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悪女に馬車までエスコートしてくれと頼まれました(ウィル視点)
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(※ウィル視点の話です)
それは、ちょっとした出来心だった。
あの女が。
いつも偉そうに家紋を振りかざして、人を見下すような女が。
突然、心を入れ替えたなんて言ったから、試してやろうと思ったのだ。
目の前で泣いている彼女を見て、俺は昨日の出来事を思い出していた。
長かった遠征が終わり、ようやくこの国へ戻ってきた時、俺は家ではなく城の庭園へ真っ先に向かった。
陛下に遠征から無事戻ってきた報告と挨拶するために城へ来た際、
使用人が、庭園で王子とアリスがまたお茶会をやっていると話しているのを耳にしたからだ。
王子はメイのことが好きだから、絶対にそのお茶会にはメイもいる。
そして、その事を良く思っていないアリスがいつも通り意地悪するに違いない。
だから庭園へ向かったのは、メイに会うためと、メイをアリスから守るためだった。
いざ、庭園に着いた時、何かは分からないが違和感を覚えた。
庭園には想像していた通りメイとレオンとアリスがいて、それはいつも通りの光景のはずなのになぜ違和感を感じたのか自分でも不思議だった。
だがその違和感はすぐに吹っ飛んでいった。
久しぶりにメイを見て気分が高揚してきたからだ。
我慢ができず後ろから抱き着いた。
ついでに、レオンにも。
二人との再会を喜んでいて、すっかりアリスへの挨拶を忘れてしまっていた俺は、話が一区切りついたところでアリスに声を掛けた。
「これは失礼いたしました。レディ・トゥリアヌス。
本日も輝くようなお美しさですね。」
アリスもそれに応じて言葉を返してくる。
「ブレイク卿。無事お戻りになられて良かったです。」
やっぱりいつも通りだ。
さっきの違和感は気のせいだ。疲れているんだ。
「相変わらず堅苦しいなあ!
私のことは、ウィルでいいって昔から言ってるのに。」
ついいつもの癖でそう言った。
彼女はレオンの婚約者になってから、一度も幼なじみの俺を「ウィル」と呼んだことは無い。
いずれ王妃になる者として、周りに一線を引いてそれを徹底していたからだ。
アリスは常に完璧を求める女。
だから、こんな事言ったって彼女が俺をそう呼ぶことは無い。
そのはずなのに。
「じゃあ、遠慮なくウィルと呼ばせていただきますね。」
「「「えっ」」」
アリスの言葉に、俺を含めその場にいた全員が驚きの声を上げた。
なぜ、どうして。
そう思っていたら、同じ事を思っていたのか、俺より先にレオンがアリスに問い詰めた。
「やはり今日のお前は何か変だぞ。一体何なのだ。」
「そんな、どこも変ではありませんわ。
ただ…………今日から心を入れ替えましたの。」
アリスがそう言った時、俺はその日初めて彼女の顔をまじまじと見た。
そしてようやく違和感の正体に気付いた。
顔つきが違う。
美人なことには変わりないが、いつものような冷たい表情じゃない。
人を寄せつけないような雰囲気じゃない。
氷のような印象じゃない、今の彼女は何というか・・・・
『平凡』。
その二文字が良く似合いそうな、そんな雰囲気だった。
それは、ちょっとした出来心だった。
あの女が。
いつも偉そうに家紋を振りかざして、人を見下すような女が。
突然、心を入れ替えたなんて言ったから、試してやろうと思ったのだ。
目の前で泣いている彼女を見て、俺は昨日の出来事を思い出していた。
長かった遠征が終わり、ようやくこの国へ戻ってきた時、俺は家ではなく城の庭園へ真っ先に向かった。
陛下に遠征から無事戻ってきた報告と挨拶するために城へ来た際、
使用人が、庭園で王子とアリスがまたお茶会をやっていると話しているのを耳にしたからだ。
王子はメイのことが好きだから、絶対にそのお茶会にはメイもいる。
そして、その事を良く思っていないアリスがいつも通り意地悪するに違いない。
だから庭園へ向かったのは、メイに会うためと、メイをアリスから守るためだった。
いざ、庭園に着いた時、何かは分からないが違和感を覚えた。
庭園には想像していた通りメイとレオンとアリスがいて、それはいつも通りの光景のはずなのになぜ違和感を感じたのか自分でも不思議だった。
だがその違和感はすぐに吹っ飛んでいった。
久しぶりにメイを見て気分が高揚してきたからだ。
我慢ができず後ろから抱き着いた。
ついでに、レオンにも。
二人との再会を喜んでいて、すっかりアリスへの挨拶を忘れてしまっていた俺は、話が一区切りついたところでアリスに声を掛けた。
「これは失礼いたしました。レディ・トゥリアヌス。
本日も輝くようなお美しさですね。」
アリスもそれに応じて言葉を返してくる。
「ブレイク卿。無事お戻りになられて良かったです。」
やっぱりいつも通りだ。
さっきの違和感は気のせいだ。疲れているんだ。
「相変わらず堅苦しいなあ!
私のことは、ウィルでいいって昔から言ってるのに。」
ついいつもの癖でそう言った。
彼女はレオンの婚約者になってから、一度も幼なじみの俺を「ウィル」と呼んだことは無い。
いずれ王妃になる者として、周りに一線を引いてそれを徹底していたからだ。
アリスは常に完璧を求める女。
だから、こんな事言ったって彼女が俺をそう呼ぶことは無い。
そのはずなのに。
「じゃあ、遠慮なくウィルと呼ばせていただきますね。」
「「「えっ」」」
アリスの言葉に、俺を含めその場にいた全員が驚きの声を上げた。
なぜ、どうして。
そう思っていたら、同じ事を思っていたのか、俺より先にレオンがアリスに問い詰めた。
「やはり今日のお前は何か変だぞ。一体何なのだ。」
「そんな、どこも変ではありませんわ。
ただ…………今日から心を入れ替えましたの。」
アリスがそう言った時、俺はその日初めて彼女の顔をまじまじと見た。
そしてようやく違和感の正体に気付いた。
顔つきが違う。
美人なことには変わりないが、いつものような冷たい表情じゃない。
人を寄せつけないような雰囲気じゃない。
氷のような印象じゃない、今の彼女は何というか・・・・
『平凡』。
その二文字が良く似合いそうな、そんな雰囲気だった。
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