27 / 62
妖精たちと一緒に暮らし始めました3
しおりを挟む
「私、答えが出たよ。エリザ、聞いてくれる?」
静かな森の中で、私の声が響いた。
「うん、ユリア。話してみて。」
エリザが私に寄り添うように近づいてくる。
「私ね、もう一度ローラに会おうと思うの。ローラに会って、なぜそんなことをするのかきちんと話してみたい。」
いつもの私だったら、このまま何も気にせず生きていけばいいと思うだろう。
だけど、さっきのエリザの話を聞いて、純粋にローラに興味がわいた。
それにいくら本当は他人とはいえ、知ってしまったからにはユリアの家族関係をこのまま放置と言うのもなんだか後味が悪い。
エリザは私の話を真剣に聞いてくれた。
そして、私の方を見つめた。
「分かったわ。ローラに会うにはお城に行くしかないわね。
皇太子殿下と婚約したのだし、近々婚約パーティーでも開くはずだわ。
会いに行くなら、その時ね。」
そこでならローラに会えるかもしれないけど、でも・・・恐らく正式に招待されない限り城には入れないはずだ。
「その婚約パーティーでなら確かにローラに会えるかもしれないけど、お城に入れないんじゃ意味ないよ?」
「大丈夫。私たちの方で招待状を何とか手に入れてみるわ。」
エリザは自信満々にそう言ってのけた。
「でも妖精なのにどうやって・・・。」
私が思わずそう零すと、エリザが後ろにいたルクスとイグニスに目配せした。
ルクスとイグニスはお互いにうなずき、すっと目を閉じた。
そして二人の体が光に包まれ、気がつけばあっという間に小さな身体が成人男性の身体へと変わった。
「ふ、ふたりとも、その姿・・・!」
突然変わった二人に驚きが隠せない私を見て、エリザは得意げに笑った。
「さっき言ったでしょう?ローレライほどじゃないけど、私たちも人に変身できるのよ。」
エリザの言葉通り、どこからどう見ても人間の男にしか見えないルクスとイグニスが私の前に立っている。
それも、ただ人間になっただけじゃない。
二人とも、かなり整った顔をしている。
妖精の時はただ可愛い顔、としか思っていなかったが、こうして人間サイズになってみるととても美形だ。
ルクスは甘い王子様系の顔立ちで、イグニスは勇ましく騎士といったところか。
二人に見惚れていると、二人が私に近寄ってきた。
ルクスが私の肩にそっと手を置き、顔を覗き込んできこんでくる。
「ユリア、安心して。僕が招待状を手に入れる方法を探してみるから。」
それに続いてイグニスもポンっと自分の胸を叩いて言った。
「俺も一緒に探すよ。あと、ついでにユリアの食料も調達してくる。」
「みんな・・・ありがとう。」
妖精の優しさに、じんわりと胸が暖かくなった。
この世界に来てから腹の立つこともたくさんあったけど、唯一妖精たちだけがどんな時でも私を癒してくれている。
「わ、わたしも!!私も手伝う!」
妖精たちに奮い立たせられた私は、勢い良く立ち上がる。
しかしエリザはそんな私に向かって首を横に振った。
「ううん、ユリアが街に行くのは危険だと思う。」
「どうして?」
「ユリアは今、ローラのせいで良くない噂も出回っているでしょう?だから貴女が街に出ると面倒なことになるかもしれないわ。」
そう言われて返す言葉がなくなる。
自分の事なのに、何もすることが無いなんて。
「ユリアは今まで通り絵を描いていて?絵だって売ればお金になるしね。
それに、パーティーに出るならユリアにもドレスが必要でしょう?」
エリザにそう言われてから気付く。
家を一文無しで出てしまったが、ドレスや食料を調達するにはお金がいる。
「だから、とびっきりの絵を描いて??」
エリザにそう諭されて、大人しくうなずいた。
そうだ、今は自分にできることをしないと。
数少ない荷物の中からペンを取り出しぎゅっと握りしめた。
静かな森の中で、私の声が響いた。
「うん、ユリア。話してみて。」
エリザが私に寄り添うように近づいてくる。
「私ね、もう一度ローラに会おうと思うの。ローラに会って、なぜそんなことをするのかきちんと話してみたい。」
いつもの私だったら、このまま何も気にせず生きていけばいいと思うだろう。
だけど、さっきのエリザの話を聞いて、純粋にローラに興味がわいた。
それにいくら本当は他人とはいえ、知ってしまったからにはユリアの家族関係をこのまま放置と言うのもなんだか後味が悪い。
エリザは私の話を真剣に聞いてくれた。
そして、私の方を見つめた。
「分かったわ。ローラに会うにはお城に行くしかないわね。
皇太子殿下と婚約したのだし、近々婚約パーティーでも開くはずだわ。
会いに行くなら、その時ね。」
そこでならローラに会えるかもしれないけど、でも・・・恐らく正式に招待されない限り城には入れないはずだ。
「その婚約パーティーでなら確かにローラに会えるかもしれないけど、お城に入れないんじゃ意味ないよ?」
「大丈夫。私たちの方で招待状を何とか手に入れてみるわ。」
エリザは自信満々にそう言ってのけた。
「でも妖精なのにどうやって・・・。」
私が思わずそう零すと、エリザが後ろにいたルクスとイグニスに目配せした。
ルクスとイグニスはお互いにうなずき、すっと目を閉じた。
そして二人の体が光に包まれ、気がつけばあっという間に小さな身体が成人男性の身体へと変わった。
「ふ、ふたりとも、その姿・・・!」
突然変わった二人に驚きが隠せない私を見て、エリザは得意げに笑った。
「さっき言ったでしょう?ローレライほどじゃないけど、私たちも人に変身できるのよ。」
エリザの言葉通り、どこからどう見ても人間の男にしか見えないルクスとイグニスが私の前に立っている。
それも、ただ人間になっただけじゃない。
二人とも、かなり整った顔をしている。
妖精の時はただ可愛い顔、としか思っていなかったが、こうして人間サイズになってみるととても美形だ。
ルクスは甘い王子様系の顔立ちで、イグニスは勇ましく騎士といったところか。
二人に見惚れていると、二人が私に近寄ってきた。
ルクスが私の肩にそっと手を置き、顔を覗き込んできこんでくる。
「ユリア、安心して。僕が招待状を手に入れる方法を探してみるから。」
それに続いてイグニスもポンっと自分の胸を叩いて言った。
「俺も一緒に探すよ。あと、ついでにユリアの食料も調達してくる。」
「みんな・・・ありがとう。」
妖精の優しさに、じんわりと胸が暖かくなった。
この世界に来てから腹の立つこともたくさんあったけど、唯一妖精たちだけがどんな時でも私を癒してくれている。
「わ、わたしも!!私も手伝う!」
妖精たちに奮い立たせられた私は、勢い良く立ち上がる。
