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ダルクガルド

仲間割れ

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――なっ!?

ウィナはすぐに近くの通路へ隠れると、周りにいたメンバーに声を掛けた。

「みんな伏せてっ! 窓から離れるんだ!」

その呼び掛けに応じて、サメイルを含めたガナス全員は一斉に床へ身を伏せ、匍匐してウィナのいる通路側へと向かった。

(しくじった……ゼインがいることを一瞬でも忘れるなんて。あいつは頭が見えた瞬間に撃ち抜くつもりだ)

ウィナはスーツの通信機を使い、指令室にいるゲルファスに現状を報告した。

「こちらチームアルファ、親鳥を含む三羽が帰巣」

ゲルファスは報告を聞き、唇を噛んで悔しがる。

「ちくしょう……仕方ねえ、おまえが指揮を取れ。索敵に集中しろよ、まだ冷静に対処すれば立て直せるからな」

「了解」

ウィナは通信機を切り、周囲のメンバーに指示を出した。

「階段を下りてこの建物から出るよ。後ろにある銀行と思われる建物に退避する。前方の3名はクリアリングに集中。私とサメイルは後方の射線を確認しながら追撃に備える」

残されたガナスの7名は、ウィナの言葉を聞いて即座に行動へ移る。通路にある非常階段から一階を目指し、ドアを蹴破って裏通りへと進んだ。幸いなことに、裏通りは周囲の建物に囲まれているため、遠くから狙われても姿を捕捉される可能性は低いと思われた。

(よし、窓の少ないあの銀行に逃げれば、多少はゼインの目を避けられる)

ウィナは素早くチームの先頭を歩き、スーツのデバイスを使って周囲の索敵を行った。

「半径30m以内に敵はなし。念のため銀行の裏口から入り、警戒しながら建物全体を確保するよ」

「了解!」

ガナスの一人が銀行の裏口を双眼鏡で確認した後、屈みながら裏道を進んでドアの前に辿り着く。頑丈なドアだったが、幸い鍵が掛かっていなかった。

(廃墟の銀行という設定だな……おそらく、法人用の大型金庫も長年使われてないのかも)

ウィナは先を行くガナスの後に続いて銀行に入り、オフィスや受付のクリアリングを済ませた。床には書類などが散乱し、人の手入れが行き届いていない様子が伺える。そしてウィナはオフィスの机の引き出しを開け、中あった銀行の地図に目を通した。

「……しばらくここで待機だ。改めて作戦を練ろう。敵が攻めて来たら、地下にある法人用の大型金庫に逃げればいい」

「金庫ダッテ?」

「見れば分かるさサメイル。一緒に来な」

ウィナはアサルトライフルを構えながら、地下にある大型金庫へ向かった。重厚な扉が半開きになっており、ここも長年に渡って人に使われた様子がない。

「この扉なら威力のある銃でも簡単には壊せないよ」

「ダガ閉ジ込メラレテ逃ゲ場ガナクナルゾ」

「だから床を吹っ飛ばしてみるのさ」

ウィナはいくつかのプラスチック爆弾を金庫室の床に設置し、爆発と共に大きな穴を開けた。

「……上手くいったみたい」

見ると、穴の底に人が通れる下水道が現れた。

「コレハ……知ッテタノカ?」

「いや、勘だよ勘。運良くあればいいなって」

「オマエハ優秀ナ銀行強盗ニナレルナ」

「……それ、褒めてないよね」

一方、ダルクガルドの陣営では、ゼインとドロスが睨み合っていた。

「勝手なことをしてもらっては困る」

ドロスの口調には明らかに怒りが込められている。

「……勝手なこととは?」

「銃の腕が立つのは認めるが、こちらの指示もなく発砲するのは連携を乱す行為である。居場所が相手に知れたらどうするのだ?」

「敵の頭が見えたから撃った、それだけのことだ。俺に言わせれば、おまえたちの判断が鈍いと見える」

「なんだと……? 驕るなカリメリアの犬めが!」

ドロスの言葉を聞き、ゼインは大きな溜息を吐くと、腕を組んで近くの椅子にドカリと腰を下ろした。

「文句があるなら、おまえたちだけで戦え」

ドロスはゼインの態度に顔が紅潮し、今にも殴り掛かりそうな雰囲気になる。

「ど、ドロスさん、仲間割れは止めましょう。ゼイン殿がいなくても、ダルクガルドの精鋭ならロジナスに引けを取りません。それに、相手は三人のガナスを失っております」

オルファンドがドロスを落ち着かせようする。ドロスはゼインを睨み付けると、「腑抜けめが」と捨て台詞を残して部屋から出て行った。他のメンバーもゼイン一人を残して部屋から出る。オルファンドだけは去り際、憮然とするゼインに話し掛けた。

「ゼイン殿、ダルクガルドがまだ未熟なのは痛感しております。だが国を誇る気持ちはカルメリアに劣りません。もし、私たちの信念に賛同していただけるなら、一緒に戦ってください」

オルファンドは深々と頭を下げた後、ドロスを追って部屋を出て行った。
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