よみがえりの一族

真白 悟

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1.3 相棒と信頼

5.最初の一撃

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「それにしても暇だ……」
 もう何度言ったかすら覚えていないそのセリフに堺が返す言葉ばいつも『そうやな』の一言だが、今回は違った。

「そんなに暇なんやったら、俺と試合でもするか?」

   それは、確かに魅力的な提案ではあるが、流石に朝っぱらから店の中で剣を振り回すのもどうかとも思う。
「それもいいんだけど、前言っていた魔法を使うなって言うことについて詳しく聞きたい」
   堺はとても嫌そうな顔をしている。

 だが、一応は話してくれる気になったようだ。
「はぁ、お前にも関係あることやしな……まあここでなら話しても問題ないか……
   なんとなく感づいとるとは思うけど、俺も向こうの世界から来た。訳あって正体は話せないけどな……
   この世界で魔物が出現し始めたんがちょうど今から一年前って言うのは知ってるよな?」
「……確かこの前にそんな話を聞いた気がする」
   記憶力には自身がないが、その話はとても印象に残っていた。僕にとって魔物とは日常そのものだから、いないこと自体ただの理想に過ぎないからだ。
 魔物は忌むべき存在だが、魔物から取れる素材や肉が市民にとっては生活必需品になっており、魔物を全て駆除することなどとんでもないことだ。
————たとえその魔物が悪魔により作り出された存在だとしても、それを滅ぼすことは自らも滅びることにほかならない。

「そう、だがその魔物が何処から来たのかと言うことについて疑問には思わないか?」

   堺は真剣な顔でそう尋ねた。確かに疑問に思わなかったわけではない。
「…………いや、悪魔が生み出してるんだろ?」
「そうやけど……そういう意味じゃない!」
 堺の言わんとしていることが分からないわけではないが、悪魔が生み出したという以外わからないな…………

   しかし、じっくり考えると彼の言わんといていることに気がつける。
 「……そうか!? こっちに来てるのが人間だけじゃないってことだな?」
   堺がニヤリを笑みを浮かべたことにより、僕の疑問は確信へと変わった。
「だけどそれって魔法と何か関係があるの?」
   悪魔は魔力を察知できない。だから魔力をいくら使おうが関係ない。
   
「まあ、そう焦るなや。」

   話にはまだ続きがあるようだ。
「悪魔が自分の世界にしかおらんと思ってるやろ?」
「まさか!? こっちにも?」
「そう、こっちの世界にも悪魔がおる。しかもそいつらは俺らの魔力を察知できる。まあ、今まで人間に溶け込んで暮らして来たらしいがな……」
   その話はまさに驚愕の事実だった。なぜなら、魔力を察知できないからこそ、敵対する魔法士を倒すために無差別に殺して来た。つまり魔力を察知できるなら人を虐殺する必要はない。

   だが、今まで人と共に暮らして来た悪魔がなぜ人に危害を加えるんだ?

「お前の考えてることはわかる。やけど、それは今の状況から説明出来る。それは人質や……
   人質とは俺ら全員のことや。こっちの世界の悪魔はなぜか人を殺されたくないらしい。だから、小より大をとって、魔法士だけを殺すことにしたみたいや。だから魔法を使ったらあかんねん。」

   堺の説明は長かったが、なんとか頭に詰め込んだ。つまりは、この世界の悪魔に見つからないように魔法を使ってはいけないのだ。
   しかし、こっちの世界の悪魔が魔力を感じれるなら、こっちの世界とあっちの世界には繋がりがあるのかもしれない。

   いつの間にか昼を回っていたようだ。僕のお腹は我慢できずグーッと鳴った。
「もうこんなに時間やん。」
   堺も時間を忘れていたようだ。ひとまず店にある適当な食材でご飯を作ることにした。

「うまいわー、お前料理出来てんな?」
   僕が作った料理に堺は満足してくれたようだ。
「父さんが商品を仕入れている時、一緒について来ていたシェフから色々教えてもらったからね。」
   昔のことを思い出しながら、懐かしそうに話してしまった。しかし、堺も興味深そうに聞いていた。
「そんなことがあったんやな……」
   そう言うと伸びをして、立ち上がり酒場の中にある少し開けたところへと向かった。
「さて、じゃあやるか……」
   彼はそう言うと何処から取り出したのか大剣を構え僕に手招きした。

   僕は仕方ないと言うふうに立ち上がり、堺の元へと向あがり、正面に立つ。使用感がない剣を取り出した。剣は思っていたよりも軽く手に馴染んだ。それと同時に向かいからビリビリと迸る闘気を感じた。
   剣を交えていなくても感じる。堺はかなりの手練れだ。今すぐにも逃げ出したい、そんな感情ばかりが浮かんだ。
   だが、それとは反対に早くやりたいという衝動にもかられていた。体は熱く、頭が沸騰する。脳がとろけそうになる程の緊張の中ひたすら耐え続けた。

「————いくで!」

   堺の声で我に帰った僕は、堺が切りかかってくるよりも早く切りかかった。鉄と鉄?が重なる音、それは僕の心をキリキリと緊張させた。この最初の一撃が僕に快楽を与えた。
 
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