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ウィルに帰りの馬車まで案内してもらいました2
しおりを挟むそう思ったら、何だか痛いほどアリスの心が伝わってきた気がして。
そんなつもりはなかったのに気付けば頬に涙が流れてしまった。
そしてそれは、1つ流したら終わるようなものではなくて、次々と目から新しい雫が落ちては零れていった。
それを見たのか、ウィルの口からため息が吐かれる音が聞こえた。
当然だ。嫌いな女に泣かれる事ほど面倒なことはない。
アリスは17歳でも私自身は26歳のいい年した大人だ。
私だって、年下に慰めてもらおうなんて思いはない。
むしろ・・・・お願い、見ないで。
急に恥ずかしくなった私は、ウィルに背を向け走り出した。
それはもう、この国の貴族の女性が走る格好では無かったが、なりふり構わず走った。
もうどうでも良かった。
どんな私であったとしても、この世界に味方はいないのだから。
このまま走り去ってしまいたかったのだが、急に腕を強い力で引っ張られ、後ろにのけぞりながら止まる形になってしまった。
何なんだと思い振り返ると、息を切らしたウィルがいた。
「どこ行くんだよ!そんな顔で!」
すっかり敬語がどこかにいってしまったウィルは私の両腕を掴んで怒鳴った。
でも怒っているというよりは、心配しているような表情だった。
「だって・・・ウィルが意地悪するから・・・。」
もっと他に言いたい事はあるのにそれしか出てこなかった。
泣くなんて久しぶりだったので、うまく頭が回らなかったのかもしれない。
「ごめん。俺が悪かった。ごめん。」
ウィルは伏目がちにしながら何度も謝った。
「もう、大丈夫です。普段そんな発言をしている私も悪いのですから。」
謝るウィルを見て、わたしも幾分か平静を取り戻すことが出来た。
涙が止まった私をみたウィルも、ホッとしたような顔をしていた。
「今度こそ本当にあなたの馬車に案内するので、もう一度機会をくれませんか?」
私の許しを乞うかのうように上目遣いをするウィルを見て、ただ許すのではつまらないなと思った。
だから、ここで一つ提案してみることにした。
「条件を飲んでくれたら、機会をあげましょう。」
「条件??」
「私を・・・レディ・トゥリアヌスではなく、アリスと呼んでください。」
私はウィルに向かって優しくほほえんでみせた。
「・・・わかりました、アリス。
それでは、行きましょう。」
また驚くかなと思っていたが、予想に反してウィルはそこまで驚かずあっさり受け入れた。
私の前に差し出されたウィルの手。
「はい。お願いしますね、今度こそ。」
念を押しつつ差し出された手に自分の手をのせる。
少しだけ、やっぱりウィルなら私の味方になってくれるかも、なんて淡い期待をしそうになるのを抑えつつ歩き出した。
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