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第二章 魔界の料理は命懸け!?
魔王とタピオカ、そしてからあげ※
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「なんだ、これは。こんなものを我に飲めと?」
「ええ。自信作です」
魔王の問いに、私は大きく頷く。途端にメイド用の白いキャップに包まれた青い髪が、はらりと額にかかった。
圧倒的な美貌の魔王は立派な二本の角を持っていて、黒髪は襟足が肩につく程度の長さ、切れ長の目には金の瞳が煌めいている。すっと通った鼻筋と高い頬骨、すっきりした顎のラインや形の良い唇は芸術品のように美しく、どれだけ見ても飽きることがない。
ここは魔王の私室で、彼は数刻前、城に戻ったばかりだ。
むき出しの石の壁には複雑な装飾が施され、床は磨かれた大理石、テーブルは魔法で強化されたという黒曜石。椅子はゴシック調の凝った作りで、背もたれと座面が赤くて柔らかそう。
けれどそこに座る魔王は、嫌そうに眉根を寄せていた。
テーブルの上の『タピオカドリンク』が、よっぽど気に入らないのだろう。
グラスの底にある黒い球状のタピオカは、前世では馴染み深いものだが、この世界では初めてだ。何かの卵のようにも見えるので、警戒しているのかな?
この地で取れる黒芋と米粉を混ぜたタピオカに、グァバに似た果物の果汁を使い、ストローは吸血樹の枝を利用した。全て一から作っているため、見た目よりも相当手間がかかっている。
「美味しいですし、甘いものは疲れた身体によく効きます。毒味も済ませておりますし、料理長も太鼓判を押してくれました。さあ、どうぞ」
期待を込めた目で見つめると、魔王は大きく息を吐く。
「毒など我には効果がないが……。まあ、よい。騙されたと思って飲んでみよう」
魔王の感想は、初めて飲む前の私と一緒だ。
諦めたような表情が、なんだか可愛い。
「そなただから信用するのだぞ。他の者の勧めであれば……」
「魔王様。前置きは結構ですので、さあ、早く」
にこにこしながら急かしたところ、魔王は黒く長い爪の生えた手で、タピオカ入りのグラスを掴む。
伏し目がちでストローに口を付ける姿は、コマーシャルかと見紛うほどに麗しい。
「ゴホッ、ゴホッ」
見惚れていたら、魔王が思いっきりむせている。
「……あ。言い忘れましたが、ゆっくり飲んでくださいね。丸いのは、よく噛んで」
「遅いぞ! 飲めと言うから、飲んでしまったではないか。…………ふむ」
真面目な顔でタピオカを噛む魔王。
改良を重ねたもちもちした食感と果汁の爽やかな酸味が、口いっぱいに広がっているはずだ。
――あ。今、もしかして笑った?
口角を上げただけだけど、続けて飲んでいるところを見ると、気に入ってくれたみたい。
「まあ、悪くない。これ一つで栄養が取れるなら、わずかな時間で魔力が回復できるだろう」
魔王の「悪くない」は「良くできました」のことなので、私は満面の笑みを浮かべる。
「底の黒い塊は、よくある黒芋を粉にしたものに、新種の米の粉を合わせたものです。お米作りが広まれば、魔界のどこでも口にできるかと」
「こめ? それがあれば、食事がまともになるのか?」
「まともどころか、大改革です! すぐには無理ですので、徐々に増やしていきましょう。それから、新作は他にもあります。魔王様が頭を悩ませていた問題を、解決するに至るかと……」
言い終える間もなく、扉が開く。
次いで、黒くてまん丸なもふもふ悪魔――『もふ魔』が飛び込む。
「きゅいーーー!」
「ぎゅいーーー!」
二匹はゴムまりのように弾み、突進してくる。私は思わず腕を伸ばして、一匹を抱き留めた。
「ぎぃーきゅきゅ?」
「ヴィーまだ……ってあなた達! 今はお仕事中だって言ったでしょう?」
小悪魔達のつぶらな瞳を見ると心が揺れるが、あえて厳しく窘めた。
「きゅーー」
「悲しそうな顔をしたって、ダメだから」
「……くっ」
――え? 今のって、まさか魔王?
魔王は握った手を口に当て、堪えているようだ。
目が細められているから、これって絶対笑っているよね?
この調子なら、死なずに済むかしら。
死亡フラグを回避して、自分の居場所を確立できる?
