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王妃に呼び出されましたが早くも挫折しそうです3
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自分に対する否定的な意見に肯定した私の返事を聞いて、王妃が面食らったような表情をした。
その表情を見て、またやってしまったと後悔する。
アリスならこんな風に肯定したりしないだろうな、でもなんて返事するんだろう。
色々と頭の中で妄想する私に、王妃が面食らった表情のまま再び声をかけてきた。
「心を入れ替えたというより、別人のようになった気がするけど・・・。」
そこで言葉を切り、王妃が口をつぐんだ。
何やら考えるような仕草を見せた後、ようやく口を開いて話を続けた。
「まあいいわ。今日は王妃教育の名目で呼んだけど、実はただ話をしたかっただけなの。
長くなるから、そこに座りなさい。」
王妃に促され、近くにあったソファに腰を下ろした。
座った私を見てから、王妃は言葉をつづけた。
「最近、レオンと仲良くしている女の子がいるでしょう。」
「メイ・クリスティーネの事ですね。」
「そうよ。」
私が即座にメイの名前を答えたことに満足したように王妃は頷いた。
「あの子はあなたと違って思いやりのある子だわ。本来、人の上に立つ者はそうあるべきなのよ。」
王妃は窓の外に目を向けてからこちらを見た。
返事を待っているようだ。
「そうですね。私もそう思います。」
さっきと同じく王妃の意見を肯定した。
アリスらしくない返事だって分かっていたが、かといって王妃の意見を否定するのも気が引けた。
そんな私に王妃は一瞬怪訝な表情を浮かべたが、すぐにまた口を開いた。
「息子もあの子を気に入っているようだわ。あの子は守ってあげたくなるような、
そんな暖かい気持ちにしてくれる存在なの。
あなたとは程遠い存在よね。あなたは冷たいし、強かで狡猾でしょう。
悪いけど、レオンにはメイのような子と生涯を共にして欲しいわ。」
王妃のその言葉に私は大きくうなずいた。
その気持ちは分かる。
アリスはお世辞にも性格が良いとは言えない。
誰にでも優しく、誰からでも愛されるメイとは対極的な位置にいる存在だ。
どうせ王子はメイと結ばれるんだから、
最初からメイと婚約していれば、アリスだってあんな最期を迎える事なく、別の人生を歩めただろうに。
「本当にその通りです。私も同じ考えです。」
小説の結末を思い出しながら王妃に向かって返事をした。
そんな私を見て王妃が飲んでいた紅茶を吹き出した。
汚いなあ。私にも少しかかっちゃった。
「あなた本当にどうしちゃったのよ!?!?!??」
王妃は先ほどまで優雅に座っていた姿からは想像できないほど大きな声を上げて、立ち上がっていた。
「何がですか?」
そう答えて私もハッとした。
しまった。ついついアリスとしてではなく、完全に読者として王妃に共感しちゃってた。
小説の中で、アリスはよく王妃に嫌味を言われていたけど、こんな風に肯定したことは一度もなかった気がする。
アリスは頭がいいから、どう言われても上手く言い返していたのだ。
それにしても・・・嫌味を言うためだけにこんな朝早くから呼び出されるなんて・・。
王妃がアリスに嫌味をよく言っているのは小説で知っていたが、まさかそのためだけに城に呼んだりしているなんて想像だにしなかった。
こっちは馬車で1時間かかる距離で疲れているのに、
王妃はいざ口を開けば、アリスは王子とお似合いじゃないだの、メイと違って冷たいだの、そんな話ばっかり聞かされるなんて。
王妃は暇なの??
