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第一章 神生みの時代
仮面の女性
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「きぃやあああああああ!」
モモとスサノオが睨み合っている最中、近くで女性の叫び声が聞こえた。何事かと二人は声がした方向を見たが、そこに人の姿はない。
「ちょっと待って、今大声で叫んだ人がいたんだけど」
「……俺も聞こえた」
「じゃあ私の頭がおかしくなったワケじゃなさそうだね」
モモは訝し気な顔で崖の壁に歩み寄ると、仮面を身に着けた一人の女性が上から見えた。どうやら崖を登ろうとしている様子だが、今にも落ちそうで額から大量の汗が吹き出ている。
「あんた、なにしてんの?」
「た、助けてください!これ以上登れそうにありません」
「あのさ……助けるにも自力で登るしか方法がないんだよね。縄もないし」
「そんなぁ~」
「なんだ?この女は」
スサノオがモモの隣まで来ると、同じように訝し気な顔で女性の苦しんでいる様子を見た。
「おい、この崖を登ろうとしたのか?無茶にもほどがあるだろ」
「こ、後悔してます……今は下りたい気持ちです」
「上るのか下りるのかハッキリしろ!」
「助かるならどっちでも良いです。そっちで判断してくださいよ!」
女性は逆ギレしている。
「……やれやれ仕方ない、私が助けるとしますか」
モモは武具など身に付けているものを地面に置いて軽装になり、崖を下りる準備を始めた。
「おまえ、まさか一人担いでこの崖を登る気か?」
「それしか他に方法がなさそうだしね。面倒だけど」
モモは崖の壁に手を掛け、女性のいる場所まで下りようとする。そして傍まで辿り着くと、自分の背中に乗るように促した。
「だ、大丈夫ですか?私、最近ちょっと太っちゃって……」
「ああ平気平気。ワケがあって普通の人よりも力があるから、一人くらいは担いで登れるよ」
女性は疑いながらも、モモの背中に必死で掴まった。モモは女性が背中に乗ったのを確認すると、ヒョイヒョイと飛び上がるように崖を登って、スサノオがいる場所に彼女を下ろした。
(この女……なんて馬鹿力だ)
スサノオはモモの怪力に目を丸くする。
「はあはあ……よ、良かったぁ。助かった」
「あんたさ、どうして崖を登ろうとしたの?この高さなら登る前にどれくらい危険か分かるよね」
モモが女性に尋ねた。
「ええまあ……でも上から森の景色を一望できると思ったんです」
「そんなもの見てどうするの?」
「ただ景色を見て楽しむつもりでした」
「呆れた……そんな理由!?」
モモとの戦いに水を差されたスサノオは、憤りを隠せず女性に罵声を浴びせた。
「おまえ!そんなワケの分からん理由で俺たちの邪魔をしたのか。崖から落ちて頭でも打てば良かったのだ」
「私の名前はチキです。おまえじゃありません」
チキと名乗った女性はスサノオを睨み返す。仮面の奥から覗く鋭い眼光に、スサノオは少しだけ怯んだ。
「じゃあチキさん、なんでこんな仮面を被ってるの?」
モモは不思議そうにチキの仮面を見た。
「これは部族の習わしなんです。小さい頃から身に着けていますから、外しちゃいけないと教えられているもので」
「ふ~ん、面倒なこと守らなきゃいけないんだね」
モモは大きく溜息を吐きながら、服に付いた砂埃を払った。
「なんだか拍子抜けしちゃったわ、もう戦いなんかどうでも良くない?」
「な、なんだと!止めると言うのか」
スサノオがモモの言葉で慌て出す。
「私さ、地上最強なんてまったく興味ないし、あんたと戦うことも疲れそうだから嫌なんだよね」
「し、しかし……」
「じゃあ私を部下として雇いなよ、それなら皆も納得するでしょ」
モモの提案にスサノオの目はさらに丸くなる。
「おまえを雇えだと!?」
「そっちの方が面白そうだし」
「では負けを認めたと言うのだな?」
「そう思いたければご自由に」
「そ、そうか。わはは!では俺がこの時代で地上最強である」
スサノオは満足そうな表情を浮かべながら、剣を鞘に収めた。
モモとスサノオが睨み合っている最中、近くで女性の叫び声が聞こえた。何事かと二人は声がした方向を見たが、そこに人の姿はない。
「ちょっと待って、今大声で叫んだ人がいたんだけど」
「……俺も聞こえた」
「じゃあ私の頭がおかしくなったワケじゃなさそうだね」
モモは訝し気な顔で崖の壁に歩み寄ると、仮面を身に着けた一人の女性が上から見えた。どうやら崖を登ろうとしている様子だが、今にも落ちそうで額から大量の汗が吹き出ている。
「あんた、なにしてんの?」
「た、助けてください!これ以上登れそうにありません」
「あのさ……助けるにも自力で登るしか方法がないんだよね。縄もないし」
「そんなぁ~」
「なんだ?この女は」
スサノオがモモの隣まで来ると、同じように訝し気な顔で女性の苦しんでいる様子を見た。
「おい、この崖を登ろうとしたのか?無茶にもほどがあるだろ」
「こ、後悔してます……今は下りたい気持ちです」
「上るのか下りるのかハッキリしろ!」
「助かるならどっちでも良いです。そっちで判断してくださいよ!」
女性は逆ギレしている。
「……やれやれ仕方ない、私が助けるとしますか」
モモは武具など身に付けているものを地面に置いて軽装になり、崖を下りる準備を始めた。
「おまえ、まさか一人担いでこの崖を登る気か?」
「それしか他に方法がなさそうだしね。面倒だけど」
モモは崖の壁に手を掛け、女性のいる場所まで下りようとする。そして傍まで辿り着くと、自分の背中に乗るように促した。
「だ、大丈夫ですか?私、最近ちょっと太っちゃって……」
「ああ平気平気。ワケがあって普通の人よりも力があるから、一人くらいは担いで登れるよ」
女性は疑いながらも、モモの背中に必死で掴まった。モモは女性が背中に乗ったのを確認すると、ヒョイヒョイと飛び上がるように崖を登って、スサノオがいる場所に彼女を下ろした。
(この女……なんて馬鹿力だ)
スサノオはモモの怪力に目を丸くする。
「はあはあ……よ、良かったぁ。助かった」
「あんたさ、どうして崖を登ろうとしたの?この高さなら登る前にどれくらい危険か分かるよね」
モモが女性に尋ねた。
「ええまあ……でも上から森の景色を一望できると思ったんです」
「そんなもの見てどうするの?」
「ただ景色を見て楽しむつもりでした」
「呆れた……そんな理由!?」
モモとの戦いに水を差されたスサノオは、憤りを隠せず女性に罵声を浴びせた。
「おまえ!そんなワケの分からん理由で俺たちの邪魔をしたのか。崖から落ちて頭でも打てば良かったのだ」
「私の名前はチキです。おまえじゃありません」
チキと名乗った女性はスサノオを睨み返す。仮面の奥から覗く鋭い眼光に、スサノオは少しだけ怯んだ。
「じゃあチキさん、なんでこんな仮面を被ってるの?」
モモは不思議そうにチキの仮面を見た。
「これは部族の習わしなんです。小さい頃から身に着けていますから、外しちゃいけないと教えられているもので」
「ふ~ん、面倒なこと守らなきゃいけないんだね」
モモは大きく溜息を吐きながら、服に付いた砂埃を払った。
「なんだか拍子抜けしちゃったわ、もう戦いなんかどうでも良くない?」
「な、なんだと!止めると言うのか」
スサノオがモモの言葉で慌て出す。
「私さ、地上最強なんてまったく興味ないし、あんたと戦うことも疲れそうだから嫌なんだよね」
「し、しかし……」
「じゃあ私を部下として雇いなよ、それなら皆も納得するでしょ」
モモの提案にスサノオの目はさらに丸くなる。
「おまえを雇えだと!?」
「そっちの方が面白そうだし」
「では負けを認めたと言うのだな?」
「そう思いたければご自由に」
「そ、そうか。わはは!では俺がこの時代で地上最強である」
スサノオは満足そうな表情を浮かべながら、剣を鞘に収めた。
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