そもそも魔王に、私を処刑する気はあるのだろうか?
私はもふ魔を床に下ろして、真剣な口調で告げる。
「新作とは、コカトリスです。処分に頭を悩ませていらしたご様子なので、調理してみました。お持ちしてもよろしいですか?」
「ああ、構わぬ」
すぐに揚げたてのからあげが入ったお皿を運び、テーブルの上に置く。
調理場で摘まみ食いでもされたのか、数が結構減っていた。
「これが、そうか?」
「ええ。『からあげ』というものです。今はまだ米粉が足りませんが、多く栽培すればたくさんできます」
「こめこ? ……ふむ。まあ、食してみるか」
魔王が黒く長い爪で、からあげを摘まむ。
そんな姿も絵になって、からあげがエリクサー(万能薬)のようにも見える。
「なるほど、悪くない。だが、甘いものの前に食べたかった」
「……あ」
タピオカドリンクを勧めたい一心で、ついあっちに力が入ってしまった。
だってタピオカの方が、作るのに苦労したのだ。
「も、申し訳ありません」
「いや、我が不在の間によくやった。インプともども褒めてつかわす」
ようやく認められた気がして、嬉しくなった。「つかわす」って、どこかで聞いた気が――?
ちなみにからあげの材料は、こんな感じだ。
◇◆◇ヴィーのもみもみからあげ◇◆◇
鶏肉 400~500グラム
(モモまたはムネ)
塩 小さじ1
粗挽き黒こしょう(なければ普通のこしょう) 小さじ2分の1程度
粒マスタード 大さじ2
(粒のないマスタードの場合は少なめ)
小麦粉または片栗粉、もしくはタピオカ粉&米粉 大さじ3~
1.鶏肉を一口大に切り、ビニール袋へ
2.分量の塩を入れてもみもみ
3.分量のこしょうを入れてもみもみ
4.分量の粒マスタードを入れてもみもみ
5.30分~ねかせる(室温が高い場合は冷蔵庫へ)
6.粉を入れて袋の口を手で握り、振って粉をまぶす
7.180℃の油で揚げる
ヴィーのひとこと
「現代風にアレンジしてみたわ。もふ魔がいない場合はご自分、またはお子さんにもみもみしてもらえば良くってよ」
「ええ。自信作です」
魔王の問いに、私は大きく頷く。途端にメイド用の白いキャップに包まれた青い髪が、はらりと額にかかった。
圧倒的な美貌の魔王は立派な二本の角を持っていて、黒髪は襟足が肩につく程度の長さ、切れ長の目には金の瞳が煌めいている。すっと通った鼻筋と高い頬骨、すっきりした顎のラインや形の良い唇は芸術品のように美しく、どれだけ見ても飽きることがない。
ここは魔王の私室で、彼は数刻前、城に戻ったばかりだ。
むき出しの石の壁には複雑な装飾が施され、床は磨かれた大理石、テーブルは魔法で強化されたという黒曜石。椅子はゴシック調の凝った作りで、背もたれと座面が赤くて柔らかそう。
けれどそこに座る魔王は、嫌そうに眉根を寄せていた。
テーブルの上の『タピオカドリンク』が、よっぽど気に入らないのだろう。
グラスの底にある黒い球状のタピオカは、前世では馴染み深いものだが、この世界では初めてだ。何かの卵のようにも見えるので、警戒しているのかな?
この地で取れる黒芋と米粉を混ぜたタピオカに、グァバに似た果物の果汁を使い、ストローは吸血樹の枝を利用した。全て一から作っているため、見た目よりも相当手間がかかっている。
「美味しいですし、甘いものは疲れた身体によく効きます。毒味も済ませておりますし、料理長も太鼓判を押してくれました。さあ、どうぞ」
期待を込めた目で見つめると、魔王は大きく息を吐く。
「毒など我には効果がないが……。まあ、よい。騙されたと思って飲んでみよう」
魔王の感想は、初めて飲む前の私と一緒だ。
諦めたような表情が、なんだか可愛い。
「そなただから信用するのだぞ。他の者の勧めであれば……」
「魔王様。前置きは結構ですので、さあ、早く」
にこにこしながら急かしたところ、魔王は黒く長い爪の生えた手で、タピオカ入りのグラスを掴む。
伏し目がちでストローに口を付ける姿は、コマーシャルかと見紛うほどに麗しい。
「ゴホッ、ゴホッ」
見惚れていたら、魔王が思いっきりむせている。
「……あ。言い忘れましたが、ゆっくり飲んでくださいね。丸いのは、よく噛んで」
「遅いぞ! 飲めと言うから、飲んでしまったではないか。…………ふむ」
真面目な顔でタピオカを噛む魔王。
改良を重ねたもちもちした食感と果汁の爽やかな酸味が、口いっぱいに広がっているはずだ。
――あ。今、もしかして笑った?