しかしエリザはそんな私に向かって首を横に振った。
「ううん、ユリアが街に行くのは危険だと思う。」
「どうして?」
「ユリアは今、ローラのせいで良くない噂も出回っているでしょう?だから貴女が街に出ると面倒なことになるかもしれないわ。」
そう言われて返す言葉がなくなる。
自分の事なのに、何もすることが無いなんて。
「ユリアは今まで通り絵を描いていて?絵だって売ればお金になるしね。
それに、パーティーに出るならユリアにもドレスが必要でしょう?」
エリザにそう言われてから気付く。
家を一文無しで出てしまったが、ドレスや食料を調達するにはお金がいる。
「だから、とびっきりの絵を描いて??」
エリザにそう諭されて、大人しくうなずいた。
そうだ、今は自分にできることをしないと。
数少ない荷物の中からペンを取り出しぎゅっと握りしめた。
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜
晴行
恋愛
乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。
見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。
これは主人公であるアリシアの物語。
わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。
窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。
「つまらないわ」
わたしはいつも不機嫌。
どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。
あーあ、もうやめた。
なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。
このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。
仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。
__それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。
頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。
の、はずだったのだけれど。
アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。
ストーリーがなかなか始まらない。
これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。
カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?
それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?
わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?
毎日つくれ? ふざけるな。
……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
【完結】色素も影も薄い私を美の女神と誤解する彼は、私を溺愛しすぎて困らせる。
すだもみぢ
恋愛
レティエは裕福な男爵家の娘であるが『とある目的のため』に平民の娘のふりをしてモナード伯爵家のメイド募集に応募することになった。
しかしそこでセユンと名のるブティックに勤める男に、無理やり他の仕事に就くよう頼み込まれる。それはモデル。
一緒に育っている美しい従妹と比べてしまい、自分の容姿に自信が持てず、お洒落をすることにもどこか引け目に感じていたレティエだったが、セユンの熱意に負けてその申し出を受けることになった。
セユンは品があるのに行儀が悪いようなつかみどころがない青年だが、レティエの全てを褒めたたえ、美しく装わせることに夢中になる。対照的に彼のビジネスパートナーであり過去に彼の恋人であったと噂のあるクロエは、レティエを冷ややかに扱う。
自分を全面的に認めるセユンの態度に戸惑いながらもレティエは徐々にセユンが気になる存在になっていくが、彼は自分を単なる美の対象と見ていて女性と見ていないことにも気づいていて――。
5/5 ホットランキング入りありがとうございました<(_ _)>
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。
モブ系悪役令嬢は人助けに忙しい(完結)
優摘
ファンタジー
※プロローグ以降の各話に題名をつけて、加筆、減筆、修正をしています。(’23.9.11)
<内容紹介>
ある日目覚めた「私」は、自分が乙女ゲームの意地悪で傲慢な悪役令嬢アリアナになっている事に気付いて愕然とする。
しかもアリアナは第一部のモブ系悪役令嬢!。悪役なのに魔力がゼロの最弱キャラだ。
このままではゲームの第一部で婚約者のディーンに断罪され、学園卒業後にロリコン親父と結婚させられてしまう!
「私」はロリコン回避の為にヒロインや婚約者、乙女ゲームの他の攻略対象と関わらないようにするが、なぜかうまく行かない。
しかもこの乙女ゲームは、未知の第3部まであり、先が読めない事ばかり。
意地悪で傲慢な悪役令嬢から、お人よしで要領の悪い公爵令嬢になったアリアナは、頭脳だけを武器にロリコンから逃げる為に奮闘する。
だけど、アリアナの身体の中にはゲームの知識を持つ「私」以外に本物の「アリアナ」が存在するみたい。
さらに自分と同じ世界の前世を持つ、登場人物も現れる。
しかも超がつく鈍感な「私」は周りからのラブに全く気付かない。
そして「私」とその登場人物がゲーム通りの動きをしないせいか、どんどんストーリーが変化していって・・・。
一年以上かかりましたがようやく完結しました。
また番外編を書きたいと思ってます。
カクヨムさんで加筆修正したものを、少しずつアップしています。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
そして乙女ゲームは始まらなかった
お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。
一体私は何をしたらいいのでしょうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる