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侵略者たち

情報屋

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――親善試合が行われた次の日の夜。ウィナはガナス本部から出ると、バイクに乗って市街地へ向かおうとした。しかし、背後からゲルファスに呼び止められる。

「おい、待てよウィナ」

ウィナは被ろうとしたヘルメットを脇に抱え、不機嫌そうに舌打ちをした。

「なんだよゲルファス、アタイは今から飲みに行くんだけど」

「それは構わんが、ちと聞きたいことがあってな」

「……なに?」

「おまえさん、今回の親善試合はキナ臭いとか言ってたが、なにか心当たりでもあるのか?」

「……」

「昨日の試合後、プレイルームに戻っても珍しく大人しかったよな。いつものおまえなら暴れて手が付けられん。なにか裏があることを分かっている感じだった」

「仕方ないね……アタイについて来な」

ウィナはヘルメットを被り、バイクに跨った。

「市街地の下層にあるヒズミ地区に行くよ」

「はあ? あそこはスラム化した貧民街じゃねえか。おまえさんが行ったら、身ぐるみ剥がされるぞ」

「いいから!」

ゲルファスは苦虫を噛み潰したような顔でウィナに従い、車のエンジンを掛けてバイクの後を追った。二人はヒズミ地区と呼ばれる場所へ着くと、廃れた公園の近くに建つ教会の前へバイクと車を停めた。ゲルファスは念のため、ハンドガンを携帯して車から降りる。すると、教会の二階から単発銃を構えた少年が現れた。

「そこを動くな! おまえたち、なにしにここ……」

だが少年はウィナの姿を確認すると、すぐに銃を下ろして満面の笑みを浮かべた。

「ウィナ、来てくれたんだね!」

「元気してた? 銃の構え方もサマになってきたね」

「ちょっと待って、今そっちに行くから!」

少年は教会の入り口でウィナとゲルファスを駆け足で出迎えた。飛び上がって喜ぶ少年の頭を、ウィナは優しく撫でてやる。

「あれから悪いヤツがここを襲ったりしてない?」

「うん! ウィナが追っ払ってくれたから、しばらくは大丈夫だと思う。来てくれるなら連絡してよ。見慣れない車が停まったから、怪しいヤツだと思って勘違いしちゃった」

「……ああ、悪いなボウズ。俺はウィナと同じガナスに所属しているゲルファスって者だ」

ゲルファスは簡単な自己紹介を済ませ、少年の警戒を解こうとした。「ガナス」の名前を聞くと、少年の目が興味深そうにキラキラと輝きを増す。

「わあ、ロジナスの英雄だね。僕も将来はガナスになりたいんだ」

「そりゃ楽しみだな。ウィナの立ち回りを覚えたら、優秀なガナスになれるかもしれんぞ」

「……ああちょっと、話の途中で悪いけど、神父はいるの?」

ウィナは少年に尋ねると、「うん、告解室にいるよ」と答えが返って来た。

「おまえ……罪の告白(懺悔)をしにここに来たのか?」

ゲルファスが怪訝そうな顔でウィナを見る。

「違う違う。アタイが罪の告白なんてしたら、多過ぎて神父の耳が腐っちゃうよ」

ウィナは教会にある告解室に向かうと、扉を開けて部屋の中に入った。ゲルファスが外で待とうとするが、こちらへ来るようウィナが中で手招きする。

「おいおい、そんな狭い部屋に二人で入るのは無理だろ」

「この奥にもう一つの部屋があんのよ。いいから黙って入って来な」

ウィナは告解室にあるレバーを引くと、壁がスライドして奥に部屋が現れた。二人はその部屋の中へと入ると、肌に深い皺が刻まれた老齢の神父が出迎える。

「久しぶりね神父さん。罪の告白をしに来たよ」

「……おまえさんの罪の告白なんぞ聞いたら、多過ぎて耳が腐るわ」

神父の悪態を聞き、ウィナは口をへの字に曲げてゲルファスを見た。ゲルファスは目を逸らし、必死に笑いを堪えようとする。

「今日はなにしに来た?」

「今回の親善試合のことだよ。聞きたいの分かってるクセに」

ウィナの言葉に、ゲルファスは不思議そうな顔をする。

「おいウィナ、こちらの神父はどういう……」

「ああ、説明不足だったね。この人は神父の恰好をしてるけど、ロジナスの裏界隈に詳しい情報屋なんだよ」

神父は掛けている眼鏡を軽く指で上げると、ゲルファスの顔を見て眉間に皺を寄せた。

「……ここに軍の関係者を連れて来るとは感心せんな。おまえさんは孤児院の運営に関わっているから大目に見ているが」

「アタイだって軍の関係者じゃん。このゴリラなら口が堅いから安心しなよ」

神父は深いため息を吐くと、二人に椅子に座るよう勧めた。二人が座るのを確認すると、神父は落ち着いた口調で話し始める。

「……では、今回の親善試合がなぜ行われたのか話しておこう」
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