大体、読者の私からすれば、王妃のあんたもアリスに負けないくらい性格悪いわよ。
先ほどとは打って変わり、私の中で王妃への怒りがだんだんと膨らんでくるのを感じた。
王妃の方を見ると、先ほどと比べていくらか動揺が落ち着いたようで、
自分が紅茶を吹き出して汚してしまった机と床を近くにいたメイドに掃除させていた。
そして私の方を見て今度は呆れたような顔になった。
「もう帰りなさい。今のあなたと話していると調子が狂うわ。」
その方が助かる。こっちだって早く帰りたいのだから。
「分かりました。そうさせていただきます。」
王妃の言葉に素直にうなずき、私は自分の屋敷へ帰ることにした。
その表情を見て、またやってしまったと後悔する。
アリスならこんな風に肯定したりしないだろうな、でもなんて返事するんだろう。
色々と頭の中で妄想する私に、王妃が面食らった表情のまま再び声をかけてきた。
「心を入れ替えたというより、別人のようになった気がするけど・・・。」
そこで言葉を切り、王妃が口をつぐんだ。
何やら考えるような仕草を見せた後、ようやく口を開いて話を続けた。
「まあいいわ。今日は王妃教育の名目で呼んだけど、実はただ話をしたかっただけなの。
長くなるから、そこに座りなさい。」
王妃に促され、近くにあったソファに腰を下ろした。
座った私を見てから、王妃は言葉をつづけた。
「最近、レオンと仲良くしている女の子がいるでしょう。」
「メイ・クリスティーネの事ですね。」
「そうよ。」
私が即座にメイの名前を答えたことに満足したように王妃は頷いた。
「あの子はあなたと違って思いやりのある子だわ。本来、人の上に立つ者はそうあるべきなのよ。」
王妃は窓の外に目を向けてからこちらを見た。
返事を待っているようだ。
「そうですね。私もそう思います。」
さっきと同じく王妃の意見を肯定した。
アリスらしくない返事だって分かっていたが、かといって王妃の意見を否定するのも気が引けた。
そんな私に王妃は一瞬怪訝な表情を浮かべたが、すぐにまた口を開いた。
「息子もあの子を気に入っているようだわ。あの子は守ってあげたくなるような、
そんな暖かい気持ちにしてくれる存在なの。
あなたとは程遠い存在よね。あなたは冷たいし、強かで狡猾でしょう。
悪いけど、レオンにはメイのような子と生涯を共にして欲しいわ。」
王妃のその言葉に私は大きくうなずいた。
その気持ちは分かる。
アリスはお世辞にも性格が良いとは言えない。
誰にでも優しく、誰からでも愛されるメイとは対極的な位置にいる存在だ。
どうせ王子はメイと結ばれるんだから、
最初からメイと婚約していれば、アリスだってあんな最期を迎える事なく、別の人生を歩めただろうに。
「本当にその通りです。私も同じ考えです。」
小説の結末を思い出しながら王妃に向かって返事をした。
そんな私を見て王妃が飲んでいた紅茶を吹き出した。
汚いなあ。私にも少しかかっちゃった。
「あなた本当にどうしちゃったのよ!?!?!??」
王妃は先ほどまで優雅に座っていた姿からは想像できないほど大きな声を上げて、立ち上がっていた。
「何がですか?」
そう答えて私もハッとした。
しまった。ついついアリスとしてではなく、完全に読者として王妃に共感しちゃってた。
小説の中で、アリスはよく王妃に嫌味を言われていたけど、こんな風に肯定したことは一度もなかった気がする。
アリスは頭がいいから、どう言われても上手く言い返していたのだ。
それにしても・・・嫌味を言うためだけにこんな朝早くから呼び出されるなんて・・。
王妃がアリスに嫌味をよく言っているのは小説で知っていたが、まさかそのためだけに城に呼んだりしているなんて想像だにしなかった。
こっちは馬車で1時間かかる距離で疲れているのに、
王妃はいざ口を開けば、アリスは王子とお似合いじゃないだの、メイと違って冷たいだの、そんな話ばっかり聞かされるなんて。
王妃は暇なの??
大体、読者の私からすれば、王妃のあんたもアリスに負けないくらい性格悪いわよ。
先ほどとは打って変わり、私の中で王妃への怒りがだんだんと膨らんでくるのを感じた。
王妃の方を見ると、先ほどと比べていくらか動揺が落ち着いたようで、
自分が紅茶を吹き出して汚してしまった机と床を近くにいたメイドに掃除させていた。
そして私の方を見て今度は呆れたような顔になった。
「もう帰りなさい。今のあなたと話していると調子が狂うわ。」
その方が助かる。こっちだって早く帰りたいのだから。
「分かりました。そうさせていただきます。」
王妃の言葉に素直にうなずき、私は自分の屋敷へ帰ることにした。
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