78 / 109
2.3 密室にて
9.歳月
しおりを挟む
耳鳴りがやみ、徐々に思考能力を回復してから彼女の言葉を思い出した。しかし、僕は彼女にあった記憶など一切ない。だが、僕のスマホの日付が丁度記憶が途切れた日から7日後であるわけだから、僕の記憶は丁度一週間分消えたと考えて間違いないはずだ。
「どういうことなんだ? 僕は彼女にあった記憶が一切ないし、そもそも、僕がこの世界にきてからまだ一ヶ月も立ってないだろう?」
しばしの沈黙、僕の質問に対して、悪魔がいつも用いる方法。おそらく、悪魔が僕に心の準備をするために与えている時間なのだろうが、今回ばかりは必要なかった。
それに、悪魔だけならまだしも、今回は3人一致でだんまりを決め込んでいるようだ。何をもったいぶっているというのだろうか?
しかし、今回は静寂がいつよりも遥かに長かった。
「えっと……」
だが時が永遠でない限り、その物事には終焉というものがあるはずだ。と言っても、今回その静寂に終止符を打ったのは予想外にもサルガタナスと呼ばれる悪魔だった。彼女は続けて困惑気味に僕に説明してくれた。
「人間さんと私は一ヶ月前にあったという事は先程話したとおりです……それは良いですか?」
もちろん全然理解できていないが、ここで了承しなければ一笑話しが進まない気がする。
「ああ……」
僕は仕方なく同意した。が、それに同意しかねる者達がいた。
「ちょっと待て、それを今ここで伝えるという事は、こいつの精神に何らかの以上を着たしてしまうかもしれんで……イグニスの悪魔がそれを伝えんかったんだってそのためやろ?」
「そうだ。ここで宿主にショック死でもされたらまずい」
二人して僕に何かを隠していたようだ。だったら、彼女が敵だとかなんだとか言う話は一体何だったのか、頭の中は渦が巻いていて、一向に整理がつかない。
それの渦を止めようとするのがサルガタナスという、僕の中の悪魔が敵と言った存在で、それに対抗するのが僕の味方であるべき二人という奇妙な構図のもと、自体は佳境を迎えた。
「確かに、話さないという事は人間さんの脳に一番ショックを与えん方法でしょうね……ですが、私的には彼の脳がどうなろうが、今日の任務だけは絶対に成功させていただかねばなりません。失敗するんやったら、何のためにここまできたんかわかりません。記憶を一週間分消したのだって今日のためです。この人の精神が今日まで持ちこたえることを願って消したんですし、この方だってそれをのぞんでた。――そりゃあ今は記憶が消えて覚えてないかもしれませんが、今日の任務を成功させたいと一番思ってたのだって、この人でしょう? だったら説明しないわけには行きませんよ」
彼女がそう言ったあとは堺も悪魔も、歯切れが悪いように「ああ」とか「そうだな」とかそんな返事を返した。
なんだかよくわからないが、どうやらふたりとも、僕に対して少なからず後ろめたいという気持ちがあったようだ。その理由まではわからないが、悪いことではないと願うばかりだ。
さて、それでは彼女たちの相談も終わったようだし、本題に入ってもらうとする。
「それで、僕がショックを覚えるほどのことってなんだ? この数時間の間に大概のことでは驚かない耐性が出来たと自負しているのが……」
「だったら、尚の事驚くと思います。覚悟は良いですか?」
今更そんな脅し文句を言われたところで、引き戻すことは出来ないって彼女もわかっているはずだが、そこまで念を押されると少しだけ後ろ向きになる。
だけど、決断を迷っている暇はない……一番状況が分からない僕がそのままでいいはずがないし、早く本当のことを知りたいという気持ちのほうが遥かに上回っている。
「前置きは良いから、さっさと話してくれ」
彼女は少しだけ咳払いをし、では……という合図とともに話を初めた。
「少しだけ衝撃的かもしれませんし、もしかしたらなんとなく気がついていたのかもしれませんが、あなたの失った記憶は一週間ではありません」
まあ、それはさっきの話の内容から理解はしていたが、だったら一ヶ月か二ヶ月程度だろうか?
そんな僕の疑問はすぐに彼女の言葉によって回答を得られた。
「あなたはこちらの世界に来てから一ヶ月も立っていないと言ってはりましたよね? でもそれじゃあ計算は合いません。私があなたから一ヶ月前に聞いた話では、こちらにきてから3年と言ってはりました。つまりあなたの消えた記憶は三年と一ヶ月ということになります」
思わず彼女の両肩に手を置いて揺らしてしまった。それも正面から……だが、それほどまでに意味が分からない状況であった。だからこそそうせずにはいられない。
「どういうことだ!? 僕はいや彼女はどうなってしまったんだ!?」
今度は彼女が驚いたのだろう、両肩に置いた手を掴み振りほどこうとしていた。それも相当な力が篭っていたのでかなり痛かったのかもしれない。
「……っ! ちょっと! 痛いですっ!!」
その言葉でようやく僕は正気を取り戻した。
「悪い……」
彼女は肩を抑え、苦悩の表情を浮かべながらも先程の調子で続きを話した。
「私が順序を踏まなかったのが悪かったので仕方ありません。ですが、此処から先はどう話したものか……ひとまずあなたの言う彼女については私は全く知らないというわけでもありませんが、話せるほど知っているというわけでもありません。ですから、ひとまず変わったことを適当にかい摘んで話しましょう。
ちょっと長くなりますが、三年前とはかなり状況が変わっています。一番変わったことと言えばサンクチュアリでしょうか……サンクチュアリは現在三年前の三分の一程度しか残ってません。特に私達が住んでいた中央区はほぼ壊滅しました。その代わりにあなたがいた密室みたいな施設が見つかりました。悪魔に感知されない施設ですね、まあ1年前ほどまでは必要なかったから誰も気が付かんかったんでしょうが、今となっては魔法士の良い隠れ蓑ってやつです。そして、どうしてサンクチュアリが減ったのかと言うと、最悪の悪魔ルシファーの出現によるものです」
長い説明の中、水をさすのもどうかとは思ったが、どうしても聞いておきたかった。
「ルシファーってベリアルが名乗った名前と同じだが――」
「そうや、ベリアルが名乗った名前で、その人物その人やな。まあ悪い人じゃないねんけど、あまりにも悪魔として強すぎてこっちに来ただけで世界が崩壊してもうた」
堺が僕の疑問に即座に答えた。
「世界が崩壊?」
「せや、この世界は一年前にバランスが崩壊してしまったんや。もともとはベルゼブブ・サタン対アスタロト+サンクチュアリのお陰でなんとかなりたっとたけど、サンクチュアリが減ったことによってベルゼブブとサタンのほうが優勢になったというわけや」
なるほど、全く知らなかった。こいつはどうしてそんな肝心なことを教えてくれなかったんだろう?
「まあその構図になったのもベルゼブブがこの世界に来た二年前からのことやけどな……」
そうか、つまりは僕がいた世界では争いそのものが無かったというわけか……
そんな堺の説明を煩わしく思ったのか、サルガタナスは再び僕と堺の間に割って入って、説明を再開した。
「そして、今日結構するはずだった任務というのが、ベルゼブブ暗殺です」
「どういうことなんだ? 僕は彼女にあった記憶が一切ないし、そもそも、僕がこの世界にきてからまだ一ヶ月も立ってないだろう?」
しばしの沈黙、僕の質問に対して、悪魔がいつも用いる方法。おそらく、悪魔が僕に心の準備をするために与えている時間なのだろうが、今回ばかりは必要なかった。
それに、悪魔だけならまだしも、今回は3人一致でだんまりを決め込んでいるようだ。何をもったいぶっているというのだろうか?
しかし、今回は静寂がいつよりも遥かに長かった。
「えっと……」
だが時が永遠でない限り、その物事には終焉というものがあるはずだ。と言っても、今回その静寂に終止符を打ったのは予想外にもサルガタナスと呼ばれる悪魔だった。彼女は続けて困惑気味に僕に説明してくれた。
「人間さんと私は一ヶ月前にあったという事は先程話したとおりです……それは良いですか?」
もちろん全然理解できていないが、ここで了承しなければ一笑話しが進まない気がする。
「ああ……」
僕は仕方なく同意した。が、それに同意しかねる者達がいた。
「ちょっと待て、それを今ここで伝えるという事は、こいつの精神に何らかの以上を着たしてしまうかもしれんで……イグニスの悪魔がそれを伝えんかったんだってそのためやろ?」
「そうだ。ここで宿主にショック死でもされたらまずい」
二人して僕に何かを隠していたようだ。だったら、彼女が敵だとかなんだとか言う話は一体何だったのか、頭の中は渦が巻いていて、一向に整理がつかない。
それの渦を止めようとするのがサルガタナスという、僕の中の悪魔が敵と言った存在で、それに対抗するのが僕の味方であるべき二人という奇妙な構図のもと、自体は佳境を迎えた。
「確かに、話さないという事は人間さんの脳に一番ショックを与えん方法でしょうね……ですが、私的には彼の脳がどうなろうが、今日の任務だけは絶対に成功させていただかねばなりません。失敗するんやったら、何のためにここまできたんかわかりません。記憶を一週間分消したのだって今日のためです。この人の精神が今日まで持ちこたえることを願って消したんですし、この方だってそれをのぞんでた。――そりゃあ今は記憶が消えて覚えてないかもしれませんが、今日の任務を成功させたいと一番思ってたのだって、この人でしょう? だったら説明しないわけには行きませんよ」
彼女がそう言ったあとは堺も悪魔も、歯切れが悪いように「ああ」とか「そうだな」とかそんな返事を返した。
なんだかよくわからないが、どうやらふたりとも、僕に対して少なからず後ろめたいという気持ちがあったようだ。その理由まではわからないが、悪いことではないと願うばかりだ。
さて、それでは彼女たちの相談も終わったようだし、本題に入ってもらうとする。
「それで、僕がショックを覚えるほどのことってなんだ? この数時間の間に大概のことでは驚かない耐性が出来たと自負しているのが……」
「だったら、尚の事驚くと思います。覚悟は良いですか?」
今更そんな脅し文句を言われたところで、引き戻すことは出来ないって彼女もわかっているはずだが、そこまで念を押されると少しだけ後ろ向きになる。
だけど、決断を迷っている暇はない……一番状況が分からない僕がそのままでいいはずがないし、早く本当のことを知りたいという気持ちのほうが遥かに上回っている。
「前置きは良いから、さっさと話してくれ」
彼女は少しだけ咳払いをし、では……という合図とともに話を初めた。
「少しだけ衝撃的かもしれませんし、もしかしたらなんとなく気がついていたのかもしれませんが、あなたの失った記憶は一週間ではありません」
まあ、それはさっきの話の内容から理解はしていたが、だったら一ヶ月か二ヶ月程度だろうか?
そんな僕の疑問はすぐに彼女の言葉によって回答を得られた。
「あなたはこちらの世界に来てから一ヶ月も立っていないと言ってはりましたよね? でもそれじゃあ計算は合いません。私があなたから一ヶ月前に聞いた話では、こちらにきてから3年と言ってはりました。つまりあなたの消えた記憶は三年と一ヶ月ということになります」
思わず彼女の両肩に手を置いて揺らしてしまった。それも正面から……だが、それほどまでに意味が分からない状況であった。だからこそそうせずにはいられない。
「どういうことだ!? 僕はいや彼女はどうなってしまったんだ!?」
今度は彼女が驚いたのだろう、両肩に置いた手を掴み振りほどこうとしていた。それも相当な力が篭っていたのでかなり痛かったのかもしれない。
「……っ! ちょっと! 痛いですっ!!」
その言葉でようやく僕は正気を取り戻した。
「悪い……」
彼女は肩を抑え、苦悩の表情を浮かべながらも先程の調子で続きを話した。
「私が順序を踏まなかったのが悪かったので仕方ありません。ですが、此処から先はどう話したものか……ひとまずあなたの言う彼女については私は全く知らないというわけでもありませんが、話せるほど知っているというわけでもありません。ですから、ひとまず変わったことを適当にかい摘んで話しましょう。
ちょっと長くなりますが、三年前とはかなり状況が変わっています。一番変わったことと言えばサンクチュアリでしょうか……サンクチュアリは現在三年前の三分の一程度しか残ってません。特に私達が住んでいた中央区はほぼ壊滅しました。その代わりにあなたがいた密室みたいな施設が見つかりました。悪魔に感知されない施設ですね、まあ1年前ほどまでは必要なかったから誰も気が付かんかったんでしょうが、今となっては魔法士の良い隠れ蓑ってやつです。そして、どうしてサンクチュアリが減ったのかと言うと、最悪の悪魔ルシファーの出現によるものです」
長い説明の中、水をさすのもどうかとは思ったが、どうしても聞いておきたかった。
「ルシファーってベリアルが名乗った名前と同じだが――」
「そうや、ベリアルが名乗った名前で、その人物その人やな。まあ悪い人じゃないねんけど、あまりにも悪魔として強すぎてこっちに来ただけで世界が崩壊してもうた」
堺が僕の疑問に即座に答えた。
「世界が崩壊?」
「せや、この世界は一年前にバランスが崩壊してしまったんや。もともとはベルゼブブ・サタン対アスタロト+サンクチュアリのお陰でなんとかなりたっとたけど、サンクチュアリが減ったことによってベルゼブブとサタンのほうが優勢になったというわけや」
なるほど、全く知らなかった。こいつはどうしてそんな肝心なことを教えてくれなかったんだろう?
「まあその構図になったのもベルゼブブがこの世界に来た二年前からのことやけどな……」
そうか、つまりは僕がいた世界では争いそのものが無かったというわけか……
そんな堺の説明を煩わしく思ったのか、サルガタナスは再び僕と堺の間に割って入って、説明を再開した。
「そして、今日結構するはずだった任務というのが、ベルゼブブ暗殺です」
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる