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第三章:少年期 学園編

第30話「入学初日」

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 学校入学当日、俺はロッテとともに学園の門を潜っていた。
 周りにはピカピカの制服を着た、新入生のような人たちが同じようにキョロキョロと歩いている。


「クラウス様と同じクラスになっているでしょうか? 緊張します」
「ああ、なんかドキドキしてきたな」


 クラス分けの発表は掲示板に貼り付けられているらしい。
 その掲示板の周りにはたくさんの生徒が集っていた。
 俺たちもその人の海をかき分けて中に入ると、自分たちのクラスを確認した。


 俺は……どうやら無事にSクラスに振り分けられたみたいだ。
 S~Eクラスまであり、Sクラスが一番上でEが一番したである。
 つまり俺は一番上のクラスに振り分けられたということだな。


 チラリとロッテの方を見てみると彼女はジッと掲示板を睨んでいたが、すぐに満面の笑みを浮かべる。


「クラウス様! やりましたよ、私もSクラスです!」
「おー! やったじゃないか! これで一年は同じクラスだな!」


 そういうと彼女はしゅんと落ち込んだ様子になった。


「そうでした……一緒になれるのは一年だけでした……」


 確かにクラスは一年ごとに更新され、その度に試験が行われる。
 だから一年後もロッテと同じクラスとは限らないのだが。


「でもロッテなら大丈夫だよ。また一緒のクラスになれるさ」
「……そうでしょうか?」
「うん、俺はロッテを信じるよ」


 そう言うと彼女はぱあっと表情を明るくさせ、にこりと笑った。
 と、そんなとき近くから聞きなれたような大声が聞こえてきた。


「くそっ! 何で俺がCクラスなんだよッ!」


 そう叫んだのは勇者で主人公のカイトだった。
 もうあの怪我から回復したのかと呆れたような感心したような気持ちになる。
 彼は今日は側に少女を一人控えさせている。
 彼女は以前にカイトと王都の服屋で出会ったときにいたミーシャだった。


 この間と同じように死んだ目つきでじっと掲示板を見ていた。
 ……やっぱり彼女、ヒロインのミーシャだよなぁ。
 でもこんな死んだ顔のキャラじゃなかった気がするんだよなぁ……。


「おい、ミーシャ。お前はどのクラスだったんだ?」


 そうカイトは彼女に訊ねた。
 ミーシャは平坦な声でこう言った。


「Sクラス」
「そうかそうか、Sクラスか。——お前、俺を裏切ったな?」
「……そんなつもりはありません」
「お前——ッ! 澄ました顔しやがってッ!」


 カイトは唐突にそう怒り狂った声をあげると、ミーシャに向かって拳を振りかぶった。
 流石にそれ以上は見ていられなかったので、俺は彼女たちの間に割って入る。


「やめなよ。女の子に手を出すもんじゃないぞ」


 割って入った俺にカイトは気がつくと、今度は俺に怒りの視線を向けてくる。


「……またお前かァ。ふざけるな、何で俺の邪魔ばっかするんだよッ!」
「あんたがよくないことをしようとするからだろ? 止めるのは普通の反応だ」


 そう言うと歯を食いしばりながら彼は踵を返す。
 おそらく俺と戦っても勝ち目がないと学習したのだろう。


「覚えておけよ、クラシル。お前だけは絶対に殺す」


 また名前間違えてる……とか場違いなことを考えながら俺は去っていく彼の後ろ姿を眺めていた。
 そしてミーシャの方を見ると、こう訊ねた。


「大丈夫だった?」
「……私は平気です。余計なことをしてくれなくても大丈夫でした」


 彼女は冷たくそう言い放つと、同じく踵を返して去っていってしまった。
 ……何なんだ、彼女は。
 呆然としていたらロッテが憤慨したように言った。


「何ですか、あの子は。助けてもらったのに」
「まあ俺のことは気にしなくて良いよ。それよりも早く教室に行こう」


 そして俺たちは連れ立って教室に向かうのだった。



   ***



 教室にはすでにたくさんの人たちが来ていて、談笑をしたり周りを伺ったりしていた。
 俺たちは自分の席を確認すると、そこに座る。


「クラウス様と隣なんてすごい偶然もあるものですね」
「そうだな。席まで隣ってすごい確率だよな」


 そんな会話をしていたら、二人の男女が教室に入ってきた。
 それを見た生徒たちは一瞬でシンとなる。


「姉さん、なんか教室が静かになっちゃったよ」
「そうねぇ。まあさしずめ私たちに遠慮でもしちゃったのでしょう」


 周囲の人間の緊張した様子に構わず、能天気な会話が聞こえてきた。
 俺は彼女たちを見て、思わず手を振ってしまった。


「おー! シャル様とデニス様じゃないですか! お久しぶりです!」


 その言葉に二人は俺に気がつくと、手を振ったりお辞儀をしたりしてきた。


「あっ、クラウス! ほんと久しぶりね!」
「クラウス、お久しぶりだね」


 そんな様子の俺を不思議そうに見てくるロッテ。


「クラウス様は王子様と王女様とお知り合いなのですか?」
「まあね。一応これでも公爵家だし」


 そう言ってようやく思い出したのか、彼女は納得したように頷いた。


「そういえばクラウス様は公爵様でした」
「いや正確にはまだ公爵様ではなく、公爵子息なんだがな」


 そしてシャルとデニスは俺たちのほう近付いてきてホームルームが始まるまで話し続けるのだった。
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