
とここでも別の意味で叶が盛り上がっている
「彼女も調子良さそうだなぁ」
「まー、最初から抜きん出て適正あったッスからねぇ」
「ボクの方と違って全体的にかなり強いから個人に掛かる負担も少ないしねぇ」
「んだな、ま、どっちにしろ今後は良い結果が続くだろうな」
「そうだね、折角ここまで強くなったし、そうなって欲しいね」
「ソフトもサッカーも偉大なエースが居なくなった後、だな」
「そこも大丈夫じゃない?ボク抜きでも全国の常連だしサッカーも七海ちゃん二世が登場したみたいだし」
「そーなんか?」
「一年生で凄い子が入ったらしいよ」
「ああ、オレもチェックしてますよ、柏木優、て子」
「へー、どんな選手なんだ」
「そーッスね‥七海二世て程プレイスタイルは似て無いッスけどやっぱ守備的選手で、どこでも守れてユーティリティ、上手いし、冷静スタミナもあるし攻撃参加での攻撃力もある感じッス、何より空中戦が強いッスからね」
「へ~」
「何時もの名選手で例えると?」
「うーん‥、ザネッティとかマテウスとかて感じッスね」
「新人なのにベテラン感があるんだが?」
「それはしゃーないッスよ、てか見た目がもう一年じゃないし」
「既に悟君より背高いしね」
「そーなんですよ‥」
「試合出てないのか?」
「えーと‥あ、あの後ろ目のストッパーの前、ロングヘアの子です」
「‥15番?」
「そそ」
「成る程‥」
と言ったとおり、見た目からまず回りの選手より頭一つ大きい、だがガタイがいいとかではなく、スラッとした長身で一年で既に170cm超えている結構なクール美少女だった
「あれでプレイも凄いてなると真面目に有望過ぎるな」
「でしょ?」
「しかし、あのポジションて‥」
「そうッス、リベロです」
「いきなりかよ」
「何の問題も無くこなしているみたいですね、アノ子を最初から使って後ろを任せたお陰で七海が守備専にならなくなったし」
「詳しいな」
「まー、サッカーは好きですから毎試合見てますし、ただまだちょっと足元はイマイチッスかね、股下抜かれて失点に繋がりそうな流れが一試合に数回ありますし」
「それはまあ、まだ一年だしな」
「兎に角、楽しみッスね」
そう悟が〆て観戦したが、これもその通りと成った
鳳静は早いワンタッチでのパス回しと、ここぞという時の総攻撃、DFからの組み立て上がりで後ろから中距離砲
先のリベロ柏木、七海らのミドル、空中戦でのヘッドから決め前半だけで2-0にして後半に折り返した、そして後半投入の萌を中心にボールを集め点差が広がる
「なんだかんだ萌ちゃんが出ると安定するよね」
「前と違って回りがフルタイムで走りますからね、受け手がちゃんとしてるから、コロコロキラーパスやヘロヘロワンタッチループが活きますわ」
「それ褒めてないんじゃ‥」
「ネーミングセンスの問題よね」
「しゃーないっしょ!相手チームからもそう呼ばれてるんですから!」
「マジデ‥」
実際ホントにそう呼ばれているのだから仕方無い
ただ、ネーミングがアレなだけで馬鹿にしている訳ではない、これは「ゆるい遅いパスだけど何故か必ず通る」事に由来している、そしてそれは、ちゃんと理由もある陣にも葉月にも分った
「成る程な、相手の体重が掛かってる軸足を見切って反対側に転がして出してるのか」
「萌ちゃんならではだね」
「どゆことですか?」
「パス出す前にちょっとだけ左右どちらかに足元で転がすだろ?」
「ええ」
「そうして相手を左右どちらかに出足を出させる、そこに軸足つまり踏ん張ってる足方向に転がして出してる」
「成る程‥」
「コンパスの回転支柱と同じ原理だね、支点は動けない、だから動けない側の足を見切って出してる、分ってるんだけど、足が出せなくてパスカットできない」
「凄い‥そんな事狙って出来るんだ‥」
「まー武芸でもそういうのはあるしね」
「確かにそうですね」
もう一つの「ヘロヘロループパス」もただゆるい山なりボールではない、常にバックスピンが掛かっており、落下点、足元のトラップでボールは弾まずピタリとその場で止まる
つまり大きく蹴りだして出したボールでもラインアウトせずにその場で止まる、ボールの受け手のトラップの上手いヘタが関係なく足元で止まる非常に処理しやすい優しいボールという事