口角を上げただけだけど、続けて飲んでいるところを見ると、気に入ってくれたみたい。
「まあ、悪くない。これ一つで栄養が取れるなら、わずかな時間で魔力が回復できるだろう」
魔王の「悪くない」は「良くできました」のことなので、私は満面の笑みを浮かべる。
「底の黒い塊は、よくある黒芋を粉にしたものに、新種の米の粉を合わせたものです。お米作りが広まれば、魔界のどこでも口にできるかと」
「こめ? それがあれば、食事がまともになるのか?」
「まともどころか、大改革です! すぐには無理ですので、徐々に増やしていきましょう。それから、新作は他にもあります。魔王様が頭を悩ませていた問題を、解決するに至るかと……」
言い終える間もなく、扉が開く。
次いで、黒くてまん丸なもふもふ悪魔――『もふ魔』が飛び込む。
「きゅいーーー!」
「ぎゅいーーー!」
二匹はゴムまりのように弾み、突進してくる。私は思わず腕を伸ばして、一匹を抱き留めた。
「ぎぃーきゅきゅ?」
「ヴィーまだ……ってあなた達! 今はお仕事中だって言ったでしょう?」
小悪魔達のつぶらな瞳を見ると心が揺れるが、あえて厳しく窘めた。
「きゅーー」
「悲しそうな顔をしたって、ダメだから」
「……くっ」
――え? 今のって、まさか魔王?
魔王は握った手を口に当て、堪えているようだ。
目が細められているから、これって絶対笑っているよね?
この調子なら、死なずに済むかしら。
死亡フラグを回避して、自分の居場所を確立できる?
そもそも魔王に、私を処刑する気はあるのだろうか?
私はもふ魔を床に下ろして、真剣な口調で告げる。
「新作とは、コカトリスです。処分に頭を悩ませていらしたご様子なので、調理してみました。お持ちしてもよろしいですか?」
「ああ、構わぬ」
すぐに揚げたてのからあげが入ったお皿を運び、テーブルの上に置く。
調理場で摘まみ食いでもされたのか、数が結構減っていた。
「これが、そうか?」
「ええ。『からあげ』というものです。今はまだ米粉が足りませんが、多く栽培すればたくさんできます」
「こめこ? ……ふむ。まあ、食してみるか」
魔王が黒く長い爪で、からあげを摘まむ。
そんな姿も絵になって、からあげがエリクサー(万能薬)のようにも見える。
「なるほど、悪くない。だが、甘いものの前に食べたかった」
「……あ」
タピオカドリンクを勧めたい一心で、ついあっちに力が入ってしまった。
だってタピオカの方が、作るのに苦労したのだ。
「も、申し訳ありません」
「いや、我が不在の間によくやった。インプともども褒めてつかわす」
ようやく認められた気がして、嬉しくなった。「つかわす」って、どこかで聞いた気が――?
ちなみにからあげの材料は、こんな感じだ。
◇◆◇ヴィーのもみもみからあげ◇◆◇
鶏肉 400~500グラム
(モモまたはムネ)
塩 小さじ1
粗挽き黒こしょう(なければ普通のこしょう) 小さじ2分の1程度
粒マスタード 大さじ2
(粒のないマスタードの場合は少なめ)
小麦粉または片栗粉、もしくはタピオカ粉&米粉 大さじ3~
1.鶏肉を一口大に切り、ビニール袋へ
2.分量の塩を入れてもみもみ
3.分量のこしょうを入れてもみもみ
4.分量の粒マスタードを入れてもみもみ
5.30分~ねかせる(室温が高い場合は冷蔵庫へ)
6.粉を入れて袋の口を手で握り、振って粉をまぶす
7.180℃の油で揚げる
ヴィーのひとこと
「現代風にアレンジしてみたわ。もふ魔がいない場合はご自分、またはお子さんにもみもみしてもらえば良くってよ」
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