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貧しい衛兵の話
エピローグ
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とある町に貧しい衛兵がおりました。
お伽噺を試し、運よく魔法そのもののような石屋へ行くことが出来ました。
指輪を手に入れ、恋人へ改めて結婚を申し込むと指輪を受け取ってもらえました。
それから10年後。可愛い二人の姉妹を授かった夫婦を悲劇が襲います。
町を病が襲ったのです。
貧しさで栄養が足りていなかった孤児に始まり、元々病気がちだった者、子ども、老人・・
体力の無い者からどんどん亡くなっていく恐ろしい病でした。
夫婦の子ども達も、その病に罹りました。
食べ物を受け付けず、みるみるうちに痩せ衰えていく子ども達。
衛兵の男は娘達が病に倒れた時、真っ先にお伽噺の石屋へ行こうと試しましたが、行くことは出来ませんでした。
医者にも行きましたが、町中に患者が溢れている状況で、貧しい者に構う余裕は無いと追い返されてしまいました。
実家の男爵家にも縋りましたが、どうすることも出来ぬと諭されました。
今出来ることは、妻と共に子ども達に寄り添い、少しでも一緒の時間を過ごす・・それだけでした。
枯れ木のように痩せ、元気だった姿は見る影もありません。
男は神に祈りました。
どうか、二人を助けてくださいと。まだ連れて行かないでくれと、祈りました。
その時、上の子が目を覚ましました。呼びかけ、何かして欲しい事は無いか問う男。
少女はか細い声で父に願いました。
「不思議なお店の話をして」
あの話が大好きなのだと。
男は首からお守りの首飾りを外し、上の子に握らせながら努めて明るく話し始めました。
妻は指輪を外して下の子の指に「貸してあげるね」と嵌めてあげました。
プロポーズの時に貰った花も、押し花にして紙に漉き込み大事に保存してあったので、それも持って来て見せてやりました。
白いハンカチも忘れてはいません。
広げ、見せてあげようとした時です。
不思議なことが起こりました。
ハンカチに光る文字が現れたのです。
その文字は「祖先に希え」と読めました。
男は店主の言葉を思い出しました。お守りは【快癒】の魔道具だと。
壊れていると言っていましたが、もしかしたらと僅かな希望に縋りました。
子どもの手の上からお守りを握り、一心に願います。
ご先祖様、どうかあなたの子孫を助けてください・・
木戸を閉め切った薄暗い部屋の中に、どこからともなく淡い光が集まってきました。
最初はポツポツと数える程でしたが、瞬く間に数は増え、子ども達を包みます。
子ども達の姿が完全に光に覆われた瞬間。全身が強く光り集まった光は弾けて解け、消えて行きました。
暫し放心した夫婦でしたが、子ども達を見て驚きました。
二人とも、痩せ衰えて儚かった姿が嘘のように活き活きとしていたからです。
血色の良い姉妹の寝顔に安心した夫婦は、二人を抱きしめて泣きました。
幼子達から病は去ったのです。
遠い祖先の、竜の魔石が救ってくれたのでした。
男は細かな砂のようになってしまったお守りを白いハンカチに包み、崩れる前と同じようにいつまでも大切にしました。
見知らぬ祖先と、石屋の店主に感謝しながら。
貧しい衛兵の話 おしまい
================================
これで一応は完結。
また別のお客さんの話を書き上げられたら、新しい章で追加できればと思います。
お伽噺を試し、運よく魔法そのもののような石屋へ行くことが出来ました。
指輪を手に入れ、恋人へ改めて結婚を申し込むと指輪を受け取ってもらえました。
それから10年後。可愛い二人の姉妹を授かった夫婦を悲劇が襲います。
町を病が襲ったのです。
貧しさで栄養が足りていなかった孤児に始まり、元々病気がちだった者、子ども、老人・・
体力の無い者からどんどん亡くなっていく恐ろしい病でした。
夫婦の子ども達も、その病に罹りました。
食べ物を受け付けず、みるみるうちに痩せ衰えていく子ども達。
衛兵の男は娘達が病に倒れた時、真っ先にお伽噺の石屋へ行こうと試しましたが、行くことは出来ませんでした。
医者にも行きましたが、町中に患者が溢れている状況で、貧しい者に構う余裕は無いと追い返されてしまいました。
実家の男爵家にも縋りましたが、どうすることも出来ぬと諭されました。
今出来ることは、妻と共に子ども達に寄り添い、少しでも一緒の時間を過ごす・・それだけでした。
枯れ木のように痩せ、元気だった姿は見る影もありません。
男は神に祈りました。
どうか、二人を助けてくださいと。まだ連れて行かないでくれと、祈りました。
その時、上の子が目を覚ましました。呼びかけ、何かして欲しい事は無いか問う男。
少女はか細い声で父に願いました。
「不思議なお店の話をして」
あの話が大好きなのだと。
男は首からお守りの首飾りを外し、上の子に握らせながら努めて明るく話し始めました。
妻は指輪を外して下の子の指に「貸してあげるね」と嵌めてあげました。
プロポーズの時に貰った花も、押し花にして紙に漉き込み大事に保存してあったので、それも持って来て見せてやりました。
白いハンカチも忘れてはいません。
広げ、見せてあげようとした時です。
不思議なことが起こりました。
ハンカチに光る文字が現れたのです。
その文字は「祖先に希え」と読めました。
男は店主の言葉を思い出しました。お守りは【快癒】の魔道具だと。
壊れていると言っていましたが、もしかしたらと僅かな希望に縋りました。
子どもの手の上からお守りを握り、一心に願います。
ご先祖様、どうかあなたの子孫を助けてください・・
木戸を閉め切った薄暗い部屋の中に、どこからともなく淡い光が集まってきました。
最初はポツポツと数える程でしたが、瞬く間に数は増え、子ども達を包みます。
子ども達の姿が完全に光に覆われた瞬間。全身が強く光り集まった光は弾けて解け、消えて行きました。
暫し放心した夫婦でしたが、子ども達を見て驚きました。
二人とも、痩せ衰えて儚かった姿が嘘のように活き活きとしていたからです。
血色の良い姉妹の寝顔に安心した夫婦は、二人を抱きしめて泣きました。
幼子達から病は去ったのです。
遠い祖先の、竜の魔石が救ってくれたのでした。
男は細かな砂のようになってしまったお守りを白いハンカチに包み、崩れる前と同じようにいつまでも大切にしました。
見知らぬ祖先と、石屋の店主に感謝しながら。
貧しい衛兵の話 おしまい
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これで一応は完結。
また別のお客さんの話を書き上げられたら、新しい章で追加できればと思います。
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