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侵略者たち
親善試合の真相
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神父が話し始めると、ウィナとゲルファスが少しだけ身を乗り出す。
「まず一つ目の理由がウィナ、おまえに原因がある」
「は?」
「……まあ聞け。おまえはカルメリアとの試合で50人を倒したのは周知の事実だが、これを気に食わない連中が山ほどいる。恨みを買ったのはカルメリアの奴らだけじゃないぞ、ロジナスでもおまえの存在を危険視する輩が増えた。そしてダルタ紛争だ。あの戦いはロジナスでも経済的な損失を与えたからな」
「それは聞いたことがある。カルメリアと唯一交易のあった地方都市だからな。あそこが潰れたせいで、カルメリアとの国交が完全に絶たれちまったらしい」
「アタイは一生懸命戦っただけだよ」
ウィナが軽く口を尖らせた。
「マズかったのは圧倒的な差で勝ったことだ。あれを見てカルメリアが弱くなったと勢い付いたらしい。もともとダルタ地方に住む連中は、カルメリアとロジナスが仲良くするのを苦々しく思っていたからな。あそこはカルメリアの領地とされていたが、20年前は完全な独立国家でロジナスとも敵対関係にあった。紛争の契機がウルフレイジ・レジェンズなのは皮肉だが、あのゲームは国家の技術力を知る上で参考になるし、ガナス・スーツは戦場でも多大な影響を与える。実際に勝利して再び独立したんだから、勢いってのは侮れねえもんだ」
「それと親善試合が関係あんの?」
「……つまりだな、少しはロジナスが負けてくれないとバランスが取れないと判断したんだろう。カルメリアがもう一度試合を挑んでも良かったんだが、また大敗すると極めて不利になる。そこでゼインの登場だ。あの男が別の国から参戦することで、やはりカルメリアは強かったと思わせたかったのかもしれん」
ウィナは腕を組んで「ふーん」と感心したような素振りを見せた。
「まあ、ゼイン相手には苦戦したしな。あいつがいたら『カルメリア20人狩り』は無理だったはずだ」
ゲルファスはウィナの背中をバンバンと叩く。
「……では二つ目の理由だが、こっちはかなり厄介だぞ。おまえたち、ロジナスの北にあるマーブル地方を知っているか?」
「いくつかの村と集落で成り立った閑静な田舎町だよね」
「その地域でな、ガズーダという男が数年前よりならず者ばかりを集めた愚連隊を率いているという噂があった。今では組織の規模も大きくなり、一個師団として活動の領域を広げている。このガズーダという男、なかなか狡猾でロジナスの高官へ頻繁に賄賂を送っているらしい」
「ちっ、受け取る方も腐ってやがるな」
ゲルファスが軽く舌打ちする。
「そのガズーダだが、独立した国を持ちたいという野望を掲げている。マーブル地方はロジナスで唯一、カルメリアと国境を接している地域だ。あの男が言うには、緩衝国としての役割を担うためにマーブル地方で建国したいとロジナスに何度も直談判していた」
「そんな要求が通るワケ……」
「誰もがそう思うかもしれんが、この要求をロジナスの政府が呑んだ」
「嘘だろ!?」
ウィナとゲルファスは驚きで目が丸くなる。
「いや事実だ。今回の親善試合で負けたり苦戦すれば、カルメリアが攻めてくるのではないかと国民の間で不安な感情が芽生える。その感情を利用してガズーダは蜂起するつもりだ。表向きはカルメリアと対峙するリーダーとして聞こえはいいからな。ロジナスもガズーダの行動には一切口を挟む気はないらしい。だがもっとタチの悪いのは……」
「タチの悪いのは……?」
ウィナは神父の言葉を繰り返して問い掛ける。
「……そこに住まう村人たちを好きにしていいと政府はガズーダに言いおった」
「まず一つ目の理由がウィナ、おまえに原因がある」
「は?」
「……まあ聞け。おまえはカルメリアとの試合で50人を倒したのは周知の事実だが、これを気に食わない連中が山ほどいる。恨みを買ったのはカルメリアの奴らだけじゃないぞ、ロジナスでもおまえの存在を危険視する輩が増えた。そしてダルタ紛争だ。あの戦いはロジナスでも経済的な損失を与えたからな」
「それは聞いたことがある。カルメリアと唯一交易のあった地方都市だからな。あそこが潰れたせいで、カルメリアとの国交が完全に絶たれちまったらしい」
「アタイは一生懸命戦っただけだよ」
ウィナが軽く口を尖らせた。
「マズかったのは圧倒的な差で勝ったことだ。あれを見てカルメリアが弱くなったと勢い付いたらしい。もともとダルタ地方に住む連中は、カルメリアとロジナスが仲良くするのを苦々しく思っていたからな。あそこはカルメリアの領地とされていたが、20年前は完全な独立国家でロジナスとも敵対関係にあった。紛争の契機がウルフレイジ・レジェンズなのは皮肉だが、あのゲームは国家の技術力を知る上で参考になるし、ガナス・スーツは戦場でも多大な影響を与える。実際に勝利して再び独立したんだから、勢いってのは侮れねえもんだ」
「それと親善試合が関係あんの?」
「……つまりだな、少しはロジナスが負けてくれないとバランスが取れないと判断したんだろう。カルメリアがもう一度試合を挑んでも良かったんだが、また大敗すると極めて不利になる。そこでゼインの登場だ。あの男が別の国から参戦することで、やはりカルメリアは強かったと思わせたかったのかもしれん」
ウィナは腕を組んで「ふーん」と感心したような素振りを見せた。
「まあ、ゼイン相手には苦戦したしな。あいつがいたら『カルメリア20人狩り』は無理だったはずだ」
ゲルファスはウィナの背中をバンバンと叩く。
「……では二つ目の理由だが、こっちはかなり厄介だぞ。おまえたち、ロジナスの北にあるマーブル地方を知っているか?」
「いくつかの村と集落で成り立った閑静な田舎町だよね」
「その地域でな、ガズーダという男が数年前よりならず者ばかりを集めた愚連隊を率いているという噂があった。今では組織の規模も大きくなり、一個師団として活動の領域を広げている。このガズーダという男、なかなか狡猾でロジナスの高官へ頻繁に賄賂を送っているらしい」
「ちっ、受け取る方も腐ってやがるな」
ゲルファスが軽く舌打ちする。
「そのガズーダだが、独立した国を持ちたいという野望を掲げている。マーブル地方はロジナスで唯一、カルメリアと国境を接している地域だ。あの男が言うには、緩衝国としての役割を担うためにマーブル地方で建国したいとロジナスに何度も直談判していた」
「そんな要求が通るワケ……」
「誰もがそう思うかもしれんが、この要求をロジナスの政府が呑んだ」
「嘘だろ!?」
ウィナとゲルファスは驚きで目が丸くなる。
「いや事実だ。今回の親善試合で負けたり苦戦すれば、カルメリアが攻めてくるのではないかと国民の間で不安な感情が芽生える。その感情を利用してガズーダは蜂起するつもりだ。表向きはカルメリアと対峙するリーダーとして聞こえはいいからな。ロジナスもガズーダの行動には一切口を挟む気はないらしい。だがもっとタチの悪いのは……」
「タチの悪いのは……?」
ウィナは神父の言葉を繰り返して問い掛ける。
「……そこに住まう村人たちを好きにしていいと政府はガズーダに言いおった」
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