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ダルクガルド

ゼインの脅威

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ゼインとオルファンドの一行は、銀行から退避後に近くの商業施設へ身を隠した。

「ゼイン殿、感謝いたします」

ゼインはオルファンドの言葉を聞くも、背中を向けたままスナイパーライフルの手入れをしている。

「ドロスとルイージャを失い、こちらは残り4名か……相手の一人は肩を負傷させたが、不利な状況には変わりない」

「……俺は行くぞ」

ゼインは手入れを終えると、東にある高台へ向かって歩き出した。

「私たちは背後を守りますが」

「いらん。おまえたちは西にある廃病院へ行け、集団行動は却って目立つからな。これからウィナとサメイル以外のガナスを殺害する」

「3名を射殺すると……?」

「そうだ」

ゼインはスナイパーライフルにゆっくりと弾を込める。

「案ずるな、ウィナとサメイルをその場から二度と動けないようにしてやる。おまえたちは安心して病院に避難すればいい」

その言葉の裏には「逃げろ」という皮肉が込められている。おまえたちでは戦力にならないと見限られたのだ。

(悔しいが……このラウンドでは認めざるを得ない。次のラウンドで汚名を返上してみせる)

オルファンドはゼインに一礼すると、西の病院に行くよう他のメンバーに指示を出した。ゼインは地図を確認し、ロジナスのチームがどこに行く可能性があるか予想する。

(あの銀行からそれほど遠くないのは、下町の商業地帯とスラム街、そして警察署といったところか)

商業地帯とスラム街は高層の建物が極めて少なく、隠れる場所も限られるため、ここに逃げれば恰好の的になると思われる。一方で、警察署は5階建てのビルなので、外からの襲撃にも耐えられる構造になっていた。だが、ゼインが注目するのは警察署ではなく、そこへ向かうまでの道のりである。

(もし警察署へ向かったとなれば……俺の勝ちだ)

ゼインはスナイパーライフルを肩に抱え、再び東の高台に向かって歩き出した。

その頃、ウィナと他のガナスたちは、頭を低くしながら警察署に向かって歩き続けていた。見ると、前方に大型のパーキングエリアが姿を現す。

(しめた……あそこなら身を隠して進むことができそう)

百台ほどの車が停まっているため、屈めば遠くから視認されることはない。ウィナは指で合図して、車両の間を通りながら警察署へ向かうよう指示した。

――その時である。

遠くで小さな鐘を鳴らすような音が聞こえると、ウィナから1m離れて進んでいたガナスの一人が、頭を撃ち抜かれて意識を失った。

「……なにっ!?」

ウィナは慌てて周囲を確認するも、誰が撃ったのか、どこから撃ったのかまったく分からない。そして数秒後、鮮明な一筋の射線が見え、目の前をフラフラと泳ぐように移動していた。

(ゼインの射線……だけどこっちを狙っている感じじゃないのに)

しかし、その射線が車両のバンパーに接すると、線が「くの字」に曲がってガナスの一人を捉えた。

(ち、跳弾……っ!)

ウィナは射線に貫かれたガナスを大声で呼ぶも、次の瞬間、そのまま頭を撃ち抜かれて意識を失った。

「サメイルっ、このエリアから逃げよう! 相手は跳弾を利用してアタイたちを射殺するつもりだよ!」

その呼び掛けに応じ、サメイルはパーキングエリアの西口から出ようとしたが、すぐに足を撃ち抜かれてしまう。サメイルを助けようとした者も手前で頭を撃ち抜かれ、そのままドサリと地面に倒れて意識を失った。ウィナの目の前でサメイルが苦しそうに藻掻いている。

(クソっ! サメイルを餌にしてアタイを仕留めるつもりだ)

ウィナとサメイルの距離は5mほどある。このゲームでは負傷した後、出血多量による死亡もあり、応急処置をしなければ立って歩けないのだ。しかし、車両の陰から少しでも顔を出せば即座に撃ち抜かれるため、迂闊に近寄ることができない。

(残された選択肢は2つ……サメイルに近付いて応急処置を施すか、この場を離れてゼインに勝負を挑むか)

……いずれにせよ、どちらの選択も「ゼインの射線を避けながら」の行動となる。ウィナはその場に留まり、完全に動けなくなってしまった。
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