「でも、それ滅茶苦茶難しいんじゃ‥」
「ノーミスでやってるんだから出来るんだろうな」
実際、スタッツ、数字上の成功率だけみても
萌の全試合平均のパス成功率は90%を下回らない
「あれどうやってスピンかけてるんだろ?」
「ボールの中心、1,2センチ下を切る様に蹴るんだが、まあ、実際は難しいよなアウトサイドキックでもやってるし」
「狙った所に出すのも難しそうッスね、でもミスは略無い」
「天才、なんだろうな技術面に関しては」
萌のもう一つの特徴、ドリブルスキルがあるが、これはこの時期になると殆ど使っていない、先に説明あった通り、最早チーム全体が連動して走りスペースへ走りこむ、裏を突く動きがある為、最初の頃の様に萌がキープして相手を引き付ける必要も無くなっていた為だ
こうして結局鳳静は全国準決勝にも関わらず5-1というスコアで全体的には危なげなく勝利して決勝にコマを進めた、唯一の「危ない」場面がこの一失点である
これも悟評と同じく新人の柏木優のミスだった
相手FWのキックフェイントから切り返し突破に対応出来ず振り切られて焦って足を伸ばしてカットに行った、これが相手の後ろ足に引っ掛かってエリア付近で倒して不運にもPKを取られる
ペナルティでのファールかは微妙な所だったか主審の判断はそうだった、これが1失点の原因
勝利してベンチに引き上げた後柏木は七海らに謝った
「す、すみません、キャプテン、また私からのミスで失点が‥」
「なんで私がお前をスタメンに押し込んでる、入って二ヶ月のお前に上手いプレイとか完璧なプレイなんて要求してない、どんどんミスしろ」
「へ!?」
「あたしだってミスはする。問題なのは何がダメなのか分らない事、間違いを直せない事だ、ダメだと分るなら直せば良い来年4月まであたしも萌ちゃんも居る今のうちにどんどんミスして修正点を表に出すんだ、そうすればあたしらが教えてやれる」
「そうですよ、最初から上手い人なんていませんから優さんはまだ一年です、これから上手くなるんです」
「それだけ将来を期待してるから毎試合なんらかの形で出してるんだからな、つか云わせんなよ恥ずかしいな!」
「は、はい、すみません、頑張ります!」
そうして一同明るく笑ってスタジアムから引き上げた
「後ろに繋ぐ、渡す、てこういう事なんだろーなー」と葉月も嬉しそうに呟いた
「そうだな信頼して任せてもらえるってのは嬉しいもんさ後から入った子にはな」
「そうッスね~」
そして翌週の決勝も圧倒的支配率と得点力で鳳静は勝利して優勝、二年連続全国制覇をやってのけた
更に夏休みが終って初日、驚きの報告を七海は顧問から受ける事と成ったそれも直ぐ昼休みには何時もの溜り場で報告した
「ま、マジデ!?」
「凄い‥」
「いやー、七海なら当然しょ、オレから見ても頭一つ抜けてるし」
「おめでとう!」と成った
橘七海、在学中ながら日本代表への選抜である、そして早々にプロからのスカウトが数チームから来たのだ。勿論一番驚いて狼狽して喜んだのは彼女の母親である
「あの七海ちゃんがこんな事になるなんて!」
「だから「あの」てなんだよ~ママ」
「どどどどうしましょう!?と、とりあえずパパに連絡しないと!何か用意する物は!??」
「落ち着いてよ‥ママが試合するんじゃないんだから‥」
「これがお落ち着いていられますか!!」と暫くは橘家は大混乱と成った
ただ代表と云ってA代表には違い無いのだが、所謂、国内で行われる海外代表との親善試合とキャンプへ参加してはどうか?という部分
つまり「それ程評判なら呼んで出してみよう」という事、そこで動けなければそれまで、お試しという軽いものだ
特に七海の場合、メディア受けが元々良く取材関係者と仲がいい、その為派手に良く書かれて報道される部分がある為、関係者からは「人気先行」と思われている側面もある
ただ、七海にとっては幸運もあった。他にも国内学生リーグから見知った顔の選手も呼ばれる事、学生選抜で組んだ全国の学生数人と有馬萌も「一応」キャンプ収集されたことであった
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