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思い通りにならない男(ローラ視点)

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(※ローラ視点のお話です)

城に帰る馬車の中で、私は複雑な表情をしていた。

苛立ちと動揺。

そして違和感。


こんなに苛まれるのなら、身分の高い貴族だろうと、使用人に招待状を持って行かせればよかった。

この私がわざわざ愛想を振りまきに行った公爵家で、あんな扱いを受けるとは。


この国で皇家の次に権力を持つ、フォールスト公爵家。

そこでは予想外のことが二つ起きた。

1つは姉の存在。

どうしてそうなったか分からないが、公爵家には姉がいた。

全く、前世のように男に取り入るのが上手なこと。


もう一つは、フォールスト公爵そのもの。

ユリアを孤立させるためには、公爵の後ろ盾があるのなら取り除きたい。


そう思って、せっかく歌を歌ったのに、公爵は何一つ私に興味が無いようだ。


焦ったあまり、つい姉に対して口を滑らせてしまった私に、公爵が耳元で囁いた。


「僕はね、ヒロインだとか、聖女だとか、王子様だとか。

そんなのは、まるでどうだっていいんだ。
その辺で野垂れ死んでいたって構わないほどにね。」


公爵の言葉に、目を見開いてしまう。

聖女?王子様?

なんだか、久しぶりにその単語を聞いた気がする。

まさかそれって、私の事を指しているわけではないわよね?

公爵を見上げる。

公爵は、感情の無い私よりも冷たい表情をしていた。



「ただ、ユリアを傷つけるつもりなら、僕はお前を許さない。

僕はもう、使からね。」


最後の公爵の言葉は、理解不能だった。

ただ、自分は今脅されているのだという事だけは理解した。

ユリアに何かしたら、公爵家が黙っていないということ。


得体の知れない相手だと分かり、私はその後早々に退散した。

そして、馬車の中で考えていた。



なぜ姉は、公爵家の協力を得られたのか。

なぜ公爵には、私の歌声が効かないのか。


いいや。

そもそも、フォールスト公爵とは、こんなに若い青年だっただろうか?

あまり顔を合わせたことは無いが、昔、遠巻きになら見たことはある。

良く見えなかったが、それでも、こんな人では無かったような・・・。


動揺や苛立ちがいつしか疑問へ変わり、城に着くまでの間、馬車の中で悶々と考えた。

しかし、答えが出そうもないので城に着くころには匙を投げた。



もういいや。分からない事を考えても仕方がない。

それに、もうすぐそんなことなんかどうでも良くなるわ。

城を見てほほ笑んだ。


もうすぐ、この国で行われる最後のパーティーが始まる。

それなのに、こんなくだらない事に囚われていては勿体ない。


ねえ、お姉様。

悪役令嬢というのはね、最後には必ず断罪されて終わりなのよ。


城へ戻ってきた私は、機嫌もすっかり上機嫌に戻っていた。



(※ローラ視点 終わり)

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