57 / 109
2.1 始まりは終わりとともに
3.約束
しおりを挟む
そんなこんなで、大きな情報を得ることが出来た僕は少しだけだが状況がわかった。だがだからといって、この状況を打破するまでには至らない。結局は使いみちの分からないアレを取り出さざるを得なかった。
というよりも、最初から使用するつもりではあったものの、なんとなく使いたくなかったというのが正しいだろう。――もっと正確に言うのであれば、正しく確実な言い方をするのであれば、なぜだかはわからないが、使えないことが恥ずかしいように感じたといえばなんとかなるだろう。それは、今になってもそうだ。
うまく操作出来ずに、謎の機械音声が流れる。『もう一度言ってください』と。
「ふ、ふふ。お前まともに使えてないじゃないか? 電話一つまともにかけられないのか?」
悪魔が僕の手際の悪さに思わず吹き出した。だが、こいつに僕を笑う権利などあるのだろうか?
「じゃあ、お前が教えてくれよ!」
「馬鹿だなお前は、俺はその端末の使い方なんて知らねぇって言ってるだろ? 言葉すらわからなくなったのか?」
僕の願いに開き直る悪魔。開き直るどころかむしろ馬鹿にされた。自分の馬鹿さ加減を棚に上げて僕を馬鹿にした。
「…………」
「……次、俺のことを馬鹿といったら、お前事消滅してやるからな?」
「………………」
僕は彼の馬鹿さ加減に何も口にだすことができなかった。口を減らすことも増やすことも彼に本当のことを言うことすら無意味に感じられた。
「よし、心中するか……」
「ちょっとまて!」
こいつは本気で僕と一緒に死ぬつもりだ。さすがに僕はまだ死にたくないし、やりたくもないフォローを入れる羽目になる。まあ、全て僕の責任でもあるわけだから、やぶさかではあるが、やぶさかではない。
「なんだ? 最後に遺言でも残しておくか?」
「いや、そうじゃない。死神も早とちりはするが、悪魔は違うだろう?」
「……勘違いも何も俺はお前の心が読めるんだから、間違えてノートに名前を書くことはない。しかもあれはコラだろ?」
「そうだ。だけど、お前はあの日本で一番有名な死神と同じような状況であることをもっと楽しまなくていいのか?」
「そんなくだらない遺言でよかったのか?」
「……ちょっとまてって! なんだ金か? 金がほしいのか?」
「お前は間抜けか? 俺が金を使えるわけないだろう? 俺に持ってくるんなら、知識だな……知識をくれるというのであれば許してやらんこともない」
一体どうやって、知識をやればいいのだろうか……というか、僕の頭の中をのぞき放題なこいつに今更与えられる知識など一つたりともありはしないわけだが、何を考えているのだろうか――その答えはすぐに分かった。
「そうだ。簡単だろう? 今お前が考えたとおり、お前が見たこと聞いたことはお前の思考を通して見える。だが、だからこそ俺が知りたい情報が入ってこないことが歯がゆいというべきだろう。ならばこそ、だからこそ、お前からが一番知識をもらいやすいんだ。つまり、俺の代わりに俺の知りたい事を勉強しろってことだ」
「正直に言っていいか? それはどう考えたって僕には得にしかならないことだと思う」
「そりゃそうだろう。お前が徳を積めば積むほど俺に得があるように、俺がお前が勉強すれば勉強するほど、俺にとっての勉強になる。ただ、それをもっと効率よくしてほしいというだけなんだから。お前に取っては損にならない。むしろ効率よく状況の判断が出来るというわけだ。それに、お前に損をさせるという事は実質的に俺にとっても損にしかならない。お前に無駄なことをさせたところでその時間は俺にとっても無駄なんだから」
確かに的を射た意見だ。お互いに損するよりかはお互いに得したほうがいいに決まって言う。どちらにとってもそのほうが徳を詰めることだろう。
お互いに蹴落とし会うことには徳も得もないのだから。だが反対にそれは悪魔らしからぬ意見だとも取れる。それだけにこの悪魔らしいと言えばそうだろう。この悪魔は初めてあった時からすでに悪魔でありながら、悪魔とは思うことが出来なかったのだから。――だから僕は彼を体に封印することを許容できたのだから。
「ほう、まあそれは褒め言葉として受け取っておこう。だけどお前。俺はお前に封印されることを許容した覚えはないがな」
「それは僕のセリフだ。こんな事になるのなら絶対にお前を自分の体に封印するなんて、そんな無茶苦茶なことを考えるわけ無いだろう? ただ、お前の力なら受け入れてもいいと思えただけだ」
「……まあ良いだろう。それよりもこの状況をどう打ち破るかのほうが、今のお前にとってはそっちのほうが重要なんだろう? どうしてそうなったのかは知らんが、お前から見えなくなったさっきまでの覚悟がなくなったと思うとしよう」
さっきの覚悟とはなんのことか分からないが、それでも僕はここを脱出しなければならないのだから、それを聞いている暇はない。それよりも――
「――――そうだ。さっさとここを出よう!」
一向に進まなかった話がようやく一歩前進したというところだろう。とにかく、さっさとここから出る方法を探さなくちゃ。
というよりも、最初から使用するつもりではあったものの、なんとなく使いたくなかったというのが正しいだろう。――もっと正確に言うのであれば、正しく確実な言い方をするのであれば、なぜだかはわからないが、使えないことが恥ずかしいように感じたといえばなんとかなるだろう。それは、今になってもそうだ。
うまく操作出来ずに、謎の機械音声が流れる。『もう一度言ってください』と。
「ふ、ふふ。お前まともに使えてないじゃないか? 電話一つまともにかけられないのか?」
悪魔が僕の手際の悪さに思わず吹き出した。だが、こいつに僕を笑う権利などあるのだろうか?
「じゃあ、お前が教えてくれよ!」
「馬鹿だなお前は、俺はその端末の使い方なんて知らねぇって言ってるだろ? 言葉すらわからなくなったのか?」
僕の願いに開き直る悪魔。開き直るどころかむしろ馬鹿にされた。自分の馬鹿さ加減を棚に上げて僕を馬鹿にした。
「…………」
「……次、俺のことを馬鹿といったら、お前事消滅してやるからな?」
「………………」
僕は彼の馬鹿さ加減に何も口にだすことができなかった。口を減らすことも増やすことも彼に本当のことを言うことすら無意味に感じられた。
「よし、心中するか……」
「ちょっとまて!」
こいつは本気で僕と一緒に死ぬつもりだ。さすがに僕はまだ死にたくないし、やりたくもないフォローを入れる羽目になる。まあ、全て僕の責任でもあるわけだから、やぶさかではあるが、やぶさかではない。
「なんだ? 最後に遺言でも残しておくか?」
「いや、そうじゃない。死神も早とちりはするが、悪魔は違うだろう?」
「……勘違いも何も俺はお前の心が読めるんだから、間違えてノートに名前を書くことはない。しかもあれはコラだろ?」
「そうだ。だけど、お前はあの日本で一番有名な死神と同じような状況であることをもっと楽しまなくていいのか?」
「そんなくだらない遺言でよかったのか?」
「……ちょっとまてって! なんだ金か? 金がほしいのか?」
「お前は間抜けか? 俺が金を使えるわけないだろう? 俺に持ってくるんなら、知識だな……知識をくれるというのであれば許してやらんこともない」
一体どうやって、知識をやればいいのだろうか……というか、僕の頭の中をのぞき放題なこいつに今更与えられる知識など一つたりともありはしないわけだが、何を考えているのだろうか――その答えはすぐに分かった。
「そうだ。簡単だろう? 今お前が考えたとおり、お前が見たこと聞いたことはお前の思考を通して見える。だが、だからこそ俺が知りたい情報が入ってこないことが歯がゆいというべきだろう。ならばこそ、だからこそ、お前からが一番知識をもらいやすいんだ。つまり、俺の代わりに俺の知りたい事を勉強しろってことだ」
「正直に言っていいか? それはどう考えたって僕には得にしかならないことだと思う」
「そりゃそうだろう。お前が徳を積めば積むほど俺に得があるように、俺がお前が勉強すれば勉強するほど、俺にとっての勉強になる。ただ、それをもっと効率よくしてほしいというだけなんだから。お前に取っては損にならない。むしろ効率よく状況の判断が出来るというわけだ。それに、お前に損をさせるという事は実質的に俺にとっても損にしかならない。お前に無駄なことをさせたところでその時間は俺にとっても無駄なんだから」
確かに的を射た意見だ。お互いに損するよりかはお互いに得したほうがいいに決まって言う。どちらにとってもそのほうが徳を詰めることだろう。
お互いに蹴落とし会うことには徳も得もないのだから。だが反対にそれは悪魔らしからぬ意見だとも取れる。それだけにこの悪魔らしいと言えばそうだろう。この悪魔は初めてあった時からすでに悪魔でありながら、悪魔とは思うことが出来なかったのだから。――だから僕は彼を体に封印することを許容できたのだから。
「ほう、まあそれは褒め言葉として受け取っておこう。だけどお前。俺はお前に封印されることを許容した覚えはないがな」
「それは僕のセリフだ。こんな事になるのなら絶対にお前を自分の体に封印するなんて、そんな無茶苦茶なことを考えるわけ無いだろう? ただ、お前の力なら受け入れてもいいと思えただけだ」
「……まあ良いだろう。それよりもこの状況をどう打ち破るかのほうが、今のお前にとってはそっちのほうが重要なんだろう? どうしてそうなったのかは知らんが、お前から見えなくなったさっきまでの覚悟がなくなったと思うとしよう」
さっきの覚悟とはなんのことか分からないが、それでも僕はここを脱出しなければならないのだから、それを聞いている暇はない。それよりも――
「――――そうだ。さっさとここを出よう!」
一向に進まなかった話がようやく一歩前進したというところだろう。とにかく、さっさとここから出る方法を探さなくちゃ。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる