30 / 109
1.3 相棒と信頼
5.最初の一撃
しおりを挟む
「それにしても暇だ……」
もう何度言ったかすら覚えていないそのセリフに堺が返す言葉ばいつも『そうやな』の一言だが、今回は違った。
「そんなに暇なんやったら、俺と試合でもするか?」
それは、確かに魅力的な提案ではあるが、流石に朝っぱらから店の中で剣を振り回すのもどうかとも思う。
「それもいいんだけど、前言っていた魔法を使うなって言うことについて詳しく聞きたい」
堺はとても嫌そうな顔をしている。
だが、一応は話してくれる気になったようだ。
「はぁ、お前にも関係あることやしな……まあここでなら話しても問題ないか……
なんとなく感づいとるとは思うけど、俺も向こうの世界から来た。訳あって正体は話せないけどな……
この世界で魔物が出現し始めたんがちょうど今から一年前って言うのは知ってるよな?」
「……確かこの前にそんな話を聞いた気がする」
記憶力には自身がないが、その話はとても印象に残っていた。僕にとって魔物とは日常そのものだから、いないこと自体ただの理想に過ぎないからだ。
魔物は忌むべき存在だが、魔物から取れる素材や肉が市民にとっては生活必需品になっており、魔物を全て駆除することなどとんでもないことだ。
————たとえその魔物が悪魔により作り出された存在だとしても、それを滅ぼすことは自らも滅びることにほかならない。
「そう、だがその魔物が何処から来たのかと言うことについて疑問には思わないか?」
堺は真剣な顔でそう尋ねた。確かに疑問に思わなかったわけではない。
「…………いや、悪魔が生み出してるんだろ?」
「そうやけど……そういう意味じゃない!」
堺の言わんとしていることが分からないわけではないが、悪魔が生み出したという以外わからないな…………
しかし、じっくり考えると彼の言わんといていることに気がつける。
「……そうか!? こっちに来てるのが人間だけじゃないってことだな?」
堺がニヤリを笑みを浮かべたことにより、僕の疑問は確信へと変わった。
「だけどそれって魔法と何か関係があるの?」
悪魔は魔力を察知できない。だから魔力をいくら使おうが関係ない。
「まあ、そう焦るなや。」
話にはまだ続きがあるようだ。
「悪魔が自分の世界にしかおらんと思ってるやろ?」
「まさか!? こっちにも?」
「そう、こっちの世界にも悪魔がおる。しかもそいつらは俺らの魔力を察知できる。まあ、今まで人間に溶け込んで暮らして来たらしいがな……」
その話はまさに驚愕の事実だった。なぜなら、魔力を察知できないからこそ、敵対する魔法士を倒すために無差別に殺して来た。つまり魔力を察知できるなら人を虐殺する必要はない。
だが、今まで人と共に暮らして来た悪魔がなぜ人に危害を加えるんだ?
「お前の考えてることはわかる。やけど、それは今の状況から説明出来る。それは人質や……
人質とは俺ら全員のことや。こっちの世界の悪魔はなぜか人を殺されたくないらしい。だから、小より大をとって、魔法士だけを殺すことにしたみたいや。だから魔法を使ったらあかんねん。」
堺の説明は長かったが、なんとか頭に詰め込んだ。つまりは、この世界の悪魔に見つからないように魔法を使ってはいけないのだ。
しかし、こっちの世界の悪魔が魔力を感じれるなら、こっちの世界とあっちの世界には繋がりがあるのかもしれない。
いつの間にか昼を回っていたようだ。僕のお腹は我慢できずグーッと鳴った。
「もうこんなに時間やん。」
堺も時間を忘れていたようだ。ひとまず店にある適当な食材でご飯を作ることにした。
「うまいわー、お前料理出来てんな?」
僕が作った料理に堺は満足してくれたようだ。
「父さんが商品を仕入れている時、一緒について来ていたシェフから色々教えてもらったからね。」
昔のことを思い出しながら、懐かしそうに話してしまった。しかし、堺も興味深そうに聞いていた。
「そんなことがあったんやな……」
そう言うと伸びをして、立ち上がり酒場の中にある少し開けたところへと向かった。
「さて、じゃあやるか……」
彼はそう言うと何処から取り出したのか大剣を構え僕に手招きした。
僕は仕方ないと言うふうに立ち上がり、堺の元へと向あがり、正面に立つ。使用感がない剣を取り出した。剣は思っていたよりも軽く手に馴染んだ。それと同時に向かいからビリビリと迸る闘気を感じた。
剣を交えていなくても感じる。堺はかなりの手練れだ。今すぐにも逃げ出したい、そんな感情ばかりが浮かんだ。
だが、それとは反対に早くやりたいという衝動にもかられていた。体は熱く、頭が沸騰する。脳がとろけそうになる程の緊張の中ひたすら耐え続けた。
「————いくで!」
堺の声で我に帰った僕は、堺が切りかかってくるよりも早く切りかかった。鉄と鉄?が重なる音、それは僕の心をキリキリと緊張させた。この最初の一撃が僕に快楽を与えた。
もう何度言ったかすら覚えていないそのセリフに堺が返す言葉ばいつも『そうやな』の一言だが、今回は違った。
「そんなに暇なんやったら、俺と試合でもするか?」
それは、確かに魅力的な提案ではあるが、流石に朝っぱらから店の中で剣を振り回すのもどうかとも思う。
「それもいいんだけど、前言っていた魔法を使うなって言うことについて詳しく聞きたい」
堺はとても嫌そうな顔をしている。
だが、一応は話してくれる気になったようだ。
「はぁ、お前にも関係あることやしな……まあここでなら話しても問題ないか……
なんとなく感づいとるとは思うけど、俺も向こうの世界から来た。訳あって正体は話せないけどな……
この世界で魔物が出現し始めたんがちょうど今から一年前って言うのは知ってるよな?」
「……確かこの前にそんな話を聞いた気がする」
記憶力には自身がないが、その話はとても印象に残っていた。僕にとって魔物とは日常そのものだから、いないこと自体ただの理想に過ぎないからだ。
魔物は忌むべき存在だが、魔物から取れる素材や肉が市民にとっては生活必需品になっており、魔物を全て駆除することなどとんでもないことだ。
————たとえその魔物が悪魔により作り出された存在だとしても、それを滅ぼすことは自らも滅びることにほかならない。
「そう、だがその魔物が何処から来たのかと言うことについて疑問には思わないか?」
堺は真剣な顔でそう尋ねた。確かに疑問に思わなかったわけではない。
「…………いや、悪魔が生み出してるんだろ?」
「そうやけど……そういう意味じゃない!」
堺の言わんとしていることが分からないわけではないが、悪魔が生み出したという以外わからないな…………
しかし、じっくり考えると彼の言わんといていることに気がつける。
「……そうか!? こっちに来てるのが人間だけじゃないってことだな?」
堺がニヤリを笑みを浮かべたことにより、僕の疑問は確信へと変わった。
「だけどそれって魔法と何か関係があるの?」
悪魔は魔力を察知できない。だから魔力をいくら使おうが関係ない。
「まあ、そう焦るなや。」
話にはまだ続きがあるようだ。
「悪魔が自分の世界にしかおらんと思ってるやろ?」
「まさか!? こっちにも?」
「そう、こっちの世界にも悪魔がおる。しかもそいつらは俺らの魔力を察知できる。まあ、今まで人間に溶け込んで暮らして来たらしいがな……」
その話はまさに驚愕の事実だった。なぜなら、魔力を察知できないからこそ、敵対する魔法士を倒すために無差別に殺して来た。つまり魔力を察知できるなら人を虐殺する必要はない。
だが、今まで人と共に暮らして来た悪魔がなぜ人に危害を加えるんだ?
「お前の考えてることはわかる。やけど、それは今の状況から説明出来る。それは人質や……
人質とは俺ら全員のことや。こっちの世界の悪魔はなぜか人を殺されたくないらしい。だから、小より大をとって、魔法士だけを殺すことにしたみたいや。だから魔法を使ったらあかんねん。」
堺の説明は長かったが、なんとか頭に詰め込んだ。つまりは、この世界の悪魔に見つからないように魔法を使ってはいけないのだ。
しかし、こっちの世界の悪魔が魔力を感じれるなら、こっちの世界とあっちの世界には繋がりがあるのかもしれない。
いつの間にか昼を回っていたようだ。僕のお腹は我慢できずグーッと鳴った。
「もうこんなに時間やん。」
堺も時間を忘れていたようだ。ひとまず店にある適当な食材でご飯を作ることにした。
「うまいわー、お前料理出来てんな?」
僕が作った料理に堺は満足してくれたようだ。
「父さんが商品を仕入れている時、一緒について来ていたシェフから色々教えてもらったからね。」
昔のことを思い出しながら、懐かしそうに話してしまった。しかし、堺も興味深そうに聞いていた。
「そんなことがあったんやな……」
そう言うと伸びをして、立ち上がり酒場の中にある少し開けたところへと向かった。
「さて、じゃあやるか……」
彼はそう言うと何処から取り出したのか大剣を構え僕に手招きした。
僕は仕方ないと言うふうに立ち上がり、堺の元へと向あがり、正面に立つ。使用感がない剣を取り出した。剣は思っていたよりも軽く手に馴染んだ。それと同時に向かいからビリビリと迸る闘気を感じた。
剣を交えていなくても感じる。堺はかなりの手練れだ。今すぐにも逃げ出したい、そんな感情ばかりが浮かんだ。
だが、それとは反対に早くやりたいという衝動にもかられていた。体は熱く、頭が沸騰する。脳がとろけそうになる程の緊張の中ひたすら耐え続けた。
「————いくで!」
堺の声で我に帰った僕は、堺が切りかかってくるよりも早く切りかかった。鉄と鉄?が重なる音、それは僕の心をキリキリと緊張させた。この最初の一撃が僕に快楽を与えた。
0
お気に入りに追加
33
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる